まんすりいコラム:2010年

映画ファンの皆様、本当にありがとうございます!!

2010/12/16 — 第221号

お陰さまで新文芸坐は今年10周年を迎えました。映画ファンの皆様には本当に熱く御礼を申し上げます。●新文芸坐の開館は2000年12月12日。オープニング特集は「戦後日本映画—時代が選んだ86本」と題して、キネマ旬報ベストテンの上位の作品や、また各年のヒット作品、総数86作品を日替わりで上映しました。12日のオープニング上映作品は昭和29年(1954年)のキネマ旬報第3位『七人の侍』。ちなみにその年は木下恵介が『二十四の瞳』『女の園』で1位2位を独占しました。●今年、10月に「2000年〜2009年の映画の中からもう一度観たい映画」をお客様に投票してもらいました。その結果の上位の作品を開館記念日の12日より特集上映いたします。初日は第12位の「愛のむきだし」を上映し園子温監督のトークショーを行います。そして見事第1位に輝いたのは内田けんじ監督『運命じゃない人』! この作品は14日に上映し勿論、内田けんじ監督のトークショーも開催します。●10年といっても一つの通過点に過ぎません。そして今、映画を取り巻く環境は決して順風とは言い難いと思います。一握りの大作映画のヒット作品だけが話題となり、大多数の中小の映画会社や映画館は非常に厳しい状態で営業を続けていると思います。またデジタル技術の進化に押され、フィルム上映の美しさや、その価値がどんどん忘れられつつあります。10年後には『七人の侍』はデジタル上映でしか見られないという状況が本当に来るかもしれません。●そのような中にあっても新文芸坐はこれからも日々、映画ファンの皆様に支持される映画館作りに励む所存です。●映画ファンの愛、そして映画への愛。これが新文芸坐のこれからの10年の基本精神であり、判断基準です。●今号より「しねまんすりい」は月二回発行とします。以前に較べて、より早く皆様に上映情報をお届けすることができるようになります。どうぞ、ご期待ください。

— 矢田庸一郎


"00年代"もう一度スクリーンで観たい映画はこれだ! 結果発表

2010/12/01 — 第220号

12/12(日)〜17(金)で上映いたします「"00年代"もう一度スクリーンで観たい映画はこれだ!」の投票結果を発表いたします。

1位 「運命じゃない人」 35票
2位 「たそがれ清兵衛」 33票
3位 「ダークナイト」 31票
4位 「グラン・トリノ」 28票
5位 「マルホランド・ドライブ」 24票

以下は、6位「ノーカントリー」「犬猫」、8位「殺人の追憶」「百年恋歌」「ナビィの恋」「青の稲妻」、12位「愛のむきだし」「ラスト サムライ」「戦場のピアニスト」、15位「ミリオンダラー・ベイビー」「フォーン・ブース」「パッチギ!」「"アイデンティティ"」「下妻物語」、20位「善き人のためのソナタ」「剱岳 点の記」「沈まぬ太陽」…と続きます。この中の太字の作品を上映いたします。「運命じゃない人」の内田けんじ監督、「愛のむきだし」の園子温監督のトークもございますのでお楽しみに。

当初は14作品を上映する予定でしたが、本数が少なくなったことをお詫び申し上げます。また、順位の高い作品でも、少人数による大量票だけの作品は上映リストから外させていただきました。何卒ご容赦ください。ただし1票は1票として、上位20位までを発表させていただきました。

また好きな監督・男優・女優は、それぞれ黒澤明市川雷蔵(圧勝)、高峰秀子でした。皆様、予想は当たりましたか? 全710票の中で、この3人の名前を1枚の投票用紙に書かれた方は、何と1名様のみ! 2人だけ的中された投票は42票ありましたので抽選になりますが、合計10名様に12月中有効のご招待券をプレゼントいたします。皆様、ご投票ありがとうございました。

— スタッフ


10周年企画のご案内と前売1回券廃止のお知らせ

2010/11/01 — 第219号

新文芸坐は今年の12月に、10周年を迎えます。これを記念して、今年もお客様からの投票をもとにした上映を企画しています。今年は当館10周年ということで、オープンした2000年から2009年までに公開された映画を対象にリクエストを募集しています。洋画・邦画は問いません。なお締め切りは、当初10月20日を予定していましたが、少し延長して10月24日締め切りといたします。集計の結果、人気上位の作品から14本をセレクトして上映いたしますのでご期待下さい。また監督と俳優の人気投票とその予想も募っています。1位人気を的中させると12月の本特集中有効のご招待券をプレゼントいたしますので、ふるってご投票・ご応募ください。

