昔のスタア 昔の映画

2016/10/26 — 第332号

11月、新文芸坐では生誕100年となる映画監督加藤泰の特集が行われる。■数多くの名優が起用された加藤泰映画の中でひときわ異彩を放つのは安藤昇だろう。戦後、暴力団安藤組を興した安藤昇は、短刀で斬られた左頬の傷痕などエピソードに事欠かない。ワイズ出版『映画俳優安藤昇』には、山田洋次監督の『男はつらいよ』が実は安藤昇が原案だったという話から、石井輝男監督の『網走番外地 吹雪の斗争』の現場が気に食わずに帰ってしまったという有名な話まで、数多くの逸話がまとめられている。■山田監督や石井監督にも遠慮しない話しぶりの安藤昇が、ほとんど唯一加藤泰についてだけは敬意を持って懐かしそうに語る。そんな加藤泰も映画撮影でのびっくりエピソードに事欠かない。『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』では、香港から参加したペギー・潘が帰国する日になっても手のクローズアップの撮影を続け、また代名詞である極端なロー・アングルのために現場では常にスコップを持った助監督が穴掘り要員として待機していたそうだ。■あまりに個性的な役者と、映画を作ることにこだわり抜く監督が生み出すこの豪放磊落なおもしろさを見ないなんてもったいない。見るほど知るほど常に驚きも発見もある昔のスタアと昔の映画は、それゆえに今もまだ新しい。

— 青山貴昭


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