真夜中のラジオを聴いていた頃

2002/10/16 — 第54号

私が中高生の頃、ラジオの深夜放送というのが流行っていた。私はもっぱらTBS「パック・イン・ミュージック」。声優(俳優)の野沢那智さんと白石冬美さんの「ナッチャコ・パック」は欠かさず聴いていた。オトナに批判的なガキだった私が、唯一素直に受け入れられるオトナの意見というのが野沢さんのそれだった。◆野沢さんは、主催する劇団薔薇座の公演があると盛んに番組で宣伝していたのを憶えている。薔薇座の旗揚げ公演は「アップル・トゥリー」という3話オムニバスのミュージカルで、劇場はオープン間もない文芸坐ル・ピリエ! 田舎の高校生だった私はこの舞台は観られなかったのだが、野沢さんの連呼する「文芸坐」というまだ見ぬ劇場の名は頭に残った。◆「パック…」が終了して数年後、私は上京して3年が過ぎ、大学を中退して仕事を探していた。映画が好きだったので映画館で働きたかった。そして、ぴあを片手に電話したのが文芸坐だったのである。野沢さんの連呼のせいに違いない。◆もうひとり、忘れられないパーソナリティがいる。「ミドリブタ・パック」のTBSアナウンサー林美雄さん。業界随一の美声の持ち主だった。日本映画や音楽などで、注目されていないモノに光を当てるというのが林さんのテーマだったが、そういう姿勢に影響を受けた若者も多いだろう。その林美雄さんは今年の7月13日、ガンでなくなられた。享年58歳。11/19(火)上映の「太陽を盗んだ男」にTVアナウンサー役で出演している。スクリーンの中のTV画面にご注目、そして合掌。

— 関口芳雄