怖がりながら、ニヤケてください
(2001年・第8号・通巻11号)
『TATARI』という映画をご存知ですか? 昨年公開されたギミック満載の愛おしいB級ホラーなのですが、何を隠そう、その映画のプロデューサーは『フォレスト・ガンプ』『キャスト・アウェイ』のロバート・ゼメキス。しかも、自ら設立したホラー映画専門の製作会社の第一弾。そうです、彼はかなりのホラー/オカルト映画ファンだったのです。
そんな人が遂に自分でコワ〜イ映画を撮っちゃいました。『ホワット・ライズ・ビニース』。意味は分かりません。好きなもんだから自分も楽しんでるのが手にとるように伝わります。そこはハリウッドの優等生として知られるゼメキス監督のこと、己の監督作に血ドバドバなんて下品な手は使わず、スリラー要素を盛り込み、あくまで物語と雰囲気で恐怖と驚嘆の世界へ誘います。嬉しいのは、往年のスリラー(特にヒッチコック!)をリスペクトしていること。前半はこらえてこらえての手法や写真立て、鏡等の小道具の使い方、そしてオーケストラによるあの旋律! くぅ〜。これよ、これ。こういうの、ありそで無かったもんな最近。目立たぬように最先端の特撮も施され、これぞ新世紀のオカルト・スリラー也。もっと書きたいけどこの種の映画に長話は禁物。こんなコワオモな映画を大画面・大音量で見ない手はありません。3月6日から1週間、口にチャックでお待ちしております。最後にひとつだけ。同時上映は『エクソシスト/ディレクターズ・カット版』! どうだ!(H)
ハン・ソッキュと新世代韓国映画たち―見るなら今!の巻
(2001年・第9号・通巻12号)
韓国全土で200万人の観客動員を超え、ついに韓国にもブロックバスターの時代到来と騒がれた映画が当館で3月13日より始まるニュー・コリアン・シネマ・ウィークの中で上映する『シュリ』です。中野裕通によるスピード感あふれる予告編の効果もあって日本でも動員100万人の大ヒット。この優れた予告編にたがわず本編も弾数多き銃撃アクションあり、南北問題あり、禁じられた恋ありのてんこもりで最後まで息つく暇もないのですが、なかでも本作で日本のファンもかなり増えたと思われるハン・ソッキュの“誠実さ”には心打たれるものがあります(チェ・ミンシクの怪演も素晴らしい!)。役に対する誠実さが彼の役者としての特質であり、魅力でもあり、『シュリ』でも彼の魅力を十分味わえるのですが、今回は彼の主演作をさらに3本、『八月のクリスマス』『グリーンフィッシュ』『カル』も上映いたします。『グリーンフィッシュ』は今回上映の傑作『ペパーミント・キャンディー』のイ・チャンドン監督のデビュー作としても有名ですし、『カル』『八月のクリスマス』では好感度No.1女優、シム・ウナと共演し、その彼女の主演作『美術館の隣の動物園』も上映いたします。そのほか香港のクリストファー・ドイル撮影の『モーテルカクタス』や韓国でのホラーブーム先駆けとなった『女校怪談』などなど旬の韓国映画を盛りだくさん上映いたします。『ユリョン』や『JSA』等、公開待ち遠しい話題沸騰の新作韓国映画予告編大会もお楽しみに。(U)
上映開始後の入場制限、是か非か?
