まんすりいコラム:2003年

皆さんの、今年の思い出の映画は?

2003/12/16 — 第82号

今年も一年を振り返ってみる季節になりましたね。お客様の中には、自分なりの映画ベストテンを作ったりする方も多いのでは。もしよろしければ、その結果、教えていただけませんか。●前年公開の日本映画をまとめて見ていただく恒例企画「気になる日本映画たち(アイツラ)」の参考にさせていただきたいのです。もちろんリクエストもOK。紙に書いてアンケートボックスに入れてください。メールでも結構です。●わたしの、今年の思い出の映画はというと『ロッカーズ』かな。陣内孝則の長編監督デビュー作で“THE ROCKERS”というバンドでの実体験を基にした青春映画。実を言うと、全然、期待していなかった。どうせ、オレ様映画だろう、と。●まず物語がテンポよく心地よい。登場人物たちのキャラが立っていて、ギャグも小気味よく炸裂。そして見せるべきところはじっくり見せる。小泉今日子、鈴木京香ら豪華なゲスト出演も楽しい。特に大杉漣扮するフォークシンガー(?)には大笑い。監督自身が、笑って、泣いて、手に汗握らせる映画になった、と語っていたが、まさにその通りの出来映えだ。●予想しなかった面白さにびっくり(それでちょっと点が甘くなったかな)。「気になる日本映画」で、この映画も上映したいと思うのだが、いかがでしょう。「『ロッカーズ』面白かった」という方、「『ロッカーズ』ぜひ見たい!」という方は、その旨アンケートボックスに入れていただくと心強い。まぁ、全く反対の意見でもそれはそれで参考になります。

— 矢田庸一郎


永遠も86.6%を過ぎて…

2003/12/01 — 第81号

■私、先日左足首を捻挫しまして、近所の接骨院に通っているのですが、そこの先生が患部に治療器を当てながら雑談がてらおかしなことを言うのです。「いや師走に入ったら色々忙しくて、自分のことなぞ何もできはしません。だから1年は11月で終わりです、はい」。人間、誰しも歳を取ると時の経つのを早く感じるものですが、それにしても1年が11ヶ月とはいささか大袈裟過ぎると…。■いや大袈裟ではないかもしれません。78歳(日本人男性の平均寿命)の老人が直近に経験した1年は、1歳児の経験した1年間の78分の1の重みしかない…という単純な計算方法を採用すると、手元の計算では、78歳の生涯のうち30歳までの時間が80.9%をの重みをもつという結果になりました。40歳までで86.6%、50歳で91.1%…。大変です。いや、こんな計算をして人生を無駄に過ごしている場合でない。と思いながらも、何をしたらよいのかもわからぬのですが。■というワケで1年のロスタイムともいうべき師走になりました。オールナイトは「ファースト ガンダム コンプリート」。今よりもずっと濃密な時間を過ごしていたであろう24年前の少年少女たちにこの作品を贈ります。今年2月にお亡くなりになった井上瑤さん(享年56歳)のご冥福をお祈りしながら。■第2回懸賞クイズの正解は「明日に向って撃て!」。正解者多数でしたが“向って”と“!”の間違いも多かったです。

— 関口芳雄


スクリーンで観る醍醐味

2003/11/16 — 第80号

◆例えば、11/11(火)・12(水)上映の『アラビアのロレンス』。何も見えなかった砂漠の彼方に陽炎が揺らめきはじめる……、やがてそれは駱駝に乗ってやって来るアラブ人の姿を徐々に映し出す。超望遠レンズでとらえた、息を飲むようなロングショット。この映像のニュアンスは、言葉はおろか、ちょっとやそっとのブラウン管の画面では味わえない。大きなスクリーンでこそ、その素晴らしさが堪能できる。◆例えば、12/27(土)より上映の北野版『座頭市』。刃と刃を交わす立ち回りシーン。刀を振りかざす「ぷぅん」という音や、身体を斬ったときの「ズバッ」という音とともに、観ている自分の身体にズシリと響く重量感。この迫力も音響設備の整った劇場でしか味わえない。◆ちなみに、長編映画特集の『ベン・ハー』『アラビアのロレンス』『アマデウス』はデジタルリマスターされたドルビーSRと、音響もスケールアップ。映像はもちろん、音響効果も◎。◆11/15(土)のオールナイト「スーパーSF世界特撮映画大会 ジェームズ・キャメロン編」での上映作品『エイリアン2』『アビス〈完全版〉』『ターミネーター2』は、いずれもアカデミー視覚効果賞受賞作。特撮技術をスクリーンで堪能するのには、正に打ってつけのラインナップ。11/22(土)のスタンリー・キューブリック・ナイトでもアカデミー特殊効果賞受賞作『2001年宇宙の旅』が登場。ビデオ、DVDでしか観ていない人にこそ、是非スクリーン体験してもらいたい。

— 花俟良王


11月15日より「勝新太郎映画祭」開催!

