まんすりいコラム:2007年

いつの日かまた、アイマックスを。

2007/09/16 — 第172号

品川にあった都内唯一のアイマックスシアターが3月に閉館してしまいました。アイマックスとはカナダで開発された映画史上最大のフィルムサイズを誇る上映方式のことです。フィルム幅は70ミリですが、横に送るため面積が広く、通常の70ミリ映画の3倍になり、35ミリに対しては10倍にもなるそうです。渋谷パンテオン閉館時に上映した70ミリの「プレイタイム」は若干センターにブレが見られましたが、それより大きいこのフィルムではさらに面ブレが気になるところです。しかし対策は万全、上映中は撮影機のようにパーフォレーション(フィルムを送る穴)にピンを出して固定、さらに真空装置でレンズ後面に固定しているそうです。巨大なスクリーンを含めたこの上映設備から得られる映像は情報量が非常に多いうえ、迫り来るような圧倒的な迫力があり、フィルムの持つ能力の凄さをまざまざと見せ付けてくれます。●上映作品は3D映像や科学的な番組のほか、劇場用の一般映画も上映していました。私も「スーパーマン・リターンズ(アイマックスのみの一部3D)」等、色々見に行きましたが、中でも圧巻なのがアイマックス向けに音を編集し直した「イノセンス」でした。音響、映像とも通常の劇場での体験とは全く異なり、この映画はアイマックスでのみ観るべき映画なのかと思うほどでした。で、3回も見に行ってしまったのですが、いつもガラガラ。いや、「イノセンス」に限らずいつも空いていました。新宿にアイマックスがあった時も混雑していた記憶がないので、立地のせいだけではないようです。●この先新たに劇場を作るのは困難とは思いますが、復活することがあったら、またつぶれないよう是非見に行ってください。

— 梅原浩二


吹き替えについて思うこと

2007/09/01 — 第171号

ハリウッド映画に限っていえば、映画館でも日本語吹替版という選択肢が普通にある時代になりました。若い世代には「字幕は面倒」などと臆面もなくいう連中もいるとか……。昨今の日本映画の好調ぶりの要因のひとつに、この字幕嫌いというものが寄与しているとするならば随分とお寒い話です。■9/15(土)のオールナイトは「最新アニメ ベストセレクション」と題した4本立ですが、この中の3本は主役級がいわゆるプロの声優ではなく、普通の俳優や新人です。唯一「パプリカ」のみ、アニメ界の中堅・ベテラン声優陣に加え、外画アテレコ業界の実力者をを配しています。豪華声優陣といっても良いでしょう。堀勝之祐といえば野沢那智に次ぐ“アラン・ドロン”声優で、TVアニメ「ベルサイユのばら」では野沢氏が入院した際にピンチヒッターとしてフェルゼン役を演じたことを思い出しますが、「パプリカ」ではドロン、フェルゼンといった美形とはずいぶん違ったキャラクタを演じています。他に、大塚明夫や山寺宏一、田中秀幸など、一流の声優を多用していますが、プロは声を聴くだけで安心しますね。「時をかける少女」も中村正の声で妙に落ち着くのです。■もちろん俳優でも素晴らしい声の演技をする人は数多くいます。江守徹の演技力と美声は余人を以っては代え難いし、蒼井優もプロの声優と聞きまがうほど秀逸な演技でした。しかし話題づくりのキャスティングに走り過ぎた失敗例も少なくありません。TV放映された百恵&友和が吹替えた「ある愛の詩」や、渡辺徹(ルーク!)・大場久美子(レイア!!)・松崎しげる(ソロ!!!)の「スター・ウォーズ」あたりから始まった傾向でしょうか。ジブリ作品だって、声に不満を持つ人は多いはずです。

— 関口芳雄


えっ? 中川信夫監督が新文芸坐に来るって!?

2007/08/16 — 第170号

今年は、中川信夫監督の生誕102年。中川監督が酒とともに大好物の「豆腐」、いわゆる「102(トーフ)」の年です。

中川信夫は「東海道四谷怪談」「地獄」などの怪談恐怖映画の監督として知られていますが全97作品中、手がけた怪談恐怖映画は8作品しかありません。今回、新文芸坐の9/1(土)・8(土)のオールナイト特集では、「怪談累が渕」を除く7作品が上映されます。プラス、ビッグなプレゼント。めったに見られない「日本残酷物語」を上映。

「おれはお化けは信じないよ。怖いのは人間だ」と、中川信夫は言っています。

他のジャンルの作品も多く手がけています。しかし、人間の愚かさの追及と、底辺からの優しい眼差しにはブレがない中川信夫。

職人中川信夫が腕を振るった怪談恐怖作品から、人間中川信夫の視点を探り出すのも今回はいい機会でしょう。

現在102歳の中川監督は、長年温めていたダンテの「神曲」を撮影中です。ダンテ役を中川監督自身が演じます。地獄に落ちる主人公のモデルは小泉純一郎前総理。

えっ? 中川信夫は1984年に亡くなっているはず?

