まんすりいコラム

映画よ。また、よろしく。

2016/09/29 — 第331号

映画がきっかけとなって、行動を起こすことがある。それが吉と出るか、凶と出るかは、その時々によって変わってくるものの、先日のきっかけと行動は、間違いなく吉だった。■観賞したのは、アニメ映画『planetarian?星の人?』だ。プラネタリウムが重要なキワードの作品であり、星空の投影のシーンは、思わず息を飲むほど美しく描かれていた。案の定、観賞後は久しぶりにプラネタリウムへ行きたくなった。そして数日後、私は仕事帰りにプラネタリウムへ向かったのだった。■独り身でのプラネタリウムは、初めのうちこそ不安だったものの、いざ投影が始まると、どうでもよくなった。十五年ぶりに観るプラネタリウムの星空は、例えようもなくきれいだったからだ。きらめく星々に見惚れながら、ここへ来るきっかけをくれた映画へ、密かに感謝した。■映画を観る理由は人それぞれちがうが、私は「映画を観た後の自分はどうなるのだろう」という不安や期待も、映画観賞のひとつの醍醐味であると思う。観賞後、なにかをしようと思えたならば、それは自分が映画によってほんの少しだけ変われた証なのだ。……さて、次はどんな映画を観て、どんな影響を受けるのだろうか。

— 濵本栄紀


『ノスタルジア』と温泉

2016/08/26 — 第330号

■女人三十、都内共通入浴券を買って休日に一人、銭湯に行く程度には風呂が好きだ。都民だが江戸っ子ではない。あつ湯ではなくぬる湯にぼーっとつかり「世は全て事もなし」の境地にひたるのがいい。■さて『ノスタルジア』である。温泉が出てくる。湯気が出ているのだから間違いない。ロケ地はイタリア・トスカーナ地方、バーニョ・ヴィニョーニというローマ時代から続く温泉保養地とのこと。ネット画像を見ると、自然に囲まれた、心も体も休まりそうな土地である。■不眠解消映画としても名高い『ノスタルジア』だが、過去何度か鑑賞して一度も寝ていない。心中密かに己を褒めたたえている。その分、他のタルコフスキー映画では油断が出るのか『鏡』も『ストーカー』も大体寝ていたのは秘密だ。しかし「実は寝ちゃって……」と告白しても「俺も」「私も」と追随者がわらわら出てくるのがタルコフスキーのいいところだろう。■最後に『ノスタルジア』を観たのはもう十年以上前だろうか。温泉宿に行けば温泉そっちのけで友人と飲み喋り合い、風呂は好きだが銭湯なんて興味がなかった、そんな年の頃だ。年を取ったなと思う。あの頃の自分に、あと何年かしたら、いま通いつめている映画館で働くことになるよ、と教えたらどんな顔をしただろうか。
※『ノスタルジア』は9/9(金)に上映

— 小澤麻梨子


新文芸坐ベストテン《女優編》

2016/07/25 — 第329号

当館では毎年お客様から投票をいただき、ベストテンを集計・発表しております。著名人や評論家ではなく映画ファンが選ぶベストテンということで、当館の番組編成の参考にさせていただいております。
過去には番外的にサスペンス映画ベストテンや男優ベストテンなども行なってまいりましたが、今年は《女優編》を開催いたします。
日本の映画女優を10人投票してください。投票期間は9月末日まで。これを集計し発表いたします。投票用紙はロビーにおいてございます。また、新文芸坐友の会会員の方はメールでの投票も承ります。投票(メール投票を含む)して頂いた友の会会員の中から抽選で3名様にご招待券をプレゼントいたします。
新文芸坐で映画をご覧になるお客様が好きな女優は、いったい誰なのか!? 結果は今後の番組編成の参考にさせていただきます。お楽しみに!