2003/11/01 — 第79号

勝新のデビュー作は1954年(昭和29年)の『花の白虎隊』。しかし主役は、やはりこの作品でデビューの市川雷蔵で、勝新はかなり脇の方。その後『弁天小僧』、『薄桜記』といった雷蔵主演映画でも勝新は脇に回っている。▲勝新が日の目を見るのは59年の『次郎長富士』、森の石松役。そして60年の『不知火検校』。極悪非道の按摩役で、今でいうブレイク。61年には『悪名』がヒットを飛ばし、ついに勝新時代の到来である。▲旧文芸坐では96年の正月興行で「勝新太郎ワンマンショー」を開催している。その時のチラシのコピーに“巷に勝新待望論あり!!”と。キネマ旬報の「日本映画人名辞典」によると、すでに92年の大麻事件の判決の頃から「型破りの言動とユニークな個性が若者たちの間でクローズ・アップされるようになり(中略)“勝新待望論”とでもいうべき空気が濃厚」となっていたそうだ。だが広くファンが渇望した勝新の新作はついに現れることなく、97年6月鬼籍に入る。享年65歳。遺作は90年の『浪人街』となった。▲勝新ワンマンショーの際、勝新は来館し、トークも行なった。映画評論家の白井佳夫と女優の朝丘雪路を従えて舞台に上がった勝新は、終始、上機嫌。満席立ち見のお客さんは湧きに湧いた。▲スターが、どこにでもいそうな等身大の存在である今と違い、勝新は総天然色、シネマスコープ映画そのもの。銀幕の大スターという形容でも収まりがつかない、桁はずれた巨人、という印象だった。▲多くの人が、勝新の、というより、本物の映画人の本物の映画を、渇望していたのではないか。そうした思いが、勝新という巨星に最後の望みを託した。それが、あの頃だったのではないかと思う。

— 矢田庸一郎


長編映画特集 & 懸賞クイズ

2003/10/16 — 第78号

もう15年も前、同じ週に「ベン・ハー」「ファニーとアレクサンデル」「ラスト・エンペラー」を観たことがあります。もちろん1日に1本ずつで。いずれもボリューム感のある作品でしたが、それなりの覚悟をもって映画館に赴いたので5時間以上の「ファニー…」にしても途中で眠ることなく十分にベルイマンを堪能したのでありました。たまには長編映画もよいものですよ。というわけで、長編映画特集。■「ベン・ハー」は巨匠W・ワイラーの代表作のひとつ。アカデミー賞11部門受賞の、超大作にして映画史に残る大傑作。初見の人も再見の人も、大感動間違いなし。ただし「ボウリング・フォー・コロンバイン」のC・ヘストンは忘れて観てくださいね。「アラビアのロレンス」はD・リーンお得意の大作ドラマ。今回は〈完全版〉の上映です。「アマデウス」はモーツァルトの死にまつわる大胆な仮説を、華麗な音楽と豪華な衣装&セットで魅せるM・フォアマンの大ヒット作。私はアマデウスと聞くと、小ト短調のメロディを口ずさんでしまいます。条件反射です。■それでは、第2回懸賞クイズです。「ベン・ハー」は11部門でオスカーを獲りましたが、シナリオは受賞できませんでした。そして当館受付前の和田誠さんのイラスト壁画「ベン・ハー」の左右両隣のどちらかはアカデミー脚本賞の受賞作です。受賞作の方の“邦題”を答えてください。staff@shin-bungeiza.com 宛てのメールか、アンケートボックスへの投書でお答えください。抽選で5名様に11月の招待券を進呈しますので必ずお名前とご住所を明記してください。

