あけましておめでとうございます
(2004年・第1号・通巻83号)
旧年中は、ご愛顧いただき心より御礼申し上げます
新文芸坐では、昨年一年間で通常興行に於いて384本の映画を、終夜興行では188本の映画を上映いたしました。一昨年もほぼ同じ本数の映画を上映いたしました。今年も同じような番組編成になりそうです。多分、日本一数多くの映画を上映する映画館と思います。『新文芸坐友の会』の会員は、毎回「映画サービスデー」や「レディースデー」と同額の割引料金でご覧になれますので、是非ご入会いただき数多くの映画をご覧になっていただきたいと存じます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
2004年1月1日
新文芸坐
支配人 永田稔
関口芳雄 矢田庸一郎 梅原浩二 花俟良王
後藤佑輔 柳原弘 内屋敷久仁子 高橋悦子
西本布美子 金井綾子 三船雅子 浅香ノ
魅惑のシネマクラシックス Vol. 4
(2004年・第2号・通巻84号)
旧文芸坐時代に「法廷映画特集」というのを上映したことがあります。法廷サスペンス映画というのはたくさんあって、何故かほとんどが面白い。当時上映した作品ももちろん水準以上のモノをセレクトしたつもりでした。しかし、諸事情により涙を呑んでラインアップから外した作品も多々あったのです。■その最たるものがビリー・ワイルダーの「情婦」と、シドニー・ルメットの「十二人の怒れる男」の両作品。法廷映画の双璧です。とくに私は「情婦」が未見だったので、是非文芸坐のスクリーンで上映したかったのです。この作品の性質上、最初の出会いは是非ともスクリーンで……と思っていたので、未だにビデオでも観ていません。■そして今回、念願の「情婦」文芸坐上映がかなうこととなりました。「法廷映画特集」の敵を「クラシックス」で討ったワケです。既にこの作品を見ている方々、私の半径30m以内で「情婦」の結末について決して口にしないでください。■それでは、第3回懸賞クイズです。「魅惑のシネマクラシックスVol. 4」で上映する「現金に体を張れ」の画を当館受付前のイラスト集から探して、その右隣の映画の続編の監督の名前を答えてください。staff@shin-bungeiza.com 宛てのメールでも、投書でも、ハガキでも何でもOKです。抽選で5名様に2月中有効の招待券を進呈しますので必ずお名前とご住所を明記してください。締め切りは1/25(日)です。(S)
宮崎駿! 押井守! 大友克洋!
今年はアニメの当たり年!?
(2004年・第3号・通巻85号)
最近のアメリカ映画の上映時間は長くなる傾向にあり、更に長くなると何回かに分割して上映するなど、プロデューサーより監督のほうが強いのではないかと思われることがあります。日本でも製作側の都合で既に何年も待たれていた大友克洋監督の新作「スチームボーイ」がようやく去年の秋に公開、と一度は決まったものの、その後公開時期が二転し最終的に今年の7月に決定されるということがありました。さらに今まで遅らせたことの無かった宮崎駿監督最新作「ハウルの動く城」が今年の夏から11月に延期。妥協せず手間ひま掛けて作っているという事は、いやが上にも期待が高まりますが、期待以上に仕上がってくれるでしょうか? 大友、宮崎両監督の「作家」としての地位の確立と、世界配給を視野に入れた日本製アニメの興行的、社会的、文化的、技術的なピークの一致がこのような贅沢を可能にしているのですが、作り手の社会的な地位の確立と才能のピークは必ずしも一致しないこともあり、制約があった時のほうが、面白かったりすることが映画に限らず多々あるものです。いずれにしても近年日本の映画作家でこれほどまでに経済的な余裕をあたえられ、それらが同じ年に公開されるなどということは、この先そうあることではないでしょう。どの作品も最新のCGと緻密な作画が高度に融合した、かつてない素晴らしい映像を見せてくれるはずです。押井守の久方ぶりの長編アニメ「イノセンス」の公開を皮切りに今年は大作揃い。ぜひ大豊作となってほしいものです。(当館では2/14(土)に『新作「スチームボーイ」が待ち遠しすぎる! 大友克洋ナイト』があります。)(U)
