まんすりいコラム:2007年

映画にもあった賞味期限!?

2007/12/16 — 第178号

ちょっと前まで「暑い、暑い」と言っていたのに、いつの間にか「一年が早いですね!」が挨拶になり師走になっていた。新文芸坐は、今年も名画座的番組と二番館的番組を織り交ぜた通常興行と、終夜興行とを合わせると例年通り600本以上の作品を上映した。■今年のニュースの中で、伊勢の赤福、北海道の白い恋人、船場の吉兆などの有名な老舗からマクドナルド、ローソンまでが、賞味期限を改ざんしたり、食肉会社は食肉を偽装していたことが発覚して社会を騒然とさせた。■映画にも賞味期限があることを知らされた作品があった。新文芸坐の今年のワースト・ワンの番組は、『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』『ラッシュアワー3』の二本立てである。5月に公開された『パイレーツ・オブ・カリビアン〜』は、洋画で今年最も観客動員した映画として興行組合から“ゴールデングロス賞”を受けた。(邦画は『HERO』) 6ヵ月後に上映した時には、賞味期限が切れてしまったのか、動員力が失われていた。■『パイレーツ〜』は、多額の宣伝費を使って、当時としては史上最多の670スクリーンで公開した。全国津々浦々で、一気呵成に観客を集めようという戦略である。そんな配給会社の戦略は、商売としては成功したが、映画の商品価値を一瞬で消耗させたように思う。■山口県防府市の小俣八幡神社では、年末の神事として鎌倉時代から続いている奇祭、三回大笑いする《笑い講》が行われる。第一の笑いは、今年の豊作を感謝して、第二の笑いは、来年の豊作を祈念して、第三の笑いは、今年の憂さを晴らすために笑う。大きな笑い声は、五穀豊穣を祈念するばかりでなく、家内安全、健康増進、世界平和を願うなどの"招福の笑い"となる。大笑いして来年の幸運を呼び込んで新年をむかえたいと思う。

— 永田稔


名画座の、とある2本立て

2007/12/01 — 第177号

見逃していた『ロッキー・ザ・ファイナル』を当館で見た。評判に違わず、いやぁ〜泣けました。■私の友人に映画を年に400本以上見る猛者がいる。彼はロードショーで見ていて、今年のベスト5の1本と言っていた。いくらなんでもと、そのときは思ったが、見たら納得だった。■私の持論に“本当にいい映画は、もうストーリーはあまり重要でない”というのがある。この映画がいい例だ。かつてのチャンプも年老いて、最愛の妻にも先立たれ、虚ろな日々。しかしNEVER GIVE UP、人生を諦めるなと再びリングに……。ありきたりのベタな話。だが大筋と関係ない細部に、機知とユーモアをまぶしたちょっとした出来事、セリフの数々。これが妙に心地よい。シーンの連携も無駄がない。映画が転がるように進んでいく。“分かりやすいイイ話”がクサくならずストレートに胸に迫る。■映画の冒頭、ロッキーを侮辱する若者たちが出てくる。そしてラスト近く、ロッキーの試合を大勢が声援を上げながらテレビ観戦する酒場のシーン。カメラはその中に、息をのむようにしてテレビ画面に食い入る若者の姿を捉える。ロッキーを侮辱したあの若者たちだった……。このようなシーンがさりげなく挿入され、ラストの感動は一層鮮やかに浮かび上がる。■併映は『ダイ・ハード4.0』。『ロッキー〜』ほどではないけれど出来は悪くない。ある映画会社の男性が見に来て「凄いイイ2本立てですね!」言ってくれた。“ロートルおやじが体をはって頑張る”という2本立てのココロにも感心してくれたようだ。■ところでだが『ロッキー〜』にはパソコンは勿論、携帯電話すら登場しないんだゾ!
PS.来年はスタローン監督・主演の『ランボー4』がいよいよ公開です。

— 矢田庸一郎


昭和32年へタイムスリップ!