— 梅原浩二


映画フィルム—日々雑感4

2003/10/01 — 第77号

先日社会派映画の特集で70年代のドキュメンタリー映画を何本か上映したとき、久しぶりに画面に映しだされている人物の口と聞こえてくる音声がずれている映像を見ました。画と音を完全にシンクロ(同期)させるにはカメラと録音機を電気的にシンクロさせる装置が必要になり、そういった機材は高価なので潤沢な制作費の無いドキュメンタリーやニュース映画等ではあまり使われる事がありませんでした。ビデオカメラが完全に普及するまでは、こういった映画はテレビでの放映用でも16ミリフィルムで撮影されることが多く、状況によってはゼンマイ式のカメラを使っていたこともあるくらいなので、画と音がずれるのは当時は当たり前の事でした。子供の時(70年代)たまにこういった映像がテレビで流れると少々違和感を感じたものでしたが、海の向こうのアメリカ人などはもっと神経質なのか、ディズニー等のアニメでは台詞と画を完璧に合わせようとしています。「『画と音が完璧に合っていなければいけない』特撮なら『完全に本物に見えなければいけない』そうでないとアメリカの観客が納得しないのは、彼らが即物的だからだ。」というような内容の話をある監督がしてましたが、その真偽はさておいても、そういった技術に対する貪欲さ、達成度はアメリカは世界一だと思います。映画の技術の際たるもののひとつに巨大スクリーンによる立体映像というものがあります。先日アイマックスシアターで見た『ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密』、立体映像で観るビル・パクストンの鼻は思いのほか高かったです。(あ、アイマックスもキャメロンもアメリカでなくカナダ産でしたね)

— 梅原浩二


マイ・ジェネレーション

2003/09/16 — 第76号

『ブギーナイツ』『マグノリア』で名を馳せた俊英ポール・トーマス・アンダーソンの最新作『パンチドランク・ラブ』を観て嬉しくなりました。キューブリックからジャック・タチ、果てはサム・ライミまでをも彷彿とさせ、ラブコメディなのに全編に緊張感がみなぎるという“期待どおりの”不思議な味わいの作品となっていたからです。◆僕はアンダーソン監督を“我が世代の旗手”として勝手に称えています。100年の映画史をランダムに咀嚼し、独特のセンスで再構築して完成する作品は紛れもなく現代的。幾多の名作をリアルタイムで観てきたオールドファンに羨望の眼差しを向ける僕のような“レンタルビデオ世代”にとっては、追体験を武器に作家性の強い作品を送り続ける同世代の彼は頼もしい限りです。ちなみにクエンティン・タランティーノにも同じことが言えますが『キル・ビル』は期待に応えてくれるでしょうか。◆さて、旧作洋画の上映が困難な中、大変お待たせしました「フランス映画社 BOWシリーズ特選」です。ズラリ並んだ秀作群は、いずれもその時代・世代に強烈な印象を与えた作品。比較的新しい作品が多いので、ご覧になった方も多いと思います。当館従業員の間でも、“ザンパラ”“パリテキ”などの言葉を久しぶりに口にする20年前の映画青年や、当時デートで観た『ピアノ・レッスン』のテーマ曲に過剰反応する者、まだ観ぬ『ウイークエンド』にファッション的嗅覚を反応させる者など、世代によって反応は様々。その様々な世代が一緒にスクリーンで感動を再確認・追体験するということは名画座の醍醐味のひとつであり、とても有意義で素敵なことだと思います。

— 花俟良王


池袋の映画館が結束

2003/09/01 — 第75号

当初、郊外の大規模な商業施設に併設されて誕生したシネコンも10年が経ち、最近では都内の施設にも併設されるようになった。今春開業したヴァージン・シネマズ六本木を中心に見ると、東にお台場シネマ・メディアージュ、109シネマズ木場、西にTジョイ大泉、南に品川プリンスホテルシネマ、平和島シネマサンシャイン、北にワーナーマイカル板橋などです。7サイト68スクリーンが増えたことになります。◆都心のロードショー館は、既に営業面で相当深刻な影響を受けているようです。ターミナル駅である池袋の映画館は、西武池袋線大泉学園にできた東映系のTジョイ大泉、東武東上線東武練馬にできたワーナー・マイカル板橋の出現と、来年豊島園にもシネコンが開業予定であり、事態を深刻に受け止めています。◆池袋には、池袋駅の東口に14館、西口に5館の19館の映画館がありますが、東宝、松竹、東映の大手映画会社の直営館はありません。総て独立興行会社の経営です。そのライバル興行会社同士が共通の危機意識を持ち、組織をつくってその対策を協議しようということになりました。如何にして映画を観る時に池袋の映画館を選んでいただけるかが命題です。◆シネコンが、一つの建物の中に複数のスクリーンを持つ映画館のことを言うのであれば、池袋駅を中心に19館の映画館が点在する池袋は、街がシネコンと言えます。この観点からすると、映画館だけの問題でなく、池袋の街の問題でもあります。行政、商店街など連携して取り組む課題と思いますが、映画館としては、映画ファンに喜んでもらえる方策を考えることから始めたいと思います。

