まんすりいコラム:2001年

“オンリー1”の映画館を目指して再出発!

2001/12/16 — 第34号

昨年12月12日にオープンした新文芸坐は、毎日替り二本立ての特集番組の上映から、入場料1,300円のベストプライスロードショーの長期間一本立て上映まで様々な番組を提供してきました。上映中の『光る雨』は、1月11日に終了いたします。その後は、二本立て番組を中心にした従来の番組編成にいたします。◆『映画の感動は、映画館のスクリーンで!』『一人でも多く、映画ファンを増やすこと』『さまざまな可能性にチャレンジする』というオープン時の初心に戻り、映画を見る環境、雰囲気に配慮し、サービス面、番組編成で様々な付加価値を付けて、スクリーンから感動、喜び楽しさを感じ取っていただける“オンリー1”の映画館を目指していきたいと考えています。◆映画全盛時代の60年代には映画館が約7,800館もありましたが、『ベン・ハー』『十戒』などの洋画の大作ロードショーは、東京1館、大阪1館だけでしか公開されていませんでした。大多数の映画館は、ロードショー、封切りの公開から遅れて二本立て、三本立ての興行をしていました。◆現在の映画館は全盛期の1/3の2,600館になってしまいましたが、正月映画『ハリー・ポッターと賢者の石』は、全国で4館に1館以上に相当する680館で公開されています。その他の映画館も一本立てのロードショー興行をしています。二本立て、三本立てで上映している映画館は、東京、大阪を中心に数館あるだけの逆転状況になっています。◆新文芸坐も少数派映画館の一館ですが、希少価値だけの存在ではなく、映画ファンの心を豊かにし、生活習慣の中に存在する映画館になるよう精一杯努力していきたいと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

— 永田稔


“名画座”再開! 2002年新春はアジア映画オンパレード

2001/12/01 — 第33号

来年1/2(水)よりは、心に染み入る感動の中国映画『山の郵便配達』をモーニング&レイトショーにて。さらに1/12(土)からの「ニュー アジアン シネマ ウィークス」特集は名画座スタイルに戻って1日3〜4回上映の二本立てです!◆今、やはり旬はアジア映画でしょう! さらに今年は韓国映画ラッシュ。18本のうち7本が韓国映画でちょっと偏ったかなぁ? でも涙をのんだ韓国映画も多数あって、つまり選りすぐりのセレクトでもあるわけ。◆ざっと各番組の紹介を。上映順に、(1)『イルマーレ』&『純愛譜』は時空を越える愛のファンタジー。夢見がちな貴女のためのプログラム(はーと)(2)冷戦後の今でも平和と危機は紙一重の極東社会派サスペンス『ユリョン』&『JSA』。(3)韓国新世代の性と暴力を鮮烈に描く(でも結構笑える二本立てでもある)『アタック・ガス〜』&『LIES/嘘』。(4)ベトナムといえばこの人、トラン・アン・ユン監督の2本は『夏至』&『青いパパイヤ〜』。『シクロ』はまたの機会に……。(5)『グリーン・〜』&『キャラバン』の合言葉は“西洋の血が混じるとアジアもファッショナブル”(トラン・アン・ユン然り)。映像美+魅惑の音楽に酔いしれて。(6)香港映画からは『星願』&『流星』。まさにハンカチ必携(ホント!)。そして(7)『春香伝』&『ナンナーク』は深ぁ〜い愛の二本立て。(8)『りんご』&『ブラックボード』の監督サミラは、21世紀の映画を担う一人であることがこの二本で証明されてしまった弱冠21歳! そしてトリは(9)円熟の極みのホウ・シャオシエンに、いつまでも初々しいエドワード・ヤンの台湾対決『フラワー・オブ・〜』&『ヤンヤン〜』だ。◆以上9番組。前売り3回券、5回券も絶賛発売中!