もうひとつお知らせです。当館では上映番組の前売券を必ず販売してまいりましたが、今年の12月の上映番組からは基本的に前売券1回券を廃止いたします。前売券(1回券)をご利用になるお客様の数が少ないことと、サービスを分かりやすくすることがおもな理由です。ただし特集上映の回数券と、オールナイト・落語会の前売券は利用頻度が高いので、今後も存続いたします。今まで前売券(1回券)をご利用いただいたお客様にはご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。今後は新文芸坐友の会にご入会すると、とてもお得です。詳細は劇場スタッフにお問合せください。

— スタッフ


市川雷蔵映画祭、遂に開催!!

2010/10/01 — 第218号

孤高の美形スター、市川雷蔵は1931年京都に生まれます。生後まもなく歌舞伎俳優、市川九団次の養子となり、15歳のときに大阪歌舞伎座で初舞台を踏みます。映画デビューは『花の白虎隊』、23歳の時でした。159本もの映画に出演した後、’69年、37歳の若さでこの世を去ります。●昨年末より都内のロードショー館にて、市川雷蔵没後40年回顧上映会(「大雷蔵祭」)が始まりました。その後、地方の都市でも順次、開催され、ようやくこの秋、当館での上映となりました。●10月13日(水)より2週間、数ある作品の中より28作品を上映いたします。ほとんど市川雷蔵ベスト・セレクションといった趣になっています。●ニヒルでクールな雷蔵。哀しみに包まれる雷蔵。そして運命に囚われ奈落に落ちる悲劇のヒーロー雷蔵。そんな雷蔵の美の極致とも言うべき姿が2週間オンパレード。『好色一代男』と『忍びの者』のあるシーンを除き、雷蔵ほとんど笑いません!(←ちょっと大袈裟?)●伊藤大輔、森一生、三隅研次、市川崑、増村保造といった巨匠たちが勢揃いしたラインナップですので、大人が楽しめる充実のストーリー、絢爛豪華な撮影や美術、そして緻密かつ粋な演出の数々など、日本映画黄金時代ならではの、映画の見所が満載です。●本当に全作品、何度見ても面白い映画ですが、個人的に特に印象深い作品は『大菩薩峠』と『婦系図』ですね。どちらも何度も映画化された名作ですが、雷蔵版が私は一番だと思います。妖刀に取り憑かれ人斬りを繰り返す雷蔵の姿に息を呑みます。震えるほど美しい『大菩薩峠』。身分違いゆえ引き裂かれる恋人二人の姿を描いた名編『婦系図』。ボロボロになるほど泣けますよ!

— 矢田庸一郎


ご存じですか? 多彩な割引サービス実施中!

2010/09/01 — 第217号

当館ではよりお得に映画をご覧いただくため、様々な割引サービスを行なっております。まず、どなたでもご利用いただけるのが(1)“映画サービスデー”。これは12/1の映画の日の割引が拡大したもので、毎月1日の映画サービスデーは全国ほとんどの映画館が割引料金1000円になります。そして(2)が“夫婦50割引”。これも(1)と同じくほとんどの映画館でご利用できる割引で、どちらかが50歳以上なら、夫婦で2000円になります。そして(3)は“bukuの日”。毎月29日は、池袋の映画館で発行している無料冊子“buku”をご持参の方は1000円になります。これは池袋限定の割引で、この冊子は各映画館と近隣のお店や施設に設置しています。詳しくは“buku”をご参照下さい。次号は9月末発行の予定。(4)は“7のチカラ”。これは当館独自の割引で、毎月7のつく日(7・17・27日)に特定の条件を満たした方は777円でご覧いただける、もっともお得な割引です。この割引の条件は毎回異なり、例えば9/17は「月形龍之介と同じ3/18が誕生日の人」が割引の対象となります。そして最後の⑤は“モーニングコーヒー割引”。初回の上映開始前までは通常200円のコーヒーが150円になります。この割引は毎日行なっておりますので、是非淹れたてのコーヒーでの憩いの一時と共に映画をお楽しみ下さい。■この他にも「新文芸坐友の会」会員の方向けのポイントサービスとして、入場ポイントが2ポイントになる“新文芸坐スペシャルデイズ”や、DVDなど指定商品をお買い上げの場合のポイントサービス、オールナイトや新文芸坐落語会チケット購入でのポイント加算なども行なっております。このように多岐にわたる割引サービス・ポイントサービス、うまく利用してお得に映画を御覧下さい。

