スタッフコラム

寅さん再入門

2020/08/01

中3から高1にかけてテレビで放映された「男はつらいよ」全話放映を家族と見ました。1年半ほどの間寅さんをみるのが習慣になっていたので、とらやや柴又の風景は私の少年期のころの風景となかば同化しています。放映後の山本晋也と渡辺俊雄のレビュートークも楽しかった記憶(今おもうとそれが軽い日本映画入門になっていました)。

当館の寅さん特集のチラシにはゲスト出演の俳優陣も掲載されていますが、子どものころは日本映画史に無知だったので、田中絹代も嵐寛も知りませんでした。今振り返ってシリーズの出演陣を見ると、如何に豪華だったかが理解できます。今回の特集ではそんなゲスト陣の演技にも注目してみたいと思います。

8月の中旬には恒例の戦争・社会派映画が上映されますが、「男はつらいよ」の世界の人々も戦時中および戦後の混乱期の体験があります。作品設定では寅次郎も1950年に家出し、社会のグレーゾーンを生き延びてきた人です。世代的に当たり前のことですが、これも子どものころにはなかった視点です。

「男はつらいよ」はもともと安藤昇の原案らしいですが、それが本当の話なら実際のやくざだった安藤昇の周囲にも、寅次郎のような陽気な的屋の青年がいたのかもしれません。強面な面々相手に笑いを取っていたのかと妄想が膨らみます。

わたしの母は高校生の頃(1976年頃)、横浜のバス停で寅さん姿の渥美清さんに話しかけられたことがあるらしいです。懐かしそうに話す母の話をよく聞いていたので、平成生まれの私にも寅さんは親戚のオジサンのような身近な存在になっています。今回の特集で代表作を見直して、山本×渡辺の寅さんオタクトークが書籍化されているらしいのでそれもチェックし、今年の夏は寅さんに再入門してみることにします。

— 笠原伊織


底抜けおじさん

2020/07/07

私の尊敬する人が亡くなられた。「志村けん」さんです。志村けんは『8時だよ全員集合』で国民的人気を博し、日本のお笑い界を牽引する一人でした。私もお笑いが大好きなので志村けんのコントDVDを借りて何度も見ました。そんな彼が生前、自分の笑いの起源はジェリー・ルイスだと語っていました。

「ジェリー・ルイス」は底抜けシリーズで有名な60年代を代表するコメディアン/コメディ俳優です。46年に歌手のディーン・マーティンと底抜けコンビというコメディグループを結成し、「ディーン&ルイス」と呼ばれパワフルかつ突発的なパフォーマンスで観客を魅了しました。そんな世界が誇るコメディアンと日本が誇るコメディアン。私はその両方を観ることで改めて志村けんはルイスの影響を受けていると感じたので、二人の似ているところ書きたいと思います。

志村けんと言えば大袈裟な表情が印象的です。バカ殿やドリフ、特に指揮者のコントでは声を一切発さず表情だけで笑いを取っています。同じくルイスも大袈裟な表情と皮肉な表現がうりです。お互い喜怒哀楽+αの表情を使い分けることで完璧な間抜けを演じているのだと思います。

次の共通点はアドリブに対するこだわりです。志村けんはアドリブの応酬と言われるほど舞台上のアドリブで生まれた笑いが大切だと語っていました。ルイスも自身のコントの際、台本には余白が非常に多く、アドリブの笑いを多く使っていました。ルイスの相方のマーティンはその余白の多い台本のことを「青写真」だと語っています。お二人の共通点はまだまだ感じたのですが、文字制限があるので今回はこのくらいで。

最後に、私の父親が「俺らの世代は志村の子」と言っていました。そうなると私は「志村の孫の世代」になります。ジェリー・ルイスが志村けんに影響を与えたように、志村けんに影響を受けた者が次の世代に繋いでいくのです。志村けんさん多くの笑いと感動をありがとうございました。心よりご冥福をお祈りいたします。

