まんすりいコラム:2002年

マキノ雅弘の世界へ、ようこそ

2002/09/16 — 第52号

「いい映画」を見たときには、「映画館を出ると、とたんにみんなに吹聴したくなる。見てない人に早く見せたくなってくる」と、かつて植草甚一さんが書いていた(「いい映画を見に行こう」)。「こんな気持にさせる」「いい映画」とは、「第一に、みんないいツラをしているなあ、という映画に大事な要素が全巻を通して発揮されていること」、そして第二に、「画面内のパルゼーション(胎動)がものをいうこと」が必要にして欠くべからざる絶対条件であり特質なのだと植草さんは定義している。

映画の面白さ、映画を見ることの楽しさが、なんと見事に的確に述べられていることか。第一の「みんないいツラをしているなあ」というのは、スターの、俳優の、人間的なキャラクターの魅力であると同時に、その魅力にひかれ、うっとりし、ときには狂ってしまうファンの心情でもあろう。第二の「パルゼーション(胎動)」とは画面の、スクリーンそのものの魅惑であると同時に、画面を、スクリーンを、見入るファンの心のときめきでもあろう。

マキノ雅弘の映画とは、まさにそういう映画なのだ。肩肘張って見ることを強いられる「作家」の立派な映画ではなく、気軽に見られる、ときにはデタラメなほど奔放でめちゃくちゃなお遊びに流れながらも「気持を舞いあがらせるようなパルゼーション」にあふれた映画なのである。

— 映画評論家 山田宏一


『友の会』の入会金と『シニア』の入場料金の変更

2002/09/01 — 第51号

新文芸坐は、文芸坐の閉館から3年9カ月後の平成12(2000)年12月に、旧作品の〈戦後日本映画 時代が選んだ86本〉毎日替り二本立ての特集番組により名画座として新装オープンいたしました。◆名画座は“良質な”映画を“数多く”“低料金”で観ていただくという認識から、一般人場料金を文芸坐時代の92年に改定した時の1,300円に据え置きにしました。又、『友の会』の入会金とオールドファンの『シニア』の入場料金は、オープニングサービスとして優遇いたしました。◆会員になると、初回だけは一般料金の1,300円をいただきますが、次回からは1,000円の割引料金で観ることができます。会員にとっては、毎日が“映画の日”“レディースデイ”の料金でご覧になれるシステムです。◆シニアの方々は、1,000円で映画が観られることが社会常識になっていますので、それよりも安い900円に決めたのです。◆昨年10月ロードショーを上映することになり、サービス期間終了のチャンスを逸してしまいました。一年遅れで下記のように変更させていただきたくお知らせする次第です。何卒ご了承の上、今まで同様ご来場くださいますようお願い申し上げます。

【シニア入場料金】
1,000円(9月28日の番組より)

【友の会】
★入会金 2,000円(有効期間1年間、招待券1枚、DM)
★更新料 1,000円(有効期間1年間、招待券なし、DM)
★実施日 10月1日より(会員入場料金は、1,000円で変わりません)

《9月末日までに入会された方は、来年9月末日までの更新手続に限り招待券付きで更新いたします。その時点から有効期間は1年になり、次の更新からは新システムになります。》

— 永田稔


これが映画だ! マキノ雅弘の世界

2002/08/16 — 第50号

マキノ雅広。本名、牧野正唯。明治41年、日本映画の父、牧野省三の長男として京都に生まれる。18歳で監督デビュー。撮った映画の数は261本。戦後間もない頃は覚醒剤を打ちながら不眠不休で映画を撮ったという逸話も残ります。

3月、わたしたちは映画評論家・山田宏一さんと「魅惑のシネマクラシックス」という、スクリーンを美女たちが織り成す珠玉のシネマを巡る旅に出ました。今回はその第2弾。伝統と技の結晶ともいえる日本映画の神髄へと旅立ちます。名付けて「カツドウ屋・マキノ雅弘『次郎長三国志』と任侠時代劇」(9/14[土]〜27[金])。屈指の名シリーズ『次郎長三国志』に『次郎長遊侠伝』『清水港代参夢道中』、さらに『浪人街』『丹下左膳』といったマキノ時代劇の名作の数々をお送りします。(残念ながら『次郎長三国志』の第6・7・9作はフィルムがないため上映できません。お詫び申し上げます。)

スクリーンに浮かび上がる白黒の世界の瑞々しさ。画面に現れる登場人物たちのちょっとした動作、振る舞いが醸し出す人間の喜びや悲しみ。今の映画ではなかなか目にすることができない、本当の映画の楽しみがつまった宝箱のような世界です。

近々平凡社より名著『マキノ雅弘自伝 映画渡世・天の巻 地の巻』が復刻されるほか、その姉妹編ともいえる山田宏一著『次郎長三国志 マキノ雅弘の世界』がワイズ出版から発刊されます。見る楽しみと読む楽しみ。日本映画史に残る偉大な映画作家にしてカツドウ屋魂を終生忘れることのなかったマキノ監督の偉業をお楽しみください。