— 後藤佑輔


内田吐夢監督—韓昌祐マルハン会長—新文芸坐の因縁

2010/08/01 — 第216号

内田吐夢監督没後40年追悼上映のゲストに韓昌祐マルハン会長が来館しますのでご紹介いたします。韓会長は、新文芸坐を傘下に置く年商2兆円超の株式会社マルハンの創業者で、実業家として日本国内ばかりでなく、韓国、アメリカ、東南アジアなど国際的に活躍する傍ら、文化財団の理事長、交響楽団の理事など文化、芸術の振興、普及、発展に貢献しています。◆内田吐夢監督は、昭和29(1954)年満洲から帰国して、胃潰瘍治療のため国立第一病院に入院しました。一方、大学生の韓会長も“食よりも映画”の生活が原因で、栄養失調から肺結核を患い同じ病院に入院したことで、監督と知り合いになりました。詳しい話は舞台からお聞きいただきたいと思います。◆韓会長の自伝によると、大学時代に観た映画で印象深い作品として、ロッセリーニ監督の『戦火のかなた』、デ・シーカ監督の『自転車泥棒』を挙げ、エリザベス・テイラー主演の『ラプソディー』では、カーステレオから流れるメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲に驚き、感激し、言葉では表現できない程感動したと述懐しています。◆入院を余儀なくされた韓青年は、病床での読書三昧、クラシック音楽を聴く日々から、人生を豊かにする生涯の趣味に出会い、教養、知識を吸収し、既に映画監督として高名であった内田吐夢監督と出会いました。韓会長の文化、芸術に対する造詣の深さは、大学時代に芽生えていたと考えると、新文芸坐の復活、再興の英断も納得できます。◆今回の企画を監督の次男・内田有作氏からのご案内で知った韓会長は、「ご縁だから」と来場を即決しました。内田吐夢監督—韓昌祐マルハン会長—新文芸坐の繋がりは、半世紀前に端緒がある浅からぬ因縁に驚いています。

— 永田稔


“7のチカラ”キャンペーンと黒澤明特集を機会にお得な新文芸坐友の会にご入会ください!

2010/07/01 — 第215号

新文芸坐友の会は入会金2000円で1年間有効の会員制割引システムです。

★新規入会時に、ご招待券を1枚プレゼント
★入場料の割引 《通常》1300円→1000円 《黒澤明特集》1500円→1000円 など
★有料入場時に入場ポイントがついて、10ポイントで昼の通常番組に1回ご招待

以上が主な特典です。(詳細は受付の入会案内をご覧ください)

“新文芸坐友の会への入会は、損か得か?”と迷っておられる皆様には、昨年のしねまんすりい5月号にも書きましたが、もう一度結論だけ申し上げます。友の会の有効期間=1年間に、一般の方なら4回、シニアの方は12回が損得分岐点です。それ以上ご来場する方なら、入会したほうがお得です。とくに特集「巨匠・黒澤明」は当日料金が1500円のところを友の会料金は据え置きの1000円ですので、1回あたり500円もお得になります。2回のご来場で、入会金の元はとれてしまいます。なお、諸事情により黒澤明特集では前売券・回数券の販売はございません。

このように新文芸坐友の会は大変お得な割引システムです。実を申せば、当館のご来場のお客様は、一般の方よりも友の会会員のお客様のほうが圧倒的に多いのです。当館で一般料金でご入場されているお客様は、上記の損得分岐点をご覧になって、どうすれば安く映画を観られるかの参考にしてください。

