まんすりいコラム:2011年

惜別!! 立川談志逝く

2011/12/16 — 第245号

「喪中につき年末年始の挨拶を失礼します」のハガキが届く時期になり、今年は多いと思っていたら、大トリで談志の訃報が飛び込んできました。談志の死は、落語界、芸能界の至宝を失ったばかりでなく、社会にとってもかけがいのない財産を失いました。■談志は、芸談、社会批判、政治評論、映画評など本気か洒落か、どちらとも判断しかねる了見に、談志ファンやアンチ談志にも注目される存在でした。談志は能弁で、論法鋭く粋に、簡潔明瞭に、時には過激な言葉で本質の核心をつきます。談志が同じ了見であると認めていたのが、ツッコミの鋭い高田文夫、北野武、爆笑問題太田光たちです。■天才落語家、革命児、毒舌家、異端児、風雲児と形容される談志ですが、高田文夫は、「偽悪者で典型的な江戸の人」とコメントしています。全く同感です。私が、心臓を患って入院していた昨年12月のことですが、出版されたばかりの談志著、聞き手吉川潮のコンビによる『人生、成り行き —談志一代記—』(新潮文庫)に、立川談志のサインと「心臓なんて なくてすみゃ ないほうがいい」とコメント入りの本を見舞いに届けてくれました。天下の談志が、自身もがんを患っているのに、私ごときにまで気を遣う細やかな優しい心に感激いたしました。■志ん生、円生、文楽から志ん朝、円楽、柳朝へと繋がってきた戦後からの落語史も、談志の死とともに昭和時代の終焉を迎えたことになりました。まさに「談志の前に談志なし、談志の後に談志なし」です。合掌。■この稿が、今年のトリになりますが、3.11の大震災と談志と俳優・原田芳雄の逝去により、忘れることのできない年になりました。この一年、新文芸坐をご愛顧くださり感謝申し上げます。来年も宜しくお願い申し上げます。良い新年をお迎えください。

— 永田稔


今年の「山路ふみ子映画賞」決まる!

2011/12/01 — 第244号

毎年11月末に発表される「山路ふみ子映画賞」は、前年11月〜当年10月までに公開された映画を対象に、優れた映画や個人の業績に対して表彰しています。「山路ふみ子映画賞」は、数多い日本映画賞のトップを切るものとして注目を集めていると同時に、文化賞、福祉賞、功労賞などユニークな特質を示すものとして、存在価値を高めています。■しかし、山路ふみ子が戦前に100本以上の映画に主演する映画スターで、化粧品、清涼飲料、自動車のCMモデルとして、超売れっ子の女優であったことや、戦後、料亭経営者として成功したことなど、山路ふみ子の人となり、考え方、生き方などは知られていないのが実情です。■今年の「第35回山路ふみ子映画賞」は、★「山路ふみ子映画賞」は新藤兼人監督。99歳にして力強い感動的な反戦映画『一枚のハガキ』における監督、脚本の成果に対して★「女優賞」は永作博美さん。映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』における迫真的な演技に対して★「新人女優賞」は井上真央さん。映画『八日目の蝉』における優れた演技力に対して★『映画功労賞』は浅丘ルリ子さん。日活黄金時代から今日まで第一線で活躍する功績に対して★「文化賞」は砂田麻美さん。ドキュメンタリー監督作品『エンディングノート』で人間味溢れる独自の文化的評価を加えたことに対して★「福祉賞」は塩谷俊さん。監督作品『ふたたびswing me again』でジャズとハンセン病を結びつけた、福祉問題映画への取り組みに対して■来年、山路ふみ子の生誕100年目を迎えるに当たり、生前に著していた自伝『命あるかぎり贈りたい』を文化財団で復刊いたしました。50冊贈呈を受けましたので、興味・関心のある方は、友の会会員の方に限り先着で差し上げます。受付でお尋ねください。