2007/11/16 — 第176号

新文芸坐を傘下に置く(株)マルハンの創業は、現会長の韓昌祐(ハン チャンウ)が京都府の丹後地方の峰山町で、クラシック音楽を聴かせる名曲喫茶《るーちぇ》を始めた1957年5月である。峰山町は、古い城下町で格式が高く、教養人が多い町であり、“丹後ちりめん”の生産地であったので、買い付けにくる商社マン、問屋の旦那衆で賑わっていたという。■当時、うどん一杯20円、ラーメン30円、ロードショー、封切り館の入場料金は150円、場末の名画座は三本立て50円の時代に、《るーちぇ》ではコーヒー一杯60円の値段でも大繁盛したという。■今年、創業50周年を迎えた(株)マルハンは、資本金100億円、3月の決算では全国にパチンコ店219店舗、ボウリング場、新文芸坐などレジャー施設14店舗を経営し、従業員8,428名、売り上げ1兆8149億円、海外に事業を展開するまでに発展する大企業になった。■昭和32年当時は、神武景気と言われていた時代で、映画界はモノクロからカラーへ、スタンダードからシネマスコープの大型画面へと、技術革新も目覚しく“娯楽の王様”として君臨していた。翌年には、映画史上最高の11億2700万人を動員した。■昭和32年に公開された日本映画は、キネ旬№1『米』、興行成績№1『明治天皇と日露大戦争』の他に『喜びも悲しみも幾年月』『幕末太陽伝』『蜘蛛巣城』『雪国』『東京暮色』『あらくれ』など評価の高い、次世代に伝えていくべき名作、傑作が多い。■マルハン創業50周年、新文芸坐7周年記念は、当時公開された作品で上映可能な作品を映画評論家・寺脇研さんの監修により、ゲストを招いての特集番組を企画した。21世紀の現在でも見応えのある50年前の作品を是非ご覧ください。

— 永田稔


『ラッシュアワー3』のほろ苦い感動

2007/11/01 — 第175号

『ラッシュアワー3』を上映します。◆1979年、カンフー映画の輸入に熱心だった東映の『トラック野郎』の併映で公開された『ドランク・モンキー/酔拳』以来、日本男子のヒーローであり続けるジャッキー・チェンですが、念願のアメリカ進出の壁は厚かったのです。80年に『バトルクリーク・ブロー』、85年に『プロテクター』がアメリカで作られますが、コミカルでアクロバティック、そして“温かさ”という彼の最大の魅力を知らない監督との衝突の末、進出は失敗に終わっています。ファンとしてはこれが本当に悔やまれる。香港では80年に『ヤング・マスター』、84年には『プロジェクトA』という屈指の傑作が撮られているのですから。タランティーノらの声高なリスペクトもあり95年香港製作の『レッド・ブロンクス』がアジア映画初の全米初登場1位の大ヒットとなり、98年『ラッシュアワー』の第1作でやっと不動の人気を勝ち取ったのです。◆そして、最近はアクションを封印して演技派として活躍する我らが真田広之。『ラストサムライ』でも見せなかった彼のアクションが遂にアメリカで解禁されるのです。しかも相手はジャッキー・チェン。20年以上前「デューク真田」として海外に売り込んでいた頃にこの二人の対決が実現していたら、アクション映画の歴史は変わっていたかもしれない……と一瞬思いましたが、もはや叶わぬ夢。今は世界を目指したアジアの二大スターが、こうしてハリウッドで対決する幸せに身を委ねましょう。実際、年齢を感じさせない迫力の立ち回りには感動します。勝手な達成感で目頭も熱くなります。◆“待ちに待った”対決は11月10日(土)から。

— 花俟良王


同じ轍を踏まないために

2007/10/16 — 第174号

つい先日の出来事です。電話で「新聞で見たのですが『雨に唄えば』は今日だけの上映ですか?」との問いに、そうですと答えると「ああ、残念。じゃ、結構です」ガチャン! ジーン・ケリーのファンかもしれず、せめて後日『錨を上げて』も上映しますよと教えてあげたかったのですが……。その電話の方は新聞には当日の上映作しか載らないことを知り、前もって知っていればと後悔したかもしれません。しかし今、既に同じ失敗を繰り返しているかもしれないことに気づいていません。近日中に、また観たい映画が上映されていることを新聞で知らされるという失敗を。■ウディ・アレンの『カメレオンマン』の主人公=ゼリグは、マルクス兄弟の映画が好きという設定でした。そして“マルクス兄弟が好きということは、自分の趣味が決して高尚ではないということを表明しているようなものだ。しかし気取らないその態度が周囲からは好感をもたれた……”という意味のナレーションが入っていたと記憶しています。マルクス兄弟の作品が公開当時どのように一般に受け入られていたか、少なくともウディ・アレンがどのように考えているかが分かります。今でも映画館で上映され、70年後のシネフィルの方々にも観てもらえるわけですが、公開当時のインテリたちには相手にされていたのでしょうか? そこで私は考えます。当時スラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)を馬鹿にしていた人々と同じ失敗を、自分も繰り返してはいないか? ■「ブレードランナー」や「グレート・ブルー」は幸せです。公開時の不入りから再評価そしてブレイクまで、たった数ヶ月で済んだのですから。「実はイーストウッドは昔から好きだった」なんて言うのも、後出しジャンケンみたいでカッコ悪いですよね。