— スタッフ


北欧産ミステリーのヒロイン

2010/06/01 — 第214号

当館で6/20(日)〜22(火)に上映する『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』は、北欧の孤島で発生したひとりの少女の失踪事件を追う、元雑誌編集長と背中にドラゴンのタトゥーを入れた女ハッカーの活躍を描いたミステリーです。ある富豪が姪の失踪事件の調査を依頼するのですが、依頼されたのは犯罪捜査の素人で、しかもその失踪事件というのは40年も前のこと。これ、どうやって調査するんだろうと思っていたら、タイトルロールのヒロインが助っ人として加わるや、遠い過去の事件の真相をどんどん暴き出していくのです。■この映画の鑑賞中に、つい別の映画のことを思い出してしまいました。ひとつは『ブレードランナー』。一枚の写真に写った部屋の風景を何やら不思議なハイテク機器で解析すると、ものかげに隠れて写っていないものまで見えてくる……っていうアレです。『ミレニアム…』はSFじゃないので、ここまでありえない反則技は使いませんが、これに近い鋭い観察眼がでてきます。驚かされます。もうひとつは『シャイニング』。スキャットマン・クローザース演じる黒人調理人の「何かあるとその痕跡が残るものだ。しかし誰にでも見えるということではない」という台詞です。この女ハッカーと元編集長コンビは、“現在”の中にある“過去”の痕跡を何ひとつ見逃さないのですよ。驚かされます。■スティーグ・ラーソンの原作は、本国スウェーデンを始め、日本でも「文春ミステリー」1位、「このミステリーがすごい!」2位など、ミステリー小説賞をいくつも受賞した大ベストセラー。この「ミレニアム」三部作が処女作にして遺作ということになります。映画も第二部・三部の公開が決まっていますので、第一部は新文芸坐で観ておきましょう。

— 関口芳雄


まつりだ! まつりだ! 鈴木則文映画まつり

2010/05/01 — 第213号

5月も新文芸坐は特集盛りだくさんでお送りいたします。5月15日からはいよいよ皆さんお待ちかねの〈鈴木則文映画まつり〉の開催です。監督デビュー作『大阪ど根性物語 どえらい奴』(追悼・藤田まこと)をはじめ、『兄弟仁義 逆縁の杯盃』『シルクハットの大親分』などの任侠ものから『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』や『恐怖女子高校』シリーズのピンキー路線、果ては『エロ将軍と二十一人の愛妾』『忍びの卍』のエロ時代劇まで、笑いあり、涙あり、ハレンチありの名作・珍作の数々を上映いたします。「一部で無思想無節操の職人監督の典型との評があるが、それが何よりの褒め言葉」とは監督の言葉ですが、娯楽に徹しながらも学生運動や安保といった反体制の時代を背景に、権力への反骨と批評性をもったアナーキーな作品群は、時代のエネルギーにあふれています。則文映画で暗い世相を吹き飛ばそうではありませんか! そして、鈴木則文監督といえばなんといっても「トラック野郎」シリーズ。本特集は監督が「トラック野郎」の思い出を綴った『トラック野郎風雲録』の出版記念ですが、シリーズ全10本のうち6本を上映いたします。残り4本はどうしたって? ご安心下さい。シリーズ終わりの4本は5月29日のオールナイトにて特別上映いたします。題して<真夜中の鈴木則文映画まつり “トラック野郎”これにて完結>。普段オールナイトをご覧にならない方もこれを機に、ぜひオールナイトにも足をお運び下さい。目指せ「トラック野郎」シリーズコンプリート! なお、特集初日をはじめ、鈴木則文監督ら豪華ゲストによるトークショーも続々決定! 乞うご期待。

— 後藤佑輔


4月は映画作家がいっぱい 新藤兼人、増村保造、シネマクラシックス

2010/04/01 — 第212号

新文芸坐は、今年、映画ファンの皆様に愛されて10周年を迎えます。今年はより一層、本当の映画の感動を愉しんでいただく一年にしたいと思います!●まず4月は独立プロの巨匠・新藤兼人監督特集をお送りいたします。対象に凄絶なる執念で迫る演出や、ロケ現場で最小限のスタッフと経費でギリギリの生活をしながら映画を撮り足していく革新的な映画製作方法などで知られる新藤監督は、今年4月22日に98歳のお誕生日をお迎えになります。数え年では99歳の白寿です。これをお祝いしての新藤監督特集は4月15日初日の2週間上映です。戦争や核の非を常に訴え続けてきた新藤監督の映像世界の意義は、現在においても廃れるどころか、逆に一層高まっています。是非、新藤監督の映画に触れて、様々なことを考える契機にしていただければと思います。●4月29日からのGWの1週間に開催する「シネマクラシックスVol. 11」ではメルヴィル、ルノワール、コクトー、フリッツ・ラング、チャールズ・ロートンといった極めて個性的な映画作家の貴重なフィルム7本を上映します。今回の上映は、映画配給組織が当館での1回ごとの劇場上映権を取得し映画を貸し出すという稀な形での上映です。そのため各作品を2回までしか上映できません。●期間中は朝から夕方までは「鬼才・増村保造と若尾文子」を二本立て。夕方に入れ替えをし「シネマクラシックス」を上映します。こちらは諸事情で各回入替え1本立て1300円となります。当館のスタイルである二本立て上映ができないことを深くお詫び申し上げます。しかし、今後、いつ映画館で見ることができるかわからない貴重なフィルムですので、是非お見逃しなくご覧いただければと思います。