— 永田稔


アクション映画はアクションしているか

2011/11/16 — 第243号

最近、2歳の娘の教育と称して一緒に『雨に唄えば』をよく観る。今のうちからあの問答無用の名作を体に染み込ませておくのだ。物事の判断基準は『雨に唄えば』。それでいいじゃないか、と妻に問うても梨のつぶて、大概は私一人で画面を見ている。◆しかしそんな我が家の女性陣も、ドナルド・オコナーが一人踊り転げる「笑わせろ(Make ‘Em Laugh)」や、ジーン・ケリーとオコナーが息の合った超絶タップダンスで魅せる「モーゼ(Moses)」など激しい踊りには感心している。雨に唄うあのシーンではなく……。まあいい。映画教育の第一段階としては上出来としておこう。アクション(活動)こそが映画の根源なのだから。◆今月23日(水)から始まる<躍動の新作アジア映画特集 サスペンス&アクション篇>で上映する『イップ・マン』のドニー・イェンを見たとき、いかに自分が“アクション”に鈍感になっていたかを思い知らされた。最近は爆発の炎の中で銃を放つことや、車を衝突・大破させることが“アクション映画”であると錯覚していた節がある。日本での知名度の低さがもどかしい香港映画界の至宝ドニー・イェン(『孫文の義士団』にも出演)が、敬愛するブルース・リーの師匠で詠春拳の達人イップ・マンを演じる。武術を基礎から学び修練を積んだ彼の動きは力強くも軽やかで、美しい。◆笑顔で踊るジーン・ケリーやドナルド・オコナーから目が離せないように、“本物”にしか出せない躍動する肉体の説得力には誰もがねじ伏せられることだろう。ぜひ大スクリーンで共有していただきたい。

— 花俟良王


2011 レジャー白書から

2011/11/01 — 第242号

我が国の余暇の現状と今後の方向性を、2010年の需給両サイドの視点からの調査、統計をまとめたものが「2011 レジャー白書」である。発行した日本生産本部は、内閣府行政庁所轄の公益財団法人で、レジャー関係だけでなく全企業を対象に調査、情報収集を行ない、統計にする機関である。■国民の余暇の過ごし方のベスト5は、(1)ドライブ (2)国内観光旅行 (3)外食(日常的なものを除く) (4)映画(TVを除く) (5)ミュージアム(動物園、植物園、水族館、博物館、美術館)で、(1)〜(4)位までは前年と変わらないが、ミュージアムが“はやぶさ”の宇宙からの帰還で、ちょっとした科学ブームが起きて順位を上げたと報告されている。(1)位のドライブは、高速道路料金値下げの影響で前年から連続で首位である。■国内旅行、外食に行くなどは、毎年変わらない人気の余暇の過ごし方である。映画については、興行収入が年々史上最高の記録を更新中であり、“3D映画元年”と言われて技術革新も進んでいるので、エンタテイメント系産業は今後も堅調に推移するとみられている。■社会環境によって、余裕、ゆとり感が変わってくるので、余暇の過ごし方も変わってくる。今年は東日本大震災により、レジャー産業に巨大な衝撃を与えたり、消費者心理にも消費自粛が起こったり、節電で余暇の過ごし方に変化があると思われる。■また、携帯電話の技術革新が急速で、キーボードでなく液晶のタッチパネルを指先で触れて、パソコン並の機能を持つスマートフォン(多機能携帯電話)が主流になった。最近発売されたiPadが普及することにより、通話だけでなく、ゲーム、動画、書籍、新聞、音楽など様々な情報が楽しめるので、今年はレジャー産業も大きく変革する元年となるような予感がする。映画はどのように変化するのだろう。

— 永田稔


新文芸坐落語会 二周年!!

2011/10/16 — 第241号

■おかげさまで新文芸坐落語会も二周年を迎えました。「新文芸坐落語会二周年記念 看板と若手たち」と題しまして、第一弾・立川志の輔さん、第二弾・柳家小満さん、そして11月の第三弾は立川談春さんにご出演いただきます。更に12月には毎年恒例となりました「高田文夫プロデュース 年忘れ!落語会うわさの真相2011」今年はどんなうわさが飛び出すのか、今から楽しみです。(チケット絶賛発売中!)■旧文芸坐ル・ピリエ時代は、ル・ピリエで行なわれる落語会(応用落語、快楽亭ブラック独演会など)をスタッフとして、照明や音響をやりながら聞くことができました。それまで落語をほとんど聞いたことがなかったのですが、一度聞き始めると面白くて文芸坐以外の落語会にも足を運ぶようになりました。でもその後ぱったりと落語を聞く機会がなくなっていたのですが、新文芸坐落語会が始まって以来、またまた落語熱が再燃!という感じです。■9月の池袋演芸場の中席・夜の部では最近お気に入りの柳亭市馬さんが主任を務めていたので、思わず3日も通ってしまいました。なんとそのうち1日は昼の部から夜の部までぶっ通しで。昼の部の主任は三遊亭白鳥さんの三題噺、その日のお題は「チャン・グンソク」と「傷心」ともうひとつ(スミマセン忘れてしまいました)、でも見事に白鳥ワールドが炸裂していました。■そして柳亭市馬ファンになったきっかけはとういうと「市馬・菊之丞二人会」で聞いた市馬さんの「淀五郎」です。声といい、しぐさといい、すっかりその世界に引き込まれてしまいました。この落語熱はまだまだしばらく続きそうです。

