“名画座”再開! 2002年新春はアジア映画オンパレード
(2001年・第30号・通巻33号)
来年1/2(水)よりは、心に染み入る感動の中国映画『山の郵便配達』をモーニング&レイトショーにて。さらに1/12(土)からの「ニュー アジアン シネマ ウィークス」特集は名画座スタイルに戻って1日3〜4回上映の二本立てです!◆今、やはり旬はアジア映画でしょう! さらに今年は韓国映画ラッシュ。18本のうち7本が韓国映画でちょっと偏ったかなぁ? でも涙をのんだ韓国映画も多数あって、つまり選りすぐりのセレクトでもあるわけ。◆ざっと各番組の紹介を。上映順に、(1)『イルマーレ』&『純愛譜』は時空を越える愛のファンタジー。夢見がちな貴女のためのプログラム(はーと)(2)冷戦後の今でも平和と危機は紙一重の極東社会派サスペンス『ユリョン』&『JSA』。(3)韓国新世代の性と暴力を鮮烈に描く(でも結構笑える二本立てでもある)『アタック・ガス〜』&『LIES/嘘』。(4)ベトナムといえばこの人、トラン・アン・ユン監督の2本は『夏至』&『青いパパイヤ〜』。『シクロ』はまたの機会に……。(5)『グリーン・〜』&『キャラバン』の合言葉は“西洋の血が混じるとアジアもファッショナブル”(トラン・アン・ユン然り)。映像美+魅惑の音楽に酔いしれて。(6)香港映画からは『星願』&『流星』。まさにハンカチ必携(ホント!)。そして(7)『春香伝』&『ナンナーク』は深ぁ〜い愛の二本立て。(8)『りんご』&『ブラックボード』の監督サミラは、21世紀の映画を担う一人であることがこの二本で証明されてしまった弱冠21歳! そしてトリは(9)円熟の極みのホウ・シャオシエンに、いつまでも初々しいエドワード・ヤンの台湾対決『フラワー・オブ・〜』&『ヤンヤン〜』だ。◆以上9番組。前売り3回券、5回券も絶賛発売中!(Y)
“オンリー1”の映画館を目指して再出発!
(2001年・第31号・通巻34号)
昨年12月12日にオープンした新文芸坐は、毎日替り二本立ての特集番組の上映から、入場料1,300円のベストプライスロードショーの長期間一本立て上映まで様々な番組を提供してきました。上映中の『光る雨』は、1月11日に終了いたします。その後は、二本立て番組を中心にした従来の番組編成にいたします。◆『映画の感動は、映画館のスクリーンで!』『一人でも多く、映画ファンを増やすこと』『さまざまな可能性にチャレンジする』というオープン時の初心に戻り、映画を見る環境、雰囲気に配慮し、サービス面、番組編成で様々な付加価値を付けて、スクリーンから感動、喜び楽しさを感じ取っていただける“オンリー1”の映画館を目指していきたいと考えています。◆映画全盛時代の60年代には映画館が約7,800館もありましたが、『ベン・ハー』『十戒』などの洋画の大作ロードショーは、東京1館、大阪1館だけでしか公開されていませんでした。大多数の映画館は、ロードショー、封切りの公開から遅れて二本立て、三本立ての興行をしていました。◆現在の映画館は全盛期の1/3の2,600館になってしまいましたが、正月映画『ハリー・ポッターと賢者の石』は、全国で4館に1館以上に相当する680館で公開されています。その他の映画館も一本立てのロードショー興行をしています。二本立て、三本立てで上映している映画館は、東京、大阪を中心に数館あるだけの逆転状況になっています。◆新文芸坐も少数派映画館の一館ですが、希少価値だけの存在ではなく、映画ファンの心を豊かにし、生活習慣の中に存在する映画館になるよう精一杯努力していきたいと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。(N)
