まんすりいコラム:2003年

映画フィルム—日々雑感2

2003/03/16 — 第64号

現在映画の音声方式はアナログとデジタルに大別されますが、アナログにはモノラルとサラウンド(立体音響)、デジタルはすべてサラウンドですが、フォーマット別に三種類あります。■家庭用のオーディオが2チャンネルステレオになっても映画の音はドルビー社のサラウンドシステムが普及するまでは特殊な例を除いてモノラルの時代が長く続いていました。その特殊な例とはかつてのシネラマや70mmなどのいわゆるハリウッッドの大型映画で、大画面の撮影上映方式が各社それぞれ違っていたのと同様に音声方式も7〜4チャンネルと各種あったようです。これらの音は主にフィルムに磁気を塗って記録(カセットテープと同じ方式)されたのが多く、耐久性や生産コストに問題があり余り普及しませんでした。旧来の光学式(フィルムの端にギザギザになっている帯状の物で光で読み取ります。トリュフォーの「アメリカの夜」のオープニングではそれが音楽に合わせて動く様が画面で見えます)と互換性のあるドルビーサラウンド普及後は、アメリカ映画を中心にサラウンドが一般的になりましたが、このアナログ方式ではチャンネル数や音の分離などの問題があり、往年の大型映画のニュープリント版などでも音はモノラルということがありました。■しかしデジタルサラウンドで復活した最近の「ベン・ハー」や「2001年宇宙の旅」のプリントなどは当時の音に近いチャンネル数を再現し、かつ音質はデジタルなので当時以上の状態で再生できるようになっています。そうして手間ひまかけて再生された映画はまだ多くはないようですが、このような映画を名画座では珍しくドルビーデジタルEXまでを備えた当館で沢山上映できる日が来るのもそう遠くはないと思っております。

— 梅原浩二


コロムビア・レディに乾杯

2003/03/01 — 第63号

ご存知の方も多いかもしれませんが、洋画の場合、映画会社が持っている配給権が契約切れになるとその作品は映画館では上映できません。また配給権はあっても、映画会社がプリントを廃棄してしまえば、物理的に上映は不可能です。配給権の問題は仕方ないとしても、好きな作品が廃棄されると聞くと、泣くに泣けません。映画はビデオで観ろということでしょうか。■数ある映画会社の中で、この点最も良心的なのがソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)。滅多に稼動しなくなった旧作もかなりの数を保管しています。エライ。SPEはコロムビア映画や、トライスター、オライオン映画の一部の配給権を持っていますが、その一部を「コロムビア映画名作選」として4/12(土)から当館で上映します。ラインアップを見ていただければお分かりのとおり、映画史に残る作品ばかり。ぜひスクリーンでご覧ください。■唐突に懸賞クイズ。本特集の初日「地上より永遠に」でウォーデン曹長を演じた俳優。楽日「博士の異常な愛情…」で最後の爆撃機に乗る黒人俳優。ふたりの俳優が同時に描かれている作品の絵が、当館受付前の和田誠さんのイラスト集の中にあります。そのイラストはどれでしょう? 回答は「左から○番目、上から○番目、映画タイトルは○○○○」形式で、staff@shin-bungeiza.com 宛てのメールか、ロビーの投書箱までどうぞ。抽選で5名様に特集の御招待券をさしあげます。締め切りは3月末日。連絡先をお忘れなく。■最後にトリビアをひとつ。「コロムビア映画のオープニング・ロゴは、“自由の女神”ではない。」ヘェーッ。

— 関口芳雄


二本立てのこころ

2003/02/16 — 第62号

二本立て上映を常とする当館には“二本立ての妙”という言葉がある。ロードショーでヒットしなかった映画の二本立てが思いのほか入ったりすると、したり顔で「二本立ての妙だね」というのである。そこで我々は日夜、この二本立ての妙なるものを追い求めるのだが……。●定石は似たもの同士をくっつけること。簡単じゃないかと思われるかもしれないが、配給会社の都合やプリントの空き状況などが絡みなかなか一筋縄じゃない。●ビデオが出てしまった映画は当然やりづらいし、さらに公開後1年以上5年以下ぐらいの娯楽映画というのは、興行的にはかなり難しくなる。ただしもっと古くなると逆に興行力は増すのだが、外国映画の場合は10年ぐらい経つと権利が切れることが多い。●さて、この定石どおりにできた番組が3月にやる『マーサの幸せレシピ』『ディナーラッシュ』である。どちらもレストランを舞台にし、料理を通して語られる味わい深い人間模様の物語だ。●『マーサ〜』のほうはドイツのハンブルクが舞台。人間の絆をしっとり醸し出すタイプの映画だ。ドイツ通によると、イタリア人に憧れながらもストイックに生きるしか術のないドイツ人の愛情表現のし方が、とってもかわいらしいそうだ。う〜ん、なるほど。●『ディナー〜』はニューヨークが舞台だけあってテンポがいい。イタリアン・レストランに、マフィアに警官、別れた恋人たち、料理批評家にウォール街の証券マン、雑学の天才バーテンダーらが入り乱れ、ラストにはちょっとしたどんでん返しも用意する軽快な味わい。●ところがある日、「はまりすぎるのもよくないんだぞ」と、支配人がポツリ。果たして我らが頭上に、二本立ての妙の降臨となるや。