私的・韓国映画黄金期
(2004年・第4号・通巻86号)
◆今一番観たい映画は? と聞かれたら迷わずに韓国映画『殺人の追憶』(今春公開予定)と答えます。実際の殺人事件を元に、緻密な脚本と斬新な映像で綴るというこのサスペンスドラマは昨年の韓国内でのNO.1ヒット作であり、東京国際映画祭・アジア部門グランプリ作品でもあります。観たい。◆とあるビデオ店で20代の韓国人留学生と知り合いました。彼は若者がガソリンスタンドを襲撃する『アタック・ザ・ガス・ステーション!』がいかに韓国の伝統・風習を打破し、『猟奇的な彼女』へと続く新感覚の映画への道を切り開いたかを、また、国内のスクリーン・クォーター制(外国映画の公開制限)により生まれる映画人の責任とプライドについてを力説してくれました。彼も私も韓国映画業界の本当は判りませんが、ブームを超えてすっかり日本に定着した現在の韓国映画を考えると妙に納得できました。◆多くの人と同じように私も『シュリ』や『八月のクリスマス』から韓国映画を観始めた一人です。そして『猟奇的〜』『ラスト・プレゼント』で涙を拭い、『ペパーミント・キャンディー』では2〜3日ソル・ギョングの苦悩に憑依された一人でもあります。メロでもベタでも実験的でも保たれるその水準の高さには、追体験でしかない日本映画黄金期への羨望にも似た感覚さえ覚えます。◆ジャンル分け不可能と言われた快作『ほえる犬は噛まない』でデビューしたポン・ジュノ監督の2作目。どれほど期待しても『殺人の追憶』はそれに応えてくれるでしょう。韓国映画の勢いはまだまだ健在です。プロローグは当館の〈スクリーンで観ておきたい珠玉の名編Vol. 4 アジア映画の輝き〉でどうぞ。(H)
追悼・桂文治と志の輔らくご
(2004年・第5号・通巻87号)
江戸っ子噺家十代目桂文治が1月31日に落語芸術協会会長の任期最後の日に亡くなった。爆笑落語を得意とし、談志に「名人志ん生に一番近い噺家」と言われ、私生活でも四季を通して和服に中折れ帽子と普段の姿からして粋な本寸法の噺家であった。◆78(昭和53)年文治師の肝煎りで始めた『文芸坐金曜落語会』は、15年間335回続いた。そんな関係で時々お茶を飲みに立ち寄った。落語の話は勿論のこと、水墨画や歌舞伎など古典芸能全般と、言葉づかい、礼儀など社会風潮のことや、ドラ猫の話など多岐にわたり面白可笑しく含蓄のある話を聞かせてくれた。◆その後、文芸坐が閉館し、小生も脳溢血で倒れた翌98(平成10)年の正月に文治師が突然拙宅を訪ねて来た。その年の干支は寅年なので、虎の色紙を持参した由。虎は、千里の道を行って帰って来ると言われているので差し上げたいと。人情味溢れる激励に涙を流した。大正生まれの文治師の死は、落語界の世代交代を促進するだろう。◆古典、新作共に意欲的な活動をしている立川志の輔が、落語界の次世代を担う一人と思う。定席を持たない談志一門は、場所探しから始まる。志の輔は、ホールは元よりジャンジャン、パルコ劇場、本多劇場、サントリーホールなど落語に馴染みの薄い場所を開拓し、一期一会の内容の濃い《志の輔らくご》を展開してきた。◆そんな環境から異分野の人達との交遊が生まれ、《志の輔らくご》を充実させている。今年は、青山の銕仙会能楽所で満月の夜の落語会を始めた。志の輔落語と茂山千五郎家の狂言が能舞台でコラボレーションします。新空間で、更に進化する《志の輔らくご》にご注目を!(N)
ファンよ集え! 新選組オールナイトだぁ!!