謹賀新年
(2002年・第1号・通巻35号)
新年あけましておめでとうございます。
映画を通して、お客様の心身のリフレッシュと明日への仕事の糧となることを念願し、上映作品、イベントなどから数多くの感動、刺激、安らぎの番組を提供できるよう努力していきたいと考えています。
今年もスタッフ一同、元気で、明るく、笑顔でお待ちいたしておりますので、友人、知人、ご家族お誘いあわせのうえご来場くださいますようよろしくお願い申し上げます。
2002年1月1日
新文芸坐スタッフ一同
《性と生を見つめる映画集》から
(2002年・第2号・通巻36号)
◆豪華女優を配したオムニバス風の「彼女を見ればわかること」と、映画賞総なめ「オール・アバウト・マイ・マザー」は、どちらも女性ファンに好評を博した作品。けど監督はどちらも男性です。ちなみに「彼女を…」のロドリゴ・ガルシア監督はノーベル賞作家ガルシア=マルケス(映画化作品もあるので映画ファンにおなじみ)の息子だとか。◆ご存知「ロッキー・ホラー・ショー」はカルト的人気を誇る、ロック・ミュージカル。2/5最終回のみパフォーマンス可です(協力:LIP'S)。ただし火気や水鉄砲、お米などの持ち込みはご勘弁を。あっ、網タイツはOKです。◆「司祭」は「トレスポ」前のロバート・カーライルが出演。これは「同級生」との英国映画2本立。やはりこのジャンルに英国は欠かせない。◆数々の映画賞に輝く「ゴッド・アンド・モンスター」(あのクライヴ・バーカー製作総指揮)と、ヴィスコンティの名作「ベニスに死す」の“変奏曲”ともいわれる「ラブ&デス」の2本立。老いと、若い生命力にあふれた美をモチーフにした作品。◆最新作「ハッシュ!」が正式公開を待たずにキネ旬ベストテン第2位に選出された橋口亮輔監督の「渚のシンドバッド」と「二十才の微熱」。「渚の…」ではCDデビュー前の浜崎あゆみが出演、印象に残る演技を見せている。橋口監督の劇場用作品はこれ2本だけなので、未見の人はぜひこの機会にフィルモグラフィを制覇してしまおう!(S)
万国のビックリモンスターが真夜中に大集合の巻
(2002年・第3号・通巻37号)
2/2怪獣映画の代表選手豪華4本立てで幕開けする今月の新文芸坐オールナイト、「万国ビックリモンスター大集合」。2/9はガイナックス(エヴァンゲリオン等)の設立の基盤となったアマチュア集団のDAICON FILM製作の『八岐之大蛇の逆襲』。特撮は平成ガメラシリーズの樋口真嗣。『キングコング』の製作者ラウレンティスにケチがつき長らくお蔵入りだった女版キングコング『クイーン・コング』。こちらはスクリーンからはめったに聞けない広川太一郎のマシンガントークが炸裂する、「超訳日本語バージョン」による上映です。韓=米合作による巨費を投じた韓国版ゴジラ『怪獣大決戦ヤンガリー』は韓国での一般公開後、約3億円も掛けて特撮シーンを作り直したというインターナショナル・バージョンです。2/16は本田博太郎の熱演が光る東映超大作『北京原人 Who are you?』。CGマンモスがグニャグニャと草原を駆け抜けます。そして『飛びだす冒険映画 赤影』はTVのダイジェストに3D用に新たに撮影した部分(数分間)を加えた中編です。全体の上映時間の一割にも満たない赤(左)と緑(右)のめがねをかけて見る3Dの効果は少々?