あけましておめでとうございます
(2003年・第1号・通巻59号)
旧年中は、ご愛顧いただき心より御礼申し上げます
今年もより一層のご愛顧を宜しくお願い申し上げます
2003年1月1日
新文芸坐
支配人 永田稔
関口芳雄 矢田庸一郎 梅原浩二 花俟良王
大谷竜也 柳原弘 内屋敷久仁子 駒場香代子
鶴岡里香 高橋悦子 浅香ノリ
今年も特集番組を企画しています。2月1日より江戸川乱歩原作の映画化作品特集。3月には2002年に公開された日本映画の特集。5月は、卆寿を迎える森繁久彌主演映画特集を予定しています。リクエストがございましたらどしどしご投書ください。
映画フィルム―日々雑感
(2003年・第2号・通巻60号)
映画のフィルムというのは一般家庭で写真用に使われる物と同じで35mm幅です。実は映画用のフィルムが先にできて後にそれを転用して写真用のフィルムがつくられました。1コマあたりの面積は写真用の約半分になりますが、映画は1秒間24コマ必要なので、長さは2時間の映画で3288m!程にもなります。これでは長すぎる為、ある程度の長さに分割して劇場に送られてきます。最近では音声や特殊効果などでデジタルの恩恵を受けていますが、こと最終的にスクリーンにフィルムを写す段階になると映画誕生以来100年間全く同じ方式なので、これだけの長さになってしまうのです。DLP(デジタル方式の映写機)等の出現により何千mもあるフィルムがなくなり、小さなハードディスクや直接データとして劇場に送られて来るようになりつつあります。キズも退色もないことは歓迎されることですが、画質は超高性能ビデオプロジェクターと言った感じでそこにフィルム特有の質感を見出すことは困難です。CD全盛の時代にアナログレコードのほうが音が良い、などと言われる事がありますが、どちらが良いかはともかく全く違うメディアに同じ音質を望むのは無理なのではと思うことがあります。そう考えるとDLPにフィルムの画を望むのも現在では難しいことなのかもしれません。フィルムは生ものなので時間がたてばキズやゴミも増えますし、色も褪せてきます。しかしフィルムが持つ独特の味わいは代えがたい魅力があり、20世紀につくられた大いなる映画の遺産もほぼすべてフィルムによって撮影されています。それを映画館でフィルムで鑑賞することは近い将来とても贅沢なことになるかもしれません。(U)
巨匠・深作欣二監督逝く
(2003年・第3号・通巻61号)
新文芸坐がオープン準備に追われていた2000(平成12)年10月、記念番組の中で『仁義なき戦い』を一挙に上映することになり、深作監督にゲスト出演をお願いするために電話をしました。当時、『バトル・ロワイアル』が大ヒット中の忙しい時期にもかかわらず、直接電話に出てくださいました。◆「うん、行くよ。一ヶ月前位になったら電話をくれ。」と言って携帯電話の番号を教えてくれました。大監督なのに何と気さくなのだろうと感激いたしました。結果として『バトル・ロワイアル』の海外上映に監督も同行することになり実現しませんでしたが、その時も「文太は岐阜だし、欣也に頼んでみたら」と親切に紹介して下さいました。またまた感激してしまいました。◆その後“深作監督特集”の時もタイミングが合わずご来場いただけませんでしたが、昨年5月、『検証・東映ヤクザ映画』のオールナイト上映の時に念願が叶いました。既にガンに冒されていたわけですが、映画を語る時の生き生きとした表情と張りのある声が印象的でした。◆終戦を15歳の中学生の時迎えた監督は、それまでの価値観の崩れ、社会の矛盾、大人への不信感を強く持った。反骨精神の“水戸っぽ”らしく《焼け跡闇市》が映画作りの原点と言ってました。◆鶴田浩二、高倉健らスター主演の悪と戦うヒロイズムの“任侠路線”は、自分の感覚と違うし、矛盾していると感じたとも言う。その違和感は、大手映画会社の体制との“闘い”になった。そこから菅原文太という存在感のある若い俳優を得て代表作『仁義なき戦い』が生まれた。必死で戦う群衆を通して戦後史をダイナミックに描き“実録路線”という娯楽映画を確立させた。◆《映画作りは戦い》が口癖の監督でしたが、1月12日前立腺ガンのため新作の撮影半ばで自身の終戦を迎えたわけです。享年72歳。ご冥福をお祈りいたします。(N)
二本立てのこころ
(2003年・第4号・通巻62号)
