あけましておめでとうございます
(2008年・第1号・通巻179号)
旧年中は、ご愛顧いただき心より御礼申し上げます。
本年も、〈感動はスクリーンから〉をモットーに、皆様が映画を通して感動、興奮するような、心豊かになる番組を提供していきたいと考えております。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
2008年1月1日
新文芸坐
支配人 永田稔
関口芳雄 矢田庸一郎 梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔 柳原弘
佐野久仁子 高橋悦子 西本布美子 高橋夏枝 釘宮あかね 浅香ノリ
涙の理由は
(2008年・第2号・通巻180号)
フィクションの世界のヒーローたちは問答無用の最終兵器を持っています。例えばウルトラマンのスペシウム光線。フィクション故にその威力の程は不明ですが、たいがいの怪獣はあの光線でイチコロです。これを避けて逆襲に転じるなど、良識ある怪獣ならできないことです。水戸黄門の印籠も然り。平成の世に暮らす我々には理解不能な「三つ葉葵の紋所がでたら、逆らっちゃダメ」という掟が、悪党どもには効力を発揮するのでしょう。■諺に“泣く子と地頭には勝てぬ”というものがあります。道理の通じない者と権力者に勝負を挑んでも、勝ち目はないという意味です。もうひとつ、我々オトコが勝てないものに、“女の涙”というものがあるのではないでしょうか。決まった時間帯に出されるスペシウム光線や印籠と違い、予測不能なタイミングで繰り出されるのが“女の涙”の特徴です。昔、数人グループでディズニーランドへ行ったときのこと。突然ひとりの女の子が泣き出して「もう帰りたい!」と言いだし、誰もその涙に抗えず全員で帰路についたことがありました。涙の理由も不明でしたが、その突然さにも驚かされたものです。■「河童のクゥと夏休み」を観て、とても印象的な場面がありました。息子が初めての一人旅に出る日。家の前から見送った母が涙を見せるのです。傍らの夫は涙の意味が分からず理由を訊くと、息子がこちらを振り向きもせずに角を曲がってしまったからだと答えます。私は、ヘェー女ってこういうことで泣くんだ!と感心したものです。鑑賞後に妻にそのことを話すと、その涙はよく理解できるというのです。この脚本を書いた男は凄い! というわけで、女の涙を解する原恵一監督のオールナイトは、2/2(土)。(S)
いつか壊したい壁なのです
(2008年・第3号・通巻181号)
日に何十件と問い合わせの電話をいただきます。一番多いのは上映時間と場所の確認ですが、最近増えたのが時間を確認した上で「で、今何やってるの?」という流れ。はたから聞けばあべこべかも知れませんが、これは大変嬉しい。作品の内容は二の次で、ある種の信頼で当館へ足を運んでいただける。商売的なことよりも、日々の上映を通じてこのような関係が築けたことが私たちのささやかな誇りになるのです。この信頼を維持しなければと自分に渇を入れながら「『インランド・エンパイア』という洋画です!」と何度も答えた正月でした。◆しかし、そんな素晴らしい関係をぶち壊すジャンルがあるのです。それはホラーとアニメーション。血肉飛び散るホラーを拒絶するのは人道的に納得がいきますが、「○○というアニメ作品……」と言った瞬間に「じゃあいいや」の言葉をいただく時の切なさ。もちろん好き嫌いは十人十色、ましてお客様に好みを押し付けるなど以ての外。しかし現在の、特に日本のアニメ映画のレベルの高さ・面白さを伝える機会を逃したと思うとやはり切ないのです。◆今敏(こん・さとし)というアニメ映画監督は、オタク文化を痛烈に皮肉った『パーフェクトブルー』でデビューして以来、アニメ“を”見せるのではなく、アニメ“で”見せることを常に意識してきた作家です。作品世界を堪能させるだけではなく、なぜアニメなのか、という問いの答えを探す喜びを与えてくれます。その典型的な傑作『千年女優』は今回事情により上映できませんが、まずは現在の集大成的作品『パプリカ』をご覧ください。「じゃあいいや」で済ますにはあまりに惜しい、先進的な“映画”がそこにあります。2/16は今敏監督(来館!!)の特集オールナイトです。(H)