(当時の専用めがねを掛けて見ました。当日当館ではめがねをご用意いたしません。)ですが、3D以外のTVダイジェストシーンでも往年の彼らの雄姿を十二分に堪能できます。2/23は怪物と化したコンドームをホモ刑事が追う異色の刑事物『キラー・コンドーム』。クリーチャーデザインは『エイリアン』のH・Rギーガー。巨大化したギリシャ料理ムサカ(ケーキではない)が人類を襲う『アタック・オブ・ザ・ジャイアントケーキ』などなど万国ビックリモンスターが一堂に会します。この機会を是非是非お見逃し無く。 (U)
魅惑のシネマクラシックス inspired by 山田宏一著「新編美女と犯罪」
(2002年・第4号・通巻38号)
わが心の美女、宮城千賀子が忘れがたい男装の犯罪的ヒロインを演じた時代劇の未完の傑作『神変美女峠』(1951)に語呂を合わせたつもりの拙著「新編美女と犯罪」なのだが、じつは『神変美女峠』は前編にすぎず、別の女優で後編『又四郎笠』が同じ年につくられていたことを識者から教えていただいた。恥ずかしながら、惚れた女優にのみうつつをぬかして、後編があるとはゆめにも思わなかったのである! 歌の文句ではないけれど、思い違いも恋のうち、か。
「映画とは女と銃だ」とD・W・グリフィスは言った。以来、ときにセックスと血、エロスと戦争、美と暴力、等々と言い換えられつつも、映画史はこのグリフィスの定義とともに歩んできた。私もまた、それを「美女と犯罪」と言い換えてみただけだ─映画芸術の父グリフィスに、そして映画史のすべてに、愛をこめ、心をこめ、敬意を表して。
「女の出ない映画ほど寂しいものはない」とフランソワ・トリュフォーは言った。
「美が、肉体が、涙にうるんだ瞳が、愛する女の柔らかい肌の感触が、映画のすべてなのだ」とジャン・ルノワールは言った。
映画館の闇に入りこみ、スクリーンにうごめく光と影に包まれて、モノクロの、あるいはカラーの、めまいのような映像に魅せられ、上昇と下降と追いつ追われつの夢の無限感に陶酔する幸福は映画ファンならではの特権だろう。だからこそ、乱暴な引用だが、艶なる宴の詩人のメッセージをまねて─来たれ、大いなる魂よ! われはきみをよぶ、きみをまねく。
山田宏一(映画評論家)
フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮しているっ!
(2002年・第5号・通巻39号)
◆4/20(土)から上映の『仄暗い水の底から』と『ジーパーズ・クリーパーズ』。今回は「ジーパーズ…」のご紹介。◆“アメリカの田舎”と聞いて映画ファンが連想するのはやはり“殺人鬼”。この映画、23年に一度大量の行方不明者が続出するという、田舎の"都市伝説”が物語の発端です。わが国の都市伝説といえば、“口裂け女”や“人面犬”、最近では米同時多発テロと絡めたイスラム人ネタなどが有名です。“口裂け女”にいたっては単なる噂にとどまらず、一部の小学校で集団下校が実施されるなど実害(?)もあったと聞きます。いや、これも都市伝説かも。◆物語前半はスピルバーグの『激突』を思わせる展開で、好奇心ゆえに主人公たちが禍へと近づく様に手に汗にぎります。この前半は、観た人の98%が面白いと回答したという調査結果が出ています(当社調べ)。……さあ後半。前半とはガラッと変わる展開で、これは評価の分かれるところです。しかし私は面白かった。2本立て観てるみたいで。とくにアレの初登場シーンでは「コイツが○○○○か! こりゃ手強そうだぁ」と身を乗り出しましたね。◆本作のウリは上記タイトルにあるとおりです。監督のヴィクター・サルヴァは佳作『パウダー』が一部に高評価されていたとはいえ知名度低し。役者も無名。が、観れば面白そう。こういう映画に1800円払うのはギャンブルだと思う方。1300円2本立ての当館で観ることを、強く、強く、オススメします。(S)