二本立て上映を常とする当館には“二本立ての妙”という言葉がある。ロードショーでヒットしなかった映画の二本立てが思いのほか入ったりすると、したり顔で「二本立ての妙だね」というのである。そこで我々は日夜、この二本立ての妙なるものを追い求めるのだが……。●定石は似たもの同士をくっつけること。簡単じゃないかと思われるかもしれないが、配給会社の都合やプリントの空き状況などが絡みなかなか一筋縄じゃない。●ビデオが出てしまった映画は当然やりづらいし、さらに公開後1年以上5年以下ぐらいの娯楽映画というのは、興行的にはかなり難しくなる。ただしもっと古くなると逆に興行力は増すのだが、外国映画の場合は10年ぐらい経つと権利が切れることが多い。●さて、この定石どおりにできた番組が3月にやる『マーサの幸せレシピ』と『ディナーラッシュ』である。どちらもレストランを舞台にし、料理を通して語られる味わい深い人間模様の物語だ。●『マーサ〜』のほうはドイツのハンブルクが舞台。人間の絆をしっとり醸し出すタイプの映画だ。ドイツ通によると、イタリア人に憧れながらもストイックに生きるしか術のないドイツ人の愛情表現のし方が、とってもかわいらしいそうだ。う〜ん、なるほど。●『ディナー〜』はニューヨークが舞台だけあってテンポがいい。イタリアン・レストランに、マフィアに警官、別れた恋人たち、料理批評家にウォール街の証券マン、雑学の天才バーテンダーらが入り乱れ、ラストにはちょっとしたどんでん返しも用意する軽快な味わい。●ところがある日、「はまりすぎるのもよくないんだぞ」と、支配人がポツリ。果たして我らが頭上に、二本立ての妙の降臨となるや。(Y)
コロムビア・レディに乾杯
(2003年・第5号・通巻63号)
ご存知の方も多いかもしれませんが、洋画の場合、映画会社が持っている配給権が契約切れになるとその作品は映画館では上映できません。また配給権はあっても、映画会社がプリントを廃棄してしまえば、物理的に上映は不可能です。配給権の問題は仕方ないとしても、好きな作品が廃棄されると聞くと、泣くに泣けません。映画はビデオで観ろということでしょうか。■数ある映画会社の中で、この点最も良心的なのがソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)。滅多に稼動しなくなった旧作もかなりの数を保管しています。エライ。SPEはコロムビア映画や、トライスター、オライオン映画の一部の配給権を持っていますが、その一部を「コロムビア映画名作選」として4/12(土)から当館で上映します。ラインアップを見ていただければお分かりのとおり、映画史に残る作品ばかり。ぜひスクリーンでご覧ください。■唐突に懸賞クイズ。本特集の初日「地上より永遠に」でウォーデン曹長を演じた俳優。楽日「博士の異常な愛情…」で最後の爆撃機に乗る黒人俳優。ふたりの俳優が同時に描かれている作品の絵が、当館受付前の和田誠さんのイラスト集の中にあります。そのイラストはどれでしょう? 回答は「左から○番目、上から○番目、映画タイトルは○○○○」形式で、staff@shin-bungeiza.com 宛てのメールか、ロビーの投書箱までどうぞ。抽選で5名様に特集の御招待券をさしあげます。締め切りは3月末日。連絡先をお忘れなく。■最後にトリビアをひとつ。「コロムビア映画のオープニング・ロゴは、“自由の女神”ではない。」ヘェーッ。(S)
映画フィルム―日々雑感2
(2003年・第6号・通巻64号)
現在映画の音声方式はアナログとデジタルに大別されますが、アナログにはモノラルとサラウンド(立体音響)、デジタルはすべてサラウンドですが、フォーマット別に三種類あります。■家庭用のオーディオが2チャンネルステレオになっても映画の音はドルビー社のサラウンドシステムが普及するまでは特殊な例を除いてモノラルの時代が長く続いていました。その特殊な例とはかつてのシネラマや70mmなどのいわゆるハリウッッドの大型映画で、大画面の撮影上映方式が各社それぞれ違っていたのと同様に音声方式も7〜4チャンネルと各種あったようです。これらの音は主にフィルムに磁気を塗って記録(カセットテープと同じ方式)されたのが多く、耐久性や生産コストに問題があり余り普及しませんでした。旧来の光学式(フィルムの端にギザギザになっている帯状の物で光で読み取ります。トリュフォーの「アメリカの夜」のオープニングではそれが音楽に合わせて動く様が画面で見えます)と互換性のあるドルビーサラウンド普及後は、アメリカ映画を中心にサラウンドが一般的になりましたが、このアナログ方式ではチャンネル数や音の分離などの問題があり、往年の大型映画のニュープリント版などでも音はモノラルということがありました。■しかしデジタルサラウンドで復活した最近の「ベン・ハー」や「2001年宇宙の旅」のプリントなどは当時の音に近いチャンネル数を再現し、かつ音質はデジタルなので当時以上の状態で再生できるようになっています。そうして手間ひまかけて再生された映画はまだ多くはないようですが、このような映画を名画座では珍しくドルビーデジタルEXまでを備えた当館で沢山上映できる日が来るのもそう遠くはないと思っております。(U)
