まんすりいコラム:2007年

3月21日 春分の日に上映の『プージェー』は必見!

2007/03/16 — 第160号

毎年春恒例の「気になる日本映画達」。今年はドキュメンタリー映画に注目です。●イチオシは、探検家・関野吉晴さんとモンゴルの遊牧民の少女の、心の交流を捉えた『プージェー』(キネ旬文化映画3位!)。関野さんは旅の途中、大草原で自在に馬を操る1人の少女に惹かれ、思わずカメラを構えます。少女は言い放ちます。「写真撮るなら、こっちへ来ないで!」。少女プージェーと関野さんの出会いでした。●『らくだの涙』などのビャンバスレン・ダバー監督の映画と同様、遊牧民の人々の素朴な暮らしぶりや、豊かな表情が生き生きと描かれています。●しかしモンゴルにも市場経済が導入されるなど近代化の波が押し寄せ、伝統的な遊牧民の生活も変化を強いられています。特にプージェー一家を襲う悲劇が、この近代化の波と関わっている事実は、大変痛ましく衝撃的です。●24日は『三池 終わらない炭鉱(やま)の物語』(同8位)と『六ヶ所村ラプソディー』(同4位)を上映。●日本最大の炭鉱だった福岡県大牟田市の三池炭鉱。戦後最大の労働争議となった三池争議など、過酷な歴史が語られます。知られざる事実の数々と、そこに様々な人生の喜怒哀楽があったことを思い知らされる感動作。●『六ヶ所村ラプソディー』は青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場をめぐる、村の現状や問題点を探ります。最初から“原発反対”という結論ありきではなく、工場受け入れ推進派の人々の姿にも目を向ける姿勢が、この作品をユニークなものにしています。●《番組のお知らせ》待望の市川雷蔵特集が遂に実現、4/28より。5/5はオールナイトで「ロード・オブ・ザ・リング スペシャル・エクステンデッド3部作一挙上映」も。

— 矢田庸一郎


往年の映画を観る楽しみ

2007/03/01 — 第159号

昨年12月の6周年記念番組『和田誠が「もう一度観たいのになかなかチャンスがない」と言っている日本映画』という長〜いタイトルの番組では、毎日ゲストが来場して和田さんとトークを行なったので、師走で閑古鳥が鳴く名画座が賑わった。■和田さんと7人のゲストとの往年の映画に対する認識は、「監督もスタッフも撮影所で修業を積んだ職人(=映画人)たちであり、知名度の低い映画でもそんな映画人たちの技術、アイデア、工夫した場面に見所が多く、何十年と経っても古さを感じない。旧作を観る時、そんな場面を見つけて観るのが面白いところであり、楽しいところでもある。」と熱く語るところが共通していた。■また、「往年の映画には、1本の作品の中にサスペンスあり、コメディ(笑い)あり、人情(涙)ありと、面白さ、楽しさがいっぱいのエンターティメント作品が多く、作り手のお客様を喜ばせたいという熱気が、スクリーンを通して伝わって来る。」ということも一致していた。■舞台台本、映画脚本の執筆のため引き篭もり宣言をしている最中にもかかわらず来場した脚本家・三谷幸喜さんは、観客として和田さんと古今東西の映画談義に花を咲かせ、学生の頃文芸坐に通った想い出話をした後で、「映画は娯楽であることを改めて感じた。作り手の熱気がお客様に伝わる映画、楽しませる映画を撮りたい。」と作り手の立場で語っていた。今年、監督する4本目の作品に期待しよう。■往年の映画で、ベストテン、賞などに入らない無名の映画の良さ、面白さ、楽しみ方、観方を、和田誠さんと豪華な7人のゲストから教えられた。今上映中の「二枚目スター“池部良”の魅力のすべて」など、これから新文芸坐がラインアップする往年の映画をお楽しみください。

— 永田稔


筒井康隆氏の慧眼

2007/02/16 — 第158号

昨年は『時をかける少女』『日本以外全部沈没』『パプリカ』と、筒井康隆さんの原作が3本も映画化されました。最もヒットした『時をかける少女』はアニメーションにもかかわらず観客の年齢層が広く、私の世代も多く劇場に足を運んだようです。私が筒井作品を読んだのは中学生の頃、ショートショートが初めてだったと思います。■私の筒井ベスト作品は、“七瀬三部作”の第二部にあたる「七瀬ふたたび」です。それぞれ予知能力・時間移動・念動力・透視などの力をもった超能者たちのドラマなのですが、これがSFなのに人間の心情がとてもリアル。そして、文庫版あとがきで某氏もふれられていましたが、この作品のエライところは、主人公の能力が物理的な戦力ではないという点です。七瀬の能力は、精神感応能力(テレパシー)。つまり数ある能力の中で、“情報力”を主人公に選んだことが慧眼なのです。30年以上も前の作品です。■いつの頃からか、記憶障害にまつわる映画が増えています。『明日の記憶』『博士の愛した数式』(3/19上映予定)『私の頭の中の消しゴム』と泣かせる系から、『メメント』『unknown/アンノウン』などサスペンス系まで多々あります。私は後者が好きなのですが、これら記憶喪失サスペンス作品の面白さはどこにあるのでしょうか? それは情報の扱い方にある思うのです。主人公の知っている情報、知らない情報。敵方の持っている情報、知らない情報。そして観客に与えられるべき情報、隠しておくべき情報。これら情報のコントロールが上手になされている脚本は、本当に面白い。逆に、観客にだらだらと小出しに新情報を提供していくだけなおバカな謎解き映画の、なんと退屈なことか! あぁ、久しぶりに“七瀬”読み直したくなった!!