— スタッフ


プリンスのライブなので、できれば理性を捨てたいものです

2016/06/24 — 第328号

4月、不世出の天才アーティスト・プリンスが逝ってしまいました。もうこの世界にはマイケル・ジャクソンもデヴィッド・ボウイもプリンスもいないのです。■当館では追悼の意を込めて7/16(土)・17(日)に『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』をレイトショーとして上映します。87年に2枚組でリリースされた傑作同名アルバムのツアーを収めたファンキーでポップ、かつロックな82分の白熱のライブ映画です。■個人的にはこの手のライブ映画を劇場で観ていると、つい立ち上がって拍手をしたり歓声を上げたくなって困るのですが、「他の人に迷惑をかけてはいけない」「目立ってはいけない」という、日本人として培われた奥ゆかしさにより悶々としてしまうのも事実です。今回の上映は当初「スタンディング可」と謳うつもりでしたが、やはり躊躇してしまう奥ゆかしい方がいるのではないかと引っかかっていたのです。そんな人にも盛り上がっていただきたい……。■という訳で、今回は通常上映に加え「スタンディング“強制”上映」を7/17(日)に設けました。冒頭から問答無用で立っていただきます。拍手・歓声・合唱はライブ同様ご自由にどうぞ。立つきっかけはこちらで与えるので、一瞬の気まずさは「やれやれ」とか言いながら当館のせいにしてください。後は怒涛のショーに身を委ねればOK。「見えないから立つなよ」という人はいません。もちろん疲れたならお座りください。全員が合意していることが大事なのです。■7/16(土)は通常の着席上映です。これはこれでじっくりと楽しめますが、拍手ぐらいはしてもいいですよね?

— 花俟良王


濃密な要約

2016/05/25 — 第327号

映画本編の上映前に掛かる予告編、お客様の中にもこれを楽しみにしている方がいらっしゃるかと思います。かく言う自分もその一人。場内が暗くなり、予告の開始で心がスクリーンに持っていかれるあの瞬間……映画館で映画を観る醍醐味のひとつではないでしょうか。■細かく編集された映像はもちろん、音楽、キャッチコピーやナレーションに至るまで、限られた時間で本編の魅力を伝える予告編は、宣伝材料というよりひとつの作品といってもいいでしょう。昔の日本映画は予告編製作で助監督の力量を測っていたというのも納得。アメリカでは優れた予告編を讃える授賞式もあります(今年の最優秀作品は「スポットライト 世紀のスクープ」でした)。■名画座である当館では邦洋、新旧含め様々な予告編が上映されます。本編はもちろん、そちらも楽しんで頂けたら幸いです。個人的には80年代の角川映画の予告編はどれもドラマチックで、子供心にとても印象的でした。いつか予告編だけを延々上映するプログラムができたらなぁ……。

— 武田俊輔


追悼と思い出

2016/03/18 — 第325号

残念なことに、ここ数年だけで何度「追悼」と銘打った上映をさせていただいたことかというほどに数多くの名優、名監督が逝去されました。そして今月には、【追悼 アラン・リックマン】として4/6に「モネ・ゲーム」「ヴェルサイユの宮廷庭師」を上映いたします。■私がアラン・リックマンの出演作で忘れられないのはアン・リー監督による「いつか晴れた日に」です。アン・リー作品でもっとも好きなこの映画を、亡くなられた日にあらためて見たのですが、英国王立演劇学校出身、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに所属した彼の演技はアン・リーの細やかな映像美と調和し、不器用だが誠実な英国軍人然としたキャラクターを見事に表現していました。■そして役者として、役として、スクリーンに「生きていた」ことがわかったとき、自然と涙が流れていました。■「ヴェルサイユの宮廷庭師」は、「いつか晴れた日に」で共演したケイト・ウィンスレットとの20年ぶりの共演作であり、アラン・リックマンが監督・脚本・出演をこなした意欲作、そして遺作であります。ぜひこの機会に、皆様も名優の思い出を当館のスクリーンで分かち合ってくださったらと願っております。

— 青山貴昭


「新文芸坐ベストテン2015」発表!!

2016/02/29 — 第324号

お客様と当館スタッフの投票で決まる「新文芸坐ベストテン」。
2015年は以下のような結果となりました。(一部副題略)
ご投票いただいた皆様、ありがとうございました!