完璧な“恐怖”、完璧な“映画”
(2002年・第6号・通巻40号)
■4月20日(土)から1週間、『ジーパーズ・クリーパーズ』と共に上映するのは、日本中に“貞子”というトラウマを植え付けた原作・鈴木光司、監督・中田秀夫の『リング』コンビによる『仄暗い水の底から』。■古マンションに引越してきた母子が遭遇する怪現象…と書いただけで、「低俗なホラー!」と糾弾する声が聞こえてきそうだが、ここで断言しましょう。この作品を手抜きなしの娯楽作品とした中田監督の恐怖演出は、もはや世界のトップレベルだ!(『リング』の米国リメイク版は本家を超えようと熟考を重ね完成間近)。■中田演出はあくまでベタ。王道中の王道。だからコワイ。『女優霊』から進化してきた“見せない怖さ”と“見せる怖さ”のバランス感覚はこの作品で頂点に達した模様。それは、出ずっぱりの黒木瞳に感情移入すればするほど恐怖と焦りを増幅させる。この手際が実に見事なのです。■サスペンスやドキュメンタリーも撮れることは実証されている監督が、あえてイベント臭のする“ホラー映画”を撮る。そしてそれを完璧に近い形で完成させる。この心意気、どこかかつての名匠達が、プログラムピクチャーで傑作を連発した図式を彷彿とさせます。■『仄暗い水の底から』は完全なホラー映画。そして演技・撮影・美術・音楽まで、職人がこだわりぬいた完璧な映画。だから私は胸を張って、かつ大きな声でお薦めするのです。“映画”ファン必見!(H)
『バニラ・スカイ』『板妻映画祭』の入場料金について
(2002年・第7号・通巻41号)
今年のゴールデンウィークは、4/27からUIP配給『バニラ・スカイ』『ブリジット・ジョーンズの日記』の〈二本立〉の上映をいたします。又、阪妻の愛称で親しまれてきた大スター阪東妻三郎の生誕100周年を記念して5/18より4週間にわたり『阪妻映画祭』の特集上映をします。◆この2番組は、配給会社から一般入場料金を1,500円に設定するように要請されました。『バニラ・スカイ』は、ロードショー(RS)終了直後の上映になるため、『阪妻映画祭』は邦画5社初めての共同企画で、新文芸坐を皮切りに全国展開しますので統一料金を、という理由からです。お客さまには大変恐縮でございますが、ご了承の上ご来場いただきたいと存じます。◆全盛時代の映画は、RS公開後は下番館と言われる二番館、三番館、名画座と順序よく流れ、〈二本立〉〈三本立〉と上映本数が増え、それに反比例して入場料金が安くなっていきました。現在は、ビデオ、DVD、BS、CSの衛星放送などTV画面で映画が観られるようになり、下番館は全国でも数館だけになってしまいました。映画はRS館で観るか自宅TVで観るかの状況にあります。◆映画を観る環境は急激に変化していますが、新文芸坐は《感動はスクリーンから》をモットーにRS終了直後の映画から旧作の特集番組まで幅広く上映し、お客さまの要望に応えたいと考えています。配給会社からの条件によっては入場料金を変更せざるを得ない場合もあります。ご理解いただきたいと存じます。(N)
『阪妻映画祭』で講談師・神田北陽、活弁に初挑戦!!
