まんすりいコラム

オールナイト番組のようですが昼番組です

2011/05/16 — 第231号

お客様が1本だけ映画を観てお帰りになった。2本立てで上映しているとはいえ、これ自体は特に珍しいことではない。ただそのお客様の言葉が印象的だった。「白黒はつまらないから……」という言葉が。主観の話なので私が云々言うことではないが、名画座で働く者としては取り付く島がなく、辛い言葉だった。■だいぶ前にここで「好きな映画ジャンルはホラーです」と書いて軽くひんしゅくをかったのだが、今もその傾向は変わらない。往年の名匠たちがお決まりのプログラムピクチャーで腕を競ったように、現代のジャンル映画の作り手たちも、決められた枠の中でいかに個性を発揮するか頭を悩ませている。■6/9(木)から、今まで高峰秀子、成瀬巳喜男、原節子と続いた文芸・名画路線を強引に断ち切り<荒唐無稽映画祭>と題した小特集を行う。70年代B級アクションの魂を受け継いでR.ロドリゲスらが映画少年に戻って作った『マチェーテ』、ヒーローものの応用編として笑いと共に世界中の血をたぎらせた『キック・アス』、吸血鬼映画と切ない初恋を絡めた美しき『ぼくのエリ 200歳の少女』、そして究極の定型"ゾンビ映画"を溢れる映画愛で痛快活劇とした『ゾンビランド』(←キネ旬レヴュー全員満点!)という変化球だらけの4作品。■ジャンルに左右されず、"映画"としてご覧いただければきっと満足していただけるはず。そしてこのような映画を愛することも、紛れもない新文芸坐の一面です。冒頭のお客様、こんなのはいかがでしょう?

— 花俟良王


危機管理に落語をお奨めします?

2011/05/01 — 第230号

東日本大震災で被災した皆様に心よりお見舞申し上げます。

今まで経験したことのない大きな揺れに吃驚しました。当日の新文芸坐は、休憩時間中でしたので、お客様はパニックにならず、スタッフの公園に避難する誘導に従い、冷静に行動していただきましたので全員無事でした。その後の発生した津波の威力をTVで見た時に、天災の恐ろしさを改めて知らされました。◆東京電力の福島第一原子力発電所で発生した放射能漏洩事故は、世界中を震撼させたチェルノブイリ事故と同じの「レベル7」という最悪の状況になりました。危機管理の拙さが引き起こした人災です。政府、東電の担当者が言う「想定外のことで」という言葉は、想定外の出来事に対するシミュレーションを描いていなかったと、言い訳をしているのです。想定外のことを考えるのが、危機管理だと思うのですが……。◆新文芸坐では、月1回の落語会を行なっています。切っ掛けは、ドキュメンタリー映画「小三治」を上映するので、小三治師匠に舞台挨拶を打診したら、「落語だったら出演するよ」との返事でしたので、"瓢箪から駒"で小三治師匠を第一回目として、落語会を始めました。落語は、落語家が話す情景を、聞いている観客がイメージすることで、初めて成り立つ芸能ですので、危機管理のシミュレーションを養うことに役に立つこと請負です。◆これからのラインアップは、5/11柳家さん喬、瀧川鯉昇、6/22春風亭昇太、7/20柳家喬太郎、8/23人間国宝・一龍斎貞水、五街道雲助、9/29立川志の輔と、人気・実力を兼ね備えた落語家たちが続々と登場します。是非、ご覧下さい。

— 永田稔


デジタルリマスター

2011/04/16 — 第229号

デジタルリマスター版を謳った映画の上映(またはソフトの販売)が色々と出ています。この言葉、何かとても有難味があるような使われ方がなされていますが、単に新しくHDでテレシネし、多少の調整をしただけのDVDやブルーレイのソフトでも「デジタルリマスター」だと言えますし、「羅生門 デジタル完全版」のように35ミリのフィルムに戻せる解像度で取り込み、1コマずつキズを消し、揺れを直し、コントラストや階調を修正し、さらに音声もノイズの軽減や周波数の調整をする等々・・・実に手間のかかる作業を施したものも同様に「デジタルリマスター」と言います。●確かに後者だと有難味があるのですが、「羅生門」の場合12万6000以上のコマ数を2種類のプリントからそれぞれ良い方を選び上記のような作業を行ない、制作費はなんと6000万円にも達しているそうです。リマスターといっても作業がそれぞれ違い、簡易なものもあれば上記の35ミリのフィルムに戻す前提での作業のように非常にコストがかかるものもあるのです。つまり「デジタルリマスター」を謳ったソフトが存在してもそれが即35ミリの上映用プリントがあるということにはならないのです。●ですので現在邦画では後者の意味でのリマスター版は数本しか有りませんし、基本的にこの作業はパソコンの画面をにらめっこしながら1コマずつ何をどのように修正し又は修正しないか等、その作品や場面を考慮しながらの手作業になるので今後も劇的にコストが下がることは期待できません。しかしながら将来的にはフィルムの保存にも物理的な限界があるので、多くの作品を高解像度でデータ化することを期待したいところです。勿論オリジナルのネガの保存が最重要ですが。