— 関口芳雄


“不在”をめぐる2本立て/『ボルベール〈帰郷〉』と『キサラギ』

2007/10/01 — 第173号

『マタドール』(’86)や『欲望の法則』(’87)など初期アルモドバル作品では性愛に引き裂かれ死に至る人々の姿などが鮮烈に描かれます。そのアルモドバルの指向に変化を感じたのは『オール・アバウト・マイ・マザー』(’98)。この作品でも性や死は重要なテーマですが、引き裂かれた存在であっても、生きることそのものに希望を託す、そんな印象を持ちました。●本作も『オール・アバウト〜』に連なる作品で、様々な女たちの人生が時に悲しく、時にユーモラスに描かれます。冒頭、女たちが風が吹き荒ぶ中、墓を掃除するシーンから始まります。ちょっと暗示的なシーンです。実はこの映画では死や人物の不在といった事柄が沢山描かれます。でも、重く深刻な映画でもなく、例えば死者らしき者が正体不明のままちょくちょく画面に姿を現し笑いを誘ったりと、不思議な雰囲気を持った映画になっています。●ある女性は死に触れて逆に人生を活性化させ、ある女性は絆を求め、またある女性は封印していた過去と対峙します。巨匠の円熟の演出というものでしょうか、『オール・アバウト〜』での、映画の慟哭や力みは抑制され、瑞々しさとさり気なさに包まれています。涙、怒り、笑い、全部描かれているけれど静かな感動作、なのです!●『キサラギ』は、自殺した(!?)アイドルの一周忌。集まってきた5人のファンの男たちによって謎の死が明らかに……というミステリー仕立ての絶妙コメディ。縦横無尽に張られた伏線と二転三転する真相。不在の主人公という空白から、巧みな話術によって奔放に物語が溢れ出る、文句なく楽しい映画です!●映画好きなら必ず楽しめる2本ですので是非ご来館を。11/3より1週間上映。

— 矢田庸一郎


いつの日かまた、アイマックスを。

2007/09/16 — 第172号

品川にあった都内唯一のアイマックスシアターが3月に閉館してしまいました。アイマックスとはカナダで開発された映画史上最大のフィルムサイズを誇る上映方式のことです。フィルム幅は70ミリですが、横に送るため面積が広く、通常の70ミリ映画の3倍になり、35ミリに対しては10倍にもなるそうです。渋谷パンテオン閉館時に上映した70ミリの「プレイタイム」は若干センターにブレが見られましたが、それより大きいこのフィルムではさらに面ブレが気になるところです。しかし対策は万全、上映中は撮影機のようにパーフォレーション(フィルムを送る穴)にピンを出して固定、さらに真空装置でレンズ後面に固定しているそうです。巨大なスクリーンを含めたこの上映設備から得られる映像は情報量が非常に多いうえ、迫り来るような圧倒的な迫力があり、フィルムの持つ能力の凄さをまざまざと見せ付けてくれます。●上映作品は3D映像や科学的な番組のほか、劇場用の一般映画も上映していました。私も「スーパーマン・リターンズ(アイマックスのみの一部3D)」等、色々見に行きましたが、中でも圧巻なのがアイマックス向けに音を編集し直した「イノセンス」でした。音響、映像とも通常の劇場での体験とは全く異なり、この映画はアイマックスでのみ観るべき映画なのかと思うほどでした。で、3回も見に行ってしまったのですが、いつもガラガラ。いや、「イノセンス」に限らずいつも空いていました。新宿にアイマックスがあった時も混雑していた記憶がないので、立地のせいだけではないようです。●この先新たに劇場を作るのは困難とは思いますが、復活することがあったら、またつぶれないよう是非見に行ってください。