— 佐野久仁子


戦後技術的初物映画たち

2011/10/01 — 第240号

日本初のカラー劇映画と言えば『カルメン故郷に帰る』(1951松竹)が有名でお馴染みですが、他にも初物をいくつか。日本初のカラータイトル映画『11人の女学生』(46東宝映画)、第1回フジカラーフィルム使用短編映画『胃癌の手術』(47武田薬品、名古屋医大)、日本初のパートカラー劇映画『新妻会議』(49東横映画)、日本初のカラーニュース『天然色フィルムへの期待』(50日本映画社)、立体映画トービジョン作品『飛び出した日曜日』(53東宝)、第1回さくら天然色フィルム/コニカラーシステム使用劇映画『日輪』(53東映初のカラー映画)、日本初のイーストマンカラー劇映画・大映初のカラー映画『地獄門』(53)そのほか「カラー」「ワイド」「立体」「音響」「香り」「体感」等の各技術の違いで列記すると初物は沢山あります。●大抵の場合技術とは発表された時点で完成されたものは少なく、安定し普及するまで試行錯誤の過程があります。また普及せずに廃れていったもののほうが多いのも世の常です。上記以外、東宝(53)新東宝(54)日活(55)とカラー作品は50年代半ばまでに各社出揃いますが、コストアップ等ですぐには普及には至りませんし、作品内容などでも積極的に白黒を選択する場合があり、大手でも60年代半ば過ぎまでカラーと白黒は共存していきます。また早くも53年に東宝が戦前から開発していた自前の技術の3D映画(10分足らずの短編)を始めますが、その後現れては消える立体映画ブームの先陣を切っただけで、技術的な改革の主流はワイド画面(スコープサイズ)へと移ります。●「3D映画の普及」というのが最近のトピックですが、「如何にもこなれていない感じ」が初々しいといったところでしょうか。

— 梅原浩二


キネ旬のレビューコーナーが濃い!

2011/09/16 — 第239号

「キネマ旬報」9月上旬号の記事で、スピルバーグが監督ではなくプロデュースに回った時に、監督を担当する後輩に観ておくべき映画を教えるとあり、今まで薦めた約200本の作品が「スピルバーグのリスト」(←うまい)として羅列されていました。これがびっくりするくらい意外性のない王道であり、スピルバーグらしくて微笑ましかったです。◆ところでキネ旬が数ヶ月前にリニューアルしたことをご存知ですか? 全体のレイアウトがすっきりして、若々しい印象になりました。特筆すべきは今回のリニューアルの目玉と思われるレビュー(星取り)コーナー。レビュー自体は珍しくないですが今回キネ旬がとった方法は、毎号(月2回発行)24本の新作を各作品3人の評論家によって計72本(!)のレビューを掲載させるというもの。◆単純に考えて月に48作品・144本のレビュー。超話題作から低予算のドキュメンタリーまで幅広い作品が挙がっていますが、これはかなりの労力を要すると思われます。皆さんに紹介するのが遅れたのは、多分取り上げる本数が次第に減っていくだろうと思っていたからです(失礼)。◆毎月こんなに多くの映画が公開されているという驚きもさることながら、個人的には、記名の責任のもと「星取り」というシンプルな評価システムで多くの作品が論じられることが嬉しいのです。星取りという評価形態に賛同しない評論家も多いでしょうが、限られた予算で限られた作品しか観られない私たち観客にとっては非常にありがたい指針(のひとつ)です。劇場鑑賞派の減少を食い止めるというよりも、混沌とする映画界を再び盛り上げていきたいという意思表明にも感じられ、感銘を受けました。◆なお、独自の批評精神と映画愛に溢れる「映画芸術」「映画秘宝」も受付で大絶賛販売中なのは言うまでもありません。