— 関口芳雄


2007年を名実共に“日本映画復活”の年に

2007/02/01 — 第157号

小学生の頃観た時代劇映画で、悪者が正義の若者に向かって言う「ちょこざいな奴め」という台詞があった。前後の台詞から何となく意味は判るが、辞書を引いて「猪口才」と書き、「生意気な」という意味であると知った。本物の猪を見る前のことである。■今年の干支は亥年で、過去の亥年には一般的に悪い年が無かったと言われているようだが、映画業界はどのようになるのだろうか。昨年、劇場公開された邦画は、33年ぶりに400本を超え、興行収入でも21年ぶりに洋画を上回った。映画関係者は“2006年は日本映画復活の年”と喜んで新年を迎えた。■昨年の邦画は、個人向けファンド、町おこしにも広がり、資金調達が容易になり製作本数が増えて、単館系で公開された作品に傑作が多くなった(キネ旬ベスト10に6本入選)。拡大公開された作品で、テレビ局が製作に絡んだ作品は、マルチメディア戦略により、異種業界を巻き込んだ大量宣伝によって、観客を増やしたが、ベスト10入りはなかった。■一方、昨年の洋画は『ハリー・ポッター』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『M:i:Ⅲ』などシリーズの続編が多く、新鮮味に乏しく、観客の洋画離れを招いた。その結果、邦画に観客が流れてきたのであって、作品の内容が評判を呼んで観客が増えた訳ではない。“漁夫の利”によるもので、バブル的現象であり、手放しで喜んでいる場合ではない。■今年の洋画の主なラインアップも、昨年と同様のシリーズの続編の他に「ロッキー」「ダイハード」と続き、企画の貧困さに目を覆うばかりであるが、作品内容の伴わない邦画の実力を勘違いしていると、即、日本映画は観客から信用を失うであろう。今年は名実共に“日本映画復活”と言える作品を数多く観たいと思う。

— 永田稔


2/3(土)より「名匠・吉村公三郎の世界」を開催

2007/01/16 — 第156号

1911年生まれの吉村公三郎監督が松竹蒲田撮影所に入ったのは’29年、18歳のこと。満州事変の2年前。この時代の暗い雰囲気は後に『足摺岬』(’54)などの作品に反映されます。●吉村公三郎の助監督苦節10年は有名。後輩の渋谷実らに抜かれ’39年にようやく監督昇進。だが同じ年には出世作『暖流』(’39)を世に送ります。そして、数々の作品を生み出した名コンビ、吉村公三郎と脚本家・新藤兼人の初作品『安城家の舞踏会』が’47年のベストテン1位を獲得し興行もヒット。以降、松竹は2人を多用していきます。だが意欲作『森の石松』(’49)の興行がコケルと、1年近くかけて準備した『肉体の盛装』に松竹は難色を示し、吉村と新藤のコンビの解消を迫るまでになります。’50年、意を決した2人は松竹を辞め、近代映画協会を設立するのでした。●吉村公三郎は女性映画の名匠とも言われます。『肉体の盛装』はすぐに大映が製作。『偽れる盛装』(’51)というタイトルで公開されヒットします。計算高い芸者を演じた京マチ子はこの作品で大スターとしての地位を決定付けました。また『夜の河』(’56)では山本富士子が凛とした気品に満ちた演技を見せ、単なる美人女優から脱皮して大女優の仲間入りを果たし、『越前竹人形』(’63)でも若尾文子は官能を漂わせる情感のある演技で彼女の最高傑作の1本とします。●『暖流』の高峰三枝子や『安城家の舞踏会』の原節子も忘れ難い! 吉村公三郎と名女優たちの華麗なるコラボレーションを是非お楽しみください。
※2/11(日)13:40より新藤兼人監督のトークショーがございます。

— 矢田庸一郎


あけましておめでとうございます

2007/01/01 — 第155号

旧年中は、ご愛顧いただき心より御礼申し上げます。

本年も、〈感動はスクリーンから〉をモットーに、皆様が映画を通して感動、興奮するような、心豊かになる番組を提供していきたいと考えております。

どうぞ宜しくお願い申し上げます。

2007年1月1日

新文芸坐
支配人 永田稔
関口芳雄 矢田庸一郎 梅原浩二
花俟良王 後藤佑輔 柳原弘
佐野久仁子 高橋悦子 西本布美子
高橋夏枝 加藤有里 浅香ノリ

— スタッフ一同


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