<邦画>
1位:海街diary
2位:恋人たち
3位:野火
4位:きみはいい子
5位:駆込み女と駆出し男
6位:岸辺の旅
7位:あん
7位:ソロモンの偽証
7位:バクマン。
10位:バケモノの子

<洋画>
1位:マッドマックス 怒りのデス・ロード
2位:セッション
3位:アメリカン・スナイパー
4位:バードマン
5位:キングスマン
6位:イミテーション・ゲーム
7位:スター・ウォーズ/フォースの覚醒
8位:はじまりのうた
9位:ナイトクローラー
10位:ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

(有効投票数121票/1位10点…10位1点)

3/16からの特集<気になる日本映画達2015>では、邦画のベストテンより『野火』『岸辺の旅』『ソロモンの偽証』『バクマン。』の4本に加え、次点『さよなら歌舞伎町』の再上映や、13位『天空の蜂』、16位『この国の空』、18位『幕が上がる』などがラインナップ。さらに、1位の『海街diary』も4月の上映が決定しました。併映にはキネ旬ベストテンも賑わせたあの作品が…!? 是非この機会にスクリーンでご堪能あれ。

— 後藤佑輔


2月は新作洋画がいっぱい

2016/01/28 — 第323号

2月は洋画が盛り沢山なので少し紹介を。■2/3(水)までの『キングスマン』『コードネーム U.N.C.L.E』は鉄板のスパイ映画2本立て。『コードネーム〜』は往年のTVドラマ『0011ナポレオン・ソロ』が元ネタです、お父さん。■4(木)〜6(土)は私の一押し『名もなき塀の中の王』『ベルファスト71』。話題の新作『不屈の男/アンブロークン』で主演もした英国期待の若手ジャック・オコンネルの2本立て。ともに緊張感溢れる硬派作です。特に『名もなき〜』の彼(とお父さん)は刑務所親子鷹としてキレにキレ、既に演技派の貫録が。■17(水)からは小特集<珠玉の名編>。キアヌの殺し屋業界苦労譚『ジョン・ウィック』と、シャマランのケレン味が完全復活した『ヴィジット』2本立てのテーマは「見た目で人は判断できない」。■21(日)・22(月)は『妻への家路』と『黒衣の刺客』。アジアが誇る名匠チャン・イーモウとホウ・シャオシェンの現在を。シャオシェン初の武侠映画『黒衣〜』は絶賛されキネ旬5位にもなりました。■23(火)・24(水)は『ドローン・オブ・ウォー』と『顔のないヒトラーたち』。時代も国も異なりますが、戦争における殺人に対する「実行者の不在」を問います。■25(木)・26(金)は音楽系。4月の来日が待ち遠しいB・ウィルソンの伝記映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』は、凄まじい人生を送った彼の60年代をポール・ダノ、80年代をジョン・キューザックが演じる二人一役も話題に。『Dearダニー 君へのうた』はアル・パチーノ演じる元人気歌手が、43年前自分宛てに書かれていたJ・レノンの手紙によって人生を見つめ直す感動作。■以上12本。いかがでしょうか。新作は当館の音響のポテンシャルを発揮する絶好の機会でもあります。ぜひ劇場でご覧ください。

— 花俟良王


明けましておめでとうございます

2016/01/01 — 第322号

旧年中は、新文芸坐をご愛顧いただきまして、心より御礼を申しあげます。

2016年も、“感動はスクリーンから”をモットーに、日本映画をはじめ、ハリウッド、ヨーロッパ、アジアと、世界の映画を幅広く上映していきます。

一方で、昨今、フィルム映写機の生産が止まるなどフィルム上映をめぐる環境は日に日に厳しくなってきています。新文芸坐の基本精神の一つに「映画の歴史を次世代に継承する」というものがあります。2016年も、この基本精神の旗を降ろすことなく、様々な上映にチャレンジしていきたいと思います。

今年も、新文芸坐は映画の永遠の感動を、映画ファンの皆様にお届けいたします。

2016年正月

新文芸坐
矢田庸一郎 関口芳雄
梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔
柳原弘 小澤麻梨子 松田恵里加 武田俊輔 濵本栄紀
渡部麻美 青山貴昭 五十嵐拓也 星野依子 倉持治 山下萌