— 花俟良王


正義 < 母の愛

2011/09/01 — 第238号

作家・海音寺潮五郎は、“人は自分に無いものを理解することはできない”という様な意味のことを書いています。なるほどと思いました。他人を信じることができない人は、人が人を信じる物語を読んだとしても理解はできないでしょう。損得勘定だけで物事を判断する人に、善意で行動すべきだと説いても徒労に終わるだけでしょう。また、人は正義だけを行なうべきだと考える人には、それが不正であれば他者にわずかな情けをもかけないかも知れません。■では自分はどうかというと、父親というものを知らずに育ったのでいわゆる“父もの”がまったくダメなのです。例えばエリア・カザンの「エデンの東」。初めて観たときは、あまりに何も感じないので自分の感受性に問題でもあるのかと思いました。いかに名作でも、どんなに多くの人に好かれている作品だとしても、私には父の愛に飢えたジェームズ・ディーンの気持ちを理解する素地がまったくないのでした。■逆に“母もの”には昔から滅法弱い。加えて、自分が父親になった今は子に対する親の思いの理解も若い頃とは違っています。そんな私のストライクゾーンど真ん中にきた映画が、9/4(日)〜8(木)に当館で上映する『八日目の蝉』です。そう長くは続かないであろうわが子との時間。その短い間だけでも、この世のすべての不幸からわが子を少しでも遠ざけていたい。どんな些細な心配も、わが子にはかけさせたくない。そういう思いが、切実に、本当に切実に伝わってくるのです。ただし、この物語の主人公の行動は正義かと問われれば、否です。正義より母の愛。これでよろしい! 前述の海音寺潮五郎の解釈でいえば、私が持っている正義の量は少ないようです。

— 関口芳雄


デジタルシネマと名画座の将来と「八日目の蝉」と「海炭市叙景」の二本立て

2011/08/16 — 第237号

デジタルシネマという大波が、いよいよ当館を含む中小の映画館やインディペンデント系の映画配給会社に迫って来ているようです。とは言っても分からないことだらけなので、先日、詳しい人に話を聞いてきました。▲デジタルシネマとは、デジタル撮影されたものをフィルムにすることなく、デジタル素材のまま映写することのようです。勿論35ミリ映写機は使えません。DCPというデジタル素材を、2Kと言われるブルーレイ水準よりさらに性能のいいプロジェクターで上映します。デジタルシネマ自体は2005年頃にハリウッドで統一規格が出来上がり、日本では3D映画「アバター」公開にあわせて多くの映画館に導入されましたが、しばらくは3Dを上映するシネコンなどに止まっていました。その最も大きな理由は、うん千万円するというコストの問題です。▲ところが、いよいよ大手配給会社が35ミリプリントを作るのを止めてDCPに一本化するという話が伝えられています。そうすると当館のようなロードショー館じゃない映画館も対応を考えなくてはならないのか、とか、また日本中がデジタルシネマが主流になったとき、3Dじゃないのに「八日目の蝉」「海炭市叙景」といった映画もDCPにしなければならないのか、といった懸念が各地で起こってきているようです。▲当館では「八日目の蝉」と「海炭市叙景」の二本立てを9月4日から上映します。勿論35ミリプリントです。両作品とも内容のある大変素晴らしい作品で、特にスクリーンに人間の体温が宿るような、映画ならではのみずみずしく繊細な演出と映像に、深く心を打たれます。全ての映画が「アバター」と同じような作品となる事態は貧しいと思います。▲映画ファンはデジタルとプリントのどちらを望んでいるのでしょうか。最も根本的と思えるこの検証が、あまり行われていないような気がします。