— 小池桔平


テレキネシスに呼び起こされた私のプロムパーティー

2020/06/08

緊急事態宣言の中、『キャリー』(76)を初めて観た。

学校ではいじめられ、家ではキリスト教信者の母から虐待を受けていた主人公のキャリー。プロムパーティーのキャリーの止まらないテレキネシスは気持ちが良かった(あまり声を大きくして言えないが)。

『キャリー』を観て、アメリカの学校に通っていた学生時代を思い出した。もともと、友達も少なく、恋人もいない。人と話したり、コミニュケーションが苦手で、学生時代の思い出は多くない。アメリカの学校では、いじめはないがアジア人差別を受けてきた。苦い思い出の方が多い。どちらかと言えば、私もキャリーのようなタイプだった。

高校1年生の頃、友達からの誘いで初めてプロムパーティーに行った。私もキャリーのように誘われた事が嬉しかった。苦い思い出が多い中でも、輝かしい学生時代の思い出を作りたかった。

プロムパーティー当日。その日の為に用意した、黒のレースのドレスを着て、ヒールの高いショートブーツを履き、馴れない格好に着心地は決して良くなかったが、おめかしをして夜の学校へと向かう車内で内心とてもワクワクしていた。

学校に到着した時には緊張していたが、学校の中庭で流れるダンスミュージック、外壁に投影された映像、様々な装飾に心が踊った。全てがキラキラしていた。

内向的だが思い出作りにちょっと踊ったりした。気になっていた男の子には軽い挨拶しかできずモヤモヤした。ソフトドリンクにお酒が入ってると聞いてビビって飲めなかった事も今となっては良い思い出だ。思い返せば、プロムパーティーは輝かしい思い出になっていた。

キャリーにとってのプロムパーティーの輝きは一瞬で終わり、悲しみと怒りをもたらしたが、手作りのピンクのドレスを着て、男の子と幸せそうに踊り、キラキラとした笑顔のキャリーを思い出すと、あの一瞬には私のプロムパーティーの思い出は到底敵わないと、映画を観終えてそう思った。

— 矢内さくら


忘れ得ぬ美しき戦慄と婆ばの顔

2020/03/31

マリオとダリオと聞くと、のりお・よしおのような漫才師に聞こえるが、ツクツクボーシ!の方ではなく、ご存知イタリアンホラーの巨匠マリオ・バーヴァとダリオ・アルジェントのことである。

バーヴァはジャーロ(イタリア製猟奇スリラー)の父と呼ばれその起源は『知りすぎた少女』(63)からと言われる。アルジェントもジャーロ特有の残酷描写や色彩、黒ずくめの犯人、革手袋などの表現や美意識の文化を興隆させた1人だ。アルジェントの『サスペリア』(77)『インフェルノ』(80)の美しい極彩色はバーヴァの『モデル連続殺人!』(64)の影響が大きく、実際バーヴァが『インフェルノ』では特殊効果を担当。これがバーヴァの最後の仕事で、80年4/27に死去。今年は没後40周年だ。

バーヴァはもともと撮影監督として知られ、R・ロッセリーニやR・ウォルシュなどの撮影を経て、魔女ものゴシック・ホラーの傑作『血塗られた墓標』(60)で長編初監督。後の『バンパイアの惑星』(65)は『エイリアン』(79)の元ネタの1つ。オチが驚愕の『血みどろの入江』(71)は『13日の金曜日』(80)の元ネタだ。数多の作品で影響を与え、フェリーニ、ティム・バートン、タランティーノなども影響下にあり、如何に偉大かが伺える。

個人的にはオムニバスホラー『ブラック・サバス 恐怖!三つの顔』(63)の「一滴の水」がトラウマ。屋敷の主の交霊術好きの婆ばが亡くなったと呼び出された看護師のヒロインが、魔が差したのか婆ばの指輪を盗んだことで、亡霊婆ばに襲撃される話。原色を配した空間が幻想的で不安を煽るなか、断然この婆ばの顔が恐怖!現世に存在しない厭な悍ましさは悪霊そのもので、生涯忘れ得ない。(AKIRAのキヨコに激似!)