— 永田稔


消耗しない、エラい映画

2003/08/16 — 第74号

7月の「ロード・オブ・ザ・リング」と「ロード…/二つの塔」2本立はとても多くのお客様にご来場いただき、興行的にも大成功でした。御礼申し上げます。■上映中、意外に思ったことがあります。ひとつは、新作の第2部だけを観る方よりも第1部から続けてご覧になるお客様が圧倒的に多かったこと。シリーズ物とはいえ2本で6時間を超える長尺。体力も要る。他館で〈1・2・2・2〉という変則2本立で上映している映画館がありましたが、当館では〈1・2・1・2〉と素直に上映して正解だったわけです。さらに、第2部よりも第1部の方が多くパンフレットが売れたということ、これも意外でした。第1部のパンフレットだけ買われたあるお客様になぜ1部だけなのか訊いてみると、第1部はDVDで第2部は映画館(ロードショー)で観たが、第1部をもう一度大スクリーンで観たくなった、というお答えでした。これはエラい。■下番館での番組作りでは、ビデオ・DVD化された作品は興行的にはマイナスと考えるのが普通です。ビデオで観たからわざわざ映画館では…、というワケです。ところが「ロード…」はDVDで観たあとに映画館で観たくなるという。そこがエラい。消耗して忘れ去られていく作品と、後世に残る作品、そこの違いです。■「ロード…/王の帰還」が新文芸坐で上映できるようになったら「3本立で観たいっ」ていう要望があるんだろうなぁ。9時間か…。どうする? 観る方も覚悟はあるのかっ!? あるならリクエストください。

— 関口芳雄


8月15日終戦の日、特別企画『社会派映画特集』

2003/08/01 — 第73号

8月15日は終戦の日です。数ある記念日、祝日の中で最も重大に扱わなければならない日ではないでしょうか。新文芸坐では、映画上映を通して過去を語り継いでいくことにより、現在を顧みるヒントになればと考えて、文芸坐時代の昭和54(1979)年から、8月は反戦映画や社会悪を描いた映画の特集にこだわって番組してきました。昨年は、有事法案が審議中でしたので、反戦映画特集を上映しました。◆昭和20(1945)年8月15日敗戦を知った人々は、戸惑いながらも「戦争はもうこりごりで、これからは明るい平和な社会にしたい」と思ったことでしょう。高い理想と理念に基づいて創られた平和憲法の下で、日本は今日の平和と繁栄を築いてきました。◆しかし、近年の情報技術の進歩によって、グローバル化が急速に進んだことにより、日本は国内ばかりでなく外国に対しても、政治力、経済競争力などの脆弱さを露呈し、経済不況を引き起こし、社会秩序の乱れ、人心の荒廃へと波及しているような感じがします。戦争放棄に対する考え方も、殺伐とした社会状況も、日本の進路はUターンして逆戻りしているような気がしてなりません。◆そんな杞憂から、今年の特集は、《社会派映画特集─スクリーンが告発する社会の歪み─》のタイトルで、山本薩夫、大島渚、今井正監督など日本を代表する名匠たちが撮った“社会派”映画を8月2日から3週間にわたり31作品を連続上映いたします。何れの作品もエンターテイメントとしても超一級品で、次世代に受け継がれて欲しい名画です。楽しみながら、スクリーンが告発する歪みを喝破し、“今”を考えるきっかけになればと思います。