— スタッフ一同


新文芸坐、15周年を迎えます

2015/11/27 — 第321号

■ある脚本家の方が、学生時代に旧文芸坐で頭がおかしくなるほどたくさんの映画を見ていたそうです。「映画を見過ぎて、頭がぼーっとなっていたある日、突然なにかプツンと切れて、映画がわかるようになった」と言っていました。■私は旧文芸坐に足を踏み入れたことはありませんが、このような話をよく聞きます。映画の文化を発信するシネマテークのような存在で、多くの人に愛された映画館だったのだと思います。■旧文芸坐は幕を閉じましたが、新文芸坐になった今でも、多くの映画人の方々にご来館いただいています。また、今通っているお客様の中から、新たな映画人が誕生するのを楽しみにしています。■新文芸坐は今年12月12日で、15周年を迎えます。いろんな人の熱意や情熱で成り立ってきました。そして何より、みなさまの暖かいご支援のおかげと、心より御礼申し上げます。みなさまが当館で過ごす時間すべてが、感動の時間となるように、日々努力していきたいと思います。

— 渡部麻美


11/13(金)「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」 日本最終上映の理由

2015/10/23 — 第320号

当館のロビーにはご意見箱が設置されていまして、様々なご意見や要望に混じって上映作品のリクエストも多く寄せられます。番組編成の参考にさせていただいており、感謝しております。しかし、せっかくリクエストを頂いたのに、外国映画の中には残念ながら映画館で上映できない場合があります。今回はそのお話。■映画業界は、製作・配給・興行の3者から成り立っています。映画の製作者と映画館(興行)を結び付けているのが配給会社です。製作・配給・興行を1社で行っている大会社もありますが、ほとんどは配給のみを行っている独立系(インディペンデント系)の配給会社です。独立系配給会社は海外から映画を買い付けてそれを日本の映画館に配給して収入を得るのですが、買い付けの際に上映期間が決められています。この期限を過ぎると映画館で上映できなくなるのです。■例えば当館で毎年上映してきた「ロード・オブ・ザ・リング」(以下、LotR)シリーズは3部作の大作ですが、第1作が一昨年に、第2作「LotR 二つの塔」が昨年に上映期限が切れ、そして第3作「LotR 王の帰還」が本年11月14日をもって上映期限が切れます。その前日11月13日に当館で「LotR 王の帰還」を上映するので、これが日本最終上映ということになりましょう。長大な原作「指輪物語」の大団円にして、アカデミー賞11部門を獲得した本作、ぜひスクリーンで観ておいてください! 平日の上映で心苦しいのですが、ファンの方々には万難を排して新文芸坐にご来場いただきたいです。■希望がないわけでありません。上映期限切れとなった映画の中には再びスクリーンに復活するものもあります。が、それはまた別のお話……。

— 関口芳雄


休憩所

2015/09/25 — 第319号

最近、自分が映画館へ行くのは映画を観ることに加えて、もうひとつ別の理由があることに気がついた。それは孤独になるためである。■映画が上映中はケータイの電源をOFFにしなければならない。ケータイの電源を切るのに抵抗を覚える人がいるのもわかるが、私の場合、この行為が許されていることこそ、映画館に来る理由のひとつである。■ケータイの電源をOFFにするということは、誰かとの繋がりを一時的に断つということだ。メールやSNSが普及した昨今、自分が誰かと常に繋がっていることが半ば当たり前のことになっている。それによるいい出会いもあるのだが、一方で、誰かと繋がっていることで疲弊する、いわゆる「SNS疲れ」に陥ることがままある。映画館はその要因の一つであるケータイ電話の電源をOFFにし、誰かとのつながりを公明正大に断つことが許された場所だ。■繋がりが断たれれば、あとは他の人へ迷惑をかけなければ自由。喜劇に顔を綻ばせ、悲劇に涙を浮かべ、ホラーに背筋を凍らせてもいい。また、映画の世界へ入り浸るのはもちろん、ぼんやりとスクリーンを眺めているだけでも、座席に身を預けて舟を漕いでいてもいい。ただし、いびきは厳禁である。自分の人生は銀幕に映る映画に介在しない。座席が満席であっても、上映中は孤独な傍観者でいられる。映画館はどっぷり孤独に浸れる場所なのだ。■つかの間、孤独を味わえば、また歩き出せる。また人の繋がりの中に身を沈め、疲れたら映画館へやってくる。映画館は休憩所も兼ねていたのだ。