ブレードランナー ファイナルカット
(2008年・第4号・通巻182号)
幾多のバージョンが存在するいわくつきの映画ですが、今回は何と新たにハリソン・フォードの息子が出演しているのです!! と言っても口元だけですが・・・。撮影時にハリソン・フォードが言った台詞が、後で変更されたため、画面の口の動きと話されている台詞が違っている場面があるのです。それを修正するため、当時のハリソンに口元が似ている息子に、台詞に合わせ口を動かしてもらい、後でハリソンの顔にデジタル合成し、出演と相成ったのです。他にもスローモーションのせいでスタントマンの顔がバレバレのシーンを役者本人の顔に差し替えたり、ワイヤーを消したりと、様々なデジタル処理が行われているようなのですが、取って付けた様なCGを入れるようなものではないので、マニアでない限りどの場面をいじっているのかよく判らないものが多いです。●個人的には「最終版」から変更となった、主人公のデッカードが実は○○○○○○だったというのは、どうにも後で取って付けたような印象が拭えず、馴染めないですし、英語が分からないのでどの程度「ひどい」のか判らないのですが、ナレーションもあったほうが編集上、間が抜けてないような気もします。また今回2Kのデジタル上映だったことも残念でした。●しかし公開当時不遇だった映画が25年たっても、監督本人が少なからぬ予算で映画を修正する機会に恵まれ、それが商売になるというのは極めて異例なことです。いまだハリウッドではこの映画に匹敵するSF映画を作りえていない状況がそれを可能にしているのならば、このことは少々不幸なことなのかも知れません。しかし久しぶりに優雅に飛ぶスピナーをスクリーンで見られただけでも幸福だというのもまた事実なのです。(U)
今年の「気になる日本映画達2007」のイチオシは、
(2008年・第5号・通巻183号)
『ヒロシマナガサキ』と『夕凪の街 桜の国』の二本立て。『ヒロシマ〜』は、記録映像などを交えながら、被爆者の方々や原爆に関与したアメリカ人たちの証言を捉えたドキュメンタリーです。圧倒的な映像の前に、見る者はほとんど言葉を失ってしまいます。声にならない声がふつふつと湧き上がってきますが、一つの言葉に収まりきらないのです。広島、長崎について様々なことを知ったことも勿論重要ですが、映画を見ながら、言葉にならない思いをずっしり抱えた自分自身と、否応なく向き合ったことも貴重だったと思います。■『夕凪の街〜』は文化庁メディア芸術祭大賞などを受賞した、こうの史代さんのマンガの映画化作品。原爆投下から13年後の広島を舞台に、健気に生きる被爆者の娘・皆実の姿を切なくも温かい眼差しで描いた「夕凪の街」。現代の東京で暮す皆実の姪が、広島を訪れ家族のルーツを見つめ直す「桜の国」。映画は、この2つの物語から構成されています。■実は私の場合、この映画の特に「夕凪の街」の部分で、もう滂沱の状態に……。■こうのさんは1968年広島生まれで、「被爆二世でもない」そうです。映画を見た後に原作を読んで思ったことは、こうのさんは、被爆者の方々の魂や思いを汚したり辱しめたりしないことを第一に思いながら、このマンガを描いたのではないか。この映画の佐々部清監督は、こうのさんの作品世界を汚さないことを第一に思いながら、映画を撮ったのではないかと。■こうのさんの伸び伸びとした柔らかいタッチのマンガから、佐々部監督の慎ましく温かい画面から、被爆者の方々の魂の声が聞えてきたように思えました。(Y)
お気に入りのオヤジ俳優たち
(2008年・第6号・通巻184号)
若いスタッフと話をしていると、ハリウッドの若手スターを知らずに恥ずかしい思いをすることがあります。しかし私も20年前は若者だったワケで、スターといわれる人々の栄枯盛衰も少しは分かっているつもりです。当時の映画雑誌のグラビアを賑わせていたスターのうち、現在も主役を張っている役者がどれほどいましょうか? ■今は、若手よりも、むしろ中年俳優がスクリーンで輝いているのを“発見”したときの興奮が大きいのです。好みの俳優を例えれば、クリス・クーパー。その名前を覚えたのは彼がオスカーを獲る2〜3年前で、これほどイイ顔のオヤジ俳優に今まで注目しなかった自分の不明を恥じたものです。