— 永田稔


二度目の旅は日本語で

2003/07/16 — 第72号

唐突ですが、私の頭の中では名優・ジェームス・スチュアートは声優・小川真司さんの声をしています。中学生の頃テレビで放映された『裏窓』や『めまい』の印象が強かったせいでしょう。もちろんクリント・イーストウッドは故・山田康雄さんでショーン・コネリーは若山弦蔵さん、マイケル・ホイは広川太一郎さんという不動のキャスティングは言うまでもありません。◆今までは“吹替え=テレビor子供”というイメージでしたが、最近はDVDの普及(大半の洋画作品には日本語吹替え版が収録されています)や、大作映画の吹替え版同時公開などにより、吹替えは映画を楽しむ上でのひとつの選択肢となってきました。その主なメリットは……(1)「字数制限がない」。どんなに早口でもOK。会話の微妙なニュアンスまで伝わります。(2)「画面に集中できる」。美しい衣装や風景、巧妙な特撮などを堪能すれば作品の印象も深まります。(3)はズバリ「疲れない」。2時間字を読み続けるという行為は意外に重労働だったのです。私の選択理由はもっぱらコレ。◆そのメリットを最大限に生かせるのがご存知『ロード・オブ・ザ・リング』。IとII合わせて6時間のこの超大作は、ニュージーランドの雄大な自然と2年連続アカデミー視覚効果賞受賞のCGを融合させて、重厚なドラマと人間関係を紡いでいきます。熱烈なファンによれば、吹替えの口調によって主人公フロドと使用人サムの関係性や、指輪に魅せられたゴラムのキャラクターが明確になるとの意見もあります。当館では吹替えと字幕を1日1回ずつ上映するので、前日の気分と体調(?)に合わせてチョイスしてください。◆追記 山田康雄さん亡き後、先日テレビ放映されたイーストウッドの近作『トゥルー・クライム』では野沢那智さんが吹替えを担当。プロの技を“聴かせて”くれました。

— 花俟良王


夏休み親子優待フェア

2003/07/01 — 第71号

映画館の愉しみのひとつに“大人数で同じ映画を観る”というのがあります。みんなでドッと笑ったり、観客の悲鳴にびっくりさせられたり、カタルシスのあるシーンでは歓声や拍手が起こったり…。こういった観客の反応というのは決して不愉快ではなく、作品の力が増幅されたような感じがしてこれはお得です。ビデオで観てもこんな体験はできません。作品との最初の出会いはぜひ大人数で観る映画館をお勧めします。■新文芸坐では今年も夏休み親子優待フェアを行います。期間は「ロード・オブ・ザ・リング」1&2の始まる7/19(土)から8/31(日)まで。中学生以下(3歳以上)のお子様をお連れになった大人の方は、ご入場料金をお一人1000円(2名様まで)に割引いたします。夏休みです。ご家族お誘い合わせのうえご来場ください。みんなの歓声や悲鳴で映画を盛り上げましょう。ただしオールナイトは18歳未満の方はご入場できませんので対象外です。■映画というのは配給会社にとっては大切な商品で、入場料の高い映画館で優先的に上映し、当館のような低料金の劇場が上映できるのは最後になります。入場料が下がるということは商品としての作品の価値が下がるということなのです。ですから上記の「ロード…/二つの塔」も配給会社からは入場料金をもっと高くしてほしいという要望がありました。でも当館としては通常料金で上映したい。そこで折衷案として、ラスト1本割引を1000円にすることにいたしました。どうかご理解ください。

— 関口芳雄


映画フィルム—日々雑感、「超大作」

2003/06/16 — 第70号

かつて超大作と言えば、巨大なオープンセットと大群衆が付き物でしたが、最近はデジタル技術の発達で必ずしもどちらも実物が必要ではなくなっているようです。「マトリックス」は2作目と3作目合わせて3億ドル以上の制作費が掛けられているそうですが、前述の古典的な意味での超大作という雰囲気はありません。実際には2km以上にわたる高速道路を建設して撮影しているそうですが、のっぺらぼうな高速道路のセットでは今ひとつ夢がありません。が、しかし、かつて映像化できなかった、夢のようなアクションシーンをひたすら追い求める映画にあっては却って背景はシンプルにした方が良いのでしょう。■最後の(と思われる)古典的な超大作は「ギャング・オブ・ニューヨーク」でしたが、CG全盛の現在に暴挙と思われるチネチッタの夢のような巨大セットは実に感動モノでした。ただ最近見た「プレイタイム」のモダンなセットの街“タチヴィル”の方が、スコセッシのような映画史やらチネチッタやらに対する自覚や郷愁がない分、暴走の度合いがより激しかったです。で、最近の超大作らしい超大作と言えば当館で7/19(土)より上映する「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズです。最新のCG(例、キャラクターを一体一体動かさなくてもプログラムで自分で勝手に戦ってくれる群集シーンなど)が多く使われている映画ですが、実は監督の意向で意外にもミニチュアやオープンセットがかなり使われている映画なのです。CGと渾然一体となって分かりにくいシーンもあるのですが、やはり実写(ミニチュアも含む)の存在感というのは捨てがたく、今後ともCG一本槍ではなく、このような手法で映画が撮られることを切に願ってやみません。