— 矢田庸一郎


8・15今だからこそ、戦争について考えよう<

2002/08/01 — 第49号

世界各地で紛争やテロが起きていて、地球上で戦火の絶える日がない。通信技術の発達により、その戦禍がリアルタイムで日常生活の中に飛び込んでくる。これらの紛争も、歳月が経てば、戦場の兵士たち、市民たちの様々な人間ドラマが小説、映画などによって知らされることになる。◆日本が参戦した太平洋戦争を背景にした小説が、戦後ベストセラーとなり映画化された。五味川純平の大河小説『戦争と人間』は、軍と財閥が結託して戦争が拡大し、戦争に呑み込まれていく人間の運命を描き、『人間の條件』は、戦争悪と個人の戦いをドラマチックに描いた。大岡昇平の『野火』は、従軍中の飢えと疲労の極限状態の中で、人間性と神の問題を描き、野間宏の『真空地帯』は、軍隊内の非人間性とその残酷さを暴露した。『雲ながるる果てに』は、学徒航空兵の手記の映画化です。◆今井正監督、鈴木尚之脚本の『海軍特別年少兵』は、国を守るためと信じて疑うことも許されず死んでいった少年兵たちの物語。水木洋子脚本の『また逢う日まで』は、戦争が普通の人間の幸せを無残にも引き裂くことを描いた。◆その今井、水木コンビの『ひめゆりの塔』は、国内唯一の戦場となった沖縄で、勤労奉仕で最前線に駆り出された女学生たちの悲惨な実話を描いた。『東京裁判』は、米政府によって撮影された50万フィートにも及ぶ極東軍事裁判の記録を小林正樹監督が4時間37分に構成した日本の歴史、映画備忘録的価値の映画です。◆エンターテイメントとしても超一級品で、次世代に受け継がれて欲しい日本を代表する映画ばかりです。終戦の日のこの時期に、楽しみながら、「有事法制」が国会で審議中の“今”の社会状況と照らし合わせて、“戦争”について考えよう。

— 永田稔


安心して映画を観られる環境のために

2002/07/16 — 第48号

◆とても残念なことなのですが、新文芸坐にも痴漢や万引きといった不届きな行為をする人が入場しているようです。販売物がなくなっていたり、痴漢にあったという被害の苦情が、ごく稀にですがあるのです。◆万引きは無論“犯罪”です。万引きについては断固たる対応をとらせていただきます。額の多寡にかかわらず、また初犯であっても、警察には通報いたします。◆痴漢も忌々しい問題です。この文章をお読みいただいている方々のほとんどは痴漢ではないはずですから、ここでいくら「痴漢行為はいけません」と書いても無駄ですし、また常習犯がこういったお願いをきいてくれるとも思えません。そこで痴漢が映画館に入りにくい環境を作るようご協力をお願いしたいのです。◆まず、もし痴漢にあったらぜひスタッフにお知らせいただきたいということです。我々スタッフは、絶対に痴漢を許しません。ご安心ください。次に、映画は初めから観ていただきたいということ。当館では途中入場をご遠慮いただいておりますが、これはより良い環境で映画をご覧いただくためであるのと同時に、“映画鑑賞以外の目的”で来場する人を排除する効果もあります。最後に、映画は座席に座ってご覧いただきたいということです。痴漢は上映が始まっても場内後方から標的を物色しています。◆もちろん途中入場や立ち見の方がすべて痴漢であるわけではありません。それでも安心して映画を観られる環境作りのためのご協力をお願いしたいのです。「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず。」

— 関口芳雄


7/6(土)より「珠玉の名篇」特集

2002/07/01 — 第47号

上映スケジュールのラインナップを見ていただければおわかりのとおり、この企画は単館系のロードショー館で公開された“アート系”作品の秀作特集。●当館もオープンして1年半。その間に「検証 日本映画」、「気になる日本映画達(アイツラ)」、「魅惑のシネマクラシック」など様々な特集を行い、幅広い層のお客様にご来館いただきました。これらの企画はPart2、Part3と続けていって、今後も鋭意、ユニークでバラエティに富んだラインナップ作りに励む所存です。●さて今回の「珠玉の名篇」。恐れながら、はっきり言って全部おススメ。さらに手前味噌であえて順序をつければ、No.1は「夜になるまえに/アモーレス〜」の2本立て。「夜になるまえに」はキューバ革命政権からホモセクシャルゆえに迫害される人々の姿を描く異色作。権力と性の関係を考える上で示唆に富み、人間の生のほとばしりを力強く訴えます。「アモーレス〜」はメキシコが舞台。現代社会から置き去りにされる人々の叫びが世界を切り裂いていく、そんな感じの映画です。3組の登場人物がオムニバス風の構成で登場し、時おり彼らが交錯するその結節点から現代社会のありようを浮かび上がってくる手法が秀逸です。●No.2は「チェブラーシカ/テルミン」。浮世を忘れる完全なる癒しの世界へ(笑)。No.3 は「耳に残るは〜」のクリスティーナ・リッチに。「シャンプー台〜」も捨てがたいし。ツァイ・ミンリャンの映像世界に驚き、ジャン=ユーグにまったり虜となるのも一興。

— 矢田庸一郎


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