エビス・ラビリンス

2020/01/31

秋刀魚のカレーを食べて恵比寿駅に向かう。20分歩いたところで立ち止まる。地図を見て駅からカレー屋に辿り着いたときは、10分もかからなかった。迷っている。これから映画を見る予定だが開映まで余裕がある。偶然行き着くかもしれないので、見覚えがある気がする道を行く。更に10分経つ。駅に近づく気配はない。スマートフォンの地図を開く。現在地が表示され即座に電源が落ちる。4年くらい使っているので寿命が近づいている。コンビニでは古い機種の充電器を扱っていないし、見渡す限り電気屋はない。歩き出すしかなかった。地図を一瞬見た感じではこっちだった気がする。自分を疑いながらも進む。映画に間に合わなかったらどうしようという不安が生まれる。時計を持っていないので時間が確認出来ない。気楽に迷っていた時間は終わってしまった。誰かに道を聞くしかない。シャイなので、全くの他人には話しかけられない。コンビニで水を買い店員のお姉さんに尋ねることにした。お姉さんは「ずっと、まっすぐまっすぐ。10分くらいかなあ」と教えてくれた。今までグネグネ好き勝手歩いていたのに、直進するだけでつくのかな。モタモタ足を動かす。お姉さんの言う通りに、駅はあった。お姉さんに、わんさか幸運が訪れますように。無事に『去年マリエンバートで』を見ることが出来た。上映中、道に迷っている時と同じ様な気持ちになった。今度は四次元の迷宮だった。

— 山下萌


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