— 梅原浩二


変革する映画興行

2003/06/01 — 第69号

明治36年(1903)、浅草の電気館が入場料金5銭で常設映画館になった。これが映画興行の始まりで、今年が100年目になります。映画は、戦後“娯楽の王様”と言われ、映画館数は、昭和33年(1958)のピーク時には7,000館以上に達していました。その後、TVの普及、娯楽の多様化などにより、映画館は1/3近くまで減少しましたが、シネマコンプレックス(シネコン)の出現により、社会不況にもかかわらず映画館は増加傾向にあります。◆シネコンとは、一つの建物の中に複数のスクリーンを持つ映画館のことです。シネコンが登場したのは、10年前の平成5年(1993)開業のワーナー・マイカル・シネマズ海老名が最初です。そのシネコンは、郊外の大規模な商業開発の際に併設されてきました。これは、従来の都会に映画を観に行くという非日常的な行為から、観客の生活する範囲に映画館があることによって、映画を観る行為を生活習慣の一環にしてしまうという発想に基づくものです。◆しかし、最近ではシネコンが、都心の様々な“街”に出現するようになってきた。東京では、品川プリンスホテルシネマであるとか、この4月にオープンした六本木ヒルズ内のヴァージン・シネマズ六本木ヒルズであるとか、豊島園内にもシネコン建設の計画がある。地方都市でも札幌シネマフロンティアが既に開業しているし、名古屋駅前、大阪球場跡地の再開発にシネコンを併設しようと言う動きがある。◆その時代の社会状況、映画ファンのニーズに対応しながら、ホテル、商業施設、オフィスビル、マンション、遊園地などに併設する多様な選択肢の中から映画館が誕生しています。一方では、デジタル化の動きが急速に進行しています。デジタル化に移行することは必至でしょう。このように映画興行界を取り巻く環境は刻々と変革しています。新文芸坐は、時代の流れに乗り遅れないように対処していきたいと考えています。

— 永田稔


ほろ苦さと甘酸っぱさ
『SWEET SIXTEEN』と『僕のスウィング』(6/14〜20上映)

2003/05/16 — 第68号

『SWEET SIXTEEN』の監督、ケン・ローチの映画に共通するのは労働者階級、貧困、抑圧といったテーマであろうか。人間の自由と尊厳を見つめる姿勢ともいえるかもしれない。一方で彼の映画には、どことなくユーモラスな人間が必ず出てくる。けっこう辛い話の時でも、そういった人物たちのクスクス笑いが見る方の体の緊張感を解きほぐしてくれる。■ケン・ローチは決してハリウッドで映画を撮ったりしないと思う。きっと生涯、貧乏人や抑圧された人々の映画を撮り続けるのだと思う。ケン・ローチが素晴らしいのは理想をふりかざさないことと、映画の中で間抜けな人間を描いても、彼らを決してしからないことだ。揺るぎない信念と人間への優しさ。彼の映画はこれに尽きる。■『僕のスウィング』の監督、トニー・ガトリフのキーワードは、自身のルーツでもある“ロマ”。ロマとはジプシーの自称である。彼らは約千年前に北西インドからヨーロッパに移動し、各地に分散、定住する。彼らへの呼称は地域で異なりドイツではシンティやツィゴイネル、フランス南部ではジタン、スペインではヒターノ、イギリスではジプシー。今では差別的なジプシーの名を嫌い人間という意味のロマを名乗る人が多い。■夏休みにフランス北部の祖母の下に預けられた少年と、土地のロマの少女との触れ合いをほとばしるような瑞々しい映像で綴る一編だ。この映画の一番の魅力は、映画の中で常に響き渡る個性豊かな音楽たち。中でもこの地方のロマの呼称、マヌーシュに由来する軽やかでいて物悲しい“マヌーシュ・スウィング”の旋律に心を奪われる。■1枚のチケットでいろんな味わいを楽しめる二本です。でも見終わると、ちょっと胸が痛くなる、そんな二本立てでもあります。

