まんすりいコラム:2002年

伝奇人形劇スペクタクル+1

2002/12/16 — 第58号

その昔、NHK人形劇シリーズというTV番組があった。「ひょっこりひょうたん島」が有名だが、私の世代(アポロ11号月面着陸や大阪万博の頃に小学就学)は何といっても「新八犬伝」が人気なのだ。◆室町時代。仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の8つの珠を持つ八犬士が主君・里見義実の危機を救うべく、怨霊や悪人どもを相手に獅子奮迅の活躍をするという、伝奇時代劇である。原作は滝沢(曲亭)馬琴の「南総里見八犬伝」。◆劇中の八犬士で、一番人気があったのは犬塚信乃であろう。元服まで女の子として育てられたという美貌の剣士で、腕も立つ。恋も一途。モテて当然のこのキャラの声をアテていたのが、近石真介さん。◆八犬士の面々にも増して個性的な悪役たち。とくに里見家に祟りをなす“玉梓が怨霊”、これはチョット怖かった。金色の目を剥き、真っ赤な舌を垂れ「わ〜れ〜こ〜そ〜は〜、た〜ま〜ず〜さ〜が〜お〜んりょう〜〜〜」の声とともに現れる怨霊玉梓。声の主は、阿部寿美子さん。◆そして「新八犬伝」に登場する全ての人形を製作し、劇場版では巨大な玉梓の人形を自ら操っているのは辻村ジュサブロー(現・寿三郎)さん。来年1/25(土)のオールナイト「伝奇人形劇スペクタクル+1」では、以上の御三方をゲストにお招きしてお話をしていただく。ファン、集まれ。◆当夜は「新八犬伝」など人形劇3本に加えて、深作欣二監督作品「魔界転生」を上映。天草四郎に沢田研二、柳生十兵衛に千葉真一、宮本武蔵に緒形拳という豪華キャストだ。この作品、辻村さんが衣装アドバイザーをされている。来年春の窪塚版「魔界転生」公開前に、こっちも観ておこう!!

— 関口芳雄


和田誠さんと新文芸坐 そして二周年

2002/12/01 — 第57号

新文芸坐の受付、売店カウンター前のガラスの壁面には、1923年の『ロイドの要心無用』から1994年の『レオン』まで20世紀の名作映画のワンシーンのイラストレーションが125枚描かれています。和田誠さんの作品です。和田さんと新文芸坐の関わりは、そのガラス壁画を名画座としてのシンボル的な絵画で、21世紀に引き継がれる名画を描いてくださる人物として和田さんに依頼したことから始まります。◆一面識もない和田さんに恐る恐る電話でアポイントを取りました。その数時間後、偶然にも和田さんと同じ地下鉄に乗り合わせることになり、不思議な“ご縁”に感動いたしました。乗客がいることも、和田さんの迷惑も顧みず発作的に挨拶をしていましたが、以後スムーズに事が運びました。和田さんは、新文芸坐のオープン前から一番最初に関わった映画人であります。◆和田さんは、『お楽しみはこれからだ』などのエッセイストであり、『麻雀放浪記』などの映画監督でもあり、1本の映画を観にニューヨークまでとんぼ返りで行くほどの映画大好き人間なのです。野球少年のスーパースターがイチローや巨人の松井であるように、映画ファンにとっての和田さんは憧れの映画人なのです。◆そんなご縁を大切にした12月12日(木)の新文芸坐の二周年記念日です。この日は、和田誠監督作品長編、短編全7作品を二部に別けて上映いたします。和田さんに負けず劣らず映画大好き人間のタレント小堺一機さん、『真夜中まで』に出演しているギタリスト道下和彦さん、キネマ旬報編集長関口裕子さんらゲストと和田さんとのトークショーがあります。秘蔵フィルムの上映など12月12日は丸々一日“和田誠デイ”です。是非ご来場いただき和田さんと一緒に終日楽しみましょう。