(2004年・第7号・通巻89号)
■今年はNHK大河ドラマ「新選組!」の影響で、東京や京都を中心に新選組関連のイベントが目白押しです。というわけで新文芸坐でも5/22(土)「新選組オールナイト」を上映します。当夜は、TVシリーズ「新選組血風録」(1965)で土方歳三役を演じ当り役となった栗塚旭さんが京都から来館、トークショーがあります。新選組は何度も映像化され、幾人もの俳優が土方を演じていますが、往年のファンにとっては「土方歳三といえば栗塚旭さん」というくらいの当り役。大河「新選組!」でも栗塚さんは歳三の兄・土方為次郎を演じていて、栗塚さんへの大河スタッフの想いが伝わってくるキャスティングです。■上映作品はまず「土方歳三・燃えよ剣」。国民作家、司馬遼太郎原作の映画化で、主役はもちろん栗塚さんです。■次は出目昌伸監督の「沖田総司」、主演は草刈正雄。沖田といえばきれいに剃られた月代が青々しているイメージですが、草刈=総司は前髪残しのポニーテールです。この二枚目が労咳(結核)に血を吐きながら人を斬る……。カッコイイです。■最後は日本アカデミー作品賞他に輝く「壬生義士伝」。中井貴一演じる吉村貫一郎(新選組ファンしか知らない無名隊士)と佐藤浩市演じる斎藤一(大幹部で局中屈指の剣客)、ふたりの男のドラマです。それぞれが主演&助演男優賞も受賞した2時間超の力作。「新選組!」の芹沢鴨役の佐藤浩市が斎藤を、山南敬助役の堺雅人が沖田を演じているのも、大河ファンには面白いかもしれません。詳細を待て!(S)
がんばれ、日本映画
(2004年・第8号・通巻90号)
「気になる日本映画達(アイツラ)2003」は、おかげさまでまずまず順調な入り。初日の黒沢清監督&青山真治督トークショーも盛況で、監督、それにお客様の皆様、ありがとうございました。■今年は早くもヒット作、傑作が数多く登場し、例年以上に賑わっている感じの日本映画界。その中でたまたま見た2作品がなかなか個性的で、次回の「気になる日本映画達」で上映したくなる内容だったので、ちょっとご紹介を。■岩井俊二監督の新作『花とアリス』。話は簡単に言うと、一人の男子学生と二人の女学生の、三角関係の物語。物の輪郭が背景に溶け込むようなビデオっぽい画面や、いかにも装飾的な音楽が耳につく点など、気になるところもある。が、しかし、そんなことはどうでもよい。映画の中の二人の少女の、一挙手一投足に至るまで、全てが愛くるしいことといったら。特に鈴木杏が素晴らしい。バネのある動作に、伸びやかで張りのある、ちょっと低めの中性的な声が、もう、ホント、たまらなく心地よい。■もう一本は『東京原発』。カリスマ都知事が東京に原発を誘致しようとする珍騒動。前半は、『12人の優しい日本人』を思わせるひねりの効いた愉快な会話劇を軸にしながら、日本の原発政策の問題点を浮かび上がらせる手際は上手い。後半、トラック輸送されているプルトニウムが核ジャックされ都庁に向かってくるあたりから、映画の息が荒くなり、最後の着地はちょっと乱れたか。惜しい。■いずれにせよ、いい脚本を丁寧にきっちり演出したということが十分うかがえる2本だ。でも次回の「気になる日本映画達」は来年。随分、先ですな。上半期、下半期で年二回開催というのは、皆様ならびに支配人、どうですかね?(Y)
第一回文化庁映画賞(映画功労賞)受賞御礼
(2004年・第9号・通巻91号)
《我が国芸術文化の普及に多大な貢献をされました》として、第一回文化庁映画賞(映画功労賞)を受賞いたしました。推薦文には、『創意と工夫に満ちたプログラムを企画し提供する、いわゆる名画座の支配人として、長年、映画の多様な魅力を観客に伝えてきた。時機を捉えた作品の選択、トークやシンポジウムを伴う上映、会員制度の運営など、常に意欲的な上映を続けた。観客の中から青山真治、黒沢清、周防正行など現在日本映画の第一線で活躍する監督たちが輩出しており、同館は広い意味で《映画の学校》の役割を果たしてきた。また、一度は閉館を余儀なくされた「文芸坐」を「新文芸坐」として再開させ、映画文化の底を支える存在として存続させるなど、斯界におけるその功績は明らかである』と記されています。◆文芸坐の時も新文芸坐の現在も責任者をしている私に授与されたのですが、元より、私個人だけの功績ではありません。功労者は、昭和23年創業の人世坐から文芸坐を経て、平成12年マルハンが経営する現在の新文芸坐まで歴代の従業員全員ですが、真の功労者は、ご来場いただきましたお客様です。お客様のご声援が文化行政に届き、今回の受賞に繋がったものと思っています。お客様に心より厚く御礼申し上げます。(N)
予告編と本編は別物
「マスター・アンド・コマンダー」
(2004年・第10号・通巻92号)