— 矢田庸一郎


レスリー・チャンの追悼オールナイトを開催

2003/05/01 — 第67号

レスリー・ファンというほどでもない私も、4月1日のレスリーの訃報を聞いたときはかなりショックを受けた。香港映画ファンの映画ライターがわざわざ電話を掛けてきて教えてくれた。彼女にはメールで友達から連絡が入ったそうだ。だからとっさに私は、何かの誤報、あるいはネット上での巧妙な悪戯ではないかと思った。信じられないという思いだったのかもしれない。「香港のラジオがちゃんと伝えているの。間違いない」。彼女の小さな悲痛な声が電話口から漏れた。■6/14(土)にレスリー・チャンの追悼オールナイトを行なうことになった。昼間にやる案も出たが、それだと遅くなる。できるだけ早くということでオールナイトになった。オールナイトでは行きにくいという方も多いと思うが、どうかご理解願いたい。■上映作品は『欲望の翼』、『君さえいれば 金枝玉葉』、『さらば、わが愛 覇王別姫』、『ブエノスアイレス』。レスリー・ファンでなくとも見ごたえ十分、傑作4本立てである。そしてレスリーの魅力が結晶し、きらめき、ついには爆発する4本立てである。■レスリー特集は開館の時から常に頭にあった。いつでもできると呑気に構えてたところもあった。そしたらこんなことに。初めてのレスリー特集は追悼上映になっちゃった。■享年46歳はあまりに若い。歳を取るごとにさらに素敵な顔を我々に見せてくれたはずだ。数年前からレスリーは監督業への進出の夢を語っていた。だがそれも実現することはなかった。なにか映画の未来に大きな穴が開いたような気がする。本人が一番辛かったり、虚しかったり、無念だったのかもしれないが……。本当に残念無念で仕方無い。

— 矢田庸一郎


4月のオールナイト

2003/04/16 — 第66号

4月のオールナイトは、アニメとトークショーてんこ盛りです。4/12(土)「クレしん」のゲストは我々スタッフもまだ知らされていませんが、あの方は今年も来るのではないでしょうか。リベンジのため…。(昨年の「クレしん」ナイトをご覧の方はお分かりですよね。)■19(土)は「機動戦士ガンダム」。昨今のガンダム・ブームは、ガンダム世代が社会の中で占めるポジションの推移と大いに関係があります。これからの日本を支える中心的な世代。彼らは多かれ少なかれ「ガンダム」の洗礼を浴びているわけで、初見・再見を問わず、今ここでファースト・ガンダムを観ておくことは日本人に必要なのでは? 当日はグッズ販売なども予定しています。オールナイトは18禁です。みなさん、オトナ買いの準備はよろしいですか? ゲストは、漫画家の北爪宏幸さんと雑誌「ガンダムエース」編集長の古林英明さん。■26(土)は「機動警察パトレイバー」。ゲストは漫画家の、ゆうきまさみさんと、とり・みきさん。おふたりは一時期、女優H・Tに御執心で、ヘッド・ギアの出渕裕さんらとともに「バースデイ本」なる同人誌を作りご本人の誕生日にプレゼントをした…、などという仲です。いや、パトレイバーとは関係ないですが、私もあの夏「♪ヒトデと出逢って 億万年♪」などと口ずさんでいたクチですから。■オチが深い、とり・みきさんのマンガに倣って、説明過少の文章にしてみました。リベンジ? オトナ買い? ヘッド・ギア? ヒトデと? 分からない人は近くのおにいさん、おねえさんに聞いてみましょう。

— 関口芳雄


祝 卒寿記念 銀幕の天才 森繁久彌映画祭

2003/04/01 — 第65号

通信機器をはじめ科学の発達により私たちの生活は、前世紀の数倍の早さで変化し、便利になっています。一方では、バブル崩壊後の社会不況は延々と続き、株価(3/12現在)は20年前に戻ってしまい、閉塞感を抱いたままで日常生活を余儀なくされています。生活が便利になった割には心豊かな気分ではない。◆スローライフの勧めが叫ばれているこんな時代だからこそ観ていただきたいのが4/26からの「祝 卒寿記念 銀幕の天才 森繁久彌映画祭」です。森繁映画の時代は、スタッフ、キャストなど撮影現場が一丸となった手作りで、スクリーンから温もりが伝わってきますので心を癒してくれると思います。◆5月4日に卒寿を迎える森繁は、ご存知の通り平成3年に文化勲章を受章するなど、わが国の文化、芸能の分野における巨人です。「屋根の上のバイオリン弾き」などの演劇俳優として、テレビ、ラジオのタレントとして偉大な存在でありますが、森繁の真骨頂は映画俳優として、名匠が撮った芸術作品、野心作から数多くシリーズ化された喜劇映画など240本に主演、出演した銀幕上での存在感あふれる天才的演技にあるのではないかと思っています。◆この映画祭を企画するにあたり、森繁さんにお目にかかりました。開口一番「オレの映画なんかに客なぞ来ないゾ!」と言いながら結構嬉しそうにしていました。記憶力は確かです。さすがにスクリーンで観せる森繁節といわれるリズミカルな話し方、間に往年の冴えとまではいきませんでしたが、「映画とはデタラメとウソの積み重ねだが、その中に小さな真実を見つけていい映画という」など印象的な話をしてくださいました。◆陽気で軽妙なペーソスあふれる森繁映画で笑って、泣いて、楽しんで心のゆとりを取り戻してください。3月12日現在、ゲストに女優・淡島千景さん、演出家・久世光彦さん、放送作家・高田文夫さん、映画監督・松林宗恵さんが来館する予定です。