— 矢田庸一郎


惜別

2011/08/01 — 第236号

故・原田芳雄さんのお通夜に行きお別れをしてきました。焼香者が大勢のために1時間30分も掛かって到達した式場を見た時、映画館に入るような錯覚になりました。真っ白い生花でスクリーンに模った祭壇の中央に、原田さんの遺影が花に埋まっていました。主役の悲しい最後のシーンです。■文芸坐時代の1978(昭和53)年に創業30周年記念企画として、男優の人気投票を行った時、原田さんが第一位に選ばれました。原田さんは、文芸坐ファンに選ばれたことを大変喜んでくださり、オールナイトコンサートなどのイベントに出演してくれました。■浅草の近くの下町育ちというご縁と、歳も近いことから、昨年亡くなった歌手の浅川マキを含めて、親しくさせてもらいました。原田さんの遺作となった『大鹿村騒動記』を涙しながら観ましたが、俳優座養成所15期生の卒業公演を観ているので、原田さんの俳優人生の最初と最後を観たことになりました。■『ぴあ』の最終号を見ています。72(昭和47)年に『ぴあ』が創刊された時、無料の情報で商売することに批判の声もありました。当時の映画興行界は、観客減少で経営面で厳しい時代が続いていましたが、今の時代と大きく違って、学生を中心とした若者たちが、映画を観てくれていました。■当時、東京と地方の文化の格差は大きく、上京して来た学生にとっては『ぴあ』は必需品でした。名画座としても『ぴあ』は、宣伝媒体として貴重な存在でしたので、創刊号から文芸坐の受付で発売いたしました。その後『ぴあ』は、情報のシステム開発ビジネスに成功して大会社になりました。『ぴあ』の最初と最後を知ることになりました。■俳優の原点から知っている原田さんを葬送することになったり、創刊から知っている『ぴあ』が休刊になるなど、親しい人、馴染みの物が身辺から消えてしまう惜別は、虚しく寂しく辛いことです。

— 永田稔


日常生活の中に映画を観る習慣を

2011/07/16 — 第235号

新文芸坐は、お陰さまでオープンから10年を超え、今、11年目を疾走中という状況です。先日10周年記念に、来場したゲストの写真、サイン色紙などが掲示、展示しましたが、大勢の方々にご協力いただいたことに心から感謝いたします。■映画は多くの観客に観られることによって、映画としての価値がある訳です。映画館は、映画と観客を結びつける接点の場所です。映画館に足を運んでいただくためのキッカケになればと思って、ゲストをお呼びするサービスを行なっています。スクリーンから“観て”映画を楽しむばかりでなく、ゲストからの話を“聞いて”映画を楽しみ、本から“読んで”映画を楽しんでもらえるように、書籍販売コーナーも設けてあります。■映画館の所轄の中央官庁は厚労省になり、地元の保健所から許可を受けて営業しています。映画館には、大勢の観客が来場して映画を観るので、公衆衛生面から厚労省が司るのでしょう。因みに、公衆浴場、理髪店、美容院、旅館などと同じ業種になります。日常生活をするのに必要なお店については、衛生上安心して利用できるように、厚労省が監督、指導している業界です。■皆さんは、週何回お風呂に入浴するのでしょうか。床屋に散髪に行く間隔、美容院に行く間隔はどれ程なのでしょうか。映画館の入場者は、昨年の統計によると、全国で1億7436万人で、人口は1億2751万人ですので、年間一人平均1.4回映画を観たという結果です。■数多く映画をご覧になる新文芸坐ファンにとっては、信じられない現状でしょう。年間に映画館に足を運ぶ回数を、入浴回数とまでは望みませんが、床屋に散髪や美容院に行く間隔並みに習慣になると嬉しいのですが……。多くの国民の日常生活の中で、映画を観るという習慣が定着して欲しいと願っています。

— 永田稔


恒例“7のチカラ”イベント

2011/07/01 — 第234号

新文芸坐は(株)マルハンの一店舗です。マルハンはパチンコチェーンであることは、皆様もご存知のことと思います。同じ会社でありながら、新文芸坐のスタッフにパチンコ愛好者がいないので正確なことは誰も知らないのですが、パチンコにおいて“7”という数字は意味のある数字らしいのです。それで、私どもマルハンは毎年7月になると全店舗(マルハンはパチンコ以外にも、ゲームセンターやカラオケ、ボウリング場などを経営しています)で特別なイベントを実施しているのです。■今年の“7のチカラ”では新文芸坐の10年を振り返るという意味で、ささやかですが2つのことを計画しています。ひとつは、「写真とサイン色紙の展示」です。これは新文芸坐の10年間にトークショーのゲストとして来館された著名人の写真やサイン色紙の一部を展示しようというものです。監督や俳優の他にちょっと意外なゲストもいたりと、愉しんでいただけるかと思います。■もうひとつは、「しねまんすりいバックナンバー販売」です。バックナンバーといいましてもコピーを製本したものなのですが、これを数十冊ご用意しました。オープン当時からの要望で「新文芸坐の上映作品リストが欲しい」というお客様の声に応えるべく、このようなものを作ってみました。今から見返してみると、誤植や初歩的な表記ミスが散見され、とても恥ずかしいものなのですが、新文芸坐が10年の間にどのような映画を上映してきたのかはこれ1冊でわかります。製作の実費≒1200円で販売いたします。ただし! 部数に限りがありますので、当面は新文芸坐友の会会員の方のみとさせていただきます。7月1日発売に間に合うか!? 鋭意作製中。