— 永田稔


最近気になる映画は……

2002/11/16 — 第56号

今度の正月も“ハリー・ポッター”旋風が吹き荒れることとなるのだろう。ところで先日、銀座シネパトスで、映画のあり方として“ハリー・ポッター”の対極をいくような映画を3本続けて観てきた。(1)『ズーランダー』、(2)『ダウン』、(3)『ミーン・マシーン』である■(1)は、トップモデルたちの熾烈な争いをくだらないギャグのオンパレードで描くベン・スティラー監督・主演作。“3%の体脂肪率。1%の知能。”というコピーからもうどんな映画かわかりますね。(2)は、とあるエレベーターで死亡事故が多発。本当に事故なのか、それとも……!? 以下ネタばれしますので嫌な人は読まないでください。そのエレベーターはなんと生きていた。意思を持って人を襲っていたのだ! 恐るべし。(3)は、『ロンゲスト・ヤード』のリメイクでレイノルズの役をヴィニー・ジョーンズが演じる。3本の中で最もまともな映画である。だがその分、最も平凡だったともいえる■昔ならこの手の映画もチェーンに入って2〜3週間ぐらい上映したのものだ。しかし昨今、この手の映画はシネパトスの単館だけでしかやらない、というべきか、やれないというべきか。まだシネパトスが頑張っているからいい。もしシネパトスがなくなったら一体どうなる。わたしは心から憂える次第である■この後もシネパトスでは『フレイルティー・妄執』(これ悪魔モノ?)、『スパイダーパニック!』(これは巨大蜘蛛。わかりやすい。)と気になる映画が控える。ところで今度、当館でやる『ゴースト・オブ・マーズ』はまさしく“この手の映画”。火星モノでかつゾンビモノ! 青山真治監督も絶賛する映画だ。心ある映画ファンよ、結集せよ。

— 矢田庸一郎


70周年の東宝映画と豊島区制

2002/11/01 — 第55号

かって映画興行界は、気軽に楽しめる身近な娯楽として不況に強い業種と言われました。しかし、娯楽の多様化と共に映画産業は、斜陽となり興行収入減を入場料金の値上げで補填してきました。いつの間にかロードショーの入場料金は、欧米の2倍以上の1,800円になっていました。最近のデフレ経済においては、決して安い値段とは言い難い環境にあります。◆大手映画会社は制作から撤退し、かっては節目の年に作られていた記念映画や正月映画などのスター総出演による豪華な映画は作られなくなりました。今年70周年の節目を迎える東宝映画も60周年の時と同様に記念映画は制作されません。◆豊島区内には、老若男女が大勢行き交う全国有数の繁華街池袋と“お年寄りの原宿”巣鴨という商業の街と、立教、学習院、大正、東京音楽大学の4つの大学がある文教の街があります。豊島区は最近、区制施行70周年を記念して《地域文化の創造》をテーマに『大学サミット』を開催しました。豊島区長と4大学の総長、学長が出席してのディスカッションと4大学学生からの提案がありました。◆学生たちは、《地域文化》を『映画文化の風薫る豊島区』『artの街〜豊島区改造計画〜』『WARAIKEプロジェクト〜毎日がお笑いのまち〜』というテーマに分けて4大学混成の3チームが、数ヶ月にわたり各方面に取材をして提案をまとめました。◆『映画文化』に関しては、大都映画の撮影所、新文芸坐の前身である人世坐の存在に着目し、歴史的な映画の街と捉え、〈映画祭〉や〈映画ビジネス〉までを視野に入れた未来像を描き映画文化を発展させようという提案がなされました。他の2チームも同様に素晴らしい提案をしました。学生たちの大胆な発想、展開に敬服し、その柔軟な頭脳に憧憬の念を持ちました。豊島区の発信する文化施策に注目を!!

— 永田稔


真夜中のラジオを聴いていた頃

2002/10/16 — 第54号

私が中高生の頃、ラジオの深夜放送というのが流行っていた。私はもっぱらTBS「パック・イン・ミュージック」。声優(俳優)の野沢那智さんと白石冬美さんの「ナッチャコ・パック」は欠かさず聴いていた。オトナに批判的なガキだった私が、唯一素直に受け入れられるオトナの意見というのが野沢さんのそれだった。◆野沢さんは、主催する劇団薔薇座の公演があると盛んに番組で宣伝していたのを憶えている。薔薇座の旗揚げ公演は「アップル・トゥリー」という3話オムニバスのミュージカルで、劇場はオープン間もない文芸坐ル・ピリエ! 田舎の高校生だった私はこの舞台は観られなかったのだが、野沢さんの連呼する「文芸坐」というまだ見ぬ劇場の名は頭に残った。◆「パック…」が終了して数年後、私は上京して3年が過ぎ、大学を中退して仕事を探していた。映画が好きだったので映画館で働きたかった。そして、ぴあを片手に電話したのが文芸坐だったのである。野沢さんの連呼のせいに違いない。◆もうひとり、忘れられないパーソナリティがいる。「ミドリブタ・パック」のTBSアナウンサー林美雄さん。業界随一の美声の持ち主だった。日本映画や音楽などで、注目されていないモノに光を当てるというのが林さんのテーマだったが、そういう姿勢に影響を受けた若者も多いだろう。その林美雄さんは今年の7月13日、ガンでなくなられた。享年58歳。11/19(火)上映の「太陽を盗んだ男」にTVアナウンサー役で出演している。スクリーンの中のTV画面にご注目、そして合掌。