— 梅原浩二


吹き替えについて思うこと

2007/09/01 — 第171号

ハリウッド映画に限っていえば、映画館でも日本語吹替版という選択肢が普通にある時代になりました。若い世代には「字幕は面倒」などと臆面もなくいう連中もいるとか……。昨今の日本映画の好調ぶりの要因のひとつに、この字幕嫌いというものが寄与しているとするならば随分とお寒い話です。■9/15(土)のオールナイトは「最新アニメ ベストセレクション」と題した4本立ですが、この中の3本は主役級がいわゆるプロの声優ではなく、普通の俳優や新人です。唯一「パプリカ」のみ、アニメ界の中堅・ベテラン声優陣に加え、外画アテレコ業界の実力者をを配しています。豪華声優陣といっても良いでしょう。堀勝之祐といえば野沢那智に次ぐ“アラン・ドロン”声優で、TVアニメ「ベルサイユのばら」では野沢氏が入院した際にピンチヒッターとしてフェルゼン役を演じたことを思い出しますが、「パプリカ」ではドロン、フェルゼンといった美形とはずいぶん違ったキャラクタを演じています。他に、大塚明夫や山寺宏一、田中秀幸など、一流の声優を多用していますが、プロは声を聴くだけで安心しますね。「時をかける少女」も中村正の声で妙に落ち着くのです。■もちろん俳優でも素晴らしい声の演技をする人は数多くいます。江守徹の演技力と美声は余人を以っては代え難いし、蒼井優もプロの声優と聞きまがうほど秀逸な演技でした。しかし話題づくりのキャスティングに走り過ぎた失敗例も少なくありません。TV放映された百恵&友和が吹替えた「ある愛の詩」や、渡辺徹(ルーク!)・大場久美子(レイア!!)・松崎しげる(ソロ!!!)の「スター・ウォーズ」あたりから始まった傾向でしょうか。ジブリ作品だって、声に不満を持つ人は多いはずです。

— 関口芳雄


えっ? 中川信夫監督が新文芸坐に来るって!?

2007/08/16 — 第170号

今年は、中川信夫監督の生誕102年。中川監督が酒とともに大好物の「豆腐」、いわゆる「102(トーフ)」の年です。

中川信夫は「東海道四谷怪談」「地獄」などの怪談恐怖映画の監督として知られていますが全97作品中、手がけた怪談恐怖映画は8作品しかありません。今回、新文芸坐の9/1(土)・8(土)のオールナイト特集では、「怪談累が渕」を除く7作品が上映されます。プラス、ビッグなプレゼント。めったに見られない「日本残酷物語」を上映。

「おれはお化けは信じないよ。怖いのは人間だ」と、中川信夫は言っています。

他のジャンルの作品も多く手がけています。しかし、人間の愚かさの追及と、底辺からの優しい眼差しにはブレがない中川信夫。

職人中川信夫が腕を振るった怪談恐怖作品から、人間中川信夫の視点を探り出すのも今回はいい機会でしょう。

現在102歳の中川監督は、長年温めていたダンテの「神曲」を撮影中です。ダンテ役を中川監督自身が演じます。地獄に落ちる主人公のモデルは小泉純一郎前総理。

えっ? 中川信夫は1984年に亡くなっているはず?

いえいえ、あのお方はなかなか亡くなりませんよ。そして、イタズラ好きなんです。

だから、お会いしたい方は、オールナイトにいらっしゃいませんか。上映中の暗い館内で「カタ、カタ、カタ……」と下駄の音を聞かれたあなた、音がやんだら隣の席を見てください。登山帽をかぶった中川信夫が酒と豆腐を手に座っていますよ。

追伸 9月8日、午後4時から、中川監督を偲ぶ集い「酒豆忌」を池袋で行います。皆さんの参加も自由です。ここにも中川監督みえるかな。

— 鈴木健介(映画監督)


「原爆で戦争終結、しょうがない」発言に思う

2007/08/01 — 第169号

「しょうがない」という言葉は日常茶飯事に使われているが、久間前大臣が講演会で話した「原爆を落とされて無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったのだという頭の整理で今、しょうがないと思っている」という発言は、世界唯一の被爆国である国民を怒らせた。▲無差別に多くの市民を殺害した原爆投下を「しょうがない」という表現で“必要悪”として容認することは出来ない。原爆は、自然現象で空から雨が降ってくるのとは違い、人間が研究、開発、製造して、目的を持って使用したのである。▲核兵器廃絶を世界に発信する最も説得力を持つ被爆国の大臣が、無差別の大量殺害の原爆投下を「しょうがない」という言葉で整理してしまう無神経さに呆れてしまうし、安倍総理も注意だけで、世論を沈静化しようとした問題認識の低さにも唖然とする。▲太平洋戦争に敗戦した日本国民にとって、戦争と核兵器は“絶対悪”である。平和という名目の下でも、国益という名目の下でも、国民のためという名目でも、如何なる状況であっても“必要悪”の選択肢はない。▲当館では毎年終戦の日に因み、戦争の時代を背景にして“生”“死”“愛”“友情”“家族”“国家”“運命”“軍隊”など戦争という異常な状況の下での様々な人間ドラマを描いた名作、傑作、秀作を上映して、映画を通して戦争を語り継ぐ企画上映をしている。▲映画を楽しみながら、映画と史実が次世代へ受け継がれて欲しいと願っている。今年は、先頃亡くなった社会派の巨匠・熊井啓監督の追悼上映と合わせて8/4から3週間毎日替りで特集上映する。今の日本の政治、社会状況を考えるキッカケになればと思う。