— 浜本栄紀


こわい言葉

2015/08/27 — 第318号

■「お久しぶりです」が、こわい。目の前の相手にまったく見覚えがないからだ。この二カ月で、すでに二回あった。お客様からの言葉ではない。目の前の相手の、はにかみつつも期待に満ちた表情を見れば分かる。この人は、この私の、個人的な知り合いだ。■チケットの半券を渡しながら「ごゆっくりどうぞ」を言おうと口を開いた私に、目の前の見知らぬ(はずの)相手は言う。「お久しぶりです」。開けた口をどうしていいのか、分からない。言うべき言葉が「ごゆっくり」でないであろうことは分かる。■きっと面識があるのだ(見覚えないけど)、「どちらさまですか?」って聞ける相手だろうか(失礼だからやめておけ)という脳内会議を経た結果、「……あーどうもー」と曖昧な笑みを浮かべてこちらも知っている風を装うという、姑息な作戦に出ることになる。■ちなみに冒頭の「お久しぶりです」は、一人が取引先の人(眼鏡がコンタクトに変わっていて分からなかった)、もう一人が新文芸坐の元オールナイトスタッフ(オシャレになりすぎていて分からなかった)だった。動揺を隠せていなかったであろう私に先方が名乗ってくれたのである。■久方ぶりの知人には「お久しぶりです」を言う際は詳細な名乗りを上げてほしいものだとしみじみ思う。私の心の平安のために。■しかし、いま私が恐れているのは、「お久しぶりです。●●です」と名乗られてもなお、その相手に心当たりがない、という事態に遭遇することだ。ミステリ、ホラー、ラブロマンス……フィクションならば、そこから物語が始まるのだが。

— 小澤麻梨子


7/26より、映画で検証する戦後70年

2015/07/24 — 第317号

わたしは昭和38年生まれです。高度成長のまっただ中に生まれました。わたしの父や母は、子供の頃、終戦を迎えています。空襲を逃げた話を父や母から聞いています。祖父や親戚の家に行くと、軍服姿の青年の、薄茶色に変色した写真が飾られていました。繁華街に行くと、そこには傷痍軍人の姿がありました。わたしたちの世代は、戦争の残滓のようなものを見たり聞いたりして育った最後の世代かもしれません。

戦争が終わって70年が経ちます。戦争の体験者も少なくなり、社会全体の戦争の記憶も薄れてきていると思います。それ自体は悪いことではないかもしれません。曲がりなりにも平和な世の中が続いたわけです。戦争なんて大昔の出来事。命令されて人が殺し合うとか、町中に爆弾やミサイルが降ってくるとか、戦争反対など時の権力の方針にはむかうことを言うと捕まってしまう、とかいった話は、今とは無縁の世界。心配無用と楽観できれば、なんて素晴らしいことでしょう。

戦後70年を期に、映画を通して、日本の歴史をたどる上映会を行います。7/26より第1弾「戦後日本の歩み、11の断面」として東京裁判、帝銀事件、松川事件、下山事件、沖縄、水俣、三里塚、連合赤軍、そして日本国憲法といったことをテーマにした映画を上映します。第2部は8/12より「日本の戦争/今こそ、反戦平和の誓いをこめて」。実際に戦争を体験した映画人たちが、心の底からの思いをこめて作った映画たちを上映します。

戦争を知らない若い世代にこそ見てほしいと思います。必ず発見があるはず。なにかを考えるきっかけになればいいと思います。そのような思いから学生の方は入場料金500円にしました。