— 永田稔


映画フィルム—日々雑感2

2003/03/16 — 第64号

現在映画の音声方式はアナログとデジタルに大別されますが、アナログにはモノラルとサラウンド(立体音響)、デジタルはすべてサラウンドですが、フォーマット別に三種類あります。■家庭用のオーディオが2チャンネルステレオになっても映画の音はドルビー社のサラウンドシステムが普及するまでは特殊な例を除いてモノラルの時代が長く続いていました。その特殊な例とはかつてのシネラマや70mmなどのいわゆるハリウッッドの大型映画で、大画面の撮影上映方式が各社それぞれ違っていたのと同様に音声方式も7〜4チャンネルと各種あったようです。これらの音は主にフィルムに磁気を塗って記録(カセットテープと同じ方式)されたのが多く、耐久性や生産コストに問題があり余り普及しませんでした。旧来の光学式(フィルムの端にギザギザになっている帯状の物で光で読み取ります。トリュフォーの「アメリカの夜」のオープニングではそれが音楽に合わせて動く様が画面で見えます)と互換性のあるドルビーサラウンド普及後は、アメリカ映画を中心にサラウンドが一般的になりましたが、このアナログ方式ではチャンネル数や音の分離などの問題があり、往年の大型映画のニュープリント版などでも音はモノラルということがありました。■しかしデジタルサラウンドで復活した最近の「ベン・ハー」や「2001年宇宙の旅」のプリントなどは当時の音に近いチャンネル数を再現し、かつ音質はデジタルなので当時以上の状態で再生できるようになっています。そうして手間ひまかけて再生された映画はまだ多くはないようですが、このような映画を名画座では珍しくドルビーデジタルEXまでを備えた当館で沢山上映できる日が来るのもそう遠くはないと思っております。

— 梅原浩二


コロムビア・レディに乾杯

2003/03/01 — 第63号

ご存知の方も多いかもしれませんが、洋画の場合、映画会社が持っている配給権が契約切れになるとその作品は映画館では上映できません。また配給権はあっても、映画会社がプリントを廃棄してしまえば、物理的に上映は不可能です。配給権の問題は仕方ないとしても、好きな作品が廃棄されると聞くと、泣くに泣けません。映画はビデオで観ろということでしょうか。■数ある映画会社の中で、この点最も良心的なのがソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)。滅多に稼動しなくなった旧作もかなりの数を保管しています。エライ。SPEはコロムビア映画や、トライスター、オライオン映画の一部の配給権を持っていますが、その一部を「コロムビア映画名作選」として4/12(土)から当館で上映します。ラインアップを見ていただければお分かりのとおり、映画史に残る作品ばかり。ぜひスクリーンでご覧ください。■唐突に懸賞クイズ。本特集の初日「地上より永遠に」でウォーデン曹長を演じた俳優。楽日「博士の異常な愛情…」で最後の爆撃機に乗る黒人俳優。ふたりの俳優が同時に描かれている作品の絵が、当館受付前の和田誠さんのイラスト集の中にあります。そのイラストはどれでしょう? 回答は「左から○番目、上から○番目、映画タイトルは○○○○」形式で、staff@shin-bungeiza.com 宛てのメールか、ロビーの投書箱までどうぞ。抽選で5名様に特集の御招待券をさしあげます。締め切りは3月末日。連絡先をお忘れなく。■最後にトリビアをひとつ。「コロムビア映画のオープニング・ロゴは、“自由の女神”ではない。」ヘェーッ。

— 関口芳雄


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