— 永田稔


映画館の中の小さな本屋さん(3)

2007/07/16 — 第168号

7/20まで上映の「追悼 植木等」にちなみ、書籍『ジ・オフィシャル クレージーキャッツ・グラフィティ』を販売中です。●本書は’93年に刊行されましたが、その後久しく絶版となっていた幻の書でした。それがこの程、植木等さんへの哀悼の意を込めて、60年代の未発表のステージ写真を8ページ分追加して、急遽、復刻されることになったのです! ●93年にお亡くなりになったハナ肇さんを含むクレージーキャッツ全員の取材が叶い、さらにその後、相次いで亡くなった古澤憲吾監督や脚本家の田波靖男さん、作家の青島幸男さんら、クレージーを語る上で欠くことのできない方々のインタビューや寄稿を収録しています。500点以上の貴重な写真や図版に加え、ステージにTV、映画やCMまで、彼らの旺盛な活動の資料が満載。ファンはもちろん、クレージー初心者の方も、彼らの生の姿をヴィヴィッドに知ることができます。●各界の著名人が本書にコメントを寄せていますが、ミュージシャンの久保田利伸さんのコメントをちょっと長いけどご紹介します。『日本でいちばんFunkyなのは誰かって? そりゃ植木さんさ。日本でいちばんSoulfulな奴は誰かって? そりゃハナさんさ。そいじゃあー、日本でいちばん初めにGROOVEを悟った男達は? もちろん、CRAZY CATSだよ。』●ユニークな色使い、斬新な、写真やページ構成のし方からも見て取れるように、本書の性格は、クレージを懐かしむだけの姿勢とは正反対。言うなれば、今もクレージーという熱いSOUL(魂)を内に燃やしながら生きる人々の、その生き方の宣言の書とも言えるものなのです。●植木さんの追悼特集が終っても、しばらく販売していますので是非お買い求めください。

— 矢田庸一郎


快適な映画鑑賞をしていただくためのお願い

2007/07/01 — 第167号

お客様からの様々なご意見の中で、映画を観ている最中のマナーについての苦情があります。漆黒の暗闇の中でスクリーンに夢中になり、うっかり他人に迷惑を掛けていることに気付かない場合や、注意したのに聞いてもらえなかった時などに苦情が寄せられます。お客様が快適に映画を鑑賞していただくために、次の事項にご留意の程をお願いします。

  1. 上映中の“おしゃべり”は止めましょう。
  2. 上映中のご飲食は、できるだけ“静かに”おとりください。
  3. “携帯電話”の電源は上映前に切り、上映中のご使用は“絶対”にお止めください。
  4. 前の座席の肘掛や背もたれに足を投げ出したり、蹴るなどの行為はお止めください。
  5. “イビキ”をかいて寝ることはしないでください。(近くの方は起してください)
  6. 上映中の出入りは、静かに後方の扉をご利用ください。
  7. 映画が完全に終わるまでは、スクリーンに近い扉のご利用は厳禁です。
  8. ロビーの喫煙コーナー以外の場所は、全て“禁煙”です。

痴漢、置き引き、万引き、暴力は、犯罪行為ですので厳禁です。映画をご覧になったお客様からの苦情に、担当者がその時々の状況に応じて、直ちに館内アナウンスで事柄を放送してご注意、お願いを要請しています。また、お客様に良い雰囲気で映画鑑賞をしていただくために、新文芸坐のローカル・ルールとして、アルコールの持ち込み禁止、飲酒者と開映30分後の入場お断り、再入場不可にも、ご理解とご協力をお願いいたします。

— 永田稔


突き抜けろ! トニー・スコット

2007/06/16 — 第166号

最近トニー・スコットが気になっている。芸術家的な評価を受ける兄・リドリーに対し、『トップガン』を皮切りに“これぞハリウッド!”テイストのド迫力な娯楽作を連発しているあの監督だ。個人的に“これぞハリウッド!”な映画とは、潤沢な予算と火薬を堪能して豪快に楽しんだ後はスカッと何も憶えていない、といったパターンなのだが、最近のトニー作品にはこれが当てはまらない。鑑賞後、忘れられない何かしらの感動を与えてくれるのだ。◆98年の『エネミー・オブ・アメリカ』ではリアルな国家的監視システムの中での徹底した“追いかけっこ”で活劇の真髄を知り、04年の『マイ・ボディガード』では平成の『わらの犬』とでも言わんばかりのデンゼル・ワシントンの大暴走に手を叩いた。そして05年の『ドミノ』では、トレードマークでもあったスタイリッシュな(チャカチャカして落ち着かない、という人もいる)画像処理を批判覚悟で徹底的に追求し、目が回る孤高の作品とした。そう、近年のトニー作品は見た目も中身もハリウッド的大作なのだが、どこかが清々しいほどに突き抜けていてスカッと忘れることなどできない。そこに私は感動する。◆そして最新作『デジャヴ』。今回はストーリーが既に突き抜けている。フェリー爆破事件が起こりデンゼル・ワシントン扮する捜査官が捜査を始めるが……これ以上書くともうネタバレ、というとんでもない事態。予告編からは想像つかないスリルとアイデアに満ちた怒涛の展開をトニー節で一気に見せる。職人と作家の絶妙なバランスが織り成す“ハリウッド的”作品の底力、そしてこの突き抜け具合。是非大画面で堪能していただきたい。6/30(土)から。

