まんすりいコラム

傑作「アジョシ」

2012/02/01 — 第248号

「新作の上映が前より少なくなった」というお客様の不満の声を耳にいたします。●当館は、日本映画の旧作二本立て上映と洋邦の新作上映を交互に行っていますが、例えば新作に関していえば1週間二本立て上映の早稲田松竹よりは上映本数は少なく、2週間二本立て上映のギンレイホールとは、ほぼ同じぐらいです。しかし上映日数は、というと、当館の方が圧倒的に少ないのが現状です。●原因は、当館が2000年に再オープンした際に、以前の洋画専門の文芸坐と邦画専門の文芸地下の2館のスタイルを、一館で両方とも継承してしまったことによります。それでも以前は、多い時は全体の日数の約40%弱だった新作上映が、一時期、20%強ぐらいまで減ったことがあります。今は、コンスタントに35%ぐらいは新作上映を行いたいと考えています。●昔の映画は本当に、その内容、技術とも素晴らしいものがあります。映画の伝統が徐々に忘れ去られようとしている昨今、日本映画史上に輝く名作たちを上映することの意義は少なくありません。一方で、今という時代や世界の息吹を湛えた新作たちを見る感動も、映画ファンにはたまらないものです。●そういった点では、2月18日からの2011年のベスト1・2と言っても過言ではない「ゴーストライター」「アジョシ」がおススメです。ポランスキー5年ぶりの新作でキネ旬1位の「ゴーストライター」、本当にいぶし銀のごとく上手くて憎い映画。でも私は「アジョシ」の方がもっと好き。戦慄と緊張のストーリー展開に目が釘付け。ウォンビンの華麗なるアクション・シーンの数々に心を奪われました。今こそ、私は世界の映画界に向けて叫びたい。「真のアクション映画の復権を!」 ちょっと興奮してしまいました。「アジョシ」お見逃しなく。

— 矢田庸一郎


シー・ユー・アゲイン 雰囲気

2012/01/16 — 第247号

“雰囲気”と書いて、“ふんいき”と読みます。これを“ふいんき”と読む若者が増えています。私の娘の担任の先生(公立の小学校)も、“ふいんき”と読んだそうです。最近のケータイやPCの日本語変換プログラムでは、“ふいんき”でも変換できるものもあります。こういう迎合はまったくいただけませんね。■時代の“雰囲気”を切り取ってスクリーンに映し出すのが誰よりも得意といわれた映画監督がいました。昨年12月に亡くなった森田芳光監督です。商業映画デビュー作「の・ようなもの」を観たときは衝撃的でした。こんな映画を撮ってもいいんだ! と。そしてエンドロールの最後まで味わって席を立ったときの何ともいえない感じは、他の監督では味わえない独特なものでした。エンドロールで流れる曲は「シー・ユー・アゲイン雰囲気」といって、作曲は浜田金吾、作詞はタリモ。タリモとはつまり才人・森田芳光監督自身であります。そして尾藤イサオの歌声がまた泣けるのですよ。■当館ではトークショーをよく開催しますが、お呼びしていなかったのに来てくれたのが森田監督でした。旧文芸坐時代にオールナイトで森田特集を上映したところ、池袋で飲んでいたという森田監督が突然事務所に現われたのです。ぴあを読んで知ったとのこと。自分の特集上映はうれしいということで、ほろ酔いの監督は舞台挨拶までしてくれました。一緒に飲んでいたという桃井かおりさんと林真理子さんまで一緒に舞台に上がり、このサービスに客席は大盛り上がり。上機嫌な監督の姿を見て、映画館で働く身として自分も嬉しくなってきたのを憶えています……。森田監督、いつか新文芸坐のスクリーンで、シー・ユー・アゲイン。

— 関口芳雄


謹んで新年のご挨拶を申し上げます

2012/01/01 — 第246号

旧年中は、新文芸坐をご愛顧いただきまして、心よりお礼を申し上げます。

本年も“感動はスクリーンから”をモットーにして、映画ファンの皆様に歓んでいただけるような映画館を目指して頑張っていきたいと思います。

本年も新文芸坐をかわらずご愛顧いただきますよう、お願い申し上げます。

2012年1月1日

新文芸坐
矢田庸一郎 関口芳雄 永田稔
梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔 菊地壮馬 稲泉広平 柳原弘
佐野久仁子 釘宮あかね 大内奈々子 小澤麻梨子