— 関口芳雄


台風2号のそのわけは

2011/06/16 — 第233号

■私はなんと雨女ならぬ台風女です。思えば子供の頃から家族旅行、修学旅行などいつも台風。でも自分が台風女であることに気づいたのは二十歳を過ぎてから。大学3年生までの夏合宿も毎年台風でしたが、その時はまだ友達と「きっとこの中に台風を呼ぶ人がいるんだね」なんて話していました。けれどその年、私が高校の友達と行った金沢旅行で台風に見舞われ、とうとう自分が「嵐を呼ぶ女」であることに気づいたのでした。■その後も、自分がスタッフをしていた映画『犬猫』の初日には12月にも関わらずやはり台風、そして何年か前に鹿児島に行った時には、4月だったのでさすがに台風はこなかったのですが、なんと桜島が十数年ぶりに噴火!!(楽しみにしたり、気合が入るとそうなってしまうようです)■そしてついこの間の台風2号も実は…。今年の3月30日に15年間飼っていた黒猫のプーが死にました(映画『犬猫』にも登場しています)。そのプーの四十九日の法要(と言っても庭に遺骨を埋めてみんなで飲んだり食べたりするだけ)をちょうどその時に計画していました。プーの物を片付けたり、庭のどこに埋めようかなどひと月も前から考えていたので相当に気合が入っていたのでしょう、5月に日本に台風が接近するのは10年に一度とか。結局延期となりましたが、次回こそは台風が来ないように気をつけたいと思います(笑)。そしてプーちゃんを埋葬した後にはひまわりの種を蒔く予定です。

— 佐野久仁子


落語会、やってます

2011/06/01 — 第232号

皆様ご存知の通り、新文芸坐では月イチで落語会を開催しております。早いもので、次回で22回目を迎えるこの“新文芸坐落語会”は、「映画館という身近な場所で、熟練の話芸を“生”で楽しんでいただきたい」という趣旨で始まりました。■落語会が始まった2009年の9月の当コラムでの「“看板”と言われる人気、実力のある落語家の出演による落語会を開催していきたい」の宣言通り、初回の柳家小三治をはじめ、立川談春、柳亭市馬、三遊亭円楽、柳家三三、等々…大御所から旬の若手まで、強力なラインナップで回を重ねてまいりました。お陰様で、落語に興味はあったが生で見たことがなかったビギナーの方だけでなく、落語通の方にも楽しんでいただいております。■次回の6/22は春風亭昇太と林家たい平の二人会、7/20は柳家喬太郎ら、さん喬一門兄弟会と、当代随一の噺家たちが出演! 是非お越しを! …と言いたい所ですが、人気のこの2公演はこのコラムが載る頃にはチケットの残りがあるかどうか…。しかし、8月は人間国宝・一龍斎貞水による夏の風物詩“怪談噺”、さらに9月は過去にも出演していただいたあの大物噺家がガッテンと再登場!? と、まだまだ魅惑のラインナップが続きます。チケットの購入はお早めに!

