新文芸坐
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  ●巻頭コラム集
新文芸坐の上映スケジュールリーフレット「しねういーくりい」より巻頭コラムを再掲載

▼バックナンバー・2006年1月〜

あけましておめでとうございます

(2006年・第1号・通巻131号)

旧年中は、ご愛顧いただき心より御礼申し上げます。

本年も、〈感動はスクリーンから〉をモットーに、皆様が映画を通して感動、興奮するような、心豊かになる番組を提供していきたいと考えております。

どうぞ宜しくお願い申し上げます。

2006年1月1日

新文芸坐

支配人 永田稔
関口芳雄 矢田庸一郎 梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔 柳原弘
佐野久仁子 高橋悦子 西本布美子 高橋夏枝 加藤有里 浅香ノリ

二匹目のどじょうは、たまにいる

(2006年・第2号・通巻132号)

2005年を振り返ってみると、極私的ベストワン映画は『ビフォア・サンセット』と相成りました。1995年に公開された『恋人までの距離〈ディスタンス〉』(原題:ビフォア・サンライズ)の続編です。前作は、イーサン・ホークとジュリー・デルピー演じる男女が列車の中で出会い、意気投合し、朝までウィーンの街を歩き、語り、再会を約束して別れるまでの物語。粋な会話を通して、恋が芽生える瞬間の高揚感を伝えてくれました。続編では、あの時再会できなかった二人が9年後のパリで偶然出会い、またしても歩き、堰を切ったように語り合います。しかも今回は飛行機の搭乗までの85分がリアルタイムで経過し、既に生活を抱える二人のゴールなき微妙な心の揺れに、一体どうして決着を付けてくれよう、と恋愛映画なのに手に汗握ってのめり込んだ次第です。新たな挑戦をしつつも前作のファンの期待を裏切ることなく、登場人物と同じだけ年を重ねた観客にも納得のいくセンスの良いラストを用意した本作に、続編の理想を見た気がします。◆続編というトピックで昨年を振り返れば、傑作密室スリラーの続編『ソウ2』も外せません。低予算を逆手に取った前作のトリックが痛快だった故に募る不安。しかし、新たに抜擢された監督が別に温めていたという脚本を改訂して撮り上げた本作は、前作の物語と巧妙に絡み、『CUBE』やアガサ・クリスティー(ここでは作品名は伏せておきましょう)までもの要素を盛り込んだ残虐かつ知的な充実作となっていたのです。ラストに何かあると思ってはいたのですが……ああ、またやられた! この作品もまた、(“この手”の映画では稀な)続編の成功作ではないでしょうか。『ソウ2』は1/28(土)から。(H)

『ALWAYS 三丁目の夕日』と昭和30年代

(2006年・第3号・通巻133号)

最近ある雑誌で昭和40年代の東京の風景を見ました。よくオリンピック(39年)以降変わったと言われる東京ですが、そこにはまだ30年代と地続きの風景がそこかしこに見られるように感じられました。46年生れの私には30年代の風景は写真や映画でしか知らないのですが、30年代にそれなりの郷愁を覚えるのは、幼少の頃に見た家並みがまだ当時の風景を留めていたせいかもしれません。●当館で2/25から上映する『ALWAYS 三丁目の夕日』は昭和33年を舞台にした映画です。東京タワー建設、集団就職、テレビ放送開始、駄菓子屋、ダイハツミゼット等、活気ある当時を象徴する道具立てが満載の明るく人情味のある映画です。これを作ったスタッフたちも当時を実際に知らない若い年齢の人たちです。セットでは作りきれない当時の風景をCGで創り出していますが、CGと演出を上手く絡める技術は若い世代ならではものでしょう。それにも増して見所なのは日本最大の東宝スタジオ第9ステージに組まれた「三丁目」のセットです。邦画としては近年希に見るスケールの大きさと密度で、ちょっとした小道具などに、細部まで凝りに凝ったスタッフの意気込みが感じられます。●ただ作り込んだ分だけリアルなのかというと、必ずしもそうではないようです。「テーマパークのようだ」と言われることもあるようですが、個人的には映画で当時を完全に再現することは諸々の理由で不可能だと思います。この映画は活気と希望に満ちた当時の人々に尊敬と羨望のまなざしを持った若いスタッフが「映画を作ること、見せること」その心意気で作られた今の映画なのだと思います。(U)

