映画館で映画を聞こう! 第二弾
(2001年・第18・通巻21号)
◆映画をスクリーンから“観る”ばかりでなく、映画にまつわるエピソードや時代背景などを“聞く”ことによって、当時の情景、雰囲気を知ることは、映画をより奥深く楽しむことになると思います。◆映画を“聞く”イベントとして、高田文夫プロデュースによる3月の土曜オールナイトで北野武、沢田研二、大瀧詠一など超豪華なゲストによる《トークショー&ゲストが選んだ映画》を五夜連続して行ない好評でした。◆その第二弾として作家吉川潮プロデュースにより7月14日から三週連続土曜オールナイトで、落語家・林家木久蔵、俳優・石倉三郎、小沢昭一がゲストで来場いたします。◆7月28日のゲスト小沢昭一は、映画俳優として『“エロ事師たち”より 人類学入門』で各映画賞の主演男優賞を独占、舞台俳優として紀伊国屋演劇賞を受賞。ラジオでも25年以上続くトーク番組に出演する一方、日本の伝統芸能、民衆芸能研究家として大学の教壇に立ち、その成果をレコードや著書に著すなど長年の幅広い芸能活動の功績により94年紫綬褒章を受章しました。◆映画俳優小沢昭一としては、数多く出演して上映機会の少ないプログラムピクチャーで、自ら命名した〈B級C級映画〉に強い愛着を持っています。『大当り百発百中』は、フィルムがありませんでしたが、こんな機会だからこそ是非上映したいという“小沢昭一的こころ”が日活を動かし、新たに現像して上映可能になった、見逃すことができない珍品であります。◆小沢昭一さんの話も興味津々ですし、木久蔵師匠と“時代劇”、石倉三郎と“健さん”との話も楽しさがいっぱいです。7月の土曜日は、映画を“観”にそして“聞き”に是非ご来場ください。(N)
そしてデル・トロはスターになった
(2001年・第19号・通巻22号)
文芸坐の8/18(土)〜24(金)は「トラフィック」「誘拐犯」の上映。そう、ベニチオ・デル・トロの2本立です。◆「トラフィック」は監督・脚色・助演男優・編集と、米アカデミー4部門を受賞した話題作です。アメリカ裏社会とメキシコを結ぶコネクション“トラフィック”をめぐる欲望と陰謀に彩られた実態に、果敢に挑んでいく男たちの社会派ドラマ。キャサリン・ゼタ=ジョーンズという花はあるものの、やはりそこは硬派で骨太の男たちの物語。M・ダグラス、D・クエイド、A・フィニー、……。いやあ、オヤジくさい。◆その中にあって注目すべきは、米・英アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、ベルリン映画祭、など本作で名だたる男優賞を軒並み受賞しまくりの、デル・トロ。初めての印象は「ユージュアル・サスペクツ」(それ以前の映画では記憶になし)で、たいそう人相の悪い役者だなぁという感想以外はなかったのに、今やアメリカじゃその名を知らぬ人はいない程の映画スター。読めませんでした。◆さて「ユージュアル…」でオスカー受賞の脚本家C・マックァリーが初監督した映画が「誘拐犯」です。主演はデル・トロ。「ユージュアル…」は抜群に面白いサスペンスでしたが、「誘拐犯」は比較的ストレートなアクション。しかしそこは曲者マックァリー。ただのアクションじゃない。徒歩より遅いカーチェイスやビーチフラッグのような銃撃戦。どうです? 超スローなのにスリル満点のカーチェイス、観たいと思うでしょ?(S)
英国ワーキング・クラスの親父たち
(2001年・第20号・通巻23号)
9/1(土)〜7(金)は「リトル・ダンサー」と「シーズンチケット」、英国ワーキング・クラス(労働者階級)の少年を主人公にした笑いと涙の2本立です。◆「リトル・ダンサー」はダンサーを目指す少年の姿を描いた、S・ダルドリー監督の長編デビュー作。価値観の古い炭鉱の男を父親にもつ少年が父との葛藤の中で自分の夢を実現しようとする物語は、昨年公開「遠い空の向こうに」を思い起こさせる(どちらも傑作です)。父親は息子に立ちはだかる壁として登場するが、同時に息子への愛情も大きい。この愛情ゆえにとる父親の行動が泣かせるのだけれど、予告編にもあるスト破りのくだりは何度見ても胸が熱くなる。