(2001年・第10号・通巻13号)
新文芸坐は、オープンから3ヶ月が経ちました。新文芸坐は、お客様の“映画を観る環境”にこだわり、飯島直樹建築デザイナーの設計により造られました。映写設備、音響設備、客席の椅子、場内の吸音設備、スクリーンの大きさ、ロビー空間、和田誠さん作の壁画、受付、売店、トイレなど……。設備面に於いては、映画館らしい雰囲気のある空間になったと思っています。その設備を生かして、サービス面で“映画を観る環境”に配慮したとき、ご覧になっていらっしゃるお客さまの雰囲気を損ねる途中入場をご遠慮願えないかと考えて、上映開始30分後の入場制限を設けました。“映画を観る環境”に配慮した方法なのですが、スリ、痴漢、睡眠目的など映画を観る以外の目的の方の入場予防にも効果があります。しかし、一方では映画館の営業方針が優先してしまい、お客様の都合により気軽にぶらりとご入場できないことが欠点です。
正直のところ、スタッフの間でも意見が分かれており、お客様からのご意見も賛否両論あると承知いたしておりますが、現在入場制限させていただいております。
そこで今回、お客さまからのご意見をお聞かせいただきたくアンケートを実施することにいたしました。ロビーにアンケート用紙を用意いたしましたので、ぜひご意見をお聞かせください。“上映開始後の入場制限、是か非か?”ばかりでなく、様々なご意見をお寄せください。(N)
映写技師の言い訳
(オリジナル投稿)
3/24(土)〜26(月)上映の韓国映画「美術館の隣の動物園」と「八月のクリスマス」の上映に関するお話です。
お客様からの投書で、映画のラストでエンドロールのあと音楽がプツッと切れて画面が真っ暗になるのは映写技師が最後まで上映せずに中断させているのではないか? とのご意見が複数ありました。たしかに両作品とも、画像&音が突然なくなるという終わり方です。
結論から言って、映画は最後まで上映していますし、映写トラブルでもありません。プリント(上映するフィルムのこと)が、そのよう(プッツリ終わる状態)になっているのです。韓国映画や香港映画にはこのようなプリント(=作品)がよくあるようです。
(テレビ局が放映枠に時間を合わせて作品を部分的にカットするのと同様、映画館も映画をカットすると思っている方がいます。映画館が映画館の都合で作品をカットすることは絶対にありません。〈プリントが古くて状態が悪い場合は別です。〉まして映画を早く終わらせる為に映画を途中で中断することなど、あってはならないことです。)
恒例特集、「気になる日本映画達」が復活
(2001年・第11号・通巻14号)
4/10より「日プロ大賞記念 気になる日本映画達〈1991〜2000〉」をお送りしますが、その前に「日プロ大賞」とは何ぞや? ■はい、(1)日本映画界の“プロたち”がホントに面白い日本映画を選ぶ。(2)どこででも上映されるメジャーの映画ではなく、小さなプロダクションが精一杯作り上げ単館の映画館だけで公開されるような作品を応援しよう、という主旨の賞なんです。■それで今回は4/14の第10回授賞式を挟んで、日プロ10年の歩みを辿りつつ'90年代から2000年の、日本映画の新しい息吹を感じさせる48作品を連続上映することになりました。■そこでオススメは、まず4/7(土)のオールナイト「阿部寛ワンマンショー」。第4回日プロ作品賞で、阿部さんの役者としてのターニングポイントになった『凶銃ルガーP08』に、役所広司と五分の競演が印象深い『大阪極道戦争 しのいだれ』などを。しかもなんと阿部寛さんが来館! ■4/12の三本立も必見。堅物な警官(←本木雅弘が怪演)が防犯訓練の強盗役にのめり込みすぎて暴走するコメディ『遊びの時間は終らない』。山口智子よスクリーンにカンバッ〜ク! と叫びたくなる『undo』(豊悦ファンも楽しんでね)。さらに『はつ恋』の篠原監督デビュー作、爆笑問題の大田光主演『草の上の仕事』。この映画、出演は二人だけで草を刈るだけの話(笑)。でも傑作よ。■その他、矢口監督独特の軽快奔走コメディ2本立や、2000年カルト大賞(←筆者選定)『発狂する唇』、池脇千鶴に女を感じた『金髪の草原』、藤田宇宙のクリクリ目玉がキュートな『独立少年合唱団』など語りたいことは尽きないのですが……。是非観にきてね! (Y)
『僕たちのアナ・バナナ』……ジェナはポスターの絵柄よりずっとセクシーの巻
(2001年・第12号・通巻15号)