— 後藤佑輔


オールナイト番組のようですが昼番組です

2011/05/16 — 第231号

お客様が1本だけ映画を観てお帰りになった。2本立てで上映しているとはいえ、これ自体は特に珍しいことではない。ただそのお客様の言葉が印象的だった。「白黒はつまらないから……」という言葉が。主観の話なので私が云々言うことではないが、名画座で働く者としては取り付く島がなく、辛い言葉だった。■だいぶ前にここで「好きな映画ジャンルはホラーです」と書いて軽くひんしゅくをかったのだが、今もその傾向は変わらない。往年の名匠たちがお決まりのプログラムピクチャーで腕を競ったように、現代のジャンル映画の作り手たちも、決められた枠の中でいかに個性を発揮するか頭を悩ませている。■6/9(木)から、今まで高峰秀子、成瀬巳喜男、原節子と続いた文芸・名画路線を強引に断ち切り<荒唐無稽映画祭>と題した小特集を行う。70年代B級アクションの魂を受け継いでR.ロドリゲスらが映画少年に戻って作った『マチェーテ』、ヒーローものの応用編として笑いと共に世界中の血をたぎらせた『キック・アス』、吸血鬼映画と切ない初恋を絡めた美しき『ぼくのエリ 200歳の少女』、そして究極の定型"ゾンビ映画"を溢れる映画愛で痛快活劇とした『ゾンビランド』(←キネ旬レヴュー全員満点!)という変化球だらけの4作品。■ジャンルに左右されず、"映画"としてご覧いただければきっと満足していただけるはず。そしてこのような映画を愛することも、紛れもない新文芸坐の一面です。冒頭のお客様、こんなのはいかがでしょう?

— 花俟良王


危機管理に落語をお奨めします?

2011/05/01 — 第230号

東日本大震災で被災した皆様に心よりお見舞申し上げます。

今まで経験したことのない大きな揺れに吃驚しました。当日の新文芸坐は、休憩時間中でしたので、お客様はパニックにならず、スタッフの公園に避難する誘導に従い、冷静に行動していただきましたので全員無事でした。その後の発生した津波の威力をTVで見た時に、天災の恐ろしさを改めて知らされました。◆東京電力の福島第一原子力発電所で発生した放射能漏洩事故は、世界中を震撼させたチェルノブイリ事故と同じの「レベル7」という最悪の状況になりました。危機管理の拙さが引き起こした人災です。政府、東電の担当者が言う「想定外のことで」という言葉は、想定外の出来事に対するシミュレーションを描いていなかったと、言い訳をしているのです。想定外のことを考えるのが、危機管理だと思うのですが……。◆新文芸坐では、月1回の落語会を行なっています。切っ掛けは、ドキュメンタリー映画「小三治」を上映するので、小三治師匠に舞台挨拶を打診したら、「落語だったら出演するよ」との返事でしたので、"瓢箪から駒"で小三治師匠を第一回目として、落語会を始めました。落語は、落語家が話す情景を、聞いている観客がイメージすることで、初めて成り立つ芸能ですので、危機管理のシミュレーションを養うことに役に立つこと請負です。◆これからのラインアップは、5/11柳家さん喬、瀧川鯉昇、6/22春風亭昇太、7/20柳家喬太郎、8/23人間国宝・一龍斎貞水、五街道雲助、9/29立川志の輔と、人気・実力を兼ね備えた落語家たちが続々と登場します。是非、ご覧下さい。

— 永田稔


デジタルリマスター

2011/04/16 — 第229号

デジタルリマスター版を謳った映画の上映(またはソフトの販売)が色々と出ています。この言葉、何かとても有難味があるような使われ方がなされていますが、単に新しくHDでテレシネし、多少の調整をしただけのDVDやブルーレイのソフトでも「デジタルリマスター」だと言えますし、「羅生門 デジタル完全版」のように35ミリのフィルムに戻せる解像度で取り込み、1コマずつキズを消し、揺れを直し、コントラストや階調を修正し、さらに音声もノイズの軽減や周波数の調整をする等々・・・実に手間のかかる作業を施したものも同様に「デジタルリマスター」と言います。●確かに後者だと有難味があるのですが、「羅生門」の場合12万6000以上のコマ数を2種類のプリントからそれぞれ良い方を選び上記のような作業を行ない、制作費はなんと6000万円にも達しているそうです。リマスターといっても作業がそれぞれ違い、簡易なものもあれば上記の35ミリのフィルムに戻す前提での作業のように非常にコストがかかるものもあるのです。つまり「デジタルリマスター」を謳ったソフトが存在してもそれが即35ミリの上映用プリントがあるということにはならないのです。●ですので現在邦画では後者の意味でのリマスター版は数本しか有りませんし、基本的にこの作業はパソコンの画面をにらめっこしながら1コマずつ何をどのように修正し又は修正しないか等、その作品や場面を考慮しながらの手作業になるので今後も劇的にコストが下がることは期待できません。しかしながら将来的にはフィルムの保存にも物理的な限界があるので、多くの作品を高解像度でデータ化することを期待したいところです。勿論オリジナルのネガの保存が最重要ですが。