— 関口芳雄


東宝70周年記念 東宝映画43作品連続上映

2002/10/01 — 第53号

1932(昭和7)年8月に創立した株式会社東京宝塚劇場の略称の『東宝』が、社名になっています。映画事業は、翌年8月に封切った木村荘十二監督、千葉早智子、藤原釜足、古川緑波らが出演した『ほろよひ人生』が第一回作品として記録されています。この映画の宣伝コピーには〈「金」にぶつかり「恋」につまづき ソレ、人生は千鳥足で歩むべし 笑って、酔って、朗らかに 汗と ついでに不景気を サァ 弾き飛ばせ!〉というもので、現在の不況の世相と酷似していることに驚かされます。◆この平成不況のせいなのでしょうか、節目の年なのに今年の東宝は記念作品を製作しません。昭和37年の30周年の時は『天国と地獄』など6本、35周年は『上意討ち』など11本、40周年は『海軍特別年少兵』など9本、50周年は『幻の湖』など5本を記念作品として公開していますが、それ以後はありません。不景気と日本映画界の衰退と共に記念映画は製作されなくなってしまいました。◆東宝映画の70年間には、数多くの傑作、名作がありますが、今回は黒澤明監督作品とそれ以外の作品の二部に編成して上映いたします。第一部は10/29からの《黒澤明監督セレクション》。黒澤監督全30作品の内21本が東宝配給で、その中から16本を上映いたします。ゲストとして、黒澤作品ゆかりの女優・香川京子さん、俳優・土屋嘉男さん、プロデューサー野上照代さん、小泉堯史、堀川弘通両監督が舞台挨拶に来館いたします。第二部は、11/16からの《東宝映画名作選》で文芸、喜劇、シリーズ作品などの27本を上映いたします。“東宝の顔”俳優・池部良さん、長谷川和彦監督と浅草キッドの水道橋博士さんとのトークショーがあります。皆様のご来場を心からお待ちいたしております。

— 永田稔


マキノ雅弘の世界へ、ようこそ

2002/09/16 — 第52号

「いい映画」を見たときには、「映画館を出ると、とたんにみんなに吹聴したくなる。見てない人に早く見せたくなってくる」と、かつて植草甚一さんが書いていた(「いい映画を見に行こう」)。「こんな気持にさせる」「いい映画」とは、「第一に、みんないいツラをしているなあ、という映画に大事な要素が全巻を通して発揮されていること」、そして第二に、「画面内のパルゼーション(胎動)がものをいうこと」が必要にして欠くべからざる絶対条件であり特質なのだと植草さんは定義している。

映画の面白さ、映画を見ることの楽しさが、なんと見事に的確に述べられていることか。第一の「みんないいツラをしているなあ」というのは、スターの、俳優の、人間的なキャラクターの魅力であると同時に、その魅力にひかれ、うっとりし、ときには狂ってしまうファンの心情でもあろう。第二の「パルゼーション(胎動)」とは画面の、スクリーンそのものの魅惑であると同時に、画面を、スクリーンを、見入るファンの心のときめきでもあろう。

マキノ雅弘の映画とは、まさにそういう映画なのだ。肩肘張って見ることを強いられる「作家」の立派な映画ではなく、気軽に見られる、ときにはデタラメなほど奔放でめちゃくちゃなお遊びに流れながらも「気持を舞いあがらせるようなパルゼーション」にあふれた映画なのである。