この映画、2度3度と繰り返し観る人も多いと聞くが、うなずけますなぁ。初見の方もリピーターの方も、どうぞご覧ください。◆「シーズンチケット」は「ブラス」のM・ハーマン監督最新作で、サッカーチーム“ニューカッスル・ユナイテッド”のシーズンチケットを手に入れるために奮闘する少年2人の物語。“遠い昔、父親と出かけたあの日のようにまたサッカーを観にいくんだ……”という想いを教室で語る場面は、ケン・ローチ監督の「ケス」を思い起こさせる(どちらも傑作です)、泣けるシーンなのです。そうなると当然この映画でも“父親”がキーワードになってくるのですが、こっちはただの暴力オヤジ。で、この映画“父親”をとんでもない方法で料理してやや強引ともいえるハッピーエンドを迎えます。どう料理するかは観てのお楽しみ。(S)
《新“名画座”》へのチャレンジ
(2001年・第21号・通巻24号)
◆昨年平成12年12月12日に新築オープンした新文芸坐は、経営者が変わっても旧文芸坐の精神を引き継いで“良質の映画”を“低料金で”“数多く”観せる興行を行ってきました。◆新文芸坐の基本姿勢は、《21世紀へ、新“名画座”の創造》をテーマとして3項目の目標を設定し、その中に『さまざまな可能性にチャレンジしよう』という項目があり、『洋画、邦画、新作、旧作の垣根を越え、さまざまな映画を上映する』という行動指針があります。◆柿落とし以来、番組の決まっている8月末日までの約9ヶ月間で335タイトルの映画を上映いたしました。ロードショー(=RS)終了直後の作品を上映したことはありますが、RS、封切り作品の上映はありません。すべて評価、内容の判っている旧作映画です。◆新作の上映に踏み切れなかったのは、配給会社から入場料金を他のRS、封切り館と同一の1,800円にすることが条件にあったからです。この世界一高いと言われる入場料金をお客さまからいただくのに抵抗がありました。◆現状の入場料金が不当に高く、割引システムに疑念を抱く配給会社もあります。その配給会社が〈ベストプライス〉として当映画館と同じ一般入場料金1,300円で新作を公開したいと提案してきました。◆新文芸坐は、《新“名画座”》を構築するチャンスと考えて新作上映にチャレンジしてみることにいたしました。上映作品は極端に少なくなりますが、後世に語り継がれる“良質の”映画に真っ先に巡り会えることをお客さまと共に期待したいと思います。◆第一弾は、10月上旬公開予定の人気タレント米倉涼子初主演の『ダンボールハウスガール』(監督は『人でなしの恋』の松浦雅子)です。ご期待下さい。(N)
「中国映画祭2001」開催!
(2001年・第22号・通巻25号)
当館の前身、文芸坐では1983年から1990年まで毎年秋、徳間書店社長、故徳間康快氏のプロデュースで「中国映画祭」を行なってきました。9月20日はその徳間康快氏の一周忌となります。当館では徳間書店のご協力のもと、日中両国の民間レベルの文化交流に尽くされた氏の志を受け継ぎ、9月15日より「中国映画祭2001」を開催することになりました。■今回の上映作品は26作品。チャン・イーモウ監督の鮮烈デビュー作『紅いコーリャン』に感動ラブストーリー『初恋のきた道』。世界的巨匠チェン・カイコー監督のデビュー作『黄色い大地』。シエ・チン監督作品は、文化大革命を批判し日本でも大ヒットの『芙蓉鎮』に歴史巨編『阿片戦争』。魯迅原作『阿Q正伝』に老舎原作『駱駝の祥子(しゃんつ)』と、盛りだくさんの内容です。さらに今回は中国映画の最も新しい波、いわゆる第六世代と呼ばれる映画作家たちの作品を『ふたりの人魚』など4作品上映します。■ところで日中両国の間に例年になく波紋を投げかけた靖国参拝や教科書問題。これらの問題を思うとき、日本軍に抵抗する村人たちを素晴らしい映像で描く『紅いコーリャン』を含め、例えば映画を通しわれわれがさまざまな中国の人々の姿に触れていくということも、決して無駄なことではないのではないか。迂遠な方法かもしれないけれど、ごく普通の市民レベルでの、相互理解への第一歩がそこにあると思うのです。■清朝中国と英国のアヘン戦争から辛亥革命、日中戦争を経て中華人民共和国建国、文革、そして現代中国の生々しい姿。中国の歴史、国のかたち、そこに生きる人々。さまざまな中国をその目ではっきりと触れてみてください。(Y)