— 矢田庸一郎


映画『光の雨』を“総括”する! 『光の雨』公開記念オールナイト

2001/11/16 — 第32号

◆「連合赤軍」(映画『光の雨』では「連合パルチザン」。以下、カッコ内は映画内での呼称)は、全共闘運動が求心力を失いつつある昭和46(1971)年7月15日、武力闘争でしか“革命”が成功しないという思想の下に、共産主義者同盟赤軍派・中央軍(赤色パルチザン)と京浜安保共闘・人民革命軍(革命共闘)によって結成される。警察の目を逃れ、彼らは人里離れた山岳アジトで共同生活をおくるうち、“総括”と称する自己批判をメンバー内に強要し、リンチの果て死に至らしめた。革命を夢見た20代の若者たちは、なぜ、14名もの同士を殺してしまったのか……。◆いわゆる「連合赤軍事件」初の映画化となる、映画『光の雨』は、このテーマに迫った立松和平の小説『光の雨』の単なる映画化ではない。連合赤軍メンバーと同年代の若手俳優を起用し、この事件を映画化しようとする「今の時代」を生きる人々の“事件=映画化”との葛藤をも描いているのが、映画『光の雨』ならではの見どころだ。◆12月8日からの本作公開に合わせて企画した「公開記念オールナイト」も、単に事件に焦点をあてた関連番組ではない。◆12/1(土)『光の雨』のメガホンを執った高橋伴明監督の過去の作品、12/8(土)当時公開された映画、12/15(土)赤軍派、連合赤軍を題材にした映画、12/22(土)全共闘世代の荒井晴彦氏が選んだ映画、を通して“『光の雨』映画化への想い”“あの事件”“あの時代”を多角的にみつめようというもの。◆前記2名の他、上映作品はもとより、“あの頃”を語るには正にうってつけのメンバーによるトーク付き!

— 柳原弘


『光の雨』〈12/8(土)より衝撃のロードショー〉

2001/11/01 — 第31号

革命パルチザンが1972年に起こした、同志殺人事件をテーマにした映画の企画が進行していた。監督の樽見はその“革命戦士”たちと同世代だが、彼らを演じる若いキャストは劇中の「総括」といった言葉の意味がよくわからず戸惑いを見せる。それでも激寒の知床でのセットで撮影は順調に進んでいるかにみえたが、集団リンチを思わせる凄惨な総括シーンの撮影の後、樽見は突然姿を消してしまう……。■お気づきの方も多いと思う。革命パルチザンの同志殺人事件とはまさしく連合赤軍事件のことだ。武装蜂起を目指しながら山岳アジトで次々と同志を殺害し、ついにあさま山荘に人質をとって篭城、警察と銃撃戦を行なった、あの事件である。■だが実はこの映画は“あの事件”の再現ではない。学生運動も、事件のこともよくわからない若いキャストが台本を前にして、ある者は恥らいながら、ある者はやけ気味に「まるで分からない……」とつぶやく。一方で当時を知っている世代のスタッフは、映画のテーマとしての“あの事件”との距離の取り方に困惑する。つまり映画『光の雨』とは“いま”の中にある“あの事件”を巡るさまざまな視線の交錯だといえる。■当時を生きた一人でありながら監督・高橋伴明は、当時を特権的にノスタルジックに物語ることを自ら禁じた。この映画を観て事件への納得のいく説明を得よう思ったならば肩透かしを食う。劇中劇という作法を採用し、いまの時代の空気にさらされることにより“真相”とやらは宙に吊られた。■手かせ足かせを自らに課せながらも歴史と対面しようとしたその意志が呼んだものか。この映画の中に、思いかけず、わたしには、ある新鮮な風のようなものが感じられた。そしてその風は映画という真実かと夢想してみた。

— 矢田庸一郎


11月の土曜日は『談志ingオールナイト』でお楽しみ!

2001/10/16 — 第30号

◆談志は熱烈な映画ファンとして知られている。弟子の中には監督をしたり、出演したり、批評を書いたり、本を出すものもいる。また、Bの有名人コースには、世界の北野武をはじめ、あの高田文夫、映画監督山本晋也、歌手ミッキー・カーチスなどがいる。◆3月、7月の〈トーク&映画〉に続く第三弾として談志と一門の弟子が出演する「落語立川流映画祭*談志ingオールナイト〈銀幕こそ我が青春〉」を11月の土曜オールナイトでお贈りいたします。◆3日は歌手ミッキー・カーチス。映画全盛の1958年、第1回「日劇ウエスタン・カーニバル」に平尾昌晃、山下敬二郎らと出演、爆発的なロカビリーブームを巻き起こし人気歌手となる。同時に映画にも出演、市川崑監督の『野火』(1959)で俳優としての素質を評価される。今や日本映画を代表する個性派脇役である。ゲストはジェリー藤尾。◆10日快楽亭ブラック、ゲストに唐沢俊一。映画通の二人が選んだ時代劇映画は見逃せない珍品ばかり。トークショーは、もっと見せたい時代劇があったのだが、ジャンクされて見せられないウップンを○秘ビデオを見ながら発散させようという深夜ならではの趣向です。◆17日山本晋也。“ほとんどビョーキ”を流行語にしたが、かつては成人映画で傑作コメディを撮りピンク映画の巨匠といわれた。1975年文芸地下劇場で「山本晋也ワンマンショー〈君は晋也を見たか!〉」を特集。成人映画館でしか観られなかったピンク映画を女性客も入りやすい一般映画館で上映した画期的な興行であった。◆24日トリは談志。談志流の鋭い舌鋒で映画を熱く語ってくれるだろう。ビリー・ワイルダー、フレッド・アステアの熱烈なファンである談志が、実に渋い映画を選んでくれました。これも上映したい候補作品がジャンクのための苦渋の選択の結果なのです。11月秋の夜長の土曜日はゆっくりと映画を“聞いて”“見て”楽しんでください。