— 花俟良王


新自由人団塊世代(R60)に映画鑑賞の勧め

2007/06/01 — 第165号

昨年末の新文芸坐6周年記念番組にゲスト出演した俳優・山城新伍さんには、当時再起不能の重病説が流れていた。そんな噂を払拭するように和田誠さんと熱く映画談義に花を咲かせて、観客を楽しませてくれたことは記憶に新しい。その山城さんの“元気のひみつ”は、映画を観ることだという。今でもDVD、テレビで観るのを含めると月に30本ほど観ていると、紙面で語っていた。■今年から団塊世代が定年を迎える。団塊世代は高度経済成長時代の日本経済を支えてきた企業戦士たちで、限られた企業内、業界内だけの狭い社会で生きてきた。そんな団塊世代の人々が、企業社会から解放されて、肩書き人間から個人に変換され、今まで経験することのなかった空白で自由な時間が持てる自由人になる。■この団塊世代の人々は、“仕事”即“人生”であり、“家庭の幸福”と思ってきた。そして今、膨大な自由時間を得たが、その時間の活用方法に戸惑っているようで、定年後の世代を対象にした「R60」などの雑誌の新発刊により、様々な時間の過ごし方の情報が出始めたが、山城さんのように映画を観ることをお勧めする。■映画は身近にある最も高級な文化、芸術であり、元々、団塊世代は映画を娯楽として青少年時代を過ごしてきたわけで、還暦を機会に昔に戻って映画館に足を運んで欲しいと思う。新文芸坐もシニア料金は1000円で、かつ2本立ての上映なので、超割安で約4時間は十分に楽しめる。■冷暖房の完備した映画館の漆黒の暗闇の中で、ゆったりとした気分で“感動はスクリーンから”を再び体験して欲しい。そして、シニアが夫々の分野で培ってきた知識と知恵と経験からの意見を、近年アニメ、ヤング向けの作品が多くなっている映画界に発信して欲しいと思う。

— 永田稔


映画館の中の小さな本屋さん(2)

2007/05/16 — 第164号

『みうらじゅんの映画批評大全』が入荷しましたので早速買いました。取り上げている映画は『片腕ドラゴン』『ジェイソンX』『花と蛇』といったカップルが見に来ない映画ばっかし。しかも、ほとんどエロネタ、童貞ネタのオンパレード(でも笑えます)。『シークレット・ウィンドウ』という珍しくカップルが来る映画を取り上げていると思いきや、“ジョニー・デッパ”というくだらないオチでした。“そこがいいんじゃない!”(←みうらじゅんの決り文句)。●中には“京都のホテルのAV”や“中野の都こんぶ”(←旧文芸坐でも売っていた)といった項目も交じっていて、一体どこが映画批評大全なのか全然分かりませんが“そこがいいんじゃない!”。●でも時折忍ばせてくる、まるで中野の都こんぶのような安っぽく湿っぽい味わいが絶妙の配合となっていて、読み始めたら止められなくなりました。例えば美大時代、『スター・ウォーズ』に感動し、黒いビニール袋と着古しの柔道着でダース・ベイダーとルークの物マネをしていたら、美大の女の子に「子供だましの映画」と言われ怒った話(下ネタ&セクハラ表現で怒りを表現しています)。『ゾンビ』が公開された頃、みうらじゅんは美大を2度落ちた浪人生。高円寺の商店街をゾロゾロ徘徊し古本屋と中古盤屋を隅から隅までチェックする高円寺ゾンビと化していた話。でも「道行く人に飛びかかり、人肉を喰らう勇気」はなかったそうです。●「面白いに決まってる場合がある。特に映画の場合は。(中略)それは『REX 恐竜物語』だったり、『シベリア超特急』だったりする」。というわけで、でもないですが、その『REX 恐竜物語』は当館の6/9(土)のオールナイトで上映があります。