先述したジャーロの起源『知りすぎた少女』はヒッチコックの『知りすぎていた男』(56)が由来だが、バーヴァの2日後の4/29にそのヒッチ・コックが死去した。

この40年の節目で願わくはバーヴァの世界を劇場で享受したい。ホラーが苦手な人も虚心坦懐の想いで望めばこれ幸いである。そして、何の因果もないが想起すれば、のりお・よしおが活躍した漫才ブームは80年に始まるのであった。

— 平山晋也


『キャッツ』と猫と夢

2020/02/27

タイトルの通り今月のコラムは話題沸騰の映画『キャッツ』についてです。

名曲『メモリー』をはじめとした音楽、ダンス(タップダンスのシーンは見ごたえ抜群!)、展開、演出など、『キャッツ』について語りたいことはたくさんありますが、ここでは『キャッツ』に出てくる「猫」について取り上げようと思います。

この作品に出てくる猫たちは、人間とは別種の生き物であり、人間の想像や理解が及ばない存在です。SNSやテレビで日々消費される「可愛いネコちゃん」は一匹も出てきません。常識も、倫理も、嗜好も、私を含めた観客たちはほとんどついていけないでしょう。自分の場合、次々と繰り出される猫たちの歌と踊りと狂気の世界に、いつの間にか酔いしれてしまいました。

中途半端なジェンダーフリー要素もなければ、ご都合主義の恋愛要素もなく、人間に都合のいい猫が出てこない本作は、最初から最後まで猫たちの狂宴を見事に描き切りました。狂気の夢そのもののような作品のため、好き嫌いは確実に分かれます。それでも、観に行くのを悩んでいる方は、常識と偏見、それから映画の知識と猫への幻想を捨てて、『キャッツ』の世界にぜひ飛び込んでみてください。

— 浜本栄紀


エビス・ラビリンス

2020/01/31

秋刀魚のカレーを食べて恵比寿駅に向かう。20分歩いたところで立ち止まる。地図を見て駅からカレー屋に辿り着いたときは、10分もかからなかった。迷っている。これから映画を見る予定だが開映まで余裕がある。偶然行き着くかもしれないので、見覚えがある気がする道を行く。更に10分経つ。駅に近づく気配はない。スマートフォンの地図を開く。現在地が表示され即座に電源が落ちる。4年くらい使っているので寿命が近づいている。コンビニでは古い機種の充電器を扱っていないし、見渡す限り電気屋はない。歩き出すしかなかった。地図を一瞬見た感じではこっちだった気がする。自分を疑いながらも進む。映画に間に合わなかったらどうしようという不安が生まれる。時計を持っていないので時間が確認出来ない。気楽に迷っていた時間は終わってしまった。誰かに道を聞くしかない。シャイなので、全くの他人には話しかけられない。コンビニで水を買い店員のお姉さんに尋ねることにした。お姉さんは「ずっと、まっすぐまっすぐ。10分くらいかなあ」と教えてくれた。今までグネグネ好き勝手歩いていたのに、直進するだけでつくのかな。モタモタ足を動かす。お姉さんの言う通りに、駅はあった。お姉さんに、わんさか幸運が訪れますように。無事に『去年マリエンバートで』を見ることが出来た。上映中、道に迷っている時と同じ様な気持ちになった。今度は四次元の迷宮だった。

— 山下萌


明けましておめでとうございます

2020/01/01

日頃より、新文芸坐をご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。

2020年も変わらず皆様にとって新たな感動や発見、出会いに満ちた場所でありたいと願っております。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新文芸坐

矢田庸一郎 関口芳雄
梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔
柳原弘 小澤麻梨子 山下萌 濱本栄紀 泉未来
藤井叶衣 新井暁介 笠原伊織 小池桔平 平山晋也 矢内さくら
松田恵理加 星野依子 西川由里子 多田優香 鹿取晋哉