— 映画評論家 山田宏一


『友の会』の入会金と『シニア』の入場料金の変更

2002/09/01 — 第51号

新文芸坐は、文芸坐の閉館から3年9カ月後の平成12(2000)年12月に、旧作品の〈戦後日本映画 時代が選んだ86本〉毎日替り二本立ての特集番組により名画座として新装オープンいたしました。◆名画座は“良質な”映画を“数多く”“低料金”で観ていただくという認識から、一般人場料金を文芸坐時代の92年に改定した時の1,300円に据え置きにしました。又、『友の会』の入会金とオールドファンの『シニア』の入場料金は、オープニングサービスとして優遇いたしました。◆会員になると、初回だけは一般料金の1,300円をいただきますが、次回からは1,000円の割引料金で観ることができます。会員にとっては、毎日が“映画の日”“レディースデイ”の料金でご覧になれるシステムです。◆シニアの方々は、1,000円で映画が観られることが社会常識になっていますので、それよりも安い900円に決めたのです。◆昨年10月ロードショーを上映することになり、サービス期間終了のチャンスを逸してしまいました。一年遅れで下記のように変更させていただきたくお知らせする次第です。何卒ご了承の上、今まで同様ご来場くださいますようお願い申し上げます。

【シニア入場料金】
1,000円(9月28日の番組より)

【友の会】
★入会金 2,000円(有効期間1年間、招待券1枚、DM)
★更新料 1,000円(有効期間1年間、招待券なし、DM)
★実施日 10月1日より(会員入場料金は、1,000円で変わりません)

《9月末日までに入会された方は、来年9月末日までの更新手続に限り招待券付きで更新いたします。その時点から有効期間は1年になり、次の更新からは新システムになります。》

— 永田稔


これが映画だ! マキノ雅弘の世界

2002/08/16 — 第50号

マキノ雅広。本名、牧野正唯。明治41年、日本映画の父、牧野省三の長男として京都に生まれる。18歳で監督デビュー。撮った映画の数は261本。戦後間もない頃は覚醒剤を打ちながら不眠不休で映画を撮ったという逸話も残ります。

3月、わたしたちは映画評論家・山田宏一さんと「魅惑のシネマクラシックス」という、スクリーンを美女たちが織り成す珠玉のシネマを巡る旅に出ました。今回はその第2弾。伝統と技の結晶ともいえる日本映画の神髄へと旅立ちます。名付けて「カツドウ屋・マキノ雅弘『次郎長三国志』と任侠時代劇」(9/14[土]〜27[金])。屈指の名シリーズ『次郎長三国志』に『次郎長遊侠伝』『清水港代参夢道中』、さらに『浪人街』『丹下左膳』といったマキノ時代劇の名作の数々をお送りします。(残念ながら『次郎長三国志』の第6・7・9作はフィルムがないため上映できません。お詫び申し上げます。)

スクリーンに浮かび上がる白黒の世界の瑞々しさ。画面に現れる登場人物たちのちょっとした動作、振る舞いが醸し出す人間の喜びや悲しみ。今の映画ではなかなか目にすることができない、本当の映画の楽しみがつまった宝箱のような世界です。

近々平凡社より名著『マキノ雅弘自伝 映画渡世・天の巻 地の巻』が復刻されるほか、その姉妹編ともいえる山田宏一著『次郎長三国志 マキノ雅弘の世界』がワイズ出版から発刊されます。見る楽しみと読む楽しみ。日本映画史に残る偉大な映画作家にしてカツドウ屋魂を終生忘れることのなかったマキノ監督の偉業をお楽しみください。

— 矢田庸一郎


8・15今だからこそ、戦争について考えよう<

2002/08/01 — 第49号

世界各地で紛争やテロが起きていて、地球上で戦火の絶える日がない。通信技術の発達により、その戦禍がリアルタイムで日常生活の中に飛び込んでくる。これらの紛争も、歳月が経てば、戦場の兵士たち、市民たちの様々な人間ドラマが小説、映画などによって知らされることになる。◆日本が参戦した太平洋戦争を背景にした小説が、戦後ベストセラーとなり映画化された。五味川純平の大河小説『戦争と人間』は、軍と財閥が結託して戦争が拡大し、戦争に呑み込まれていく人間の運命を描き、『人間の條件』は、戦争悪と個人の戦いをドラマチックに描いた。大岡昇平の『野火』は、従軍中の飢えと疲労の極限状態の中で、人間性と神の問題を描き、野間宏の『真空地帯』は、軍隊内の非人間性とその残酷さを暴露した。『雲ながるる果てに』は、学徒航空兵の手記の映画化です。◆今井正監督、鈴木尚之脚本の『海軍特別年少兵』は、国を守るためと信じて疑うことも許されず死んでいった少年兵たちの物語。水木洋子脚本の『また逢う日まで』は、戦争が普通の人間の幸せを無残にも引き裂くことを描いた。◆その今井、水木コンビの『ひめゆりの塔』は、国内唯一の戦場となった沖縄で、勤労奉仕で最前線に駆り出された女学生たちの悲惨な実話を描いた。『東京裁判』は、米政府によって撮影された50万フィートにも及ぶ極東軍事裁判の記録を小林正樹監督が4時間37分に構成した日本の歴史、映画備忘録的価値の映画です。◆エンターテイメントとしても超一級品で、次世代に受け継がれて欲しい日本を代表する映画ばかりです。終戦の日のこの時期に、楽しみながら、「有事法制」が国会で審議中の“今”の社会状況と照らし合わせて、“戦争”について考えよう。

