「モダニスト増村保造」

2005/01/16 — 第108号

傑作『巨人と玩具』は(当館で2月6日上映)、旧来の叙情的な日本映画に対しクールでスピーディー且つ、膨大な情報量を詰め込んだ演出で、キネ旬ベストテンにも選出された作品でしたが、興行的にはそれほど振るわず、「オレは十年早過ぎた」というのが増村の口癖だったそうです。実際、後年には常に彼の代表作の一本に数えられますし、戦後のモダニズムという言葉は、このダイナミックな映画にこそ似つかわしいように思います。

しかし、一般に彼の代表作に選ばれる他の作品は、むしろ若尾文子の主演作品に見られるような「情念たっぷり」型の題材の物が多いようです。前述の映画のイメージとは世界が異なるようですが、一貫しているのは「個」の存在とその主張です。難解なストーリーなど無い彼の映画は、見ている最中は強固な演出力も相まってその世界に入って行くことができます。しかし鑑賞後改めて思い返すと、登場人物の愚直ともいえる不自然なまでの一途さ、己の信念に基づく温度の高すぎる生き様、こういった印象ばかりが残り、それが異様にすら感じられることがあります。「イタリア留学でヨーロッパ的人間観を形成した」というのが、それらに対する回答の一つとしてありますが、果たしてそれだけでしょうか?

ひたすら己の発するベクトルに突き進む増村、このことをして彼を「モダニスト」と言わしめているのですが、その異様さには、それをはみ出す違う何かを感じずにはいられません。

— 梅原浩二