— スタッフ一同


贅沢すぎる映画納め

2019/12/30

年末に、久しぶりにシネマ・コンサートに行ってきました。大ホールで映画を上映して、音楽は全て生演奏というアレです。今回観に行った作品は、小中学生のときにどハマりしたファンタジーシリーズのうちの1編。

チケット代は1万円程度。洋画邦画、新作旧作問わず様々なシネマ・コンサートがあるようで、懐かしの名作を大スクリーン・生演奏で楽しめるなら、多少高くてもついつい買ってしまうものです。

シネマ・コンサートは笑うのも、拍手するのも、悪役にブーイングもOKとの指南があったので、上映中はタイトルが出たら拍手、主人公登場で拍手、オーケストラが一曲演奏したら拍手・・・映画を観て、演奏も聞いて、拍手もして、なかなか忙しいのです。生演奏だと、「ここにこんな音が入っていたの!?」など、新たな発見がたくさんあります。そしてメインテーマが演奏された時の高揚感たるや! 映画に集中しすぎて生演奏であることを忘れる瞬間もありますが、それだけオケの演奏が正確で、技術が高いのでしょう。

エンドロールでやっと演奏に集中できるようになります。そこでも拍手は起こり、作曲家の名前でひときわ大きな拍手。「作曲家の才能がなければ、シネマ・コンサートは実現し得ません!」という開演前の指揮者の言葉を、観客全員が噛みしめた瞬間でした。

その日の帰宅後、久しぶりにサントラCDを聴きました。おそらく、一週間は聴き続けるでしょうし、気が付けば口ずさんでいる状態が続きそうです。15年前に初めてこの映画を観たときのように。

— 泉未来


偉業の傍らで

2019/11/30

「よく見ていられるな」――エル・キャピタンをフリーソロで完登するという前人未踏の挑戦の最中に、撮影クルーのひとりが同僚たちに呟いた一言だ。映画『フリーソロ』のワンシーンでもある。

〈エル・キャピタン〉とはアメリカのカリフォルニア州、ヨセミテ国立公園にある約1000メートルの断崖絶壁だ。そして〈フリーソロ〉とは一切の確保用具を用いず、自らの身体のみで登攀するクライミングの一種だ。つまり、エル・キャピタンのフリーソロで起こるミスは死に直結するといっても過言ではない。その映像の凄まじさは筆舌に尽くし難いもので、是非、見ることで圧倒されてほしい。

しかし、本作においてその圧倒的な映像が映し出されるのは終盤の20分ほどのみである。それまでの映像は、挑戦者アレックス・オノルドに積極的あるいは消極的に協力する者たちの描写に割かれる。クライマックスの20分でさえも、カメラマンたちの仕事やその緊張溢れる言動が映される。彼らが頻りに問題にするのは、関わることで与えるアレックスへの影響だ。彼らの仕事が、言動がアレックスを死に誘うかもしれない。つまり本作は、撮ること、ひいては関わることの暴力性への恐怖に焦点が当てられたドキュメンタリー映画なのだ。

しかし、同時に美しくもある。関係者はそれぞれの仕方でアレックスを尊重し、挑戦者のアレックスさえも彼らに配慮する。もっとも見るべきはクライマックス、最後の20分ではないのかもしれない。むしろ最後の20分など見てはいけないのかもしれない。壮大な自然、超人的な技術、敬意に満ちた繋がりを見た僕は何者なのだろうか。単なる出歯亀に過ぎないのでは? ほんの少し前に書いた言葉を撤回するべきだろうか。「是非、見ることで圧倒されてほしい」? 果たして冒頭の一言は、彼の同僚たちにのみ投げかけられた言葉なのだろうか。

