まんすりいコラム

アクション映画はアクションしているか

2011/11/16 — 第243号

最近、2歳の娘の教育と称して一緒に『雨に唄えば』をよく観る。今のうちからあの問答無用の名作を体に染み込ませておくのだ。物事の判断基準は『雨に唄えば』。それでいいじゃないか、と妻に問うても梨のつぶて、大概は私一人で画面を見ている。◆しかしそんな我が家の女性陣も、ドナルド・オコナーが一人踊り転げる「笑わせろ(Make ‘Em Laugh)」や、ジーン・ケリーとオコナーが息の合った超絶タップダンスで魅せる「モーゼ(Moses)」など激しい踊りには感心している。雨に唄うあのシーンではなく……。まあいい。映画教育の第一段階としては上出来としておこう。アクション(活動)こそが映画の根源なのだから。◆今月23日(水)から始まる<躍動の新作アジア映画特集 サスペンス&アクション篇>で上映する『イップ・マン』のドニー・イェンを見たとき、いかに自分が“アクション”に鈍感になっていたかを思い知らされた。最近は爆発の炎の中で銃を放つことや、車を衝突・大破させることが“アクション映画”であると錯覚していた節がある。日本での知名度の低さがもどかしい香港映画界の至宝ドニー・イェン(『孫文の義士団』にも出演)が、敬愛するブルース・リーの師匠で詠春拳の達人イップ・マンを演じる。武術を基礎から学び修練を積んだ彼の動きは力強くも軽やかで、美しい。◆笑顔で踊るジーン・ケリーやドナルド・オコナーから目が離せないように、“本物”にしか出せない躍動する肉体の説得力には誰もがねじ伏せられることだろう。ぜひ大スクリーンで共有していただきたい。

— 花俟良王


2011 レジャー白書から

2011/11/01 — 第242号

我が国の余暇の現状と今後の方向性を、2010年の需給両サイドの視点からの調査、統計をまとめたものが「2011 レジャー白書」である。発行した日本生産本部は、内閣府行政庁所轄の公益財団法人で、レジャー関係だけでなく全企業を対象に調査、情報収集を行ない、統計にする機関である。■国民の余暇の過ごし方のベスト5は、(1)ドライブ (2)国内観光旅行 (3)外食(日常的なものを除く) (4)映画(TVを除く) (5)ミュージアム(動物園、植物園、水族館、博物館、美術館)で、(1)〜(4)位までは前年と変わらないが、ミュージアムが“はやぶさ”の宇宙からの帰還で、ちょっとした科学ブームが起きて順位を上げたと報告されている。(1)位のドライブは、高速道路料金値下げの影響で前年から連続で首位である。■国内旅行、外食に行くなどは、毎年変わらない人気の余暇の過ごし方である。映画については、興行収入が年々史上最高の記録を更新中であり、“3D映画元年”と言われて技術革新も進んでいるので、エンタテイメント系産業は今後も堅調に推移するとみられている。■社会環境によって、余裕、ゆとり感が変わってくるので、余暇の過ごし方も変わってくる。今年は東日本大震災により、レジャー産業に巨大な衝撃を与えたり、消費者心理にも消費自粛が起こったり、節電で余暇の過ごし方に変化があると思われる。■また、携帯電話の技術革新が急速で、キーボードでなく液晶のタッチパネルを指先で触れて、パソコン並の機能を持つスマートフォン(多機能携帯電話)が主流になった。最近発売されたiPadが普及することにより、通話だけでなく、ゲーム、動画、書籍、新聞、音楽など様々な情報が楽しめるので、今年はレジャー産業も大きく変革する元年となるような予感がする。映画はどのように変化するのだろう。

— 永田稔


新文芸坐落語会 二周年!!

2011/10/16 — 第241号

■おかげさまで新文芸坐落語会も二周年を迎えました。「新文芸坐落語会二周年記念 看板と若手たち」と題しまして、第一弾・立川志の輔さん、第二弾・柳家小満さん、そして11月の第三弾は立川談春さんにご出演いただきます。更に12月には毎年恒例となりました「高田文夫プロデュース 年忘れ!落語会うわさの真相2011」今年はどんなうわさが飛び出すのか、今から楽しみです。(チケット絶賛発売中!)■旧文芸坐ル・ピリエ時代は、ル・ピリエで行なわれる落語会(応用落語、快楽亭ブラック独演会など)をスタッフとして、照明や音響をやりながら聞くことができました。それまで落語をほとんど聞いたことがなかったのですが、一度聞き始めると面白くて文芸坐以外の落語会にも足を運ぶようになりました。でもその後ぱったりと落語を聞く機会がなくなっていたのですが、新文芸坐落語会が始まって以来、またまた落語熱が再燃!という感じです。■9月の池袋演芸場の中席・夜の部では最近お気に入りの柳亭市馬さんが主任を務めていたので、思わず3日も通ってしまいました。なんとそのうち1日は昼の部から夜の部までぶっ通しで。昼の部の主任は三遊亭白鳥さんの三題噺、その日のお題は「チャン・グンソク」と「傷心」ともうひとつ(スミマセン忘れてしまいました)、でも見事に白鳥ワールドが炸裂していました。■そして柳亭市馬ファンになったきっかけはとういうと「市馬・菊之丞二人会」で聞いた市馬さんの「淀五郎」です。声といい、しぐさといい、すっかりその世界に引き込まれてしまいました。この落語熱はまだまだしばらく続きそうです。