— スタッフ一同


惜別!! 立川談志逝く

2011/12/16 — 第245号

「喪中につき年末年始の挨拶を失礼します」のハガキが届く時期になり、今年は多いと思っていたら、大トリで談志の訃報が飛び込んできました。談志の死は、落語界、芸能界の至宝を失ったばかりでなく、社会にとってもかけがいのない財産を失いました。■談志は、芸談、社会批判、政治評論、映画評など本気か洒落か、どちらとも判断しかねる了見に、談志ファンやアンチ談志にも注目される存在でした。談志は能弁で、論法鋭く粋に、簡潔明瞭に、時には過激な言葉で本質の核心をつきます。談志が同じ了見であると認めていたのが、ツッコミの鋭い高田文夫、北野武、爆笑問題太田光たちです。■天才落語家、革命児、毒舌家、異端児、風雲児と形容される談志ですが、高田文夫は、「偽悪者で典型的な江戸の人」とコメントしています。全く同感です。私が、心臓を患って入院していた昨年12月のことですが、出版されたばかりの談志著、聞き手吉川潮のコンビによる『人生、成り行き —談志一代記—』(新潮文庫)に、立川談志のサインと「心臓なんて なくてすみゃ ないほうがいい」とコメント入りの本を見舞いに届けてくれました。天下の談志が、自身もがんを患っているのに、私ごときにまで気を遣う細やかな優しい心に感激いたしました。■志ん生、円生、文楽から志ん朝、円楽、柳朝へと繋がってきた戦後からの落語史も、談志の死とともに昭和時代の終焉を迎えたことになりました。まさに「談志の前に談志なし、談志の後に談志なし」です。合掌。■この稿が、今年のトリになりますが、3.11の大震災と談志と俳優・原田芳雄の逝去により、忘れることのできない年になりました。この一年、新文芸坐をご愛顧くださり感謝申し上げます。来年も宜しくお願い申し上げます。良い新年をお迎えください。

— 永田稔


今年の「山路ふみ子映画賞」決まる!

2011/12/01 — 第244号

毎年11月末に発表される「山路ふみ子映画賞」は、前年11月〜当年10月までに公開された映画を対象に、優れた映画や個人の業績に対して表彰しています。「山路ふみ子映画賞」は、数多い日本映画賞のトップを切るものとして注目を集めていると同時に、文化賞、福祉賞、功労賞などユニークな特質を示すものとして、存在価値を高めています。■しかし、山路ふみ子が戦前に100本以上の映画に主演する映画スターで、化粧品、清涼飲料、自動車のCMモデルとして、超売れっ子の女優であったことや、戦後、料亭経営者として成功したことなど、山路ふみ子の人となり、考え方、生き方などは知られていないのが実情です。■今年の「第35回山路ふみ子映画賞」は、★「山路ふみ子映画賞」は新藤兼人監督。99歳にして力強い感動的な反戦映画『一枚のハガキ』における監督、脚本の成果に対して★「女優賞」は永作博美さん。映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』における迫真的な演技に対して★「新人女優賞」は井上真央さん。映画『八日目の蝉』における優れた演技力に対して★『映画功労賞』は浅丘ルリ子さん。日活黄金時代から今日まで第一線で活躍する功績に対して★「文化賞」は砂田麻美さん。ドキュメンタリー監督作品『エンディングノート』で人間味溢れる独自の文化的評価を加えたことに対して★「福祉賞」は塩谷俊さん。監督作品『ふたたびswing me again』でジャズとハンセン病を結びつけた、福祉問題映画への取り組みに対して■来年、山路ふみ子の生誕100年目を迎えるに当たり、生前に著していた自伝『命あるかぎり贈りたい』を文化財団で復刊いたしました。50冊贈呈を受けましたので、興味・関心のある方は、友の会会員の方に限り先着で差し上げます。受付でお尋ねください。

— 永田稔


アクション映画はアクションしているか

2011/11/16 — 第243号

最近、2歳の娘の教育と称して一緒に『雨に唄えば』をよく観る。今のうちからあの問答無用の名作を体に染み込ませておくのだ。物事の判断基準は『雨に唄えば』。それでいいじゃないか、と妻に問うても梨のつぶて、大概は私一人で画面を見ている。◆しかしそんな我が家の女性陣も、ドナルド・オコナーが一人踊り転げる「笑わせろ(Make ‘Em Laugh)」や、ジーン・ケリーとオコナーが息の合った超絶タップダンスで魅せる「モーゼ(Moses)」など激しい踊りには感心している。雨に唄うあのシーンではなく……。まあいい。映画教育の第一段階としては上出来としておこう。アクション(活動)こそが映画の根源なのだから。◆今月23日(水)から始まる<躍動の新作アジア映画特集 サスペンス&アクション篇>で上映する『イップ・マン』のドニー・イェンを見たとき、いかに自分が“アクション”に鈍感になっていたかを思い知らされた。最近は爆発の炎の中で銃を放つことや、車を衝突・大破させることが“アクション映画”であると錯覚していた節がある。日本での知名度の低さがもどかしい香港映画界の至宝ドニー・イェン(『孫文の義士団』にも出演)が、敬愛するブルース・リーの師匠で詠春拳の達人イップ・マンを演じる。武術を基礎から学び修練を積んだ彼の動きは力強くも軽やかで、美しい。◆笑顔で踊るジーン・ケリーやドナルド・オコナーから目が離せないように、“本物”にしか出せない躍動する肉体の説得力には誰もがねじ伏せられることだろう。ぜひ大スクリーンで共有していただきたい。

— 花俟良王


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