— 新井暁介


理想の休暇

2019/10/18 — 第368号

仕事の合間のはぎれのような時間にふっと頭に浮かぶ益体もないことがいくつかあって、そのうちの一つが「理想の休暇の過ごし方」だ。一か月くらいは欲しい。大きくも小さくもない、自然豊かな街に行き、浮世の憂さを晴らして心ゆくまでゆっくりのんびりするのだ。■外国の映画を観ていると「休むこと」がうまいな、と思う。『君の名前で僕を呼んで』でも『世界の涯ての鼓動』でも、主人公たちは実にうまく「休んでいる」のだった。彼らは休暇に成果や効率を求めない。せっかく来たんだからあそこに行かなきゃ、あれを食べなきゃ、そういう「もとを取る」行為が全くない。■散歩や昼寝、軽い運動に、おしゃべりをしながらゆっくりと摂る食事。「何もしない」ことの贅沢さやゆったりと流れる時間が観ているこちらにも伝わってきて、羨ましさのあまり悶え死にしそうになる。■私は修業が足りないので、休みを取ってどこかへ行ってもついついもとを取りそうになるのだった。温泉地に行くのはいいとしても、三日間で十数回の入浴はむしろ体に毒だろう。一日の入浴は三回以下にしましょうね、とだいたいどの温泉に行っても書いてあるのに。あと土産店の試食コーナーに出ているお菓子や漬物を片っ端から食べるのもあまりよろしくない気がする。ジェームズ・マカヴォイもティモシー・シャラメも多分そんなことしない。「理想の休暇」への道のりは、長く険しい。

— 小澤麻梨子


《半券を集めて抽選プレゼントを当てよう》キャンペーン開催!

2019/09/24 — 第367号

日頃のご愛顧に感謝いたしまして、プレゼントをご用意しました。入場チケットの半券を3枚集めてご応募ください。半券の日付は、2019年10月1日~10月31日に限ります。ご応募された方には抽選券をお渡しいたします。

A賞(15名様) 半年間有効 ご招待券(通常興行のみ使用可)
B賞(30名様) 新文芸坐オリジナル ハンドタオル
C賞(100名様) 1か月間有効 HOTコーヒー無料券

以上の中から、抽選でプレゼントが当たります。ご応募は10月末日まで受付にて承ります。後日、ロビーに当選番号を掲出いたします。当選番号の抽選券を12/31(火)までに受付にお持ちください。プレゼント品と交換いたします。ご不明な点は劇場スタッフにお問い合わせください。

— スタッフ


For 京都アニメーション

2019/08/19 — 第366号

京都アニメーションの事件が発生して一ヶ月が経ちます。当館では4月のアニメスタイルオールナイトで京都アニメーション製作の『リズと青い鳥』を上映したばかりでした。高校時代は『らき☆すた』や『CLANNAD』、大学時代は『日常』や『氷菓』に夢中だったので、京アニ作品の上映が決まったときはいつにも増して嬉しかったのを覚えています。■新文芸坐に入って四年が経ち、多くの映画人たちの追悼特集を経験しました。誰かが亡くなるたび悲しみは尽きませんが、今回の事件については、悲しみにも怒りにも気持ちが定まらないまま一ヶ月が過ぎようとしています。■先日、京アニが手掛けたコメディ作品『フルメタル・パニック!ふもっふ』を見返しました。久しぶりだったのもありますが、あまりのおもしろさに腹を抱えて笑いました。そうして笑い転げながら、京アニのアニメがどうしようもなく好きであることを再認識でき、その気持ちが失われていないことに安心しました。■悲しいことは容赦なく襲ってくる。心が折れることも、疲れることもある。それでも、作品が好きな気持ちだけは絶対に失ってなるものか、と強く思うのです。