エドワード・ノートンというと何を思い出す? 『ファイト・クラブ』のヤッピー役。『アメリカン・ヒストリーX』のナチ野郎(後に改心)。デビュー作は『真実の行方』。殺人容疑者の多重人格(?)の青年役で、いきなりオスカーノ・ミネートという経歴も。■難役を次から次と緻密な演技でこなすノートン。その彼が監督デビュー。しかもトリュフォーの『突然炎のごとく』にオマージュを捧げた三角関係の物語と聞くと、なんとなく青臭い映画を想像しちゃったんだけど……。■それで実際のところは? もうお分かりですね。ベーリィナイスよ。とっても洗練されててオシャレ。子供時代の親友三人(ボーイズ&ガール)が大人になって再会するまでを、頭五分ぐらいでさらりと見せるとこなど、うまいじゃん! ノートン自身の出演に、ベン・スティラー、ジェナ・エルフマンの配役も◎(特にジェナの健康的な四肢から溢れ出る色気にゾクッ)。各所にくすくす笑いをしかけながら、もつれる三角関係には観ているこちら側もハラハラ。「すげーおもしろかったよ! ノートン」と思わず叫んだね(心の中でに決まってんだろ)。■併映はメル・ギブ、ヘレン・ハント主演のハートウォーミング・コメディ『ハート・オブ・ウーマン』。でも注目はマリサ・トメイよん(ハート)この人の笑顔ってホント素敵(胸もでかいな)。それにオスカー受賞の実力派だぞ。『ザ・ウッチャー』にも出てるけどこっちはやる予定ないのでマリサ・ファンはお見逃しなく。(Y)
特集「映画監督 大島渚」ひとくちコメント
(2001年・第13号・通巻16号)
◆愛と希望の街('59)監督昇進作。予定調和の松竹大船調に反し、二番館で封切り。◆青春残酷物語('60)第1回日本映画監督協会新人賞受賞。松竹ヌーヴェル・ヴァーグの旗手と謳われる。◆太陽の墓場('60)大阪のスラム釜ヶ崎を舞台にした鮮烈な群像劇。◆日本の夜と霧('60)政治的思惑から、封切り4日で上映中止に。松竹退社の契機となった問題作。(再び日の目をみたのは3年後、文芸坐の姉妹館・人世坐での上映だった)◆悦楽('65)大島主宰の独立プロ“創造社”第一回作品。山田風太郎の原作に政治憤懣を託す。◆日本春歌考('67)シンガーソングライター・荒木一郎、伊丹一三(後の十三)出演。◆帰って来たヨッパライ('68)ザ・フォーク・クルセダーズ映画初出演。◆絞死刑('68)ATG一千万映画第一弾。足立正生が出演。◆少年('69)盟友・田村孟の傑作シナリオを映画化。カンヌ映画祭監督参加。◆新宿泥棒日記('69)横尾忠則、唐十郎ほか出演者多彩。◆儀式('71)ATG創立10周年記念作品、キネマ旬報ベストワン。◆愛の亡霊('78)東洋人初のカンヌ映画祭監督賞受賞。◆戦場のメリークリスマス('83)初の海外オールロケ作品。デビッド・ボウイ、ビートたけし、坂本龍一出演。(三上博史が端役で出演)◆御法度('99)13年ぶりの劇場作品。松田優作の遺児・龍平、崔洋一監督ほか出演者多彩。◆既にロビーでは大島渚ポスター展を開催中。また大島渚監督の前書き、『儀式』『戦メリ』の解説を収録した新文芸坐オープニング・プログラムを現在も好評発売中。尚、5月8日からは引き続き『愛のコリーダ』を上映。(併映『BROTHER』)(I)
「世界の北野、たけしのBROTHER」の巻
(2001年・第14号・通巻17号)
さる3月17日、新文芸坐にオールナイトの特別ゲストとしてビートたけしさんが来館されました。上演前、映写室の窓からちらりとだけ場内の様子を確認すると言葉少なげに出てゆかれ、とても物静かな印象でしたが、舞台では一転いつもの爆笑トークで満員の場内を沸かせていました。そのビートたけし、いや、北野武監督の最新作が5月8日(火)より上映の『BROTHER』であります。イギリスとの合作、しかもロサンゼルス・ロケ、といういかにも“世界の北野”という感じなのですが、この映画の構想は94年『みんなーやってるか!』の撮影の最中にあり、96年には製作のジェレミー・トーマス(『戦メリ』)と接触をとっていたそうです。ワンテイク主義や派手なカット割をしないなど「ハリウッド的な定番はやらない」という撮影方法は当初、現地のスタッフ、キャストを当惑させたようですが、いつも通りにマイペースで進める様はさすがと言ったところでしょうか。さて内容の方は日本での居場所を失ったやくざの男がアメリカに留学している血のつながらない弟を訪ねて行く所から話が始まります。さあそうなりますとBROTHERとはこの兄弟のお話かとお思いになりますでしょうがそれは見てのお楽しみということで。因みにフランス版のポスターには赤い文字でANIKIと書かれておりました。併映は大島渚特集に続き『愛のコリーダ2000』となっております。(U)
見逃し禁止!『回路』vs『ザ・セル』の巻
(2001年・第15号・通巻18号)