日本映画“Best Price”〈適正価格〉ロードショー
(2001年・第23号・通巻26号)
「映画料金、もっと安くてもいいんじゃない」、「この映画、興味はあるけど1800円出すのはチョッと」。こんな思いを抱いたことのある人は決して少なくないはず。■当館では10月上旬より、フレッシュで個性豊かな日本映画4本をロードショーします。それにあたりわたしたちは配給会社シネカノンと“適正入場料金とは?”と、とことん考えました。結論は思い切ったプライスダウン。入場料金1300円です。くしくもこの料金はわたしたちが行なってきた名画座二本立て上映と同じ料金です。■第1弾はドラマなどで人気急上昇の米倉涼子が映画初主演の『ダンボールハウスガール』。第2弾『みすず』は26歳で夭折した天才童謡詩人・金子みすずの生涯を『地雷を踏んだらサヨウナラ』の五十嵐匠監督が美しい映像で綴った一作。第3弾は『TATTOO〔刺青〕あり』('82)などの高橋伴明監督、3年ぶりの新作『光の雨』です。テーマは連合赤軍事件。同時代を生きた高橋伴明の渾身の一作。宣伝根性抜きで本年度ベストワン有力候補だと思います。そして現在話題沸騰中の小説『白い犬とワルツを』(テリ―・ケイ原作/新潮文庫)の映画化作品が第4弾。“妻をなくした老人の前にあらわれた白い犬。この犬は老人にしか見えなったが、しかし……”。この感動ストーリーがどのような映画となって出来上がるか興味も尽きないところ。■どれも決して大作ではない。でも作り手たちの意欲が画面にみなぎる意欲作ばかり。「昔はよく日本映画を観たけどねぇ〜」というあなた。「オレはハリウッド大作専門」というキミ。もう一度日本映画に戻ってきてみませんか。試してみましょうよ。映画館の暗闇で新しい日本映画の息吹に触れてみて。(Y)
伝説のトークライブ『銀幕同窓会』が本になった!!
(2001年・第24号・通巻27号)
◆昭和30年代(1955)〜40年代の映画は、「娯楽の王様」であった。近年シネコンブームで映画館は増えているが、当時、映画館は地方の小さな町にも必ず在り、現在の3倍の約8千館もあり、国民一人当たり年間10回は映画館に通っていた。(昨年は年間1回強である。)◆その頃のことを高田文夫は、「終戦直後に生まれた我々団塊の世代が子供だった頃、茶の間にはまだテレビは無く、娯楽と言えばまずラジオ、そして何よりも映画だった。映画館こそが、我々の本当の教室だった。我々は映画の中から様々なことを学んだ。愛と勇気と正と邪と涙と笑いとラブシーン……。学校ではなかなか教えてくれない大切なことを、暗やみの中へ学びに行った。」(『銀幕同窓会』の序文〈予告編〉にかえて、より抜粋)と書いている。◆その高田文夫が幹事役を買って出て、イッセー尾形、ビートたけし、大滝詠一、高平哲郎など同世代の仲間との同窓会を今年の3月毎土曜日にトークショーと映画上映のオールナイト『高田文夫と五人の団塊者〈銀幕同窓会〉み〜んなオールナイトで大きくなった』を新文芸坐で行った。◆“聞く達人”高田文夫の軽妙洒脱な司会で、大爆笑の中にも団塊世代の映画へのオマージュ、映画遍歴など盛り沢山な楽しいライブであった。場内は沸きに沸いたが、チケットは前売り即完売のため、生で聞けたのは満席の300人のファンのみであった。◆そこで高田文夫は、この豪華な顔合わせによる映画本は他にないこともあり、伝説のライブの感動をもっと多くの映画ファンにも贈りたいと、その模様を収録した本を編纂してしまった。丁々発止と面白く、可笑しい会話の中に、感性豊かな青春時代を映画全盛の時に過ごした団塊世代の映画観、映画評、社会風俗など貴重な歴史的な証言がいっぱいです。映画ファン必携の書、懐かしい旧文芸坐が表紙の『銀幕同窓会』は、1,500円で新文芸坐売店で発売中!! (N)
日本映画の名作が続々!