— 浜本栄紀


北野武アンコールに寄せて

2019/07/29 — 第365号

5月に行われたオールナイト【初期の北野武 35mmフィルムで堪能する不穏と暴力の刹那】はお陰様で満員御礼の完売でした。特に若い方に人気で、8/4(日)にはアンコールとして北野作品が昼の番組で組まれます。今回は『その男、凶暴につき』『キッズ・リターン』『HANA-BI』の三本立て。■ヤクザやチンピラを描きつつもその生態や心情を説明的に描くことはしない北野映画は、前提として若者も入門しやすいのかもしれません。その上「組織の中の個人」や「はみ出し者/アウトサイダー」や「法外での絆」というヤクザ映画的主題は、最近の『万引き家族』や『新聞記者』、この間の吉本騒動など最近の映画やニュースを見る限りでも、古いようでまだまだアクチュアルな主題が個別的には含まれているのだとわかります。■5月と8月の北野武番組の間に挟まれるように、7月には降旗康男監督の追悼特集が組まれ、高倉健らの出演したヤクザ映画もいくつか上映されました。とても名画座らしい偶然。毎日のように来ていただいている方にはミニ日本映画史講座のようなラインナップだったのかなと想像します。特集のトリを飾るのは高倉健と北野武(ビートたけし)が共演した『夜叉』(1985)。健さんが最後のヤクザ役(正確には元ヤクザ役)で、ビートたけしが初めてのヤクザ役で出演した作品で、この時にバトンが渡されたのかなと考えたくなります。『この男、凶暴につき』が公開されるのはこの4年後です。

— 笠原伊織


7/7より「キネマ旬報ベスト・テンからたどる昭和・戦後映画史」

2019/06/28 — 第364号

キネマ旬報は今年、創刊100年を迎えます。創刊は1919年(大正8年)7月11日。ウィキペディアで創刊号の表紙の写真が見られます。マーガリータ・フィッシャーの写真とともに、『私共は活動寫眞が並はずれて好きなのであります』という文章で始まる、「御あいさつ」と題された慎ましく可愛らしい文章が載っています。

日本で最も権威のある映画賞と言っても恐らく間違いはないキネマ旬報ベスト・テンですが、そのスタートはまだ無声映画時代の1924年。カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの世界三大映画祭は言うに及ばず、アメリカのアカデミー賞創設よりも3年古く、世界最古のクラスの映画賞と言われるゆえんです。

当館では7月7日より、昭和の戦後の日本映画ベスト・ワン作品から20作品を選び上映をします。上映作品は、史上最多の6本のベスト・ワン作品を世に出した小津安二郎監督作品からは『晩春』『麦秋』。25回のベスト・テン入り果たした黒澤明監督作品からは『生きる』『赤ひげ』。5回のベスト・ワン作品を出した今村昌平監督作品から『にっぽん昆虫記』『復讐するは我にあり』など。

7月9日は14時40分より、70年代よりベスト・テン選考委員を務められ「映画を見ればわかること」の連載でもお馴染みの川本三郎さんと、10代目の編集長を務められた植草信和さん、13代目の編集長だった関口裕子さんのお三方のトークショーも開催します。

— 矢田庸一郎


追悼 内田裕也

2019/05/24 — 第363号

「ロケンロール」「シェキナベイベー」の決め台詞で、いつもわたしたちをノックアウトしてくれた内田裕也さんがお亡くなりになられて、早いもので二か月が経ちます●当館では、6月7日より内田裕也さんの追悼上映会を開催させていただきます。実は昨年11月1日より、樹木希林さんの追悼上映会もやらせていただいたばかりでした。●かなり以前のことですが2001年、市川準監督特集を行った際、樹木希林さんにトークショーをしていただきました。また2005年の若松孝二監督特集の際には、内田裕也さんにもトークをしていただきました。市川準監督、若松孝二監督、そして樹木希林さん、内田裕也さん、みなさんが旅立たれてしまっているという時がくることなど、言うまでもないことですが、当時は想像だにしていませんでした。●奇しくも6月9日(ロックの日)に内田裕也さんのご本がキネマ旬報社より刊行になります。本来なら刊行記念上映会として、内田裕也さんの二回目のトークショーをしていただきたかったのですが、叶わぬ夢となってしまいました。●今回の上映会は内田裕也オフィスさんのご尽力で、崔洋一監督、滝田洋二郎監督、『水のないプール』などで共演をされたアーティストの未唯mieさん、ミュージシャンの近田春夫さん、作家のモブ・ノリオさんという多才なゲストをお招きしてトークショーを行います。また内田裕也さんの大変貴重で感動的な秘蔵映像も、トークショーの中で上映できることになりました。映画ファンの皆様、今一度、内田裕也さんの「ロケンロール魂」を胸に焼き付けてください。