— 永田稔


正真正銘の巨匠・内田吐夢

2001/10/01 — 第29号

◆映画界最盛期には週替わり新作2本立て封切りという過密スケジュールに追われる各映画会社の中にあって、マイペースで製作できる巨匠監督たちがいた。その代表格は言わずと知れた、松竹の小津安二郎(1903〜1963、1927監督昇進)、東宝の黒澤明(1910〜1998、1943監督昇進)である。そして東映には内田吐夢(1898〜1970、1927監督昇進)がいた。◆特に、片岡千恵蔵主演の『大菩薩峠』(三部作)、中村綿之助(後の萬屋綿之介)主演の『宮本武蔵』(五部作)という連作物を一年一作のペースで製作・公開したのは、量産体制下の東映では破格の扱いである。◆その理由は、その重厚な演出ぶりを観れば一目瞭然。例えば『大菩薩峠・完結篇』のラストでは、嵐の日にロケしようと主張するスタッフに「オレは単なる川の濁流を撮りたいんじゃない、河に龍之介が呑まれる“芝居”を撮りたいんだ」と大掛かりなセットを組ませた大特撮を敢行した。◆私見ながら、『宮本武蔵・一乗寺の決斗』の武蔵(1人)対吉岡一門(総勢73人)の決闘の場面は、『仁義なき戦い』の抗争シーンもブッ跳びの、殺気みなぎる最高の立ち回りであり、遺作『真剣勝負』の武蔵対宍戸梅軒の対決は、『巨人の星』そこのけの心理戦が展開するガチンコ勝負。◆今回は、戦前の傑作『土』と、古巣の日活で撮った『自分の穴の中で』のシリアスドラマ、東映時代唯一の任侠映画『人生劇場・飛車角と吉良常』を合わせ12作を、10/28(日)から12/7(金)までモーニング&レイト上映致します。ぜひ、巨匠・内田吐夢こだわりの“演出”をご堪能下さい。

— 柳原弘


日本映画の名作が続々!

2001/09/16 — 第28号

“ベストプライス ロードショー”第1弾、『ダンボールハウスガール』がインターネット「えいがなび」の予告編人気ランキングで初登場第1位! というわけで話題沸騰中の『ダンボールハウスガール』はいよいよ10/6(土)より公開だ。■ところで新文芸坐はもう名画をやらないのかとご心配のお客様、いえいえそんなことはございません。モーニング&レイトショーで盛りだくさんの連続上映を行ないます。■第1弾は10/6より「『おかえり、寅さん!』スクリーンに帰ってきた渥美清」特集。96年8月、“寅さん”こと渥美清が亡くなって早いものでもう5年。おっちょこちょいだけど人がよく、決して豊かではないけれど悲嘆に暮れるわけではない、そんな愛すべき庶民を演じたら彼の右に出た者なし! ■メインの上映作品はご存知『男はつらいよ』シリーズ。今回上映は初期の作品群。後期の好好爺めいてきた“寅さん”と違い、舌鋒鋭くユーモアの中にも毒があるトンガッた“寅さん”の姿を存分にお楽しみあれ。またこのシリーズを観たことがない若い世代の方々、それから食わず嫌いの方々に是非とも観てほしい。特に1作目と浅丘ルリ子がマドンナの3部作はハンカチ必携の絶品ですゾ! ■いうまでもなく“寅さん”だけが渥美清ではない。今回の上映作品の中でも『沓掛時次郎 遊侠一匹』は異色作。加藤泰監督、中村錦之助主演の傑作股旅モノで、渥美清は錦之助の弟分で途中で惨殺されてしまう。しかし渥美清の名演によって後半の錦之助の苦渋がより鮮烈になった。評論家の間でも評価が高い逸品である。■第2弾は内田吐夢監督特集で『大菩薩峠』や『宮本武蔵』シリーズなどを上映する予定。どうぞお楽しみに!!

— 矢田庸一郎


伝説のトークライブ『銀幕同窓会』が本になった!!