— 矢田庸一郎


元クレージーキャッツの植木等逝く

2007/05/01 — 第163号

3月27日の夜遅く、高校時代の友人からの携帯電話のメールで、元クレージーキャッツの植木等が亡くなったことを知った。つい1週間程前に試写で観た、宮藤官九郎脚本、水田伸生監督の「舞妓Haaaan!!!」(6月公開)という映画の中で、祇園遊びを知り尽くしている老舗の隠居という役で出演していた。往来で主人公と出会い言葉を交わすという僅か1シーンであるが、粋で颯爽としていて、役柄の雰囲気を十分に醸し出し、流石と感動したばっかりだったので驚いた。■半世紀前の高校生だった頃、クレージーが出演している月曜〜金曜日昼の12時50分から10分間のフジTVの生番組「おとなの漫画」を見るため、昼休みに校則を破って校外に脱出して、テレビが見られるラーメン屋、蕎麦屋、甘味処に行く程夢中になった。■4月1日日曜日、その時の仲間の一人からの呼び掛けで、8人が集まり郊外の満開の桜の下で想い出話に花を咲かせた。クレージーのメンバーの中で、ハナ肇派、谷啓派、植木等派と三派に分かれていたが、カッコ良く、ルックスも良く、都会的センスがあり、声が良く、歌が上手い植木等がお気に入りだった。■ラジオから流れる落語、浪曲、歌謡曲、ドラマなどで育った世代にとって、テレビから映像と共に流れる軽やかなジャズのリズムと、スピーディなコントのギャグとを一緒にしたクレージーの笑いは、今までに無く革新的で、衝撃的であった。■「お呼びでない?」のギャグや大ヒット曲「スーダラ節」映画「無責任シリーズ」「日本一シリーズ」で60年代に笑いを振りまいた植木等の死は、昭和を代表する喜劇役者を失ったばかりでなく、昭和の時代を一気に遠ざけた。植木等出演の映画を7月に追悼上映する予定である。乞う!ご期待!

— 永田稔


新聞記事から思ったこと

2007/04/16 — 第162号

3月16日の朝日新聞夕刊に、クラシック演奏会における客同士のトラブルが急増しているという記事が載っていた。人気漫画『のだめカンタービレ』の影響で若者が押し寄せて常連客とトラブルになっているものと思ったが、事実その通りの模様。しかし記事の論点は少々角度が違い「最近の特徴はごく普通にみえるクラシック好きの常連客が、周囲の音や行動に過敏に反応し、突如キレる客に変貌する点」と書いてあった。◆そのことについて楽団側は、従来のファンが気付かないうちに自分の聞き方を他者に強要しているのかも、と語り、精神科医は、最近はヘッドフォンなどで“公”の空間で“私”を知覚でき、公共空間における五感が妙に潔癖になり自分の空間を侵されることへの不安が強くなっている、と分析していた。当然映画館も他人事ではない。◆不特定多数の人々が様々な価値観を持って集うのだから、一人の理想の環境が100%達成されれば他の人には少なからずストレスが生じてしまう。「少しの雑音にも邪魔されたくない」「このくらいの音はしょうがないだろ」どちらの主張も理解できる。どこに線を引き、どうすればより多くの人に快適に映画を楽しんでもらえるか日々模索している。◆上の記事によると、関西では“キレる”お客さんは少ないらしい。「やめえや」と人々が注意し合い、注意された方も不快感を引かないらしい。妙に納得できるが、かつては東京にもそれに似た義理と人情の風情があったはずである。◆そんなことを思った矢先に植木等さんが亡くなった。追悼番組で豪快に笑う植木さんを見ながら、またひとつの時代が終わっていくことを痛感した。

— 花俟良王


小型映画

2007/04/01 — 第161号

小型映画というのをご存知でしょうか? この言葉は現在ほとんど死語に近いですが、主にアマチュアが8ミリや16ミリなどのフィルムを使って作る映画のことを指します。●現在主流の映画フィルムは35ミリ幅ですが、この規格はコダック社の70ミリ幅のフィルムをエジソンが半分にしたのが始まりといわれています。35ミリのカメラや映写機は大変大きく且つ重く、フィルムの消費量も馬鹿にならないことから一般に使えるよう小型の規格が考えられました。20年代に16ミリをコダック社が発売しましたが、アマチュアが使うにはフィルム代が高価で、小型映画全般の歴史としては業務用途が主だったようです。日本では80年代位までドキュメンタリー映画やテレビドラマ、アニメの撮影によく使われていました。16ミリには35ミリにブローアップすることが前提のビスタサイズのスーパー16という規格もありました。これはコストの問題で35ミリが回せない90年代の低予算映画に良く使われていましたが、現在この種の映画はデジタル撮影に取って代わられています。60年代にはスーパー8やシングル8などダブル8より取扱いが簡便な8ミリが登場し一般家庭にまで普及しました。また80年代までの学生映画は8ミリがメインでした。この他に28、22、17.5、9.5ミリなどもありました。●ピーク時の年間1200万本から現在1万本まで販売量が落ち込んでいることから、富士フィルムは昨年8ミリの生産中止を発表していましたが、今年になって数年継続することに変更したそうです。(個人的にはまだ1万本も売れていることに驚きましたが企業としては厳しい数字なのでしょう。)このご時世にこのような英断をするのは大変なことだと思いますが、映画=フィルムにとっては明るいニュースですね。