— 矢田庸一郎


長い間、ありがとうございました。

2015/06/23 — 第316号

私が社会人になったのは64(昭和39)年で、半世紀を超えました。文芸坐から42年間映画興行に携わってきました。新文芸坐になってからも15年になります。もう、十分に働いたので、新文芸坐を辞めます。■池袋の裏通りの小さな映画館の落成式に、代議士、豊島区長、映画会社々長など、錚々たる名士がお祝いに駆けつけてくれました。杮落としには、ゲストに山田洋次監督を初めとして、大勢の映画人が来場して華を添えてくれました。■新文芸坐は、文芸坐時代の人脈を引き継ぎ、その後、交換した名刺が3500枚もあり、多くの人々にお世話になり、ご協力に支えられて興行をすることができました。本当にありがとうございました。しかし、真っ先に御礼を申し上げなければならないのは、興行の原点であるご来場いただいた多数のお客様です。お客様とのちょっとした会話と笑顔が、興行者としての悦びでした。本当にありがとうございました。■お世話になった映画業界、マスメディアなどの皆さん、ご協力を頂いた俳優、監督、映画人、落語家の皆さんと、多くのお客様との出会いが私の財産です。お互いに映画を観続けて、笑い、泣き、感動、感激しましょう。長い間本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。

— 永田稔


文句で惹かれる映画の世界

2015/05/25 — 第315号

時代を超えて名作を上映する当館には、毎回様々なポスターが掲出されます。■洗練されたデザインで作品の魅力を伝える宣伝ポスターは私たちの目を楽しませ、想像力を膨らませてくれるもの。たまに「全然違う!」という場合もありますが、それも映画体験のひとつでしょう。■今は少なくなりましたが、ほんの前までは街のそこかしこに上映作品のポスターが貼られていました。上京当時、新宿駅東口にパノラマの如く並んだ大型看板を見たときはさすが東京と思ったものです。■先日の健さん特集でも当館には公開当時の貴重なポスターが並びました。極彩色で描かれた任侠世界は強烈な存在感を放ち、ロビーを通るたび足を止めてしまうほど。そして独特の趣を感じさせるのが、口上宜しく作品を売り込んだキャッチコピー、所謂「惹句(じゃっく)」です。巧みな節回しと言葉のセンスで綴られた名句の数々はどれも声に出したくなるものばかり。僕が好きな惹句は

地獄みやげに 拝んでおけよ
雨のしずくか 血か汗か
濡れております 唐獅子牡丹

「昭和残侠伝」

居並ぶ兄さん お見知り置きを!
ぱっくり割れた 着物の下で 牡丹の花が 真赤に燃えた
二つ異名は 緋牡丹お竜 仁義も切りやす ドスも抜く

「緋牡丹博徒」

などなど…。皆様にも心に残る惹句があるのではないでしょうか。映画ではありませんが「止めてくれるなおっかさん〜」なんてのもありましたね。■当館ではこれからも映画はもちろん、掲示物でもお客様に楽しんで頂ければと思います。

— 武田俊輔


気にならざるを得ないアイツラ

2015/04/27 — 第314号

大変お待たせしました。昨年の邦画を振り返る恒例企画〈気になる日本映画達(アイツラ)〉、今年は5/14(木)からの開催です。困難を極めた選定作業の末決定した27本をぜひご覧ください。■毎年思うのですが、やはりその年の顔ともいうべき役者がいます。スケジュール欄のラインナップには題名しかありませんが(特集チラシを別に作成しています)、鋭い人は5本もの作品に出演している男優にお気づきでしょう。そうです、染谷将太です。『永遠の0』『不気味なものの肌に触れる』『WOOD JOB!』『ドライブイン蒲生』『TOKYO TRIBE』と主役・脇役・メジャー・インディーにこだわらぬ大活躍。どこか飄々とした(と思わせる)佇まいはどんな作品にも溶け込んでしまいます。10年程前のこの特集で浅野忠信や西島秀俊をよく見かけた時の印象に似ています。■他にも池松壮亮は前番組の『紙の月』を入れれば『愛の渦』『海を感じる時』『ぼくたちの家族』と4本に出演。やはり自然体の(と思わせる)演技が私達を惹きつけます。清野菜名は『TOKYO TRIBE』と『少女は異世界で戦った』のセクシー&アクションで大・大躍進し、武田梨奈は『祖谷(いや)物語』と『少女は〜』で両極端の役柄を演じ切り評価されました。そしてお笑い芸人・大島美幸は『福福荘の福ちゃん』で“おっさん”役での主演です(←凄くハマってます)。■以上もっともらしく書きましたが私の好みを挙げているにすぎません。ただ、今観ておかないと損をする「人」と「作品」が目白押し、ということは断言できる特集なので毎日通ってください。