2001/09/01 — 第27号

◆昭和30年代(1955)〜40年代の映画は、「娯楽の王様」であった。近年シネコンブームで映画館は増えているが、当時、映画館は地方の小さな町にも必ず在り、現在の3倍の約8千館もあり、国民一人当たり年間10回は映画館に通っていた。(昨年は年間1回強である。)◆その頃のことを高田文夫は、「終戦直後に生まれた我々団塊の世代が子供だった頃、茶の間にはまだテレビは無く、娯楽と言えばまずラジオ、そして何よりも映画だった。映画館こそが、我々の本当の教室だった。我々は映画の中から様々なことを学んだ。愛と勇気と正と邪と涙と笑いとラブシーン……。学校ではなかなか教えてくれない大切なことを、暗やみの中へ学びに行った。」(『銀幕同窓会』の序文〈予告編〉にかえて、より抜粋)と書いている。◆その高田文夫が幹事役を買って出て、イッセー尾形、ビートたけし、大滝詠一、高平哲郎など同世代の仲間との同窓会を今年の3月毎土曜日にトークショーと映画上映のオールナイト『高田文夫と五人の団塊者〈銀幕同窓会〉み〜んなオールナイトで大きくなった』を新文芸坐で行った。◆“聞く達人”高田文夫の軽妙洒脱な司会で、大爆笑の中にも団塊世代の映画へのオマージュ、映画遍歴など盛り沢山な楽しいライブであった。場内は沸きに沸いたが、チケットは前売り即完売のため、生で聞けたのは満席の300人のファンのみであった。◆そこで高田文夫は、この豪華な顔合わせによる映画本は他にないこともあり、伝説のライブの感動をもっと多くの映画ファンにも贈りたいと、その模様を収録した本を編纂してしまった。丁々発止と面白く、可笑しい会話の中に、感性豊かな青春時代を映画全盛の時に過ごした団塊世代の映画観、映画評、社会風俗など貴重な歴史的な証言がいっぱいです。映画ファン必携の書、懐かしい旧文芸坐が表紙の『銀幕同窓会』は、1,500円で新文芸坐売店で発売中!!

— 永田稔


日本映画“Best Price”〈適正価格〉ロードショー

2001/08/16 — 第26号

「映画料金、もっと安くてもいいんじゃない」、「この映画、興味はあるけど1800円出すのはチョッと」。こんな思いを抱いたことのある人は決して少なくないはず。■当館では10月上旬より、フレッシュで個性豊かな日本映画4本をロードショーします。それにあたりわたしたちは配給会社シネカノンと“適正入場料金とは?”と、とことん考えました。結論は思い切ったプライスダウン。入場料金1300円です。くしくもこの料金はわたしたちが行なってきた名画座二本立て上映と同じ料金です。■第1弾はドラマなどで人気急上昇の米倉涼子が映画初主演の『ダンボールハウスガール』。第2弾『みすず』は26歳で夭折した天才童謡詩人・金子みすずの生涯を『地雷を踏んだらサヨウナラ』の五十嵐匠監督が美しい映像で綴った一作。第3弾は『TATTOO〔刺青〕あり』(’82)などの高橋伴明監督、3年ぶりの新作『光の雨』です。テーマは連合赤軍事件。同時代を生きた高橋伴明の渾身の一作。宣伝根性抜きで本年度ベストワン有力候補だと思います。そして現在話題沸騰中の小説『白い犬とワルツを』(テリ―・ケイ原作/新潮文庫)の映画化作品が第4弾。“妻をなくした老人の前にあらわれた白い犬。この犬は老人にしか見えなったが、しかし……”。この感動ストーリーがどのような映画となって出来上がるか興味も尽きないところ。■どれも決して大作ではない。でも作り手たちの意欲が画面にみなぎる意欲作ばかり。「昔はよく日本映画を観たけどねぇ〜」というあなた。「オレはハリウッド大作専門」というキミ。もう一度日本映画に戻ってきてみませんか。試してみましょうよ。映画館の暗闇で新しい日本映画の息吹に触れてみて。

— 矢田庸一郎


「中国映画祭2001」開催!