それにも増してのお気に入りは、ウィリアム・H・メイシー。何本も出演作を観ているのに、『ファーゴ』以前の記憶がない……。「お前さんたち、その歳になるまでどこで何をしていたんだい?」と問いたくなるが、むしろ問題は彼らを発見できなかったこちらの眼力にあるのです。■そして最近発見した俳優が、ジョシュ・ブローリン。『グラインドハウス』で顔を覚え、『アメリカン・ギャングスター』(5/17(土)より当館で上映)で名前を覚えました。なぜこんなイイ役者を今まで知らなかったんだ? さてはニック・ノルティが若返ったな? と思っていたら、本年のオスカー作品『ノーカントリー』に主演するとは! さすがコーエン兄弟、役者を見るお目が高い!! ■『ノーカントリー』のオスカー4部門受賞を記念して、4/19(土)にコーエン兄弟のオールナイトを上映します。さらにJ・ブローリンと同じく『グーニーズ』で映画デビューしたショーン“サム”アスティン主演の『ロード・オブ・ザ・リング』三部作一挙上映オールナイト、今年は5/3(土)です!(S)
オーストリア・ドイツ発のドキュメンタリー『いのちの食べかた』
(2008年・第7号・通巻185号)
昨今何かと話題の“食”に関するドキュメンタリーなので、きっと扇情的な作品かと思ったら一風変った作風でした。一口で説明すると、野菜から魚、肉といった食品の生産から加工まで全てが、最新技術と大規模な機械化によって徹底的に合理化されている、そんな現場の様子……。カメラは黙々と作業をする人や機械を淡々と映します。ナレーションや解説は一切なし。画面はほとんど左右対称の構図になっていて、幾何学的な美しさも感じられます。■何をやっているのかよく分からないシーンもあります。例えばこんなシーン。大きな牛の横に白衣を来た男。男はやおらナイフで牛の横っ腹を裂き始めます。牛は平然と立っています。局部麻酔をしているのでしょうか。男は今度は牛の腹に手を突っ込み、なんと子牛を取り出したのです。マッドサイエンティスト!? パンフを読むと実は帝王切開での出産でした。この種の牛は子牛が大きいので、この方法がよく採られるそうです。読めば納得ですが、いきなり牛の腹を裂き始めたら、そりゃビックリです。■一匹の生き物が肉製品になっていく映像には、思わず目を伏せたくなるところもあります。また一方には、例えば私たち日本人は1年に300万トンの肉を消費するという現実。果たして、この映画を見ることの意義とは。映画監督・森達也はこう言っています。「矛盾は矛盾として受容せねばならない。」「意識におくこと。目をそむけないこと。凝視すること。そのためにこの映画はある。」■当館でも「秀作映画特集」のような形で上映したいと思っています。見ることが試練である、そんな映画もあっていい。森監督の言葉をもう一つ。「映画はやがて終わる。あとは観終えたあなたの問題だ」(Y)
節目の4月&新文芸坐の人事異動
(2008年・第8号・通巻186号)
日本の社会において、年度初めの4月は一年の内で最も節目にあたる月に当ります。新入学一年生、新入社員の人たちは、希望に心躍らせる門出の時になりますが、その新入生を迎える先輩たちにしても心構えを新たにする時でもありますので、4月は希望に満ちた明るい月と言えます。■しかし、今年は4月からの制度の見直しによる保険料の負担増や穀物相場の急騰により牛乳、醤油、ビール、パン、麺類などの食料品やガス、電気料金など生活必需品の値上げラッシュが始まり国民生活を直撃して、暗い話題の節目の4月となりました。■東洋の小さな島国日本ですが、否応なしに世界自由主義経済の荒波に巻き込まれています。役所、企業にとっても新年度のスタートの4月ですが、お役人は利権、既得権の死守よりも、企業人は会社利益第一主義よりも、国民の利益を優先した施策を、この時期だからこそ考えて欲しい。■民意によって出現した“ねじれ国会”ですが、日銀総裁の人事もすんなりと決められず、無為無策に党利党略だけに奔走している政治家たちに、このような混乱している日本経済を救出する能力はあるのだろうか。甚だ心許ない。■(株)マルハンの一部門である新文芸坐も新年度から次の通り人事異動がありましたのでお知らせいたします。[店長]矢田庸一郎、[マネージャー]関口芳雄、[顧問]永田稔。60代から40代の店長に若返りましたが、スタッフの顔ぶれは変わりません。従来通り、お客様に快適に映画を鑑賞していただけるよう工夫していきますので、今まで通りご来場くださいますよう宜しくお願い申し上げます。(N)