3/4より日本映画監督協会創立70周年記念特集

(2006年・第4号・通巻134号)

牛原虚彦監督の手記によると、日本映画監督協会の創立のため京都側の委員、伊丹万作、衣笠貞之助、伊藤大輔と、東京の村田實、牛原虚彦が神田駿河台に集まったのは、昭和11年2月25日の夜とあります。設立が決まったのは夜半過ぎ。外はひどい雪だったといいます。監督協会史には2月26日創立とあるので、会合は零時を回ったということでしょうか。●出席した名だたる監督たちも、この日が日本人にとって忘れ難い日になることは予測しなかったことでしょう。未明、青年将校に率いられた陸軍歩兵部隊が国の中枢、数ヶ所を襲い蔵相高橋是清らを殺害した、世に言う二・二六事件の当日だったのです。●その監督協会も今年で70周年を迎え、当館では記念特集を開催します。題して「映画監督が愛した監督 日本映画監督協会70年の70本+1」。オールナイト上映を含む70本の映画を監督たちがセレクトし、番組の構成も監督たちが考えました。さらに上映作品の監督などが毎日来館しトークを行なうという、今までになく豪華でかつ斬新な趣向の特集です。「+1」は監督協会製作で伊藤俊也監督の新作『映画監督って何だ!』。ドキュメンタリー、劇中劇、インタビューなどで構成され、映画監督という存在を分かりやすく描き出しています。●初日は監督協会初代会長、村田實監督の『路上の霊魂』(新劇運動の小山内薫が総指揮、脚本に牛原虚彦)を上映します。この作品は複数の物語が並行して進行する実験的内容のサイレント映画で、澤登翠門下生でNHK BS「海外ドラマシリーズ プレマップ」の番組紹介の弁士役などで活躍中の、斎藤裕子の活弁付きでお送りします。上映予定は中面をご覧ください。乞うご期待!(Y)

春の訪れはフロドと共に。三部作一挙上映!

(2006年・第5号・通巻135号)

大願成就とはこのことでしょうか。「ロード・オブ・ザ・リング」(以下「LotR」)三部作、遂に上映決定です。◆当館で、IとIIにあたる「LotR」「LotR 二つの塔」の連続上映を行って大きな反響を頂いてからというもの、幾度となく「LotR 王の帰還」を含めた三部作の連続上映のリクエストを頂きました。当然です。この三部作の場合はヒットを受けて作られた“続編”ではなく、ピーター・ジャクソン監督の原作への尊敬と愛に溢れた明確なヴィジョンのもと、15ヶ月かけて一気に三部作を撮影したものです(個人的には「LotR 王の帰還」でのアカデミー賞11部門独占は、シリーズ全体への評価だと思います)。一気に観たいという気持ちは痛いほど分かります。リクエストに対しては「私たちもやりたいんですけどねぇ……」と、諸般の事情で情けない返事しかできませんでしたが、お待たせしました、三部作完結から2年、一作目公開から4年、皆さんの声援により上映決定です。◆監督は、それぞれ劇場初公開版が公式であり最終版である、という旨の発言をしています。しかしここまでお待たせしたのですから、ファンの間で秘かに“完全版”と称されるスペシャル・エクステンデッド・エディション(SEE版)で上映したいと思います。それぞれ30分〜50分の追加シーンと再編集が施されたSEE版では、完成されていたはずの「LotR」の世界がさらに深く、分かりやすく描かれます(一作目などオープニングが全く違う!)。3作合計681分……時間表記としてはあまり見る機会のない数字ですが……なんと11時間21分! 成田〜ミラノの搭乗時間とほぼ同じ。従って座席指定、出入り自由、休憩も多めにとります。万全の体調で挑んでください。詳細は別項で。まずは感謝とご報告まで。(H)

ヴェンダースがやってくる!!