映画フィルム―日々雑感2
(2003年・第7号・通巻65号)
通信機器をはじめ科学の発達により私たちの生活は、前世紀の数倍の早さで変化し、便利になっています。一方では、バブル崩壊後の社会不況は延々と続き、株価(3/12現在)は20年前に戻ってしまい、閉塞感を抱いたままで日常生活を余儀なくされています。生活が便利になった割には心豊かな気分ではない。◆スローライフの勧めが叫ばれているこんな時代だからこそ観ていただきたいのが4/26からの「祝 卒寿記念 銀幕の天才 森繁久彌映画祭」です。森繁映画の時代は、スタッフ、キャストなど撮影現場が一丸となった手作りで、スクリーンから温もりが伝わってきますので心を癒してくれると思います。◆5月4日に卒寿を迎える森繁は、ご存知の通り平成3年に文化勲章を受章するなど、わが国の文化、芸能の分野における巨人です。「屋根の上のバイオリン弾き」などの演劇俳優として、テレビ、ラジオのタレントとして偉大な存在でありますが、森繁の真骨頂は映画俳優として、名匠が撮った芸術作品、野心作から数多くシリーズ化された喜劇映画など240本に主演、出演した銀幕上での存在感あふれる天才的演技にあるのではないかと思っています。◆この映画祭を企画するにあたり、森繁さんにお目にかかりました。開口一番「オレの映画なんかに客なぞ来ないゾ!」と言いながら結構嬉しそうにしていました。記憶力は確かです。さすがにスクリーンで観せる森繁節といわれるリズミカルな話し方、間に往年の冴えとまではいきませんでしたが、「映画とはデタラメとウソの積み重ねだが、その中に小さな真実を見つけていい映画という」など印象的な話をしてくださいました。◆陽気で軽妙なペーソスあふれる森繁映画で笑って、泣いて、楽しんで心のゆとりを取り戻してください。3月12日現在、ゲストに女優・淡島千景さん、演出家・久世光彦さん、放送作家・高田文夫さん、映画監督・松林宗恵さんが来館する予定です。(N)
4月のオールナイト
(2003年・第8号・通巻66号)
4月のオールナイトは、アニメとトークショーてんこ盛りです。4/12(土)「クレしん」のゲストは我々スタッフもまだ知らされていませんが、あの方は今年も来るのではないでしょうか。リベンジのため…。(昨年の「クレしん」ナイトをご覧の方はお分かりですよね。)■19(土)は「機動戦士ガンダム」。昨今のガンダム・ブームは、ガンダム世代が社会の中で占めるポジションの推移と大いに関係があります。これからの日本を支える中心的な世代。彼らは多かれ少なかれ「ガンダム」の洗礼を浴びているわけで、初見・再見を問わず、今ここでファースト・ガンダムを観ておくことは日本人に必要なのでは? 当日はグッズ販売なども予定しています。オールナイトは18禁です。みなさん、オトナ買いの準備はよろしいですか? ゲストは、漫画家の北爪宏幸さんと雑誌「ガンダムエース」編集長の古林英明さん。■26(土)は「機動警察パトレイバー」。ゲストは漫画家の、ゆうきまさみさんと、とり・みきさん。おふたりは一時期、女優H・Tに御執心で、ヘッド・ギアの出渕裕さんらとともに「バースデイ本」なる同人誌を作りご本人の誕生日にプレゼントをした…、などという仲です。いや、パトレイバーとは関係ないですが、私もあの夏「♪ヒトデと出逢って 億万年♪」などと口ずさんでいたクチですから。■オチが深い、とり・みきさんのマンガに倣って、説明過少の文章にしてみました。リベンジ? オトナ買い? ヘッド・ギア? ヒトデと? 分からない人は近くのおにいさん、おねえさんに聞いてみましょう。(S)
レスリー・チャンの追悼オールナイトを開催
(2003年・第9号・通巻67号)