— 梅原浩二


4月は新鮮な映画たち

2011/04/01 — 第228号

最近、新しい映画が少ないとご不満のアナタ、4月はフレッシュな映画がオンパレード。●4月3日からは、スタイリッシュな映像と骨太の演出で知られる巨匠トニー・スコット監督の最新作「アンストッパブル」。貨物列車の運転手の気の緩みで、無人の列車が暴走を始めるというサスペンス・アクション。暴走列車を止めようとする2人の運転手に名優デンゼル・ワシントン&新鋭クリス・パイン。最初は気が合わない2人だったが、やがて心の交流が芽生え始めるというスリルと感動の物語だ。●併映作はブルース・ウィリス、モーガン・フリーマンらが扮する元特殊工作員のお爺さん、お婆さんが大活躍する「RED/レッド」。現役を引退して心静かに余生を送る彼らに突然魔の手が。陰謀の影に古巣CIA。一致団結した彼らは、CIAの小僧っ子たち相手に大暴れ。ユニークなキャラが全開のストーリーに肩肘の力を抜いて楽しめること請け合い。●その後は毎年春恒例、前年の日本映画界の動きを振り返る「気になる日本映画2010」。おススメはオフビートなユーモアが絶品の「川の底からこんにちは」。2010年主演女優賞はこの映画の満島ひかりで決まり。2010年は行定勲監督が絶好調な年でもありました。「悪人」などで今、最も注目の作家・吉田修一原作の群像劇を見事な手さばきで映画化した「パレード」に、主演男優賞総ナメのトヨエツと薬師丸ひろ子の掛け合いが楽しい涙と笑いの感動ドラマ「今度は愛妻家」。男泣き映画ベストワンは「ボーイズ・オン・ザ・ラン」。泣けて泣けて堪らない二本立ては「半分の月がのぼる空」「おにいちゃんのハナビ」と注目作が目白押しだ!●豊島区は「男女共同参画都市」を宣言して今年で10年。これにちなみ「玄牝」「レオニー」など女性をテーマにした作品もラインナップ。
※4/10、朝から先着200名様に"涼宮"下敷きorメモパッドのプレゼントあり。

— 矢田庸一郎


震災について

2011/03/16 — 第-号

このたびの東北地方太平洋沖地震にて被災された皆様に、心よりのお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。

また上映スケジュールが大幅に変更され、お客様方には大変ご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます。

— スタッフ一同


2010(平成22)年全国映画概要

2011/03/16 — 第227号

昨年の全国映画概況を日本映画製作者連盟が発表しました。入場者は前年より3%UPの1億7436万人でしたが、最盛期の58(昭和33)年の動員数11億人と比べると16%にしか過ぎません。しかし、売上は2207億円で、前年比7%UPの史上最高を記録しました。公開された作品数は、昨年より46本減の716本で、邦画408本、洋画308本で構成比は邦画57対洋画43の邦高洋低でした。■昨年の興行収入(興収)が10億円以上売り上げた作品は48本ですが、邦画が29本、洋画19本の内訳で、こちらも邦高洋低でした。邦画の興収上位の80%以上は、アニメ、TV人気番組、コミックの劇場版で、所謂、劇映画は『告白』『悪人』『大奥』『おとうと』『十三人の刺客』くらいでした。興収上位の全ての作品は、TV局、出版社、新聞社などのマスメデアによる大量宣伝効果による動員でした。■スクリーン数は、昨年より53スクリーン増えて3412になり、その内シネコンが81%を占めていました。都内の繁華街にあった大きな映画館は、新宿ミラノ座を残すだけになってしまい、場末にあった名画座と呼ばれる映画館もなくなり、個性的な特徴のある映画館は消えてしまいました。そして、宣伝費の少ない単館のロードショー劇場が、廃業するようになったのも昨年の特筆すべき出来事でした。行きなれた思い出の映画館で、多くの観客と一斉に笑い、涙する。その一体感こそが映画館で映画を観る妙味でした。これからの映画ファンは、親しんだ記憶に残る映画館を持つことができるのだろうか。

— 永田稔


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