(2006年・第6号・通巻136号)

前号でもお知らせしたとおり、当館では「ロード・オブ・ザ・リング」(以下LotR)スペシャル・エクステンデッド・エディションの3本立を上映いたします。4/22(土)の夕方5時からのオールナイトと、4/23(日)の朝10時からの2回限定上映です。この3本立は他館でも上映されたことがありますが、昼に上映されることは希で、「まとめて観たいけれど、オールナイトでは…」という方のために当館では昼も上映いたします。しかも3本立でご入場料金が3000円! 同じ料金では二度と上映できないと思われますので是非この機会にご覧ください。また、通常は通信販売でしか購入できないLotR関連グッズの販売も予定しています。皆さま、オトナ買いの御用意はよろしいでしょうか。他にオールナイトの上映では、LotR予告編大会やイベントを予定しています。お楽しみに。■もうひとつビッグニュースです。何と、あのヴィム・ヴェンダース監督が来館、舞台挨拶をしていただくことが決定いたしました! 5/2(火)の変則オールナイト上映ですが、翌日からGWが始まりますのでファンの皆さま、万難を排して新文芸坐に集結しましょう。つきましてはファンから監督への質問にお答えいただくべく、質問を募集いたします。ご質問は staff@shin-bungeiza.com 宛てにメールで送っていただくか、またはロビーの投書箱へどうぞ。その中から2〜3選ばせていただき、監督にお答えいただきたいと考えています。■その他「ピンク大賞」「ルパン三世 シークレットナイト」と、来館ゲストが目白押しの新文芸坐オールナイト。どうぞご期待ください。■友の会会員の方々へ。第4回懸賞クイズの回答は“Naijo No Ko”(内助の功)でした。正解者から5名様に招待券を郵送いたしました。(S)

まだまだまだオールナイト

(2006年・第7号・通巻137号)

“日本映画監督協会創立70周年記念”特集は3/24の伊藤俊也監督作品『映画監督って何だ?』の上映をもちまして無事終了……いたしません! 70周年ということで70本の作品を上映するためには、まだまだオールナイトが残っております。豪華監督競宴のトークショーと共にお贈りする、深夜ならではの濃厚なシャシン(映画)を頑張って(何せ終映が遅い)御高覧ください。★さて、監督協会の後も、お祭り騒ぎのオールナイト(但し、上映中はお静かに)。ピンク大賞、「ロード・オブ・ザ・リング」大会、ヴィム・ヴェンダース監督来館! と、ナント“クレヨンしんちゃん”は、お休みになってしまいました。でも、3年ぶりに、「ルパン三世シークレットナイト」が復活。ゲストトーク、劇場版、TVスペシャル版、パイロット版(試作品)&TVシリーズの傑作選を、2週に亙ってお贈り致します。★この間に、新作公開記念の監督ワンマンショーが御座居ます。一昨年の東京国際映画祭グランプリ・監督賞・男優賞を独占した根岸吉太郎監督作『雪に願うこと』。昨年のカンヌ映画祭・史上最年少男優賞が話題となった『誰も知らない』の、是枝裕和監督初の時代劇、V6の岡田准一主演の『花よりもなほ』であります。最新作のサワリ(予告篇)と共に、過去の代表作を勿論、監督のトーク付きで上映致します。因みに、リクエストの多かった『誰も知らない』を上映しようとオールナイト企画を打診したところ、御多忙とのことで、お流れになりかかっていたのですが、当館で隔月開催の落語の会、立川志らく師匠(兼・監督)の「シネマ落語」に、是枝監督が来られ支配人が直接お話したところ、トントン拍子にコトが進んで、メデタシ上映と相成ったのであります。(H)

松竹110年にちなみ松竹映画特集

(2006年・第8号・通巻138号)