2001/08/01 — 第25号

当館の前身、文芸坐では1983年から1990年まで毎年秋、徳間書店社長、故徳間康快氏のプロデュースで「中国映画祭」を行なってきました。9月20日はその徳間康快氏の一周忌となります。当館では徳間書店のご協力のもと、日中両国の民間レベルの文化交流に尽くされた氏の志を受け継ぎ、9月15日より「中国映画祭2001」を開催することになりました。■今回の上映作品は26作品。チャン・イーモウ監督の鮮烈デビュー作『紅いコーリャン』に感動ラブストーリー『初恋のきた道』。世界的巨匠チェン・カイコー監督のデビュー作『黄色い大地』。シエ・チン監督作品は、文化大革命を批判し日本でも大ヒットの『芙蓉鎮』に歴史巨編『阿片戦争』。魯迅原作『阿Q正伝』に老舎原作『駱駝の祥子(しゃんつ)』と、盛りだくさんの内容です。さらに今回は中国映画の最も新しい波、いわゆる第六世代と呼ばれる映画作家たちの作品を『ふたりの人魚』など4作品上映します。■ところで日中両国の間に例年になく波紋を投げかけた靖国参拝や教科書問題。これらの問題を思うとき、日本軍に抵抗する村人たちを素晴らしい映像で描く『紅いコーリャン』を含め、例えば映画を通しわれわれがさまざまな中国の人々の姿に触れていくということも、決して無駄なことではないのではないか。迂遠な方法かもしれないけれど、ごく普通の市民レベルでの、相互理解への第一歩がそこにあると思うのです。■清朝中国と英国のアヘン戦争から辛亥革命、日中戦争を経て中華人民共和国建国、文革、そして現代中国の生々しい姿。中国の歴史、国のかたち、そこに生きる人々。さまざまな中国をその目ではっきりと触れてみてください。

— 矢田庸一郎


《新“名画座”》へのチャレンジ

2001/07/21 — 第24号

◆昨年平成12年12月12日に新築オープンした新文芸坐は、経営者が変わっても旧文芸坐の精神を引き継いで“良質の映画”を“低料金で”“数多く”観せる興行を行ってきました。◆新文芸坐の基本姿勢は、《21世紀へ、新“名画座”の創造》をテーマとして3項目の目標を設定し、その中に『さまざまな可能性にチャレンジしよう』という項目があり、『洋画、邦画、新作、旧作の垣根を越え、さまざまな映画を上映する』という行動指針があります。◆柿落とし以来、番組の決まっている8月末日までの約9ヶ月間で335タイトルの映画を上映いたしました。ロードショー(=RS)終了直後の作品を上映したことはありますが、RS、封切り作品の上映はありません。すべて評価、内容の判っている旧作映画です。◆新作の上映に踏み切れなかったのは、配給会社から入場料金を他のRS、封切り館と同一の1,800円にすることが条件にあったからです。この世界一高いと言われる入場料金をお客さまからいただくのに抵抗がありました。◆現状の入場料金が不当に高く、割引システムに疑念を抱く配給会社もあります。その配給会社が〈ベストプライス〉として当映画館と同じ一般入場料金1,300円で新作を公開したいと提案してきました。◆新文芸坐は、《新“名画座”》を構築するチャンスと考えて新作上映にチャレンジしてみることにいたしました。上映作品は極端に少なくなりますが、後世に語り継がれる“良質の”映画に真っ先に巡り会えることをお客さまと共に期待したいと思います。◆第一弾は、10月上旬公開予定の人気タレント米倉涼子初主演の『ダンボールハウスガール』(監督は『人でなしの恋』の松浦雅子)です。ご期待下さい。

— 永田稔


英国ワーキング・クラスの親父たち

2001/07/01 — 第23号

9/1(土)〜7(金)は「リトル・ダンサー」と「シーズンチケット」、英国ワーキング・クラス(労働者階級)の少年を主人公にした笑いと涙の2本立です。◆「リトル・ダンサー」はダンサーを目指す少年の姿を描いた、S・ダルドリー監督の長編デビュー作。価値観の古い炭鉱の男を父親にもつ少年が父との葛藤の中で自分の夢を実現しようとする物語は、昨年公開「遠い空の向こうに」を思い起こさせる(どちらも傑作です)。父親は息子に立ちはだかる壁として登場するが、同時に息子への愛情も大きい。この愛情ゆえにとる父親の行動が泣かせるのだけれど、予告編にもあるスト破りのくだりは何度見ても胸が熱くなる。この映画、2度3度と繰り返し観る人も多いと聞くが、うなずけますなぁ。初見の方もリピーターの方も、どうぞご覧ください。◆「シーズンチケット」は「ブラス」のM・ハーマン監督最新作で、サッカーチーム“ニューカッスル・ユナイテッド”のシーズンチケットを手に入れるために奮闘する少年2人の物語。“遠い昔、父親と出かけたあの日のようにまたサッカーを観にいくんだ……”という想いを教室で語る場面は、ケン・ローチ監督の「ケス」を思い起こさせる(どちらも傑作です)、泣けるシーンなのです。そうなると当然この映画でも“父親”がキーワードになってくるのですが、こっちはただの暴力オヤジ。で、この映画“父親”をとんでもない方法で料理してやや強引ともいえるハッピーエンドを迎えます。どう料理するかは観てのお楽しみ。