— 花俟良王


「新文芸坐ベストテン」結果発表

2015/03/24 — 第313号

友の会会員と当館スタッフが選ぶ「新文芸坐ベストテン2014」の結果を発表いたします。
たくさんのご投票ありがとうございました。
この結果は今後の番組編成の参考とさせていただきます。

・有効投票数122票 ・1位10点…10位1点

【外国映画】
1位『ジャージー・ボーイズ』(300点)
2位『6才のボクが、大人になるまで。』(226点)
3位『ゴーン・ガール』(224点)
4位『インターステラー』(220点)
5位『ブルージャスミン』(168点)
6位『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(152点)
7位『アデル、ブルーは熱い色』(141点)
8位『グランド・ブダペスト・ホテル』(131点)
9位『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(130点)
10位『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(126点)
次点『ダラス・バイヤーズ・クラブ』

【日本映画】
1位『そこのみにて光輝く』(329点)
2位『紙の月』(222点)
3位『0.5ミリ』(207点)
4位『私の男』(193点)
5位『百円の恋』(183点)
6位『小さいおうち』(163点)
7位『WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜』(162点)
8位『野のなななのか』(144点)
9位『舞妓はレディ』(143点)
10位『ぼくたちの家族』(128点)
次点『白ゆき姫殺人事件』

※抽選で5組10名様にご招待ハガキを郵送いたします(4月上旬発送予定)。
※非会員の方の投票結果は当館HP・ロビーにて発表いたします。

— スタッフ


体感する映画

2015/02/26 — 第312号

平和島に続き、昨年末豊洲に出来た都内2館目の4DXシアターに先日行ってきました。“4DX”とは今話題の4D上映の主流となっている規格で、4D上映とは座席の振動や傾き、水・風・光などの効果を映画と連動して演出する「体感型」の上映のことです。今回は『ミュータント・タートルズ』の「4DX3D版」を観て来たのですが、とにかく座席がよく動く! アクションシーンでは振動しっぱなし、さらに前後左右に体を揺さぶられ続けます。俯瞰から地上スレスレまで落下するシーンでは3D視点と座席の激しい傾きが相まって、気分はまさにアトラクション。さらに雨のシーンでは実際に頭に落ちる雫にハッとし、背後から突然小突かれるシーンでは背もたれの一部が突如盛り上がるため、ワッと声をあげている人も。映画と現実がリンクした新感覚の上映は、“鑑賞”ではなく“体感”と言えるものでした。■4Dとはいきませんが、当館でも通常の上映だけではなく、活弁やピアノ演奏付きの2.5D?上映も行なっています。先日のピアノ演奏付き上映の際にリハーサルを覗いてみたのですが、スクリーンに映しだされた映像と目の前の生演奏がリンクすることで、画面に奥行きが生まれ、映画を“体感”しているような感覚を覚えました。4月に上映の無声映画『カリガリ博士』『アッシャー家の末裔』(書籍「黒澤明が選んだ100本の映画」にちなんだ特集にて4/11に上映)でも、活弁又はピアノ演奏付き上映の回があります。映画を“体感”する感覚、味わってみて下さい。

— 後藤佑輔


「新文芸坐ベストテン」投票のお願い

2015/01/26 — 第311号

毎年実施しております新文芸坐ベストテン、通称“文テン”の投票受付が今年も始まりました。昨年=2014年に新作として公開された映画を対象として、洋画・邦画それぞれ10作品まで選んで投票してください(10作品に満たなくても結構です)。投票用紙は公開作一覧と共にロビーに用意しております。

集計結果は後日発表いたしますが、この結果は当館の番組編成の参考とさせていただきます。

今年は友の会会員以外の一般のお客様からも投票を受け付けております。結果は、友の会会員と一般を別々に集計して発表いたします。お楽しみに。

また、ご投票いただいた新文芸坐友の会会員の方には抽選で5組10名様にご招待券をプレゼントいたします。どうぞ奮ってご投票ください。

※新文芸坐オフィシャルサイトからも投票できます。(会員の方のみ)
※2月末日にて受付を終了いたします。

— スタッフ


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