―小津安二郎、清水宏、溝口健二、木下惠介……、
輝ける松竹の巨匠たちの世界―

松竹の創業は1895年(明治28年)。松竹の資料によると、この年「大谷竹次郎、京都新京極阪井座の仕打となる」とあります。実は「仕打」の意味が分からなかったのですが、広辞苑にも意味が載ってない。調べてみると、どうやら興行主というような意味のようです。●竹次郎には双子の兄がいて名を松次郎。松次郎は白井家に養子に入り、彼も劇場の経営に携わります。1902年大阪朝日新聞が二人のことを“松竹(まつたけ)”と呼び、誰ともなく二人が経営する劇場を“松竹(まつたけ)の芝居”というようになったといいます。●同じ年、二人の事業を一つにし松竹合名会社を設立。そして1920年(大正9年)松竹はついに映画事業に乗り出し松竹キネマ合名社を創設します。このころから初めて“しょうちく”と呼ばれるようになったといわれます。●今回の上映は、戦前作品からは溝口健二の名作『浪華悲歌』など12本。戦後作品からは日本初のカラー劇映画、木下惠介『カルメン故郷に帰る』、野村芳太郎の感動巨編『砂の器』まで25作品。●笑いあり、涙あり。ほのぼの心温まる作品に、日本人を鋭く風刺する作品など、盛りだくさんの内容です。“松竹クラッシックス”とでも呼びたくなるような味わいと気品に満ちたラインナップになりました。●4/29は木下惠介のもと助監督を務めた脚本家の山田太一さんのトークショー。5/5は澤登翠さんらによる活弁付きの上映です。乞うご期待。(Y)

[漢字][ひらがな]⇒[カタカナ]⇒[ABC]

(2006年・第9号・通巻139号)

近年、日本映画のタイトルが[カタカナ]で付けられることが多くなったように感じる。先頃、特集上映した『気になる日本映画達〈アイツラ〉2005』は、昨年公開した作品の中からセレクトした28作品であったが、内、約6割に当たる16作品に[カタカナ]が使われていた。外国映画のタイトルも、原題をそのまま[カタカナ]で表した作品が多い。◆身近な生活の中から[漢字][ひらがな]が消えていく傾向にあり、社会全般に外来語、外国語が蔓延している。そんな状況に拍車をかけるように、文部科学省は小学校での英語必須化を推進している。石原都知事は、「人間の感性や情念を養うのは国語力だ。小学生から英語を教えるのはナンセンス」と批判していた。この問題を議論するつもりはないが、[カタカナ][ABC…(アルファベット)]が、今まで以上に日常生活の中に入り込むことは明らかである。◆例えば[日本]⇒[ニッポン]⇒[Japan]は、[東京]⇒[トーキョー]⇒[Tokyo]へと移行していくことは必至である。同じ言葉でも[漢字][ひらがな]と[カタカナ]と[アルファベット]と、表記が違えば視覚から伝わってくるニュアンスは全く違ってくる。[漢字][ひらがな]は、単なる文字としての機能の外に、都知事の言う「感性や情念」のような日本人の複雑で微妙な心情をも包含しているように思う。身近な生活から[漢字][ひらがな]が消えてしまうことは、日本人にとって、何か大切なものを失ってしまうような気がするのだが…。(N)

虚構の世界を創ること

(2006年・第10号・通巻140号)