— 関口芳雄


そしてデル・トロはスターになった

2001/07/01 — 第22号

文芸坐の8/18(土)〜24(金)は「トラフィック」「誘拐犯」の上映。そう、ベニチオ・デル・トロの2本立です。◆「トラフィック」は監督・脚色・助演男優・編集と、米アカデミー4部門を受賞した話題作です。アメリカ裏社会とメキシコを結ぶコネクション“トラフィック”をめぐる欲望と陰謀に彩られた実態に、果敢に挑んでいく男たちの社会派ドラマ。キャサリン・ゼタ=ジョーンズという花はあるものの、やはりそこは硬派で骨太の男たちの物語。M・ダグラス、D・クエイド、A・フィニー、……。いやあ、オヤジくさい。◆その中にあって注目すべきは、米・英アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、ベルリン映画祭、など本作で名だたる男優賞を軒並み受賞しまくりの、デル・トロ。初めての印象は「ユージュアル・サスペクツ」(それ以前の映画では記憶になし)で、たいそう人相の悪い役者だなぁという感想以外はなかったのに、今やアメリカじゃその名を知らぬ人はいない程の映画スター。読めませんでした。◆さて「ユージュアル…」でオスカー受賞の脚本家C・マックァリーが初監督した映画が「誘拐犯」です。主演はデル・トロ。「ユージュアル…」は抜群に面白いサスペンスでしたが、「誘拐犯」は比較的ストレートなアクション。しかしそこは曲者マックァリー。ただのアクションじゃない。徒歩より遅いカーチェイスやビーチフラッグのような銃撃戦。どうです? 超スローなのにスリル満点のカーチェイス、観たいと思うでしょ?

— 関口芳雄


映画館で映画を聞こう! 第二弾

2001/06/21 — 第21号

◆映画をスクリーンから“観る”ばかりでなく、映画にまつわるエピソードや時代背景などを“聞く”ことによって、当時の情景、雰囲気を知ることは、映画をより奥深く楽しむことになると思います。◆映画を“聞く”イベントとして、高田文夫プロデュースによる3月の土曜オールナイトで北野武、沢田研二、大瀧詠一など超豪華なゲストによる《トークショー&ゲストが選んだ映画》を五夜連続して行ない好評でした。◆その第二弾として作家吉川潮プロデュースにより7月14日から三週連続土曜オールナイトで、落語家・林家木久蔵、俳優・石倉三郎小沢昭一がゲストで来場いたします。◆7月28日のゲスト小沢昭一は、映画俳優として『“エロ事師たち”より 人類学入門』で各映画賞の主演男優賞を独占、舞台俳優として紀伊国屋演劇賞を受賞。ラジオでも25年以上続くトーク番組に出演する一方、日本の伝統芸能、民衆芸能研究家として大学の教壇に立ち、その成果をレコードや著書に著すなど長年の幅広い芸能活動の功績により94年紫綬褒章を受章しました。◆映画俳優小沢昭一としては、数多く出演して上映機会の少ないプログラムピクチャーで、自ら命名した〈B級C級映画〉に強い愛着を持っています。『大当り百発百中』は、フィルムがありませんでしたが、こんな機会だからこそ是非上映したいという“小沢昭一的こころ”が日活を動かし、新たに現像して上映可能になった、見逃すことができない珍品であります。◆小沢昭一さんの話も興味津々ですし、木久蔵師匠と“時代劇”、石倉三郎と“健さん”との話も楽しさがいっぱいです。7月の土曜日は、映画を“観”にそして“聞き”に是非ご来場ください。

— 永田稔


推理! スリル! サスペンス! アクション! の巻

2001/06/11 — 第20号

6/12(火)より上映の『サスペンスJ 日本推理サスペンス映画傑作選』、バラエティに富んだ特集後半の番組の紹介をさせていただきます。まず6/24・25は、先日のオールナイト上映でも好評を博し怪優、三國連太郎、伊藤雄之助のコンビも素晴らしい、山本薩夫監督の傑作喜劇『にっぽん泥棒物語』。同時上映は同監督の『証人の椅子』。6/26・27は雪山でのサングラスを掛けた不気味な伊藤久哉と土屋義男の息詰まる対決が見逃せない『黒い画集・ある遭難』。同時上映は同じく松本清張原作『黒い画集・寒流』。6/28・29は鈴木清順監督のリバイバル上映などでさらに注目される宍戸錠、彼の初主演作『ろくでなし稼業』と代表作の一本『拳銃〈コルト〉は俺のパスポート』、どちらもエースのジョーと全盛期の日活アクションをお楽しみいただけます。6/30・7/1は新幹線物の2本立、頭脳派田宮二郎と情念の人近藤正臣の対決、増村保造監督作品『動脈列島』と『スピード』の元ネタとも言われる(?)高倉健ほかの豪華オールスターサスペンス映画『新幹線大爆破』。7/1・2は橋本忍の脚本で小林桂樹が弁護士(それぞれ違う役)を演じる渋いサスペンス『白と黒』と『』。7/4・5は男と女と殺意の話、成瀬作品としては異色のミステリー『女の中にいる他人』とスタイリッシュな市川崑のタッチが冴える十人の女と一人の男の話『黒い十人の女』。是非この機会に新文芸坐の大スクリーンでお見逃しなく御覧下さいませ。

