ATG時代と酷似している今の日本映画界

2005/10/16 — 第126号

昨年1年間の映画観客数は、21年ぶりに1億7千万人を突破したことが、ぴあ総合研究所の「エンタテイメント白書」で発表された。21年前の83(昭和58)年は、『南極物語』『E. T.』がヒットした年で、昨年は『ハウルの動く城』『ラストサムライ』のヒットと、シネコンの存在が動員に貢献していると白書に記されている。その観客の65%は、ハリウッドを中心にした洋画を観ている。邦画はアニメを含めて35%であるので、映画興行界は、完全に“洋高邦低”の時代である。◆シネコンは、動員状況に応じて人気作品の上映スクリーン数を増やしたり、上映期間を延長することができるため、より動員を増やす効果をあげている。シネコンのスクリーン数は、全体の60%以上を占めるに至り、その影響力は大きい。◆現在の日本映画は、大手映画会社に代わって、独立プロダクションが盛んに製作している。その独立プロ作品が、渋谷など都内の繁華街の映画館でロードショー上映されている状況は、60年代後半〜80年代に新宿文化、日劇文化で、ATG映画を上映していた頃と酷似しているように思う。◆ATG時代は、チャンスを得た若い才能が花開き、多くの監督がこの年代に最良の作品を世に送り出した(ATG特集を参照)。観客は、監督の名前で映画を選択するようにもなった。歴史は繰り返されて今、北野武、黒沢清、三池崇史監督などの映画は、監督名で作品をアピールしているし、一方で、『運命じゃない人』の内田けんじ監督のような若い才能も育ってきている。邦画に観客が集まり、動員で洋画を凌ぎ、“邦高洋低”の時代が来ることを期待したい。

— 永田稔