■長いこと映画を観ている方なら「予告編に騙された」と思ったことが少なからずあると思います。画的に面白い部分を予告編ですべて見せてしまい、本編よりも予告編のほうが面白かったということがよくあります。また予告編のウリと本編の内容が全然違う場合もあります。ラブ・コメだと思い込んで観たらサスペンス映画だったり、家族の絆を描いたホームドラマかと思ったら犯罪アクション映画だったとか。■「マスター・アンド・コマンダー」も然り。予告編では戦争の悲惨さや戦場に駆り出された可哀想な少年たちを描いた湿っぽいストーリーのように思えますが、本編は全く別物。パトリック・オブライアンの原作を名匠ピーター・ウィアーが映画化した真面目で骨太な海洋アクションです。■1805年、大西洋。仏国の私掠船による海賊行為(もちろん皇帝のお墨付)に悩まされる英国が、自国の艦船を守るべくこの私掠船の拿捕をひとりの軍人に託す。彼こそが、不敗神話を誇る伝説的な名艦長ジャック・オーブリー(ラッセル・クロウ)! 物語はフィクションですが、この年に仏=西連合艦隊を撃破し戦死した英雄ネルソン提督の指揮下にいたことのある歴戦の勇士という設定がイイじゃないですか。■物語はオーブリー率いる英国戦艦と仏国私掠船の一騎打ち、この一点につきますが、登場人物も魅力的でとくにポール・ベタニー演じる軍医が良い! この役者「ビューティフル・マインド」ではラッセル・クロウのルームメイト(!)でしたね。少年士官候補生? 予告編では重要そうでしたが……。(S)
娯楽と芸術、クリント・イーストウッド特集
(2004年・第11号・通巻93号)
◆クリント・イーストウッドは65年に「荒野の用心棒」で初主演を飾り、71年には「恐怖のメロディ」で監督デビューを果たす。以後大きなブランクもなくコンスタントに出演・監督作を発表し続け、90年代以降は1本を除く全ての作品を監督している。◆……と、サラリと書いたが、私がイーストウッドの“作家性”に気付いたのは「スペース カウボーイ」(2000年、遅い!)。ロマンと哀愁がブレンドされた、粋としか言いようのないあのラストシーンに痺れたクチだ。何十回と観た「ダーティー・ハリー」に始まり、常にイーストウッドはスクリーンやブラウン管の中にいた。あまりに身近すぎて作家性や映画技法などは気にしていなかったのだ。◆慌てて近作を見直すと、職人と芸術家を巧みに使い分けるアメリカを代表する映画作家の姿があった。自身のルーツである西部劇の形を借り、飯の種であった“暴力”と向き合ったオスカー作品「許されざる者」(92年)。大ベストセラーの原作イメージを塗り替える完成度の「マディソン郡の橋」(95年)。無駄を省き見せるべきことを見せる、娯楽サスペンスのお手本のような「目撃」(97年)や「トゥルー・クライム」(99年)。改めてどれも見事だ。そしてこの春の賞レースを賑わせた最新作「ミスティック・リバー」(03年)では再び“暴力”と対峙するが、完璧な演技陣を得て、今までにない凄みを帯びた重厚な演出を見せた。◆1930年生まれ。偉大なる映画監督は真摯に歩き続けている。充実の90年代以降の特集は6月12日から。(H)
世界の日本映画たち
(2004年・第12号・通巻94号)
14才で男優賞を史上最年少で受賞した柳楽優弥をはじめとして今年のカンヌ映画祭は、アジア映画がたくさん注目を集めました。グランプリを受賞した韓国映画の「オールド・ボーイ」は日本の同名漫画が原作だとか、タランティーノが審査委員長なので「イノセンス」の受賞が有力だとか、上映終了後の拍手が何分間だとか、キムタクがどうとか・・・仕方がないのかもしれませんが、マスコミの取り上げ方を見ると一瞬日本映画を中心に映画祭が動いているような錯覚を覚えます。●「注目を受けた」といってもそもそも日本映画のマーケットは世界的に見るとまだそんなに大きくはなく、当時日米英同時公開と謳っていた『攻殻機動隊』も押井守監督が渡米して見た劇場は、大きなロードショー館ではなく「アートシアターみたいなところで、そう言えば聞こえがいいが実際は文芸坐だ」みたいなことを言ってました。これは旧文芸坐の建物のことを言っているのだと思われますが、元映画青年の監督はそれはそれで嬉しいとも言ってました。●もっとも市場の大きさと映画の質は必ずしも一致するわけでもなく、却ってそれが日本映画を“自由”にしているとの説もあります。日本では映画監督という職業は大儲けもできない代わりに大当たりも期待されてない分だけ、リスクが少なく自由だということです。確かに興行的にはどうかな?という映画にも監督に惚れ込んだ製作者がいて、コンスタントに撮れる状況を作っています。「大当たりを狙わない」ことの善し悪しはいろいろ意見があると思いますが、「作家」的な意味合いで日本映画が世界から注目される一因であることは間違いないようです。(U) |