(2002年・第8号・通巻42号)
◆“阪妻”の愛称で親しまれ日本映画史上に燦然と輝く大スター阪東妻三郎は、今年生誕100年にあたります。これを記念して5月18日から4週間にわたって「阪妻映画祭」を企画いたしました。阪妻が活躍した大正時代から亡くなった昭和28年にかけて映画は、〈大衆娯楽の王様〉と例えられた最も隆盛の時代でした。艶やかな容姿と豪快な殺陣によって“剣戟王”と称された阪妻は、人気No.1のスターでした。◆『阪妻映画祭』は、邦画五社が結集しマツダ映画社、京都映画祭の協力を得て、阪妻主演作品など57本を連続上映いたします。その中には、昨年ロシアから里帰りした幻の映画と言われた『鍔鳴浪人』前後篇と『狼火は上海に揚る』を始め、GHQに接収され返還されたフィルムや、ネガが消失してしまったサイレント映画の断片を集めて復元したフィルム上映など大規模な映画祭です。◆イベントは、阪妻の長男で俳優の田村高廣さんの初日舞台挨拶と、中日には映画評論家山根貞男さんのトークショーがあり、サイレント映画には澤登翠と講談師・神田北陽の活弁付き上映もあります。◆北陽は、活弁に初挑戦です。現代的な感覚で自演の新作を創り、リズミカルで歯切れのよい口調と明るい芸風で新宿紀伊国屋ホールをひとりで超満員にしてしまう実力者です。この夏、抜擢されて〈三代目神田山陽〉を襲名して真打ちに昇進します。映画ファンには馴染みの薄い芸人ですが、大衆古典芸能界では将来を最も嘱望されている若手の一人です。まずは、『阪妻映画祭』予告篇のナレーションで初見参(?)いたしますので、お聞きください。(N)
『阪妻映画祭』で活弁に初挑戦する講談師・神田北陽
(2002年・第9号・通巻43号)
“阪妻”生誕100年を記念して5/18より4週間『阪妻映画祭』を開催いたします。上映作品の中には、昨年ロシアから里帰りした『鍔鳴浪人』前後篇、『狼火は上海に揚る』やGHQから返還されたフィルムを始め、大正時代のサイレント映画からトーキーに移行して剣戟王と謳われた戦前、現代劇にも新境地を開いた戦後と、映画全盛期時代の阪妻主演作品など57本を連続上映いたします。◆イベントには、阪妻の遺児で俳優の田村三兄弟(高廣、正和、亮)の長男、高廣さんの舞台挨拶、映画評論家山根貞男さんのトークショー、サイレント映画には、澤登翠と講談師・神田北陽の活弁付き上映もあります。◆活弁に初挑戦する北陽は、講談界衰退の象徴的出来事であった講談定席「本牧亭」が閉場する日に入門した変わり者です。修行の場を演芸界だけでなく、演劇、音楽など広範囲に求め、旺盛な向上心と好奇心によって現代的感覚を磨きました。自演の新作を創り、リズミカルで歯切れの良い口調と明るい芸風で紀伊国屋ホールをひとりで満員にする人気者です。この夏、抜擢されて師匠の名跡〈神田山陽〉(三代目)を襲名して真打ちに昇進する実力を兼ね備えた芸人です。大衆古典芸能界では将来を嘱望されている一人です。◆お年寄りが大好きな北陽は、80歳を超えていた先代に入門し、今は、96歳の島田正吾にハマっていて、毎年舞台を見ては感激に涙している好男子です。活弁には前々から興味を持ち、老弁士を静岡まで訪ねたこともあり、念願が叶い張り切っています。まずは、『阪妻映画祭』予告篇のナレーションをお聞きください。(N)
記憶喪失の疑似体験「メメント」
(2002年・第10号・通巻44号)
まあとにかく観てください。こんなに知的でスリリングな映画はそう滅多にはないぞ。
◆まず前向性健忘という症状を説明しなくては。この障害、発症する以前の記憶は完全なのだが、新しい記憶を覚えていられないというもの。主人公は妻が殺されたときのショックで発症、10分以上の記憶が続かないのだ。脳裏に刻まれた“犯人への復讐心”が最後の記憶で、それ以降は10分前のことは覚えちゃいない。そんな男の復讐劇とは如何なるものか…。◆監督・脚本のクリストファー・ノーランは、主人公の記憶障害を観客にも疑似体験させるという試みに挑戦し、成功している。観客に見せるシークエンスを並び替えることによって、観客は記憶喪失を体験できるのだ。図に示すと以下のとおり。
時間の流れ ─────────────────────→