— 矢田庸一郎


「しねまんすりい」リニューアル

2019/04/25 — 第362号

旧文芸坐時代に発行されていた「ぶんげいしねういーくりい」。その名を引き継ぎ2000年12月より新文芸坐「しねういーくりい」として発行がスタートし、2008年8月より現在の形の月刊「しねまんすりい」として発行を続けてまいりました本スケジュール表も今号で通巻362号を迎えました。皆さまの日頃のご愛読に感謝申し上げます。

新元号に変わった5月より「しねまんすりい」をリニューアルしました。これまで上映スケジュールは「しねまんすりい」、番組の詳細は個々の特集チラシをご参照いただいてきたかと思いますが、これを見開き6ページの新「まんすりい」に統合しました。昼の2本立てにオールナイト、レイトやモーニングに特別上映となかなか複雑な当館の上映スケジュールもこれでより把握し易くなったはず。新「まんすりい」をどうぞよろしくお願い致します。

— 後藤佑輔


「2018年 新文芸坐ベストテン」決定!

2019/03/31 — 第361号

当館のお客様に投票いただいた昨年のベストテンを発表します。ご参加いただいた方、ありがとうございました。今後の編成の参考にさせていただきます。

また、今月の特集上映<気になる日本映画達2018>では、日本映画部門ベストテンのうち4作品を上映します。(10位「若おかみ〜」はオールナイトで上映します)

どうぞスクリーンでお楽しみください。

【日本映画部門】

1位 万引き家族(251pt)
2位 カメラを止めるな!(244pt)
3位 寝ても覚めても(168pt)
4位 孤狼の血(165pt)
5位 菊とギロチン(132pt)
6位 止められるか、俺たちを(103pt)
7位 鈴木家の嘘(97pt)
8位 愛しのアイリーン(90pt)
8位 日日是好日(90pt)
10位 きみの鳥はうたえる(66pt)
10位 若おかみは小学生!(66pt)

【外国映画部門】

1位 スリー・ビルボード(280pt)
2位 ボヘミアン・ラプソディ(202pt)
3位 タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜(152pt)
4位 シェイプ・オブ・ウォーター(116pt)
5位 ウインド・リバー(111pt)
6位 ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(104pt)
7位 1987、ある闘いの真実(103pt)
8位 ミッション:インポッシブル/フォールアウト(97pt)
9位 判決、ふたつの希望(95pt)
10位 グレイテスト・ショーマン(93pt)

(有効投票数69票)

— スタッフ


明けましておめでとうございます

2019/01/01 — 第358号

日頃より、新文芸坐をご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。

2018年は、とても思い出深い上映会を行うことができました。森田芳光監督作品の全作上映会です。全28本を制作年順に上映し各作品の上映終了後に、森田芳光監督夫人で映画プロデューサー・三沢和子さんと、ライムスター宇多丸さんのトークショーを行うという、今までに例のない上映会となりました。ご来場いただいたお客様に加え、この企画の話を当館に持ってきてくださった三沢和子さんと、ぴあの皆様、そしてお忙しいスケジュールを調整していただき、毎回心躍る楽しいトークをしてくださった宇多丸さんに心よりお礼を申し上げます。

この上映会を通して、森田監督作品に多くの再発見をされた方は少なくなかっただろうと思います。また映画を作ること、そして映画を見ることとは、といった根源的な問いに胸を熱くした方もいたのではないでしょうか。映画ファンの様々な思いが混然一体となり、ある時、劇場の空間に不思議な一体感が出来上がったように思えました。