(2001年・第25号・通巻28号)
“ベストプライス ロードショー”第1弾、『ダンボールハウスガール』がインターネット「えいがなび」の予告編人気ランキングで初登場第1位! というわけで話題沸騰中の『ダンボールハウスガール』はいよいよ10/6(土)より公開だ。■ところで新文芸坐はもう名画をやらないのかとご心配のお客様、いえいえそんなことはございません。モーニング&レイトショーで盛りだくさんの連続上映を行ないます。■第1弾は10/6より「『おかえり、寅さん!』スクリーンに帰ってきた渥美清」特集。96年8月、“寅さん”こと渥美清が亡くなって早いものでもう5年。おっちょこちょいだけど人がよく、決して豊かではないけれど悲嘆に暮れるわけではない、そんな愛すべき庶民を演じたら彼の右に出た者なし! ■メインの上映作品はご存知『男はつらいよ』シリーズ。今回上映は初期の作品群。後期の好好爺めいてきた“寅さん”と違い、舌鋒鋭くユーモアの中にも毒があるトンガッた“寅さん”の姿を存分にお楽しみあれ。またこのシリーズを観たことがない若い世代の方々、それから食わず嫌いの方々に是非とも観てほしい。特に1作目と浅丘ルリ子がマドンナの3部作はハンカチ必携の絶品ですゾ! ■いうまでもなく“寅さん”だけが渥美清ではない。今回の上映作品の中でも『沓掛時次郎 遊侠一匹』は異色作。加藤泰監督、中村錦之助主演の傑作股旅モノで、渥美清は錦之助の弟分で途中で惨殺されてしまう。しかし渥美清の名演によって後半の錦之助の苦渋がより鮮烈になった。評論家の間でも評価が高い逸品である。■第2弾は内田吐夢監督特集で『大菩薩峠』や『宮本武蔵』シリーズなどを上映する予定。どうぞお楽しみに!! (Y)
正真正銘の巨匠・内田吐夢
(2001年・第26号・通巻29号)
◆映画界最盛期には週替わり新作2本立て封切りという過密スケジュールに追われる各映画会社の中にあって、マイペースで製作できる巨匠監督たちがいた。その代表格は言わずと知れた、松竹の小津安二郎(1903〜1963、1927監督昇進)、東宝の黒澤明(1910〜1998、1943監督昇進)である。そして東映には内田吐夢(1898〜1970、1927監督昇進)がいた。◆特に、片岡千恵蔵主演の『大菩薩峠』(三部作)、中村綿之助(後の萬屋綿之介)主演の『宮本武蔵』(五部作)という連作物を一年一作のペースで製作・公開したのは、量産体制下の東映では破格の扱いである。◆その理由は、その重厚な演出ぶりを観れば一目瞭然。例えば『大菩薩峠・完結篇』のラストでは、嵐の日にロケしようと主張するスタッフに「オレは単なる川の濁流を撮りたいんじゃない、河に龍之介が呑まれる“芝居”を撮りたいんだ」と大掛かりなセットを組ませた大特撮を敢行した。◆私見ながら、『宮本武蔵・一乗寺の決斗』の武蔵(1人)対吉岡一門(総勢73人)の決闘の場面は、『仁義なき戦い』の抗争シーンもブッ跳びの、殺気みなぎる最高の立ち回りであり、遺作『真剣勝負』の武蔵対宍戸梅軒の対決は、『巨人の星』そこのけの心理戦が展開するガチンコ勝負。◆今回は、戦前の傑作『土』と、古巣の日活で撮った『自分の穴の中で』のシリアスドラマ、東映時代唯一の任侠映画『人生劇場・飛車角と吉良常』を合わせ12作を、10/28(日)から12/7(金)までモーニング&レイト上映致します。ぜひ、巨匠・内田吐夢こだわりの“演出”をご堪能下さい。(I)
11月の土曜日は『談志ingオールナイト』でお楽しみ!