— 梅原浩二


4月は新鮮な映画たち

2011/04/01 — 第228号

最近、新しい映画が少ないとご不満のアナタ、4月はフレッシュな映画がオンパレード。●4月3日からは、スタイリッシュな映像と骨太の演出で知られる巨匠トニー・スコット監督の最新作「アンストッパブル」。貨物列車の運転手の気の緩みで、無人の列車が暴走を始めるというサスペンス・アクション。暴走列車を止めようとする2人の運転手に名優デンゼル・ワシントン&新鋭クリス・パイン。最初は気が合わない2人だったが、やがて心の交流が芽生え始めるというスリルと感動の物語だ。●併映作はブルース・ウィリス、モーガン・フリーマンらが扮する元特殊工作員のお爺さん、お婆さんが大活躍する「RED/レッド」。現役を引退して心静かに余生を送る彼らに突然魔の手が。陰謀の影に古巣CIA。一致団結した彼らは、CIAの小僧っ子たち相手に大暴れ。ユニークなキャラが全開のストーリーに肩肘の力を抜いて楽しめること請け合い。●その後は毎年春恒例、前年の日本映画界の動きを振り返る「気になる日本映画2010」。おススメはオフビートなユーモアが絶品の「川の底からこんにちは」。2010年主演女優賞はこの映画の満島ひかりで決まり。2010年は行定勲監督が絶好調な年でもありました。「悪人」などで今、最も注目の作家・吉田修一原作の群像劇を見事な手さばきで映画化した「パレード」に、主演男優賞総ナメのトヨエツと薬師丸ひろ子の掛け合いが楽しい涙と笑いの感動ドラマ「今度は愛妻家」。男泣き映画ベストワンは「ボーイズ・オン・ザ・ラン」。泣けて泣けて堪らない二本立ては「半分の月がのぼる空」「おにいちゃんのハナビ」と注目作が目白押しだ!●豊島区は「男女共同参画都市」を宣言して今年で10年。これにちなみ「玄牝」「レオニー」など女性をテーマにした作品もラインナップ。
※4/10、朝から先着200名様に"涼宮"下敷きorメモパッドのプレゼントあり。

— 矢田庸一郎


震災について

2011/03/16 — 第-号

このたびの東北地方太平洋沖地震にて被災された皆様に、心よりのお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

また上映スケジュールが大幅に変更され、お客様方には大変ご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます。

— スタッフ一同


2010(平成22)年全国映画概要

2011/03/16 — 第227号

昨年の全国映画概況を日本映画製作者連盟が発表しました。入場者は前年より3%UPの1億7436万人でしたが、最盛期の58(昭和33)年の動員数11億人と比べると16%にしか過ぎません。しかし、売上は2207億円で、前年比7%UPの史上最高を記録しました。公開された作品数は、昨年より46本減の716本で、邦画408本、洋画308本で構成比は邦画57対洋画43の邦高洋低でした。■昨年の興行収入(興収)が10億円以上売り上げた作品は48本ですが、邦画が29本、洋画19本の内訳で、こちらも邦高洋低でした。邦画の興収上位の80%以上は、アニメ、TV人気番組、コミックの劇場版で、所謂、劇映画は『告白』『悪人』『大奥』『おとうと』『十三人の刺客』くらいでした。興収上位の全ての作品は、TV局、出版社、新聞社などのマスメデアによる大量宣伝効果による動員でした。■スクリーン数は、昨年より53スクリーン増えて3412になり、その内シネコンが81%を占めていました。都内の繁華街にあった大きな映画館は、新宿ミラノ座を残すだけになってしまい、場末にあった名画座と呼ばれる映画館もなくなり、個性的な特徴のある映画館は消えてしまいました。そして、宣伝費の少ない単館のロードショー劇場が、廃業するようになったのも昨年の特筆すべき出来事でした。行きなれた思い出の映画館で、多くの観客と一斉に笑い、涙する。その一体感こそが映画館で映画を観る妙味でした。これからの映画ファンは、親しんだ記憶に残る映画館を持つことができるのだろうか。

— 永田稔


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