アメリカに渡ったアイリッシュたち

2005/11/01 — 第127号

アイルランド系アメリカ人は約4000万人いて、これは全米人口の18%にものぼります。ちなみにアイルランド本国の人口はたったの400万人。移民の方がはるかに多いのです。米国への移住の主な理由は貧困(19世紀ジャガイモ飢饉)で、映画では「タイタニック」「遥かなる大地へ」などでその様子が描かれています。◆では米国に渡ったアイリッシュたちの暮らしぶりはどうだったかというと、「アンジェラの灰」のように、相変わらずの貧しさです。米国はプロテスタントの国。多くがカトリックであるアイリッシュは社会的差別を受けて、就く職業も限られていたようです。アイリッシュといえば“警官”“消防士”そして“ボクサー”がそのステロタイプで、映画でも「静かなる男」「ギャング・オブ・ニューヨーク」「バックドラフト」と枚挙にいとまがありません。◆そこで「ミリオンダラー・ベイビー」です。舞台は米国ですが、こてこてのアイルランドの匂いがします。ゲール語(≒アイルランド語)、カトリック教会、緑のガウン……。ヒロインの名“マギー・フィッツジェラルド”にしても聞けばそれととわかる典型的なアイルランドの姓です(アイリッシュ系初の米大統領J・F・Kのミドルネーム)。もちろん、ハリー・キャラハンもアイルランド系刑事(映画が違う!)。◆アイルランドはバチカンに次ぐ敬虔なカトリック国といわれ、子沢山で家族のつながりが強いことでも知られています。そういう背景を知れば、主人公ふたりの置かれたそれぞれの孤独感への理解も違ってきます。またアイルランド本国は中絶を憲法で禁止するような国であるということを知っていれば、主人公のとった命の選択もより重く感じられるでしょう。◆アイルランド話、次回は「シンデレラマン」でお会いしましょう。

— 関口芳雄