— 矢田庸一郎


さようなら、ビデオポップ

2010/03/01 — 第211号

北区王子にある個人経営の小さなレンタルビデオ店「ビデオポップ」が、この2月で20年の歴史に幕を下ろした。私の学生時代、フリーター時代のアルバイト先であり、何度か就職に失敗した時もその都度世話になり、映画まみれにしてくれた。思い出を語ればきりがないので止めておくが、販売用DVDが安価で売られ、大手チェーンが席巻する市場でよくぞ今まで地元の映画ファンのために頑張ってくれたと拍手を贈りたい。■旧文芸坐出身者でもある店主の分け隔てない映画愛と気さくな人柄で、店内は常に映画、音楽、演劇などの道を歩もうとする人間のサロンと化していた。ある世代が土地を離れれば、必ず次の世代の似たような人間が集まってきた。今、店主の唯一の心残りは、そのような“場所”がひとつ失われてしまうということだ。■閉店の報せを受けて久しぶりに足繁く通っていると、現在の常連客に当館の利用者が多くいることが判ってきた。映画好きが集まる店なのだから不思議ではないが、かつてのバイト先で現在の職場のお客さんに「頑張ってください」と言われると、感慨深くなるというか、人と時間が作り出した不思議な縁を感じる。そしてその縁に報いるためにも、店主が誇りと共に呟いた“場所”というキーワードを胸に、私が、そして新文芸坐が目指すべき“場所”を模索していこうと思ったりもした。■さて、私は『僕らのミライへ逆回転』のラストシーンのような気の利いたお別れはできなかったけれど、店主はCDに追いやられ20年間自宅で埃をかぶっていたレコードとプレーヤー、そしてアンプを初めて店に持ち込んだ。ざらついた大きな音でジャズが流れる中、懐かしい顔と新しい顔が集い談笑する。まあ、これはこれで画になるラストシーンだな、と微笑ましかった。

— 花俟良王


畏怖する人間/荒戸源次郎

2010/02/01 — 第210号

「鬼のような人ではないか」と、会う前は勝手に想像していた。新作「人間失格」公開記念として「荒戸源次郎映画祭」の開催を、荒戸さんにお願いしに行った時のことである。●荒戸源次郎が最初に注目されたのは鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」(’80)製作であろう。「殺しの烙印」(’67)を撮った後、日活を解雇され、ほとんど映画を撮れなくなっていた鈴木清順に映画製作の場を与えたのだ。しかもエアドームの特設映画館を作り上映を始めるという画期的な方法を生み出す。「ツィゴイネルワイゼン」は映画賞を総ナメにし遂にはベルリン映画祭で銀熊賞を受賞。華々しい復活を遂げた鈴木清順は、その後も荒戸とのコンビで「陽炎座」(’81)「夢二」(’91)と傑作を世に出す。●「どついたるねん」(’89)で阪本順治を監督デビューさせるなどした後、荒戸の次なる金字塔となったのは「赤目四十八瀧心中未遂」(’03)の監督である。四畳半のアパートで日がな一日、贓物さばきをする青年を中心に、刺青師や娼婦たちが妖しく蠢くアンダーグラウンドな世界を鮮烈に描くこの映画は、1年以上のロングランとなり、またもや映画賞を総ナメ。その年の映画界の話題をさらった。●荒戸源次郎のモットーは「楽しく働き必死で遊ぶ」。川島雄三をこよなく愛し、映画への想いを衒うことなく語る荒戸の目は、鬼とは裏腹の、網を持って夢中に蝶を追いかける少年のようでもあった。映画を撮るということとは、という私の問いに対し、荒戸源次郎は言う。「音が聞こえてくる画、画が見えてくる音を探し続けること」と。●「荒戸源次郎映画祭」は2月21日、日曜日より開催。

— 矢田庸一郎


あけましておめでとうございます

2010/01/01 — 第209号

旧年中は、ご愛顧いただき心より御礼申し上げます。

本年も、〈感動はスクリーンから〉をモットーに、皆様が映画を通して感動、興奮するような、心豊かになる番組を提供していきたいと考えております。

どうぞ宜しくお願い申し上げます。

2010年1月1日

新文芸坐
矢田庸一郎 関口芳雄 永田稔
梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔 菊地壮馬 柳原弘
佐野久仁子 高橋悦子 高橋夏枝 釘宮あかね

— スタッフ一同


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