(2001年・第27号・通巻30号)
◆談志は熱烈な映画ファンとして知られている。弟子の中には監督をしたり、出演したり、批評を書いたり、本を出すものもいる。また、Bの有名人コースには、世界の北野武をはじめ、あの高田文夫、映画監督山本晋也、歌手ミッキー・カーチスなどがいる。◆3月、7月の〈トーク&映画〉に続く第三弾として談志と一門の弟子が出演する「落語立川流映画祭*談志ingオールナイト〈銀幕こそ我が青春〉」を11月の土曜オールナイトでお贈りいたします。◆3日は歌手ミッキー・カーチス。映画全盛の1958年、第1回「日劇ウエスタン・カーニバル」に平尾昌晃、山下敬二郎らと出演、爆発的なロカビリーブームを巻き起こし人気歌手となる。同時に映画にも出演、市川崑監督の『野火』(1959)で俳優としての素質を評価される。今や日本映画を代表する個性派脇役である。ゲストはジェリー藤尾。◆10日は快楽亭ブラック、ゲストに唐沢俊一。映画通の二人が選んだ時代劇映画は見逃せない珍品ばかり。トークショーは、もっと見せたい時代劇があったのだが、ジャンクされて見せられないウップンを○秘ビデオを見ながら発散させようという深夜ならではの趣向です。◆17日は山本晋也。“ほとんどビョーキ”を流行語にしたが、かつては成人映画で傑作コメディを撮りピンク映画の巨匠といわれた。1975年文芸地下劇場で「山本晋也ワンマンショー〈君は晋也を見たか!〉」を特集。成人映画館でしか観られなかったピンク映画を女性客も入りやすい一般映画館で上映した画期的な興行であった。◆24日トリは談志。談志流の鋭い舌鋒で映画を熱く語ってくれるだろう。ビリー・ワイルダー、フレッド・アステアの熱烈なファンである談志が、実に渋い映画を選んでくれました。これも上映したい候補作品がジャンクのための苦渋の選択の結果なのです。11月秋の夜長の土曜日はゆっくりと映画を“聞いて”“見て”楽しんでください。(N)
『光の雨』〈12/8(土)より衝撃のロードショー〉
(2001年・第28号・通巻31号)
革命パルチザンが1972年に起こした、同志殺人事件をテーマにした映画の企画が進行していた。監督の樽見はその“革命戦士”たちと同世代だが、彼らを演じる若いキャストは劇中の「総括」といった言葉の意味がよくわからず戸惑いを見せる。それでも激寒の知床でのセットで撮影は順調に進んでいるかにみえたが、集団リンチを思わせる凄惨な総括シーンの撮影の後、樽見は突然姿を消してしまう……。■お気づきの方も多いと思う。革命パルチザンの同志殺人事件とはまさしく連合赤軍事件のことだ。武装蜂起を目指しながら山岳アジトで次々と同志を殺害し、ついにあさま山荘に人質をとって篭城、警察と銃撃戦を行なった、あの事件である。■だが実はこの映画は“あの事件”の再現ではない。学生運動も、事件のこともよくわからない若いキャストが台本を前にして、ある者は恥らいながら、ある者はやけ気味に「まるで分からない……」とつぶやく。一方で当時を知っている世代のスタッフは、映画のテーマとしての“あの事件”との距離の取り方に困惑する。つまり映画『光の雨』とは“いま”の中にある“あの事件”を巡るさまざまな視線の交錯だといえる。■当時を生きた一人でありながら監督・高橋伴明は、当時を特権的にノスタルジックに物語ることを自ら禁じた。この映画を観て事件への納得のいく説明を得よう思ったならば肩透かしを食う。劇中劇という作法を採用し、いまの時代の空気にさらされることにより“真相”とやらは宙に吊られた。■手かせ足かせを自らに課せながらも歴史と対面しようとしたその意志が呼んだものか。この映画の中に、思いかけず、わたしには、ある新鮮な風のようなものが感じられた。そしてその風は映画という真実かと夢想してみた。(Y)
映画『光の雨』を“総括”する! 『光の雨』公開記念オールナイト
(2001年・第29号・通巻32号)
◆「連合赤軍」(映画『光の雨』では「連合パルチザン」。以下、カッコ内は映画内での呼称)は、全共闘運動が求心力を失いつつある昭和46(1971)年7月15日、武力闘争でしか“革命”が成功しないという思想の下に、共産主義者同盟赤軍派・中央軍(赤色パルチザン)と京浜安保共闘・人民革命軍(革命共闘)によって結成される。警察の目を逃れ、彼らは人里離れた山岳アジトで共同生活をおくるうち、“総括”と称する自己批判をメンバー内に強要し、リンチの果て死に至らしめた。革命を夢見た20代の若者たちは、なぜ、14名もの同士を殺してしまったのか……。◆いわゆる「連合赤軍事件」初の映画化となる、映画『光の雨』は、このテーマに迫った立松和平の小説『光の雨』の単なる映画化ではない。連合赤軍メンバーと同年代の若手俳優を起用し、この事件を映画化しようとする「今の時代」を生きる人々の“事件=映画化”との葛藤をも描いているのが、映画『光の雨』ならではの見どころだ。◆12月8日からの本作公開に合わせて企画した「公開記念オールナイト」も、単に事件に焦点をあてた関連番組ではない。◆12/1(土)『光の雨』のメガホンを執った高橋伴明監督の過去の作品、12/8(土)当時公開された映画、12/15(土)赤軍派、連合赤軍を題材にした映画、12/22(土)全共闘世代の荒井晴彦氏が選んだ映画、を通して“『光の雨』映画化への想い”“あの事件”“あの時代”を多角的にみつめようというもの。◆前記2名の他、上映作品はもとより、“あの頃”を語るには正にうってつけのメンバーによるトーク付き!(I)
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