力と品格

2006/10/01 — 第149号

技術の進歩により人間は「できること」が増えましたが、同時に「やってはいけないこと」も増えていることに私は注目します。ふたつは言い換えれば、能力と規制。力と品格といってもよいかもしれません。■人類は太古、自分のグループの幸福ために、他グループの人間の命や財産を力で奪っていました。「2001年 宇宙の旅」を思い出してください。動物の骨を棍棒として使うことにより、人類の先祖はより簡単に人を殺す手段=武器を手に入れました。よくいわれることですが、人間の科学技術は戦争のたびに進歩するようです。コンピュータの原型なった世界初の電子計算機は、大砲の弾道計算を目的に作られたものでした。こうして人類は「できること」をどんどん増やしていったのです。■その一方で、人間は道徳や法を使って、できることを規制してきました。それは殺人や破壊といった暴力的行為だけではありません。例えば、経済には健全な自由競争のために独占禁止法という規制があり、小さいところでは映画館での携帯電話の使用もマナー違反です。■能力と規制は、時代とともに変わりますので、今の価値観を以って過去の歴史を裁くのは間違いです。と同時に、今ならやってよいことも将来やってはいけない行為となる可能性があることにも心するべきです。例えば「値段のあるものを売買する自由」です。他国に対する経済制裁=売らない自由、自分の棺に入れて欲しいとゴッホの絵画を落札=買う自由……。■1946年、東京裁判で、人類は「平和に対する罪」に言及するまで進歩しました。戦争はできても、やってはだめだぞ、と。11/4(土)オールナイトは『東京裁判』一挙上映です。その後の60年間を知っている我々に自問したい。あれから人間は進歩したのでしょうか?

— 関口芳雄