まんすりいコラム:2014年

年末です! シネマ・カーテンコールです!

2014/11/25 — 第309号

■あっという間に今年も残りわずか。皆様、やり残したことはございませんか……? 見過ごした映画はございませんか……?? ということで今年もやります!〈シネマ・カーテンコール〉です! 観たかったのに結局観ることができなかった、そんな映画を網羅するかのような絶妙なラインナップです!■『渇き。』は今夏話題沸騰となった賛否両論の問題作です。併映の『私の男』と、どちらも娘と男性保護者の関係を描いていますが、前者はアニメーションを入れたりPOPな映像や音楽でテンポ良く描いた作品であり、後者は薄暗くどんよりとした映像で文学的で濃密な空気感をたっぷり含んだ作品です。見応えのある“重たい”二本立てです。■思わぬ良作だったのは次の二本立て。『ケープタウン』は美しいオーランド・ブルームのワイルドな姿を堪能する刑事モノかと思いきや、重厚な社会派ドラマです。原題は『ZULU』という南アの先住民族の名前が使われており、アフリカに根ざす深い闇を描いています。併映の『フライト・ゲーム』は上空12000mの飛行機内で繰り広げられる密室サスペンス。冒頭の何気ないシーンからぐっと引き込まれますが、巨体を持て余すかのようなリーアム・ニーソンの冴えない憂鬱に揺らいだ表情が観る者の不安をさらに煽ります。真犯人は誰だ!?■以上の4本以外にも『ブルージャスミン』『her/世界でひとつの彼女』『サード・パーソン』『フランシス・ハ』『インサイド・ルーゥイン・デイヴィス』などなど上映します! 12/18(日)より順次上映。お楽しみに!

— 釘宮あかね


〈俺、マシュー・マコノヒー PART2〉に隠されたドラマ

2014/10/23 — 第308号

11/29(土)オールナイトにて〈俺、マシュー・マコノヒー PART2/オスカーを抱いた男〉を開催します。これは今年のアカデミー賞時期の3月に開催した企画の続編です。先回はラブコメを中心に肉体美を見せたがる「シャツレス俳優」と揶揄された後、沈黙し自己と向き合う「マコネサンス」期を経て遂にアカデミー賞に輝くという感動のマコノヒードラマが背景にありました。■今回の目玉はやはり日本未公開のウィリアム・フリードキン監督の大怪作『キラー・スナイパー』(2011)の国内初上映(DVD上映ですが…)となりますが、さらに隠されたドラマもあるのです。■今回上映する『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』(2005)時のマコノヒーはまだ「シャツレス俳優」期。ラブコメ以外にも活路を見出そうと自ら製作も兼ね、既に時代遅れだった「痛快冒険活劇」というジャンルの復活に挑むも評価はされませんでした。その代わりに同じ年、世界を席巻していったのがダークなイメージ溢れるクリストファー・ノーラン監督の『バットマン ビギンズ』。次第に沈黙していくマコノヒーを尻目にノーランは成功への階段を上がっていったのです。■……あれから10年。トップ監督に登りつめたノーランの最新超大作『インターステラー』が11/22に公開されます。主演はなんとマコノヒー。遂に彼はアカデミー賞に輝くだけでなく、努力の末にかつて雲泥の差をつけられたノーラン作品の看板となったのです。■アカデミー賞受賞時のスピーチで「ヒーローは10年後の自分」と言っていた彼の笑顔には一点の曇りもなかったことを思い出しました。

— 花俟良王


映画館は生き残れるか

2014/09/24 — 第307号

先日、ネットニュースを見ていると「映画館は生き残る」という気になるタイトルの記事を見つけました。これはウォール・ストリート・ジャーナルの125年特集記事の一つとしてクリストファー・ノーラン監督によって書かれたもので、“映画の現状と未来”について簡潔に考察されています。■この中で特に気になったのは、「未来の映画館は、かつてないほど大きく美しいものになるだろう。」「(皮肉にもフィルム映画のように)自宅では利用したり再生したりできない高額なフォーマットを導入するだろう。」という部分です。映画が映画館だけのものでなくなって以来、映画館の役割は年々小さくなっているように思います。ですが、ノーランは「“時や現実の世界を超えて物語の体験を共有できる”という、映画の力強い基礎がやがて浮かび上がる。」と延べており、そのためには映画館はより大きく、より美しくなければならないとしています。■実際、ノーランの『ダークナイト』や『ダークナイト ライジング』の一部のシーンは、現行のデジタル上映の規格である“2K”や、2020年の東京オリンピックまでには一般にも普及すると言われる“4K”(約800万画素:見た目上35mmフィルムに匹敵する解像度)を大きく引き離す、8〜15Kの解像度を持つと言われる65mm/70mmの“IMAXフィルム”で撮影され、あの革新的な映像を生み出し、映画館に観客を呼び戻しています。■しかし、IMAXはフィルムを使ったハイコストな規格です。デジタルの世界でもIMAXに匹敵するようなクオリティで、よりローコストな規格が生まれれば、やがて普及するでしょう。そして、それを駆使する新たな映画作家達がノーラン同様、革新的な作品を生み出すことで“映画館は生き残って”いけるはずです。