— 梅原浩二


アンケートの結果報告

2001/06/01 — 第19号

◆4月始めに『上映開始後の入場制限、是か非か?』について、お客様にアンケートのご協力をお願いいたしました。その結果をご報告します。

A.上映開始直後からでも入場制限したほうがよい(22.1%)
B.今のままでよい(41.6%)
C.入場制限の開始時間を変えたほうがよい(10.2%、以上73.9%)
D.入場制限はせず、いつでも自由に入場できる(22.1%)
E.その他(入口を限定すれば自由、予告の間は自由、他)(4.0%)

◆上映開始後の入場制限は『やむを得ない』というご意見が3/4近くあり、且つ、現在行なっている《上映開始30分後の入場制限》に賛同者が多数でした。また、アルコール類の販売についてもご意見をお聞きしましたが、販売しないほうがよいというご意見が79.3%ありました。◆多数のお客様は、映画を最初から最後まで誰にも惑わされず、心安らかな気分で、快適に、スクリーンに集中して映画を観る環境を望んでいらっしゃると感じました。◆営業的には、入退場自由にすることにより途中入場のお客様が増え、各種アルコール類を販売することにより売店の売上が上がることが容易に計算できます。◆しかし、《入場制限》《アルコール類販売反対》のお客様のご意見を尊重して、目先の利益追求より“観る環境”を優先することにします。今まで通り《上映開始30分後の入場制限》にさせていただき、《アルコール類》は販売いたしません。◆お客様と共に雰囲気の良い、快適な空間の映画館にしたいと考えています。ご理解とご協力のほどをお願い申し上げます。アンケートにご協力いただき、また貴重なご意見をお寄せくださり誠にありがとうございました。

— 永田稔


見逃し禁止!『回路』vs『ザ・セル』の巻

2001/05/21 — 第18号

制作前から数十カ国の公開オファーを受けるなど世界が待望の黒沢清監督作品『回路』。その『回路』がカンヌ映画祭に出品されるという嬉しいニュースに合せたように当劇場でも5/22(火)より上映。“世界の黒沢”の真価を是非確かめてほしい。■部屋の片隅にあるパソコンが突然動き出し画面に不気味なメッセージと映像を流し出す。それを見た者は部屋を赤いガムテープで封印し自ら命を絶ってしまう。その奇怪な現象に気が付いた人々は必死に逃れる術を探すが、一人、また一人と……。■『回路』は傑作『CURE』同様なぜそのような現象が起こり、それが我々にとってどういう意味を持つかというような説明がほとんどない。しかも黒沢映画の近年の傾向として作品の中に終末観のようなものが漂い、そのためか人間という像がじりじりと“恐怖”に侵食され崩れ落ちていくような哀しみ、または薄気味悪さを強く感じさせる。■『ザ・セル』は意識を失った異常殺人者の深層心理にダイブして事件の謎を解き明かそうとする心理学者の姿を描く物語だが、見応えは異常者の心理世界の映像化。もうめくるめく華麗映像のオンパレード。意外にも異常者の深層心理はとっても美しい(笑)。MTV界の鬼才として知られた監督ターセムは『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン同様インド出身。プエルトリコ人家庭に生まれ育ち今や世界の歌姫、ジェニファー・ロペスが主演し、グラマラスな彼女が身を包む豪華な衣裳の担当はオスカー受賞者・石岡瑛子と、まさに世界の異才が集結した一作でもある。■この二本、まさに見逃し禁止ですゾ!

