制約があったほうが、いいものができる?

2004/12/01 — 第105号

「ドグマ95」なる10ヶ条の信条を基に映画を作る一派を、ご存知ですか? その信条は、かなりドグマチック(←独断的の意。by広辞苑)な内容で、一体これで面白い映画が撮れるのか!? と首を傾げたくなる。●以下がその主な内容。(1)撮影はロケーション。小道具などの持ち込みは不可。(2)背景にある音以外の音楽の使用は不可。(3)カメラは手持ち。(4)フィルターの使用などは不可。(5)殺人や爆破など故意的なアクションは不可。(6)時間的、地理的な乖離は不可。(7)ジャンル映画は不可、などなど。●「ドグマ95」公式ホームページによると、ドグマ映画は世界で今や35本に及ぶようだが、最近までわたしは1本も見ていなかった。が、この間ついにドグマ初体験をしてしまった。『幸せになるためのイタリア語講座』である。●デンマーク、コペンハーゲンのイタリア語講座に集まった6人の男女。仕事や恋愛、家族関係などに問題を抱え、うつむき加減に生きてきた彼ら。でも人々との出会いの中から、少しずつ勇気を取り戻し、そして恋をつかんでいく……。●なんて素敵な話でしょう! ドグマ映画とは思えない。本当に心温まる映画に仕上がっているのだ。例えば映画評論家・川口敦子さんは、この映画を評して「ウェルメイドなロマンティック・コメディ?」と書いているくらいだ。●一方で、センチメンタルに流されないところも、この映画の見所である。淡々としていながら、人物を温かい視線で見守っていくような描き方は、間違いなく「ドグマ95」の制約によって生まれたものだ。つまりここで、いいジャンル映画を撮りたいのなら「ドグマ95」を信奉すべし、という逆説が成立してくるように思えてくる。

— 矢田庸一郎