いえいえ、あのお方はなかなか亡くなりませんよ。そして、イタズラ好きなんです。

だから、お会いしたい方は、オールナイトにいらっしゃいませんか。上映中の暗い館内で「カタ、カタ、カタ……」と下駄の音を聞かれたあなた、音がやんだら隣の席を見てください。登山帽をかぶった中川信夫が酒と豆腐を手に座っていますよ。

追伸 9月8日、午後4時から、中川監督を偲ぶ集い「酒豆忌」を池袋で行います。皆さんの参加も自由です。ここにも中川監督みえるかな。

— 鈴木健介(映画監督)


「原爆で戦争終結、しょうがない」発言に思う

2007/08/01 — 第169号

「しょうがない」という言葉は日常茶飯事に使われているが、久間前大臣が講演会で話した「原爆を落とされて無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったのだという頭の整理で今、しょうがないと思っている」という発言は、世界唯一の被爆国である国民を怒らせた。▲無差別に多くの市民を殺害した原爆投下を「しょうがない」という表現で“必要悪”として容認することは出来ない。原爆は、自然現象で空から雨が降ってくるのとは違い、人間が研究、開発、製造して、目的を持って使用したのである。▲核兵器廃絶を世界に発信する最も説得力を持つ被爆国の大臣が、無差別の大量殺害の原爆投下を「しょうがない」という言葉で整理してしまう無神経さに呆れてしまうし、安倍総理も注意だけで、世論を沈静化しようとした問題認識の低さにも唖然とする。▲太平洋戦争に敗戦した日本国民にとって、戦争と核兵器は“絶対悪”である。平和という名目の下でも、国益という名目の下でも、国民のためという名目でも、如何なる状況であっても“必要悪”の選択肢はない。▲当館では毎年終戦の日に因み、戦争の時代を背景にして“生”“死”“愛”“友情”“家族”“国家”“運命”“軍隊”など戦争という異常な状況の下での様々な人間ドラマを描いた名作、傑作、秀作を上映して、映画を通して戦争を語り継ぐ企画上映をしている。▲映画を楽しみながら、映画と史実が次世代へ受け継がれて欲しいと願っている。今年は、先頃亡くなった社会派の巨匠・熊井啓監督の追悼上映と合わせて8/4から3週間毎日替りで特集上映する。今の日本の政治、社会状況を考えるキッカケになればと思う。

— 永田稔


映画館の中の小さな本屋さん(3)

2007/07/16 — 第168号

7/20まで上映の「追悼 植木等」にちなみ、書籍『ジ・オフィシャル クレージーキャッツ・グラフィティ』を販売中です。●本書は’93年に刊行されましたが、その後久しく絶版となっていた幻の書でした。それがこの程、植木等さんへの哀悼の意を込めて、60年代の未発表のステージ写真を8ページ分追加して、急遽、復刻されることになったのです! ●93年にお亡くなりになったハナ肇さんを含むクレージーキャッツ全員の取材が叶い、さらにその後、相次いで亡くなった古澤憲吾監督や脚本家の田波靖男さん、作家の青島幸男さんら、クレージーを語る上で欠くことのできない方々のインタビューや寄稿を収録しています。500点以上の貴重な写真や図版に加え、ステージにTV、映画やCMまで、彼らの旺盛な活動の資料が満載。ファンはもちろん、クレージー初心者の方も、彼らの生の姿をヴィヴィッドに知ることができます。●各界の著名人が本書にコメントを寄せていますが、ミュージシャンの久保田利伸さんのコメントをちょっと長いけどご紹介します。『日本でいちばんFunkyなのは誰かって? そりゃ植木さんさ。日本でいちばんSoulfulな奴は誰かって? そりゃハナさんさ。そいじゃあー、日本でいちばん初めにGROOVEを悟った男達は? もちろん、CRAZY CATSだよ。』●ユニークな色使い、斬新な、写真やページ構成のし方からも見て取れるように、本書の性格は、クレージを懐かしむだけの姿勢とは正反対。言うなれば、今もクレージーという熱いSOUL(魂)を内に燃やしながら生きる人々の、その生き方の宣言の書とも言えるものなのです。●植木さんの追悼特集が終っても、しばらく販売していますので是非お買い求めください。

— 矢田庸一郎


快適な映画鑑賞をしていただくためのお願い

2007/07/01 — 第167号

お客様からの様々なご意見の中で、映画を観ている最中のマナーについての苦情があります。漆黒の暗闇の中でスクリーンに夢中になり、うっかり他人に迷惑を掛けていることに気付かない場合や、注意したのに聞いてもらえなかった時などに苦情が寄せられます。お客様が快適に映画を鑑賞していただくために、次の事項にご留意の程をお願いします。

  1. 上映中の“おしゃべり”は止めましょう。
  2. 上映中のご飲食は、できるだけ“静かに”おとりください。
  3. “携帯電話”の電源は上映前に切り、上映中のご使用は“絶対”にお止めください。
  4. 前の座席の肘掛や背もたれに足を投げ出したり、蹴るなどの行為はお止めください。
  5. “イビキ”をかいて寝ることはしないでください。(近くの方は起してください)
  6. 上映中の出入りは、静かに後方の扉をご利用ください。
  7. 映画が完全に終わるまでは、スクリーンに近い扉のご利用は厳禁です。
  8. ロビーの喫煙コーナー以外の場所は、全て“禁煙”です。

痴漢、置き引き、万引き、暴力は、犯罪行為ですので厳禁です。映画をご覧になったお客様からの苦情に、担当者がその時々の状況に応じて、直ちに館内アナウンスで事柄を放送してご注意、お願いを要請しています。また、お客様に良い雰囲気で映画鑑賞をしていただくために、新文芸坐のローカル・ルールとして、アルコールの持ち込み禁止、飲酒者と開映30分後の入場お断り、再入場不可にも、ご理解とご協力をお願いいたします。

— 永田稔


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