場面の順番 ― … → ─(4)→ ─(3)→ ─(2)→ ─(1)→
例えば(2)の場面が始まる時点で、主人公は直前の(3)の記憶がない。観客も(3)は見せられていないから知らない。自分がなぜそこにいて、一体何をしようとしているのか? 主人公も観客も“???”状態。「ここは何処?」「オレは今、誰と話している?」「オレは何故走ってる?」「オレはこのメモに何を書こうとしていたんだ?」 各場面は概ねこんな始まり方をする。そして映画の最後=物語の最初には衝撃の…。◆全世界でリピーター続出の「メメント」。7日間の上映ですので、最低2回はご覧くださいね(営業モード)。「メメント」は6/15(土)〜21(金)、「キリング・ミー・ソフトリー」と2本立上映。(S)
大林監督から名画座へのメッセージ
(2002年・第11号・通巻45号)
映画監督大林宣彦が文を書き、イラストレーター小田桐昭が挿し絵を描いた『五風十雨日記―日日世は好日2001―巻の一同時多発テロと《なごり雪》』(たちばな出版)という長い題名の本が、監督のサイン入りで送られてきました。明治31(1898)年創刊というローカル新聞の老舗中の老舗〈山陽日日新聞〉に連載していたエッセイをまとめたものです。◆〈人と語る〉〈旅に出る〉〈映画を作る〉からなり、歴史的世相感があったり、時事評論があったりと示唆に富んだ内容です。やや難しい用語がありますが、ルビが打ってあり読みやすく、監督の魅力的なバリトンが聞こえてきそうな感じがする楽しい本です。◆新文芸坐のオープン記念特集の中で監督の「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の尾道三部作に「異人たちとの夏」の四本立でオールナイト上映した時に舞台挨拶をしていただきました。その時に感じられたことを「私説・名画座」と題して掲載されています。◆新文芸坐を名画座の老舗中の老舗と称してくださり、『名画座で上映される映画は“文化”であり、映画の“初心”に回帰するから映画作家冥利に尽きる』と書いています。身に余る光栄で、これこそ興行者冥利に尽きると言うものです。大雪の日で監督に大変ご迷惑をかけたのですが、そんな状況には触れずに……です。◆大林監督の優しいお心づかいは、新文芸坐に対する応援メッセージと受け止め、他の映画監督にも映画の“初心”に回帰できるような名画座らしい上映を心がけたいと思います。時々、二番館的な新作二本立ての番組を組み入れながら………。(N)
リンチ・ワールドの楽しみ方――
「マルホランド・ドライブ」
(2002年・第12号・通巻46号)
◆世界に数多(あまた)ある映画賞の中で最高の権威を誇っているのがカンヌ映画祭。意外にもD・リンチ監督はカンヌ映画祭の受賞&ノミネートの常連なのだ。◆日本人は海外の映画賞(ブランド)に実に弱く、カンヌで賞を獲ったりするとリンチ・ファンのみならずリンチに免疫のない人も劇場に大挙押しかける。そしてその何割かは、“?”状態で映画館を後にする。リンチ作品を「難解だ」などという御仁も少なからずいるようで…。◆リンチは難解ではない。確かにリンチ作品には謎が多い。しかし謎は謎のままで、解決はしない。伏線もなければオチもない。正解のない長文読解問題のようなもの。正解があると思うから難解なのだ。◆リンチ・ワールドの楽しみ方、それはストーリーは二の次、“今スクリーンに映っているモノを楽しめ”ということに尽きる。観終えたら、人と好きなシーンについて語り合ってみるといい。暗い穴、マイク、金髪と黒髪の美女ふたり、カーテンで仕切られた部屋、苦いコーヒー、謎めいた老人、意味もなく怯える男……。ストーリーと関係ない部分ほど面白いことに気づくはず。(リンチは映画毎にストーリーは変えてはいるが、撮りたいモノ(=オブジェ)は変わっていないんだということにも気づくだろう。)◆私が今年観た映画で、最も頭を使った映画は新鋭C・ノーラン監督「メメント」(当館にて6/15〜21上映)。最も頭を使わなかった映画が我らがD・リンチ監督のカンヌ映画祭監督賞受賞作「マルホランド・ドライブ」(6/29〜7/5)。(S)
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