制作前から数十カ国の公開オファーを受けるなど世界が待望の黒沢清監督作品『回路』。その『回路』がカンヌ映画祭に出品されるという嬉しいニュースに合せたように当劇場でも5/22(火)より上映。“世界の黒沢”の真価を是非確かめてほしい。■部屋の片隅にあるパソコンが突然動き出し画面に不気味なメッセージと映像を流し出す。それを見た者は部屋を赤いガムテープで封印し自ら命を絶ってしまう。その奇怪な現象に気が付いた人々は必死に逃れる術を探すが、一人、また一人と……。■『回路』は傑作『CURE』同様なぜそのような現象が起こり、それが我々にとってどういう意味を持つかというような説明がほとんどない。しかも黒沢映画の近年の傾向として作品の中に終末観のようなものが漂い、そのためか人間という像がじりじりと“恐怖”に侵食され崩れ落ちていくような哀しみ、または薄気味悪さを強く感じさせる。■『ザ・セル』は意識を失った異常殺人者の深層心理にダイブして事件の謎を解き明かそうとする心理学者の姿を描く物語だが、見応えは異常者の心理世界の映像化。もうめくるめく華麗映像のオンパレード。意外にも異常者の深層心理はとっても美しい(笑)。MTV界の鬼才として知られた監督ターセムは『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン同様インド出身。プエルトリコ人家庭に生まれ育ち今や世界の歌姫、ジェニファー・ロペスが主演し、グラマラスな彼女が身を包む豪華な衣裳の担当はオスカー受賞者・石岡瑛子と、まさに世界の異才が集結した一作でもある。■この二本、まさに見逃し禁止ですゾ!(Y)
アンケートの結果報告
(2001年・第16号・通巻19号)
◆4月始めに『上映開始後の入場制限、是か非か?』について、お客様にアンケートのご協力をお願いいたしました。その結果をご報告します。
A.上映開始直後からでも入場制限したほうがよい(22.1%)
B.今のままでよい(41.6%)
C.入場制限の開始時間を変えたほうがよい(10.2%、以上73.9%)
D.入場制限はせず、いつでも自由に入場できる(22.1%)
E.その他(入口を限定すれば自由、予告の間は自由、他)(4.0%)
◆上映開始後の入場制限は『やむを得ない』というご意見が3/4近くあり、且つ、現在行なっている《上映開始30分後の入場制限》に賛同者が多数でした。また、アルコール類の販売についてもご意見をお聞きしましたが、販売しないほうがよいというご意見が79.3%ありました。◆多数のお客様は、映画を最初から最後まで誰にも惑わされず、心安らかな気分で、快適に、スクリーンに集中して映画を観る環境を望んでいらっしゃると感じました。◆営業的には、入退場自由にすることにより途中入場のお客様が増え、各種アルコール類を販売することにより売店の売上が上がることが容易に計算できます。◆しかし、《入場制限》《アルコール類販売反対》のお客様のご意見を尊重して、目先の利益追求より“観る環境”を優先することにします。今まで通り《上映開始30分後の入場制限》にさせていただき、《アルコール類》は販売いたしません。◆お客様と共に雰囲気の良い、快適な空間の映画館にしたいと考えています。ご理解とご協力のほどをお願い申し上げます。アンケートにご協力いただき、また貴重なご意見をお寄せくださり誠にありがとうございました。(N)
推理! スリル! サスペンス! アクション! の巻
(2001年・第17号・通巻20号)
6/12(火)より上映の『サスペンスJ 日本推理サスペンス映画傑作選』、バラエティに富んだ特集後半の番組の紹介をさせていただきます。まず6/24・25は、先日のオールナイト上映でも好評を博し怪優、三國連太郎、伊藤雄之助のコンビも素晴らしい、山本薩夫監督の傑作喜劇『にっぽん泥棒物語』。同時上映は同監督の『証人の椅子』。6/26・27は雪山でのサングラスを掛けた不気味な伊藤久哉と土屋義男の息詰まる対決が見逃せない『黒い画集・ある遭難』。同時上映は同じく松本清張原作『黒い画集・寒流』。6/28・29は鈴木清順監督のリバイバル上映などでさらに注目される宍戸錠、彼の初主演作『ろくでなし稼業』と代表作の一本『拳銃〈コルト〉は俺のパスポート』、どちらもエースのジョーと全盛期の日活アクションをお楽しみいただけます。6/30・7/1は新幹線物の2本立、頭脳派田宮二郎と情念の人近藤正臣の対決、増村保造監督作品『動脈列島』と『スピード』の元ネタとも言われる(?)高倉健ほかの豪華オールスターサスペンス映画『新幹線大爆破』。7/1・2は橋本忍の脚本で小林桂樹が弁護士(それぞれ違う役)を演じる渋いサスペンス『白と黒』と『首』。7/4・5は男と女と殺意の話、成瀬作品としては異色のミステリー『女の中にいる他人』とスタイリッシュな市川崑のタッチが冴える十人の女と一人の男の話『黒い十人の女』。是非この機会に新文芸坐の大スクリーンでお見逃しなく御覧下さいませ。 (U)
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