— 佐野久仁子


戦後技術的初物映画たち

2011/10/01 — 第240号

日本初のカラー劇映画と言えば『カルメン故郷に帰る』(1951松竹)が有名でお馴染みですが、他にも初物をいくつか。日本初のカラータイトル映画『11人の女学生』(46東宝映画)、第1回フジカラーフィルム使用短編映画『胃癌の手術』(47武田薬品、名古屋医大)、日本初のパートカラー劇映画『新妻会議』(49東横映画)、日本初のカラーニュース『天然色フィルムへの期待』(50日本映画社)、立体映画トービジョン作品『飛び出した日曜日』(53東宝)、第1回さくら天然色フィルム/コニカラーシステム使用劇映画『日輪』(53東映初のカラー映画)、日本初のイーストマンカラー劇映画・大映初のカラー映画『地獄門』(53)そのほか「カラー」「ワイド」「立体」「音響」「香り」「体感」等の各技術の違いで列記すると初物は沢山あります。●大抵の場合技術とは発表された時点で完成されたものは少なく、安定し普及するまで試行錯誤の過程があります。また普及せずに廃れていったもののほうが多いのも世の常です。上記以外、東宝(53)新東宝(54)日活(55)とカラー作品は50年代半ばまでに各社出揃いますが、コストアップ等ですぐには普及には至りませんし、作品内容などでも積極的に白黒を選択する場合があり、大手でも60年代半ば過ぎまでカラーと白黒は共存していきます。また早くも53年に東宝が戦前から開発していた自前の技術の3D映画(10分足らずの短編)を始めますが、その後現れては消える立体映画ブームの先陣を切っただけで、技術的な改革の主流はワイド画面(スコープサイズ)へと移ります。●「3D映画の普及」というのが最近のトピックですが、「如何にもこなれていない感じ」が初々しいといったところでしょうか。

— 梅原浩二


キネ旬のレビューコーナーが濃い!

2011/09/16 — 第239号

「キネマ旬報」9月上旬号の記事で、スピルバーグが監督ではなくプロデュースに回った時に、監督を担当する後輩に観ておくべき映画を教えるとあり、今まで薦めた約200本の作品が「スピルバーグのリスト」(←うまい)として羅列されていました。これがびっくりするくらい意外性のない王道であり、スピルバーグらしくて微笑ましかったです。◆ところでキネ旬が数ヶ月前にリニューアルしたことをご存知ですか? 全体のレイアウトがすっきりして、若々しい印象になりました。特筆すべきは今回のリニューアルの目玉と思われるレビュー(星取り)コーナー。レビュー自体は珍しくないですが今回キネ旬がとった方法は、毎号(月2回発行)24本の新作を各作品3人の評論家によって計72本(!)のレビューを掲載させるというもの。◆単純に考えて月に48作品・144本のレビュー。超話題作から低予算のドキュメンタリーまで幅広い作品が挙がっていますが、これはかなりの労力を要すると思われます。皆さんに紹介するのが遅れたのは、多分取り上げる本数が次第に減っていくだろうと思っていたからです(失礼)。◆毎月こんなに多くの映画が公開されているという驚きもさることながら、個人的には、記名の責任のもと「星取り」というシンプルな評価システムで多くの作品が論じられることが嬉しいのです。星取りという評価形態に賛同しない評論家も多いでしょうが、限られた予算で限られた作品しか観られない私たち観客にとっては非常にありがたい指針(のひとつ)です。劇場鑑賞派の減少を食い止めるというよりも、混沌とする映画界を再び盛り上げていきたいという意思表明にも感じられ、感銘を受けました。◆なお、独自の批評精神と映画愛に溢れる「映画芸術」「映画秘宝」も受付で大絶賛販売中なのは言うまでもありません。

— 花俟良王


正義 < 母の愛

2011/09/01 — 第238号

作家・海音寺潮五郎は、“人は自分に無いものを理解することはできない”という様な意味のことを書いています。なるほどと思いました。他人を信じることができない人は、人が人を信じる物語を読んだとしても理解はできないでしょう。損得勘定だけで物事を判断する人に、善意で行動すべきだと説いても徒労に終わるだけでしょう。また、人は正義だけを行なうべきだと考える人には、それが不正であれば他者にわずかな情けをもかけないかも知れません。■では自分はどうかというと、父親というものを知らずに育ったのでいわゆる“父もの”がまったくダメなのです。例えばエリア・カザンの「エデンの東」。初めて観たときは、あまりに何も感じないので自分の感受性に問題でもあるのかと思いました。いかに名作でも、どんなに多くの人に好かれている作品だとしても、私には父の愛に飢えたジェームズ・ディーンの気持ちを理解する素地がまったくないのでした。■逆に“母もの”には昔から滅法弱い。加えて、自分が父親になった今は子に対する親の思いの理解も若い頃とは違っています。そんな私のストライクゾーンど真ん中にきた映画が、9/4(日)〜8(木)に当館で上映する『八日目の蝉』です。そう長くは続かないであろうわが子との時間。その短い間だけでも、この世のすべての不幸からわが子を少しでも遠ざけていたい。どんな些細な心配も、わが子にはかけさせたくない。そういう思いが、切実に、本当に切実に伝わってくるのです。ただし、この物語の主人公の行動は正義かと問われれば、否です。正義より母の愛。これでよろしい! 前述の海音寺潮五郎の解釈でいえば、私が持っている正義の量は少ないようです。

— 関口芳雄


まんすりいコラム

2019/05/24
追悼 内田裕也
2019/04/25
「しねまんすりい」リニューアル
2019/03/31
「2018年 新文芸坐ベストテン」決定!
2019/01/01
明けましておめでとうございます
2018/11/24
特集〈シネマ・カーテンコール2018〉、今年の特徴
2018/09/27
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