わたしたちは2019年も、映画が上映され、映画を見ていただくことが、かけがえのない人生の喜び、新鮮な驚きや発見に満ちた体験となるような場でありたいと心より願います。

新文芸坐

矢田庸一郎 関口芳雄
梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔
柳原弘 小澤麻梨子 山下萌 松田恵里加 青山貴昭 濱本栄紀
泉未来 星野依子 西川由里子 多田優香 平山晋也 藤井叶衣 新井暁介

— スタッフ一同


特集〈シネマ・カーテンコール2018〉、今年の特徴

2018/11/24 — 第357号

年末恒例の外国映画特集〈シネマ・カーテンコール〉を開催します。今年日本公開された話題作の中から、まだ当館で上映していない作品を取り上げています。それぞれの番組にはテーマを設けていますが、本紙にはスペースの都合で掲載できませんでした。特集チラシには記載がありますのでご参考にしていただければ幸いです。■今回の上映作品は、『英国総督 最後の家』『はじめてのおもてなし』『希望のかなた』『ウインド・リバー』『女は二度決断する』など多くの作品で、移民、難民、もしくは国内でも故郷を離れざるを得なかった人々が描かれています。番組編成の際には特に意識せず、単に良質な作品を求めていたので後から驚きました。もちろん移民・難民問題は昔からあります。しかし、毎年この特集を企画していますが、ここまで反映された年はなかったと思います。■映画は世相を反映します。「移民・難民」という言葉にすると、島国の日本で暮らしているとあまり現実感がないかもしれません。しかし増える外国人労働者の処遇問題が報道され、池袋界隈の外国人観光客も増え、私たちも日常生活の中で文化や価値感の異なる外国の方と接することは増えました。■先にあげた作品中『はじめてのおもてなし』には、受け入れに困惑しながらも「外国人」ではなく「人」として接する心の機微が描かれています。

— 花俟良王


途中入場のルール改変などについて

2018/09/27 — 第355号

新文芸坐では、映画が始まって30分過ぎると映画の途中入場をお断りしております。これを11月からは、15分過ぎたら入場できない、というルールに改めさせていただく方向で検討をしております。

わたしは、過去に途中入場したお客様が転んで出血し、病院にお連れした経験があります。つい最近も途中入場したお客様が転んでしまいました。その方の場合、座席に座っていたお客様にぶつかったので、幸いにも大怪我には至りませんでした。しかし映画を見ていたら突然ぶつかられた相手のお客様は、さぞかしびっくりされたことでしょう。

このように映画の上映中に場内に入ることは危険なことでもあります。

上映開始15分後の途中入場をお断りする目的は、お客様が転んで怪我をしたりする危険を考えた上での措置であることもご理解ください。映画は、場内が暗くなる前に席に着き、最初から楽しんでください。

10月中には、場内の至る所で破れかけている吸音壁を取り換える工事を行います。煙草の煙がロビーに漏れ出していて苦情の多かった喫煙室に関しては、6月の東京都の受動喫煙防止条例成立を期に様々な検討をいたしましたが、10月中に撤廃し完全禁煙といたします。

またオールナイトやシネマテークのような前売り券を当館とチケットぴあにて発売する興行では、前売り券のお客様の入場順は10番毎交互に均等にお呼びする方法に変更いたします。

どちらもお客様のお声を基に、お客様の安心、安全を基本に考え快適な映画鑑賞の環境つくりを目指した改変であります。不明な点などは、是非、スタッフまでお問い合わせください。

— 新文芸坐 支配人 矢田庸一郎


スタッフコラム

2020/08/01
寅さん再入門
2020/07/07
底抜けおじさん
2020/06/08
テレキネシスに呼び起こされた私のプロムパーティー
2020/03/31
忘れ得ぬ美しき戦慄と婆ばの顔
2020/02/27
『キャッツ』と猫と夢
2020/01/31
エビス・ラビリンス

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