「気になる日本映画達2007」を振り返って
(2008年・第9号・通巻187号)
旧文芸坐時代から続く毎年春の恒例企画「気になる日本映画達(アイツラ)」が無事終了しました。例によってほぼ日替わりというタイトなスケジュールで、生活リズムを滅茶苦茶にされながらも何度も足を運んでいただいたお客様、本当にありがとうございました。◆この特集、私たち裏方としては往年の白黒作品を上映する時と違い、コマがずれていたりフィルムが切れるという心配はかなり減って助かるのですが、ポスターやパンフレットなどの宣伝材料・販売物があったり(数年以上経った旧作のものはまずありません)、ドルビーのデジタル音声のチェックをしたり、最近作ならではの作業もまたありました。◆そしてロビーにいるとお客様の反応も旧作特集とは少々違うことに気付きます。「○○監督特集」や「○○傑作選」といったある程度評価の固まっている旧作特集でよく頂く声としては「やっぱりいい映画だね」といった"やっぱり"的な称賛が多いのに対し、この特集では「こんなに面白いとは思わなかった! 凄いねコレ」という臨場感溢れるまるで何かを発見したかのような感想を多く頂きました。逆に「最低の2本立てね!」という旧作特集ではあまり聞かない感想も頂いているのですが……。◆いずれにせよ昨年の邦画界を賑わせた作品です。往年の名作ではなく現在進行形の日本映画の姿です。褒めるも叱るも観て頂かなければ始まりません。その感想こそが更なる発展の糧となるのではないでしょうか。また来年もお付き合いください。(H)
フィルム雑感2008年5月
(2008年・第10号・通巻188号)
最近フィルムカメラ市場の終焉についてのニュースを見ました。業界団体によると、生産台数の統計が一定の数値を下回ると発表しないそうで、ついに発表できない数にまで減ってしまったとのことです。かつて35ミリ一眼レフカメラの市場を日本メーカーが独占していたことを思うと寂しい限りです。各メーカーがデジタルカメラでも市場を独占するため、競争した結果なので仕方がないのかもしれませんが、この間いくつものブランドが消えてしまいました。また医療費削減のためにデジタル画像のレントゲン機器を国が推奨しているそうで、医療現場でもフィルムの需要が減っていきそうです。(世界中の病院で日常的に使われるので結構市場が大きかったようです。)●フィルムメーカーもフィルム事業の縮小に関係なく、以前から経営を多角化していてフィルム生産のみに頼っていたわけではないのですが、今後さらに縮小が加速するので設備や価格の維持が大変になってくるでしょう。しかし既に極端に需要が少なく、設備の老朽化で「大変」になっているシングル8(8ミリフィルム)の生産延長を英断したフジフィルムには、今後ともコダックの向こうを張って頑張って戴きたいです。(コダックのスーパー8もまだありますので。)●さて例年ピンク大賞の監督賞の副賞には撮影用のフィルムが贈られます。通常厳しい予算で作られるピンク映画は予め撮影できるフィルムの尺数もかなり制限されています。そこで「このフィルムをお使い下さい」という粋な計らいのなのですが、これでお分かりの通り一般映画の撮影ではデジタル化が進んできた昨今ですが、ピンク映画では今も当然の如く35ミリフィルムが健在なのです。(U)
デビュー60年目を迎えて
(2008年・第11号・通巻189号)
香川京子
このたびは、私が出演させて頂いた映画のなかから沢山の作品を上映して頂けることになり、この機会を与えて下さった「新文芸坐」の皆様に心から感謝致しております。
子供の頃には夢にも思わなかった“女優”の道を歩んで、もう半世紀以上も過ぎたとは、とても信じられません。これも、ひとえに不器用な私を支え、励まして下さった数え切れないほど多くの方々のお力添えを頂いたお陰でございました。
この長い道のりを振り返れば、何度か仕事に自信を失って悩んだこともありました。でも、そんな時「優れた作品に触れて、その感動を表現できるようになれたら」と夢見ていた頃を思い出し、未熟な自分にムチ打つ思いで、歩いてきたのでした。