レスリー・ファンというほどでもない私も、4月1日のレスリーの訃報を聞いたときはかなりショックを受けた。香港映画ファンの映画ライターがわざわざ電話を掛けてきて教えてくれた。彼女にはメールで友達から連絡が入ったそうだ。だからとっさに私は、何かの誤報、あるいはネット上での巧妙な悪戯ではないかと思った。信じられないという思いだったのかもしれない。「香港のラジオがちゃんと伝えているの。間違いない」。彼女の小さな悲痛な声が電話口から漏れた。■6/14(土)にレスリー・チャンの追悼オールナイトを行なうことになった。昼間にやる案も出たが、それだと遅くなる。できるだけ早くということでオールナイトになった。オールナイトでは行きにくいという方も多いと思うが、どうかご理解願いたい。■上映作品は『欲望の翼』、『君さえいれば 金枝玉葉』、『さらば、わが愛 覇王別姫』、『ブエノスアイレス』。レスリー・ファンでなくとも見ごたえ十分、傑作4本立てである。そしてレスリーの魅力が結晶し、きらめき、ついには爆発する4本立てである。■レスリー特集は開館の時から常に頭にあった。いつでもできると呑気に構えてたところもあった。そしたらこんなことに。初めてのレスリー特集は追悼上映になっちゃった。■享年46歳はあまりに若い。歳を取るごとにさらに素敵な顔を我々に見せてくれたはずだ。数年前からレスリーは監督業への進出の夢を語っていた。だがそれも実現することはなかった。なにか映画の未来に大きな穴が開いたような気がする。本人が一番辛かったり、虚しかったり、無念だったのかもしれないが……。本当に残念無念で仕方無い。(Y)
ほろ苦さと甘酸っぱさ
『SWEET SIXTEEN』と『僕のスウィング』
(6/14〜20上映)
(2003年・第10号・通巻68号)
『SWEET SIXTEEN』の監督、ケン・ローチの映画に共通するのは労働者階級、貧困、抑圧といったテーマであろうか。人間の自由と尊厳を見つめる姿勢ともいえるかもしれない。一方で彼の映画には、どことなくユーモラスな人間が必ず出てくる。けっこう辛い話の時でも、そういった人物たちのクスクス笑いが見る方の体の緊張感を解きほぐしてくれる。■ケン・ローチは決してハリウッドで映画を撮ったりしないと思う。きっと生涯、貧乏人や抑圧された人々の映画を撮り続けるのだと思う。ケン・ローチが素晴らしいのは理想をふりかざさないことと、映画の中で間抜けな人間を描いても、彼らを決してしからないことだ。揺るぎない信念と人間への優しさ。彼の映画はこれに尽きる。■『僕のスウィング』の監督、トニー・ガトリフのキーワードは、自身のルーツでもある“ロマ”。ロマとはジプシーの自称である。彼らは約千年前に北西インドからヨーロッパに移動し、各地に分散、定住する。彼らへの呼称は地域で異なりドイツではシンティやツィゴイネル、フランス南部ではジタン、スペインではヒターノ、イギリスではジプシー。今では差別的なジプシーの名を嫌い人間という意味のロマを名乗る人が多い。■夏休みにフランス北部の祖母の下に預けられた少年と、土地のロマの少女との触れ合いをほとばしるような瑞々しい映像で綴る一編だ。この映画の一番の魅力は、映画の中で常に響き渡る個性豊かな音楽たち。中でもこの地方のロマの呼称、マヌーシュに由来する軽やかでいて物悲しい“マヌーシュ・スウィング”の旋律に心を奪われる。■1枚のチケットでいろんな味わいを楽しめる二本です。でも見終わると、ちょっと胸が痛くなる、そんな二本立てでもあります。(Y)
変革する映画興行
(2003年・第11号・通巻69号)
明治36年(1903)、浅草の電気館が入場料金5銭で常設映画館になった。これが映画興行の始まりで、今年が100年目になります。映画は、戦後“娯楽の王様”と言われ、映画館数は、昭和33年(1958)のピーク時には7,000館以上に達していました。その後、TVの普及、娯楽の多様化などにより、映画館は1/3近くまで減少しましたが、シネマコンプレックス(シネコン)の出現により、社会不況にもかかわらず映画館は増加傾向にあります。◆シネコンとは、一つの建物の中に複数のスクリーンを持つ映画館のことです。シネコンが登場したのは、10年前の平成5年(1993)開業のワーナー・マイカル・シネマズ海老名が最初です。そのシネコンは、郊外の大規模な商業開発の際に併設されてきました。これは、従来の都会に映画を観に行くという非日常的な行為から、観客の生活する範囲に映画館があることによって、映画を観る行為を生活習慣の一環にしてしまうという発想に基づくものです。