正真正銘の巨匠・内田吐夢

2001/10/01 — 第29号

◆映画界最盛期には週替わり新作2本立て封切りという過密スケジュールに追われる各映画会社の中にあって、マイペースで製作できる巨匠監督たちがいた。その代表格は言わずと知れた、松竹の小津安二郎(1903〜1963、1927監督昇進)、東宝の黒澤明(1910〜1998、1943監督昇進)である。そして東映には内田吐夢(1898〜1970、1927監督昇進)がいた。◆特に、片岡千恵蔵主演の『大菩薩峠』(三部作)、中村綿之助(後の萬屋綿之介)主演の『宮本武蔵』(五部作)という連作物を一年一作のペースで製作・公開したのは、量産体制下の東映では破格の扱いである。◆その理由は、その重厚な演出ぶりを観れば一目瞭然。例えば『大菩薩峠・完結篇』のラストでは、嵐の日にロケしようと主張するスタッフに「オレは単なる川の濁流を撮りたいんじゃない、河に龍之介が呑まれる“芝居”を撮りたいんだ」と大掛かりなセットを組ませた大特撮を敢行した。◆私見ながら、『宮本武蔵・一乗寺の決斗』の武蔵(1人)対吉岡一門(総勢73人)の決闘の場面は、『仁義なき戦い』の抗争シーンもブッ跳びの、殺気みなぎる最高の立ち回りであり、遺作『真剣勝負』の武蔵対宍戸梅軒の対決は、『巨人の星』そこのけの心理戦が展開するガチンコ勝負。◆今回は、戦前の傑作『土』と、古巣の日活で撮った『自分の穴の中で』のシリアスドラマ、東映時代唯一の任侠映画『人生劇場・飛車角と吉良常』を合わせ12作を、10/28(日)から12/7(金)までモーニング&レイト上映致します。ぜひ、巨匠・内田吐夢こだわりの“演出”をご堪能下さい。

— 柳原弘