— 永田稔


安心して映画を観られる環境のために

2002/07/16 — 第48号

◆とても残念なことなのですが、新文芸坐にも痴漢や万引きといった不届きな行為をする人が入場しているようです。販売物がなくなっていたり、痴漢にあったという被害の苦情が、ごく稀にですがあるのです。◆万引きは無論“犯罪”です。万引きについては断固たる対応をとらせていただきます。額の多寡にかかわらず、また初犯であっても、警察には通報いたします。◆痴漢も忌々しい問題です。この文章をお読みいただいている方々のほとんどは痴漢ではないはずですから、ここでいくら「痴漢行為はいけません」と書いても無駄ですし、また常習犯がこういったお願いをきいてくれるとも思えません。そこで痴漢が映画館に入りにくい環境を作るようご協力をお願いしたいのです。◆まず、もし痴漢にあったらぜひスタッフにお知らせいただきたいということです。我々スタッフは、絶対に痴漢を許しません。ご安心ください。次に、映画は初めから観ていただきたいということ。当館では途中入場をご遠慮いただいておりますが、これはより良い環境で映画をご覧いただくためであるのと同時に、“映画鑑賞以外の目的”で来場する人を排除する効果もあります。最後に、映画は座席に座ってご覧いただきたいということです。痴漢は上映が始まっても場内後方から標的を物色しています。◆もちろん途中入場や立ち見の方がすべて痴漢であるわけではありません。それでも安心して映画を観られる環境作りのためのご協力をお願いしたいのです。「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず。」

— 関口芳雄


7/6(土)より「珠玉の名篇」特集

2002/07/01 — 第47号

上映スケジュールのラインナップを見ていただければおわかりのとおり、この企画は単館系のロードショー館で公開された“アート系”作品の秀作特集。●当館もオープンして1年半。その間に「検証 日本映画」、「気になる日本映画達(アイツラ)」、「魅惑のシネマクラシック」など様々な特集を行い、幅広い層のお客様にご来館いただきました。これらの企画はPart2、Part3と続けていって、今後も鋭意、ユニークでバラエティに富んだラインナップ作りに励む所存です。●さて今回の「珠玉の名篇」。恐れながら、はっきり言って全部おススメ。さらに手前味噌であえて順序をつければ、No.1は「夜になるまえに/アモーレス〜」の2本立て。「夜になるまえに」はキューバ革命政権からホモセクシャルゆえに迫害される人々の姿を描く異色作。権力と性の関係を考える上で示唆に富み、人間の生のほとばしりを力強く訴えます。「アモーレス〜」はメキシコが舞台。現代社会から置き去りにされる人々の叫びが世界を切り裂いていく、そんな感じの映画です。3組の登場人物がオムニバス風の構成で登場し、時おり彼らが交錯するその結節点から現代社会のありようを浮かび上がってくる手法が秀逸です。●No.2は「チェブラーシカ/テルミン」。浮世を忘れる完全なる癒しの世界へ(笑)。No.3 は「耳に残るは〜」のクリスティーナ・リッチに。「シャンプー台〜」も捨てがたいし。ツァイ・ミンリャンの映像世界に驚き、ジャン=ユーグにまったり虜となるのも一興。