— 矢田庸一郎


「世界の北野、たけしのBROTHER」の巻

2001/05/11 — 第17号

さる3月17日、新文芸坐にオールナイトの特別ゲストとしてビートたけしさんが来館されました。上演前、映写室の窓からちらりとだけ場内の様子を確認すると言葉少なげに出てゆかれ、とても物静かな印象でしたが、舞台では一転いつもの爆笑トークで満員の場内を沸かせていました。そのビートたけし、いや、北野武監督の最新作が5月8日(火)より上映の『BROTHER』であります。イギリスとの合作、しかもロサンゼルス・ロケ、といういかにも“世界の北野”という感じなのですが、この映画の構想は94年『みんなーやってるか!』の撮影の最中にあり、96年には製作のジェレミー・トーマス(『戦メリ』)と接触をとっていたそうです。ワンテイク主義や派手なカット割をしないなど「ハリウッド的な定番はやらない」という撮影方法は当初、現地のスタッフ、キャストを当惑させたようですが、いつも通りにマイペースで進める様はさすがと言ったところでしょうか。さて内容の方は日本での居場所を失ったやくざの男がアメリカに留学している血のつながらない弟を訪ねて行く所から話が始まります。さあそうなりますとBROTHERとはこの兄弟のお話かとお思いになりますでしょうがそれは見てのお楽しみということで。因みにフランス版のポスターには赤い文字でANIKIと書かれておりました。併映は大島渚特集に続き『愛のコリーダ2000』となっております。

— 梅原浩二


特集「映画監督 大島渚」ひとくちコメント

2001/05/01 — 第16号

愛と希望の街(’59)監督昇進作。予定調和の松竹大船調に反し、二番館で封切り。◆青春残酷物語(’60)第1回日本映画監督協会新人賞受賞。松竹ヌーヴェル・ヴァーグの旗手と謳われる。◆太陽の墓場(’60)大阪のスラム釜ヶ崎を舞台にした鮮烈な群像劇。◆日本の夜と霧(’60)政治的思惑から、封切り4日で上映中止に。松竹退社の契機となった問題作。(再び日の目をみたのは3年後、文芸坐の姉妹館・人世坐での上映だった)◆悦楽(’65)大島主宰の独立プロ“創造社”第一回作品。山田風太郎の原作に政治憤懣を託す。◆日本春歌考(’67)シンガーソングライター・荒木一郎、伊丹一三(後の十三)出演。◆帰って来たヨッパライ(’68)ザ・フォーク・クルセダーズ映画初出演。◆絞死刑(’68)ATG一千万映画第一弾。足立正生が出演。◆少年(’69)盟友・田村孟の傑作シナリオを映画化。カンヌ映画祭監督参加。◆新宿泥棒日記(’69)横尾忠則、唐十郎ほか出演者多彩。◆儀式(’71)ATG創立10周年記念作品、キネマ旬報ベストワン。◆愛の亡霊(’78)東洋人初のカンヌ映画祭監督賞受賞。◆戦場のメリークリスマス(’83)初の海外オールロケ作品。デビッド・ボウイ、ビートたけし、坂本龍一出演。(三上博史が端役で出演)◆御法度(’99)13年ぶりの劇場作品。松田優作の遺児・龍平、崔洋一監督ほか出演者多彩。◆既にロビーでは大島渚ポスター展を開催中。また大島渚監督の前書き、『儀式』『戦メリ』の解説を収録した新文芸坐オープニング・プログラムを現在も好評発売中。尚、5月8日からは引き続き『愛のコリーダ』を上映。(併映『BROTHER』)

— 柳原弘


『僕たちのアナ・バナナ』……ジェナはポスターの絵柄よりずっとセクシーの巻

2001/04/21 — 第15号

エドワード・ノートンというと何を思い出す? 『ファイト・クラブ』のヤッピー役。『アメリカン・ヒストリーX』のナチ野郎(後に改心)。デビュー作は『真実の行方』。殺人容疑者の多重人格(?)の青年役で、いきなりオスカーノ・ミネートという経歴も。■難役を次から次と緻密な演技でこなすノートン。その彼が監督デビュー。しかもトリュフォーの『突然炎のごとく』にオマージュを捧げた三角関係の物語と聞くと、なんとなく青臭い映画を想像しちゃったんだけど……。■それで実際のところは? もうお分かりですね。ベーリィナイスよ。とっても洗練されててオシャレ。子供時代の親友三人(ボーイズ&ガール)が大人になって再会するまでを、頭五分ぐらいでさらりと見せるとこなど、うまいじゃん! ノートン自身の出演に、ベン・スティラー、ジェナ・エルフマンの配役も◎(特にジェナの健康的な四肢から溢れ出る色気にゾクッ)。各所にくすくす笑いをしかけながら、もつれる三角関係には観ているこちら側もハラハラ。「すげーおもしろかったよ! ノートン」と思わず叫んだね(心の中でに決まってんだろ)。■併映はメル・ギブ、ヘレン・ハント主演のハートウォーミング・コメディ『ハート・オブ・ウーマン』。でも注目はマリサ・トメイよん(ハート)この人の笑顔ってホント素敵(胸もでかいな)。それにオスカー受賞の実力派だぞ。『ザ・ウッチャー』にも出てるけどこっちはやる予定ないのでマリサ・ファンはお見逃しなく。

— 矢田庸一郎


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