今年最初の感動は

2014/01/11 — 第295号

明けましておめでとうございます。今年も、盛りだくさんの感動を皆様にお届けできるよう頑張ります。そのためにも、まず自身がいっぱい感動を味わって、心豊かな一年にしたいと、初詣の神社で誓いました。

そんな新年になんとなく手に取った窪美澄さんの小説『ふがいない僕は空を見た』(新潮文庫刊)がとても面白く、今年まず最初の感動となりました。タナダユキ監督が映画化して繊細で小気味よい演出で好評を博し、田畑智子の大胆な演技も話題となったのでご存知の方も多いと思います。当館でも上映しました。原作の方も山本周五郎賞とR-18文学賞大賞をダブル受賞し、本屋大賞の2位に選ばれたことも効いてヒットしたそうです。とある評論家が「セックスする桐島」と評したという話を聞きましたが、まさにいい得て妙ですね。

映画の方も、とてもいい作品に仕上がっていましたが、やっぱり原作にはかなわないと思いました。これは映画化作品の宿命ですね。原作を読んでちょっと驚いたのは、それぞれの章が、主要な登場人物たちの一人称で語られていたこと。なんと言っても素晴らしいのは2番目の章、映画では田畑智子演じる“里美(あんず)”が語る章で、「絶頂って幸福の絶頂という意味なんだ、と私ははじめて理解しました。」と彼女が独白するところで、私は思わず泣きました!

この作品のもう一つの大きなテーマは「出産」です。著者の窪美澄さん自身が出産経験のある大人の女性のせいか、青春モノの青臭さがなく、人生への諦念と共感に包まれたまろやかな読後感が、いつまでも心に残る一作でした。そういうわけで「桐島」よりも「ふがいない僕」に、わたしは一票。

— 矢田庸一郎


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