— 矢田庸一郎


リンチ・ワールドの楽しみ方——「マルホランド・ドライブ」

2002/06/16 — 第46号

◆世界に数多(あまた)ある映画賞の中で最高の権威を誇っているのがカンヌ映画祭。意外にもD・リンチ監督はカンヌ映画祭の受賞&ノミネートの常連なのだ。◆日本人は海外の映画賞(ブランド)に実に弱く、カンヌで賞を獲ったりするとリンチ・ファンのみならずリンチに免疫のない人も劇場に大挙押しかける。そしてその何割かは、“?”状態で映画館を後にする。リンチ作品を「難解だ」などという御仁も少なからずいるようで…。◆リンチは難解ではない。確かにリンチ作品には謎が多い。しかし謎は謎のままで、解決はしない。伏線もなければオチもない。正解のない長文読解問題のようなもの。正解があると思うから難解なのだ。◆リンチ・ワールドの楽しみ方、それはストーリーは二の次、“今スクリーンに映っているモノを楽しめ”ということに尽きる。観終えたら、人と好きなシーンについて語り合ってみるといい。暗い穴、マイク、金髪と黒髪の美女ふたり、カーテンで仕切られた部屋、苦いコーヒー、謎めいた老人、意味もなく怯える男……。ストーリーと関係ない部分ほど面白いことに気づくはず。(リンチは映画毎にストーリーは変えてはいるが、撮りたいモノ(=オブジェ)は変わっていないんだということにも気づくだろう。)◆私が今年観た映画で、最も頭を使った映画は新鋭C・ノーラン監督「メメント」(当館にて6/15〜21上映)。最も頭を使わなかった映画が我らがD・リンチ監督のカンヌ映画祭監督賞受賞作「マルホランド・ドライブ」(6/29〜7/5)。

— 関口芳雄


大林監督から名画座へのメッセージ

2002/06/01 — 第45号

映画監督大林宣彦が文を書き、イラストレーター小田桐昭が挿し絵を描いた『五風十雨日記—日日世は好日2001—巻の一同時多発テロと《なごり雪》』(たちばな出版)という長い題名の本が、監督のサイン入りで送られてきました。明治31(1898)年創刊というローカル新聞の老舗中の老舗〈山陽日日新聞〉に連載していたエッセイをまとめたものです。◆〈人と語る〉〈旅に出る〉〈映画を作る〉からなり、歴史的世相感があったり、時事評論があったりと示唆に富んだ内容です。やや難しい用語がありますが、ルビが打ってあり読みやすく、監督の魅力的なバリトンが聞こえてきそうな感じがする楽しい本です。◆新文芸坐のオープン記念特集の中で監督の「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の尾道三部作に「異人たちとの夏」の四本立でオールナイト上映した時に舞台挨拶をしていただきました。その時に感じられたことを「私説・名画座」と題して掲載されています。◆新文芸坐を名画座の老舗中の老舗と称してくださり、『名画座で上映される映画は“文化”であり、映画の“初心”に回帰するから映画作家冥利に尽きる』と書いています。身に余る光栄で、これこそ興行者冥利に尽きると言うものです。大雪の日で監督に大変ご迷惑をかけたのですが、そんな状況には触れずに……です。◆大林監督の優しいお心づかいは、新文芸坐に対する応援メッセージと受け止め、他の映画監督にも映画の“初心”に回帰できるような名画座らしい上映を心がけたいと思います。時々、二番館的な新作二本立ての番組を組み入れながら………。

— 永田稔


記憶喪失の疑似体験「メメント」

2002/05/16 — 第44号

まあとにかく観てください。こんなに知的でスリリングな映画はそう滅多にはないぞ。
◆まず前向性健忘という症状を説明しなくては。この障害、発症する以前の記憶は完全なのだが、新しい記憶を覚えていられないというもの。主人公は妻が殺されたときのショックで発症、10分以上の記憶が続かないのだ。脳裏に刻まれた“犯人への復讐心”が最後の記憶で、それ以降は10分前のことは覚えちゃいない。そんな男の復讐劇とは如何なるものか…。◆監督・脚本のクリストファー・ノーランは、主人公の記憶障害を観客にも疑似体験させるという試みに挑戦し、成功している。観客に見せるシークエンスを並び替えることによって、観客は記憶喪失を体験できるのだ。図に示すと以下のとおり。

時間の流れ ─────────────────────→
場面の順番 — … → ─(4)→ ─(3)→ ─(2)→ ─(1)→

例えば(2)の場面が始まる時点で、主人公は直前の(3)の記憶がない。観客も(3)は見せられていないから知らない。自分がなぜそこにいて、一体何をしようとしているのか? 主人公も観客も“???”状態。「ここは何処?」「オレは今、誰と話している?」「オレは何故走ってる?」「オレはこのメモに何を書こうとしていたんだ?」 各場面は概ねこんな始まり方をする。そして映画の最後=物語の最初には衝撃の…。◆全世界でリピーター続出の「メメント」。7日間の上映ですので、最低2回はご覧くださいね(営業モード)。「メメント」は6/15(土)〜21(金)、「キリング・ミー・ソフトリー」と2本立上映。