私にとって何より幸運だったのは、仕事を通じて実に多くの優れた先輩たちに出会えて仕事だけでなく、人間として生きてゆく上で、貴重な導きを頂くことができたことです。そして、私を励まし、支えて下さったファンの皆様方。ほんとうに数え切れないほど多くの素晴らしい方々に心から感謝を申し上げずにはいられません。
このたび、お忙しいなかをわざわざお越し下さった皆様に心からお礼を申し上げます。私も、久しぶりに昔の自分に再会できることを、皆様とともに楽しませて頂きたいと願っております。
「スクリーンで観ておきたい! 珠玉の名編」(6/28〜)に注目
(2008年・第12号・通巻190号)
名前だけを聞いても気付かれない方が多いと思いますが、旧文芸坐時代から続いている意外に歴史のある特集があります。前年の日本映画の秀作を振り返る特集「気になる日本映画達」、社会派映画を通して日本の社会や歴史を考える「社会を告発する!!」、そして今度お送りする「珠玉の名編」も、実はそういった歴史のある特集の一つなのです。●この特集の第1回目は1990年。上映作品というと、まだJ・ロバーツが初々しかった『マグノリアの花たち』や、パンク・ムービーの旗手A・コックス監督の、J・ストラマーやJ・ジャームッシュまで出てた『ストレート・トゥ・ヘル』など。懐かしぃ〜。●今回の「珠玉の名編」も、伝説の歌手の生涯を綴った『エディット・ピアフ』や、天才ピアニストと老教師の魂の交流を描く『4分間のピアニスト』など、映画ファンなら見逃せない感動作がズラリ。●ここで私がこっそりおススメしたい映画は『ONCE ダブリンの街角で』と『俺たちフィギュアスケーター』。『ダブリン〜』は路上ミュージシャンと移民の娘の触れ合いを描くアイルランド映画。1時間27分と今どき珍しい短い作品ですが、全編さり気なくほろ苦くキュート! 彼らがCDを制作する音楽シーンは凄くパワフルで感動的。CGばかりの大作に食傷気味の貴方、必見ですよ。『俺たち〜』は男同士のフィギュアペアの、馬鹿馬鹿しくて暑っ苦しくて何も考えないで笑わせてくれるコメディ。こんな馬鹿映画を精魂込めて作り上げたスタッフ・キャストの美しい映画魂を思い、私は思わずエンドロールで泣きました! ビデオストレートになりかけたこの作品を映画会社GAGAの有志が体を張って劇場公開に漕ぎ着け、またその熱意に答えるように劇場では満席が続いたという曰くつきの作品。まさにスクリーンで観ておきたい一作です。(Y)
後期高齢者・95歳新藤兼人監督健在なり!
(2008年・第13号・通巻191号)
75歳以上の人を対象にした「後期高齢者医療制度」が、国民に受け入れられず、政府の支持率は著しく低下している。75歳以上の人は、昭和一桁以前に生まれた人たちで、戦前、戦中、戦後の激動の時代を生き延びて、現在の日本の繁栄を築いた功労者たちである。国民生活と掛け離れた鈍感な“霞ヶ関中央官僚”の施策に「ノー」という意思表示をしても、韓国のように行動を起こすことをしない忍耐強い性格の世代なのである。■映画界では95歳の日本最高齢映画監督・新藤兼人が現役で、最新作『石内尋常高等小学校 花は散れども』を完成させたので、試写を観た。スクリーンからは、100歳を目前にした老人が監督したとは思えないほど若々しく、瑞々しく、刺激的な映像で約2時間の作品を見事に描き切った。■新藤監督の自伝に基づく映画は、故郷広島の小学校での少年時代から東京に出てきて新進気鋭のシナリオライターとして自立するまでの涙、愛、笑、友情の物語である。新藤監督の生涯追い求めてきたテーマである、愛とエロス、教師と生徒、戦争と平和がストレートに表現されている。■新藤監督の人生に強い影響を与えた先生(柄本明)が主役であるが、若き日の新藤監督に扮する豊川悦司と初恋役の大竹しのぶが扮する料亭の女将が、海辺の小屋で関係を持つシーンは、95歳の新藤監督の若々しい〈映画魂のマグマ〉がほとばしったような感じを受けて感動した。舞台挨拶では、既に2本のシナリオが完成しているので、是非撮りたいと次回作に思いを馳せていた。次回作に期待を抱かせる、驚くべき95歳の後期高齢者である。(N) |