◆しかし、最近ではシネコンが、都心の様々な“街”に出現するようになってきた。東京では、品川プリンスホテルシネマであるとか、この4月にオープンした六本木ヒルズ内のヴァージン・シネマズ六本木ヒルズであるとか、豊島園内にもシネコン建設の計画がある。地方都市でも札幌シネマフロンティアが既に開業しているし、名古屋駅前、大阪球場跡地の再開発にシネコンを併設しようと言う動きがある。◆その時代の社会状況、映画ファンのニーズに対応しながら、ホテル、商業施設、オフィスビル、マンション、遊園地などに併設する多様な選択肢の中から映画館が誕生しています。一方では、デジタル化の動きが急速に進行しています。デジタル化に移行することは必至でしょう。このように映画興行界を取り巻く環境は刻々と変革しています。新文芸坐は、時代の流れに乗り遅れないように対処していきたいと考えています。(N)
映画フィルム―日々雑感、「超大作」
(2003年・第12号・通巻70号)
かつて超大作と言えば、巨大なオープンセットと大群衆が付き物でしたが、最近はデジタル技術の発達で必ずしもどちらも実物が必要ではなくなっているようです。「マトリックス」は2作目と3作目合わせて3億ドル以上の制作費が掛けられているそうですが、前述の古典的な意味での超大作という雰囲気はありません。実際には2km以上にわたる高速道路を建設して撮影しているそうですが、のっぺらぼうな高速道路のセットでは今ひとつ夢がありません。が、しかし、かつて映像化できなかった、夢のようなアクションシーンをひたすら追い求める映画にあっては却って背景はシンプルにした方が良いのでしょう。■最後の(と思われる)古典的な超大作は「ギャング・オブ・ニューヨーク」でしたが、CG全盛の現在に暴挙と思われるチネチッタの夢のような巨大セットは実に感動モノでした。ただ最近見た「プレイタイム」のモダンなセットの街“タチヴィル”の方が、スコセッシのような映画史やらチネチッタやらに対する自覚や郷愁がない分、暴走の度合いがより激しかったです。で、最近の超大作らしい超大作と言えば当館で7/19(土)より上映する「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズです。最新のCG(例、キャラクターを一体一体動かさなくてもプログラムで自分で勝手に戦ってくれる群集シーンなど)が多く使われている映画ですが、実は監督の意向で意外にもミニチュアやオープンセットがかなり使われている映画なのです。CGと渾然一体となって分かりにくいシーンもあるのですが、やはり実写(ミニチュアも含む)の存在感というのは捨てがたく、今後ともCG一本槍ではなく、このような手法で映画が撮られることを切に願ってやみません。(U)
夏休み親子優待フェア
(2003年・第13号・通巻71号)
映画館の愉しみのひとつに“大人数で同じ映画を観る”というのがあります。みんなでドッと笑ったり、観客の悲鳴にびっくりさせられたり、カタルシスのあるシーンでは歓声や拍手が起こったり…。こういった観客の反応というのは決して不愉快ではなく、作品の力が増幅されたような感じがしてこれはお得です。ビデオで観てもこんな体験はできません。作品との最初の出会いはぜひ大人数で観る映画館をお勧めします。■新文芸坐では今年も夏休み親子優待フェアを行います。期間は「ロード・オブ・ザ・リング」1&2の始まる7/19(土)から8/31(日)まで。中学生以下(3歳以上)のお子様をお連れになった大人の方は、ご入場料金をお一人1000円(2名様まで)に割引いたします。夏休みです。ご家族お誘い合わせのうえご来場ください。みんなの歓声や悲鳴で映画を盛り上げましょう。ただしオールナイトは18歳未満の方はご入場できませんので対象外です。■映画というのは配給会社にとっては大切な商品で、入場料の高い映画館で優先的に上映し、当館のような低料金の劇場が上映できるのは最後になります。入場料が下がるということは商品としての作品の価値が下がるということなのです。ですから上記の「ロード…/二つの塔」も配給会社からは入場料金をもっと高くしてほしいという要望がありました。でも当館としては通常料金で上映したい。そこで折衷案として、ラスト1本割引を1000円にすることにいたしました。どうかご理解ください。(S)
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