— 関口芳雄


『阪妻映画祭』で活弁に初挑戦する講談師・神田北陽

2002/05/01 — 第43号

“阪妻”生誕100年を記念して5/18より4週間『阪妻映画祭』を開催いたします。上映作品の中には、昨年ロシアから里帰りした『鍔鳴浪人』前後篇、『狼火は上海に揚る』やGHQから返還されたフィルムを始め、大正時代のサイレント映画からトーキーに移行して剣戟王と謳われた戦前、現代劇にも新境地を開いた戦後と、映画全盛期時代の阪妻主演作品など57本を連続上映いたします。◆イベントには、阪妻の遺児で俳優の田村三兄弟(高廣、正和、亮)の長男、高廣さんの舞台挨拶、映画評論家山根貞男さんのトークショー、サイレント映画には、澤登翠と講談師・神田北陽の活弁付き上映もあります。◆活弁に初挑戦する北陽は、講談界衰退の象徴的出来事であった講談定席「本牧亭」が閉場する日に入門した変わり者です。修行の場を演芸界だけでなく、演劇、音楽など広範囲に求め、旺盛な向上心と好奇心によって現代的感覚を磨きました。自演の新作を創り、リズミカルで歯切れの良い口調と明るい芸風で紀伊国屋ホールをひとりで満員にする人気者です。この夏、抜擢されて師匠の名跡〈神田山陽〉(三代目)を襲名して真打ちに昇進する実力を兼ね備えた芸人です。大衆古典芸能界では将来を嘱望されている一人です。◆お年寄りが大好きな北陽は、80歳を超えていた先代に入門し、今は、96歳の島田正吾にハマっていて、毎年舞台を見ては感激に涙している好男子です。活弁には前々から興味を持ち、老弁士を静岡まで訪ねたこともあり、念願が叶い張り切っています。まずは、『阪妻映画祭』予告篇のナレーションをお聞きください。

— 永田稔


『阪妻映画祭』で講談師・神田北陽、活弁に初挑戦!!

2002/04/16 — 第42号

◆“阪妻”の愛称で親しまれ日本映画史上に燦然と輝く大スター阪東妻三郎は、今年生誕100年にあたります。これを記念して5月18日から4週間にわたって「阪妻映画祭」を企画いたしました。阪妻が活躍した大正時代から亡くなった昭和28年にかけて映画は、〈大衆娯楽の王様〉と例えられた最も隆盛の時代でした。艶やかな容姿と豪快な殺陣によって“剣戟王”と称された阪妻は、人気No.1のスターでした。◆『阪妻映画祭』は、邦画五社が結集しマツダ映画社、京都映画祭の協力を得て、阪妻主演作品など57本を連続上映いたします。その中には、昨年ロシアから里帰りした幻の映画と言われた『鍔鳴浪人』前後篇と『狼火は上海に揚る』を始め、GHQに接収され返還されたフィルムや、ネガが消失してしまったサイレント映画の断片を集めて復元したフィルム上映など大規模な映画祭です。◆イベントは、阪妻の長男で俳優の田村高廣さんの初日舞台挨拶と、中日には映画評論家山根貞男さんのトークショーがあり、サイレント映画には澤登翠と講談師・神田北陽の活弁付き上映もあります。◆北陽は、活弁に初挑戦です。現代的な感覚で自演の新作を創り、リズミカルで歯切れのよい口調と明るい芸風で新宿紀伊国屋ホールをひとりで超満員にしてしまう実力者です。この夏、抜擢されて〈三代目神田山陽〉を襲名して真打ちに昇進します。映画ファンには馴染みの薄い芸人ですが、大衆古典芸能界では将来を最も嘱望されている若手の一人です。まずは、『阪妻映画祭』予告篇のナレーションで初見参(?)いたしますので、お聞きください。