劇映画、とくに群像劇とよばれる類の映画を観ると、「脚本家はさぞ気持ち良いだろうな」とうらやましくなります。もちろん作品を生み出すための苦労はあるでしょう。それでも、多くの登場人物をチェスの駒のように自由に配置し好きなように動かせるというのは、神になったような気分なのではないでしょうか。■数多い映画の中には、展開が矛盾だらけだったり、重要な登場人物が知らぬ間に物語から消え失せたり、サスペンスで犯人が終盤に突如として登場したりする稚拙な脚本も少なからずあります。しかしその一方で、ジグソーパズルの最後のピースがピタッとはまるような気持ちいい映画も確実にあります。そんな作品を書き上げたときの脚本家の快感は、観客である私には想像するしかありませんが、脚本家という職業に嫉妬は感じます。■そういう意味で私が初めて脚本家をうらやましく思ったのは、荒井晴彦氏の「リボルバー」(1988年・藤田敏八監督の遺作)でした。柄本明&尾美としのりコンビが最後の1ピースなのですが、この扱いが絶品でした。近年なら、一昨年のアカデミー脚色賞ノミネート「ミスティック・リバー」、本年の作品・脚本賞他「クラッシュ」、キネマ旬報脚本賞の「運命じゃない人」の3作品。観終わったあとにその脚本を書いた人を小憎らしく思ったくらいです。無駄なピースもなく、足りないピースもない。脚本家が創ったそれらの虚構の世界は、破綻なく調和がとれているという意味で美しい世界でした。のみならず、完成したパズルに描かれた図柄に切ない気持ちになったり、打ちのめされたり、笑ったりできたわけで、鑑賞者の私としては大満足な映画たちです。■5/20(土)〜「THE 有頂天ホテル」はパズルとしても、なかなかです。併映は「男たちの大和/YAMATO」。(S)

黒木和雄監督逝く

(2006年・第11号・通巻141号)

今年も、元旦に黒木和雄監督から年賀状が届いた。監督自ら宛名を書き、賀詞は印刷であるが、余白に「よろしくお願いします。」と自筆の添え書きがあった。私の年賀状は、夏恒例の特集番組を今年は、黒木監督の“戦争レクイエム三部作”を中心にした企画を考えている旨を書いて出してあった。数日後、また、黒木監督から元旦に届いた賀状と全く同じ、自筆で宛名を書き、「よろしくお願いします。」と添え書きした年賀状が届いた。◆3月20日、監督協会のイベントのトークショーに来館した時に、黒木監督から「8月の件は、了承しております。」と声をかけられた。間違いなく、二枚目の年賀状は、返事の意味だったのである。その時、8月に公開される新作映画について、「やはり、“あの時代”を撮りました。」と優しい眼差しで話していた。その後、3月25日付消印で、やはり、自筆で宛名を書いた試写状が届いた。それは、松田正隆の戯曲を映画化した『紙屋悦子の青春』である。そんな矢先の訃報であり、吃驚仰天、晴天霹靂である。◆近年の黒木監督は、少年時代の空襲体験に基づいた作品を撮ってきた。今回の新作も、特攻で出撃する青年と、その友や知人の娘との交流を淡々と描いた。黒木監督の言う“あの時代”を描くことにより、“あの時代”を二度と繰り返してはならない、という黒木監督の願望であり、観る者へのメッセージであると思う。黒木監督の願望であり、メッセージをスクリーンを通して、次世代に伝えて行きたいと、黒木監督自筆の三枚のはがきの前で思う。(N)

第三のスクリーンは永遠である

(2006年・第12号・通巻142号)

当たり前だが、映画は絶対に映画館で見るべきものである。なぜか?

ビデオやDVDでは、スクリーンと観客が渾然一体となって生み出す「曰く言い難いもの」が決定的に欠けているからである。

その「曰く言い難いもの」は、とりわけ、プログラム・ピクチャーの名脇役がスクリーンに登場する瞬間にあらわになる。というのも、観客は、一瞬間だけ現れてまた消えてしまうその名脇役が姿を見せるとき、客席から身を乗り出して、その脇役の映像を自分たちの眼底のスクリーンに定着しようと試みるからだ。その刹那、観客の眼底のスクリーンが無数に集まって、館内に、いわば第三のスクリーンのようなものが形成される。

この第三のスクリーンこそ、プログラム・ピクチャーの脇役が永遠に生きつづけるヴァーチャルな空間であり、かつては映画館にこの第三のスクリーンがあるからこそ、みなせっせと映画館通いをしたのである。

拙著『甦る昭和脇役名画館』が、まさか本当に上映されるようになるとは、こんなに嬉しい驚きはない! 新文芸坐の「脇役列伝」を見てから死ね!!!

鹿島茂(フランス文学者、エッセイスト、コレクター)

 
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