— 矢田庸一郎


巨匠・深作欣二監督逝く

2003/02/01 — 第61号

新文芸坐がオープン準備に追われていた2000(平成12)年10月、記念番組の中で『仁義なき戦い』を一挙に上映することになり、深作監督にゲスト出演をお願いするために電話をしました。当時、『バトル・ロワイアル』が大ヒット中の忙しい時期にもかかわらず、直接電話に出てくださいました。◆「うん、行くよ。一ヶ月前位になったら電話をくれ。」と言って携帯電話の番号を教えてくれました。大監督なのに何と気さくなのだろうと感激いたしました。結果として『バトル・ロワイアル』の海外上映に監督も同行することになり実現しませんでしたが、その時も「文太は岐阜だし、欣也に頼んでみたら」と親切に紹介して下さいました。またまた感激してしまいました。◆その後“深作監督特集”の時もタイミングが合わずご来場いただけませんでしたが、昨年5月、『検証・東映ヤクザ映画』のオールナイト上映の時に念願が叶いました。既にガンに冒されていたわけですが、映画を語る時の生き生きとした表情と張りのある声が印象的でした。◆終戦を15歳の中学生の時迎えた監督は、それまでの価値観の崩れ、社会の矛盾、大人への不信感を強く持った。反骨精神の“水戸っぽ”らしく《焼け跡闇市》が映画作りの原点と言ってました。◆鶴田浩二、高倉健らスター主演の悪と戦うヒロイズムの“任侠路線”は、自分の感覚と違うし、矛盾していると感じたとも言う。その違和感は、大手映画会社の体制との“闘い”になった。そこから菅原文太という存在感のある若い俳優を得て代表作『仁義なき戦い』が生まれた。必死で戦う群衆を通して戦後史をダイナミックに描き“実録路線”という娯楽映画を確立させた。◆《映画作りは戦い》が口癖の監督でしたが、1月12日前立腺ガンのため新作の撮影半ばで自身の終戦を迎えたわけです。享年72歳。ご冥福をお祈りいたします。

— 永田稔


映画フィルム—日々雑感

2003/01/16 — 第60号

映画のフィルムというのは一般家庭で写真用に使われる物と同じで35mm幅です。実は映画用のフィルムが先にできて後にそれを転用して写真用のフィルムがつくられました。1コマあたりの面積は写真用の約半分になりますが、映画は1秒間24コマ必要なので、長さは2時間の映画で3288m!程にもなります。これでは長すぎる為、ある程度の長さに分割して劇場に送られてきます。最近では音声や特殊効果などでデジタルの恩恵を受けていますが、こと最終的にスクリーンにフィルムを写す段階になると映画誕生以来100年間全く同じ方式なので、これだけの長さになってしまうのです。DLP(デジタル方式の映写機)等の出現により何千mもあるフィルムがなくなり、小さなハードディスクや直接データとして劇場に送られて来るようになりつつあります。キズも退色もないことは歓迎されることですが、画質は超高性能ビデオプロジェクターと言った感じでそこにフィルム特有の質感を見出すことは困難です。CD全盛の時代にアナログレコードのほうが音が良い、などと言われる事がありますが、どちらが良いかはともかく全く違うメディアに同じ音質を望むのは無理なのではと思うことがあります。そう考えるとDLPにフィルムの画を望むのも現在では難しいことなのかもしれません。フィルムは生ものなので時間がたてばキズやゴミも増えますし、色も褪せてきます。しかしフィルムが持つ独特の味わいは代えがたい魅力があり、20世紀につくられた大いなる映画の遺産もほぼすべてフィルムによって撮影されています。それを映画館でフィルムで鑑賞することは近い将来とても贅沢なことになるかもしれません。

— 梅原浩二


あけましておめでとうございます

2003/01/01 — 第59号

旧年中は、ご愛顧いただき心より御礼申し上げます
今年もより一層のご愛顧を宜しくお願い申し上げます

2003年1月1日
新文芸坐
支配人 永田稔
関口芳雄 矢田庸一郎 梅原浩二 花俟良王
大谷竜也 柳原弘 内屋敷久仁子 駒場香代子
鶴岡里香 高橋悦子 浅香ノリ

今年も特集番組を企画しています。2月1日より江戸川乱歩原作の映画化作品特集。3月には2002年に公開された日本映画の特集。5月は、卆寿を迎える森繁久彌主演映画特集を予定しています。リクエストがございましたらどしどしご投書ください。

— スタッフ


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