— 梅原浩二


3月21日 春分の日に上映の『プージェー』は必見!

2007/03/16 — 第160号

毎年春恒例の「気になる日本映画達」。今年はドキュメンタリー映画に注目です。●イチオシは、探検家・関野吉晴さんとモンゴルの遊牧民の少女の、心の交流を捉えた『プージェー』(キネ旬文化映画3位!)。関野さんは旅の途中、大草原で自在に馬を操る1人の少女に惹かれ、思わずカメラを構えます。少女は言い放ちます。「写真撮るなら、こっちへ来ないで!」。少女プージェーと関野さんの出会いでした。●『らくだの涙』などのビャンバスレン・ダバー監督の映画と同様、遊牧民の人々の素朴な暮らしぶりや、豊かな表情が生き生きと描かれています。●しかしモンゴルにも市場経済が導入されるなど近代化の波が押し寄せ、伝統的な遊牧民の生活も変化を強いられています。特にプージェー一家を襲う悲劇が、この近代化の波と関わっている事実は、大変痛ましく衝撃的です。●24日は『三池 終わらない炭鉱(やま)の物語』(同8位)と『六ヶ所村ラプソディー』(同4位)を上映。●日本最大の炭鉱だった福岡県大牟田市の三池炭鉱。戦後最大の労働争議となった三池争議など、過酷な歴史が語られます。知られざる事実の数々と、そこに様々な人生の喜怒哀楽があったことを思い知らされる感動作。●『六ヶ所村ラプソディー』は青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場をめぐる、村の現状や問題点を探ります。最初から“原発反対”という結論ありきではなく、工場受け入れ推進派の人々の姿にも目を向ける姿勢が、この作品をユニークなものにしています。●《番組のお知らせ》待望の市川雷蔵特集が遂に実現、4/28より。5/5はオールナイトで「ロード・オブ・ザ・リング スペシャル・エクステンデッド3部作一挙上映」も。

— 矢田庸一郎


往年の映画を観る楽しみ

2007/03/01 — 第159号

昨年12月の6周年記念番組『和田誠が「もう一度観たいのになかなかチャンスがない」と言っている日本映画』という長〜いタイトルの番組では、毎日ゲストが来場して和田さんとトークを行なったので、師走で閑古鳥が鳴く名画座が賑わった。■和田さんと7人のゲストとの往年の映画に対する認識は、「監督もスタッフも撮影所で修業を積んだ職人(=映画人)たちであり、知名度の低い映画でもそんな映画人たちの技術、アイデア、工夫した場面に見所が多く、何十年と経っても古さを感じない。旧作を観る時、そんな場面を見つけて観るのが面白いところであり、楽しいところでもある。」と熱く語るところが共通していた。■また、「往年の映画には、1本の作品の中にサスペンスあり、コメディ(笑い)あり、人情(涙)ありと、面白さ、楽しさがいっぱいのエンターティメント作品が多く、作り手のお客様を喜ばせたいという熱気が、スクリーンを通して伝わって来る。」ということも一致していた。■舞台台本、映画脚本の執筆のため引き篭もり宣言をしている最中にもかかわらず来場した脚本家・三谷幸喜さんは、観客として和田さんと古今東西の映画談義に花を咲かせ、学生の頃文芸坐に通った想い出話をした後で、「映画は娯楽であることを改めて感じた。作り手の熱気がお客様に伝わる映画、楽しませる映画を撮りたい。」と作り手の立場で語っていた。今年、監督する4本目の作品に期待しよう。■往年の映画で、ベストテン、賞などに入らない無名の映画の良さ、面白さ、楽しみ方、観方を、和田誠さんと豪華な7人のゲストから教えられた。今上映中の「二枚目スター“池部良”の魅力のすべて」など、これから新文芸坐がラインアップする往年の映画をお楽しみください。

— 永田稔


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