— 永田稔


『バニラ・スカイ』『板妻映画祭』の入場料金について

2002/04/01 — 第41号

今年のゴールデンウィークは、4/27からUIP配給『バニラ・スカイ』『ブリジット・ジョーンズの日記』の〈二本立〉の上映をいたします。又、阪妻の愛称で親しまれてきた大スター阪東妻三郎の生誕100周年を記念して5/18より4週間にわたり『阪妻映画祭』の特集上映をします。◆この2番組は、配給会社から一般入場料金を1,500円に設定するように要請されました。『バニラ・スカイ』は、ロードショー(RS)終了直後の上映になるため、『阪妻映画祭』は邦画5社初めての共同企画で、新文芸坐を皮切りに全国展開しますので統一料金を、という理由からです。お客さまには大変恐縮でございますが、ご了承の上ご来場いただきたいと存じます。◆全盛時代の映画は、RS公開後は下番館と言われる二番館、三番館、名画座と順序よく流れ、〈二本立〉〈三本立〉と上映本数が増え、それに反比例して入場料金が安くなっていきました。現在は、ビデオ、DVD、BS、CSの衛星放送などTV画面で映画が観られるようになり、下番館は全国でも数館だけになってしまいました。映画はRS館で観るか自宅TVで観るかの状況にあります。◆映画を観る環境は急激に変化していますが、新文芸坐は《感動はスクリーンから》をモットーにRS終了直後の映画から旧作の特集番組まで幅広く上映し、お客さまの要望に応えたいと考えています。配給会社からの条件によっては入場料金を変更せざるを得ない場合もあります。ご理解いただきたいと存じます。

— 永田稔


完璧な“恐怖”、完璧な“映画”

2002/03/16 — 第40号

■4月20日(土)から1週間、『ジーパーズ・クリーパーズ』と共に上映するのは、日本中に“貞子”というトラウマを植え付けた原作・鈴木光司、監督・中田秀夫の『リング』コンビによる『仄暗い水の底から』。■古マンションに引越してきた母子が遭遇する怪現象…と書いただけで、「低俗なホラー!」と糾弾する声が聞こえてきそうだが、ここで断言しましょう。この作品を手抜きなしの娯楽作品とした中田監督の恐怖演出は、もはや世界のトップレベルだ!(『リング』の米国リメイク版は本家を超えようと熟考を重ね完成間近)。■中田演出はあくまでベタ。王道中の王道。だからコワイ。『女優霊』から進化してきた“見せない怖さ”と“見せる怖さ”のバランス感覚はこの作品で頂点に達した模様。それは、出ずっぱりの黒木瞳に感情移入すればするほど恐怖と焦りを増幅させる。この手際が実に見事なのです。■サスペンスやドキュメンタリーも撮れることは実証されている監督が、あえてイベント臭のする“ホラー映画”を撮る。そしてそれを完璧に近い形で完成させる。この心意気、どこかかつての名匠達が、プログラムピクチャーで傑作を連発した図式を彷彿とさせます。■『仄暗い水の底から』は完全なホラー映画。そして演技・撮影・美術・音楽まで、職人がこだわりぬいた完璧な映画。だから私は胸を張って、かつ大きな声でお薦めするのです。“映画”ファン必見!

— 花俟良王


フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮しているっ!

2002/03/01 — 第39号

◆4/20(土)から上映の『仄暗い水の底から』と『ジーパーズ・クリーパーズ』。今回は「ジーパーズ…」のご紹介。◆“アメリカの田舎”と聞いて映画ファンが連想するのはやはり“殺人鬼”。この映画、23年に一度大量の行方不明者が続出するという、田舎の"都市伝説”が物語の発端です。わが国の都市伝説といえば、“口裂け女”や“人面犬”、最近では米同時多発テロと絡めたイスラム人ネタなどが有名です。“口裂け女”にいたっては単なる噂にとどまらず、一部の小学校で集団下校が実施されるなど実害(?)もあったと聞きます。いや、これも都市伝説かも。◆物語前半はスピルバーグの『激突』を思わせる展開で、好奇心ゆえに主人公たちが禍へと近づく様に手に汗にぎります。この前半は、観た人の98%が面白いと回答したという調査結果が出ています(当社調べ)。……さあ後半。前半とはガラッと変わる展開で、これは評価の分かれるところです。しかし私は面白かった。2本立て観てるみたいで。とくにアレの初登場シーンでは「コイツが○○○○か! こりゃ手強そうだぁ」と身を乗り出しましたね。◆本作のウリは上記タイトルにあるとおりです。監督のヴィクター・サルヴァは佳作『パウダー』が一部に高評価されていたとはいえ知名度低し。役者も無名。が、観れば面白そう。こういう映画に1800円払うのはギャンブルだと思う方。1300円2本立ての当館で観ることを、強く、強く、オススメします。

— 関口芳雄


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