— 後藤佑輔


IMAX、TCX、4DX、などなど

2014/08/19 — 第306号

かつてシネラマや70mm等、通常の上映とは違うフォーマットの上映方式がありましたが、このような特殊な設備を必要とする上映方式はここ2〜30年位、あまり無かったように思います(細かい所で独自規格はありましたが)。●音に関しては80年代からアナログのドルビーサラウンドの普及、その後デジタル化で機材の変遷がありましたが、画に関しては35mmフィルム自体の画質向上くらいで本質的には変化がなく(それくらい35の画は優秀だということでもありますが)、どの劇場も基本的にはほぼ同様の設備で発展してきました。しかしその後フィルムからデジタルへ移行。それがほぼ普及しきった現在、既存の劇場の設備とは一線を画す上映設備を持った劇場が出てきています。●代表的なのはフィルム時代からあるIMAX。大画面と大音量が特徴で、3Dでは2台使う専用の映写機に、作品自体も個々にIMAX用にマスタリングしなおされています。東宝のTCXは既成のシステムを使うものですが、同様に大画面、大音量指向。こちらは既成のシステムを使うので上映作品が限られることはありません。4DXは映像に合わせて座席を稼働させ、風、水、フラッシュ、香りも使い場内全体で演出。完全にテーマパークのアトラクション状態ですが、これを通常の一般公開される映画でやります。いずれも各種料金上乗せで高めですが(特に4DX)、自宅ではとても再現出来ない上映環境ですね。シネコンの普及により劇場が画一化したことに対する次なる一手というところですが、面白いですね。

— 梅原浩二


8月は、映画を通して戦争や軍隊を考える特集を

2014/07/24 — 第305号

旧文芸坐では1978年から毎年「社会を告発する」という特集を行ってきました。2000年にオープンした新文芸坐もこの精神を受け継ぎ、毎年8月15日の“終戦の日”前後に、反戦映画や冤罪映画などの社会派映画を上映しています。今年は二部構成でお送りします。●1945年8月6日午前8時15分、広島に原爆が投下されました。この8月6日に、2012年から「新藤兼人平和映画祭」という催しが東京・日比谷にて開催されてきました。実行委員長は1988年生まれの若い女性、御手洗志帆さん。新藤兼人監督と同じ広島出身で、新藤監督を敬愛する彼女は、仕事の傍らほとんど独力でこの映画祭を運営してきました。●彼女の意気に賛同して、この映画祭を、今年は当館で行うことにしました。彼女の熱い思いは様々な方面に波及し、ジャーナリストの鳥越俊太郎さん、歌手の加藤登紀子さん、映画監督で作家の森達也さん、共同通信編集委員・立花珠樹さんらが、シンポジウムに参加してくれることになりました。●第2部の恒例の「8.15終戦の日によせて 反戦・社会派映画特集」は8月10日から。●昨今、集団的自衛権の問題など、安全保障や、この国のあり方について様々な議論が巻き起こっています。しかしまず大事なことは、わたしたちが歩んできた歴史を決して風化させてはならないことです。偉大なる映画文化を築き上げた日本の映画人たちは、多くの戦争や軍隊についての作品も遺しました。彼らは決して空想や観念だけで映画を作ったのではありません。多くの映画人が実際に戦争を体験し、それをもとに脚本を書き衣装を考えセットを作り、映画を撮ったのです。●映画を通して日本の歴史を振り返り、戦争の悲惨や軍隊の真実を考えたい、という思いを込めて、今年はラインナップしました。

— 矢田庸一郎


トーを観たあと行きたい場所は・・・・・・

2014/06/26 — 第304号

遅番勤務の残り一時間くらいになると、頭の隅で「いま食べたら幸せになれる物リスト」を作り始めるんです。休憩の終わる六時頃からタイムカードを押す十一時頃までずっと仕事ですから、やっぱりね、お腹空いちゃうんですよ。そうですねぇ、食べるのも好きだし、あと食欲をそそる文章を読むのも好きです。森茉莉とか芦原すなおとか。国語の教科書で覚えているのも「ねずみのアナトール」や「温かいスープ」だし。でも、映画の食事シーンって、あんまり食欲をかき立てられないんですよ、私は。記憶には残るけど「ご飯食べたーい!」みたいな原始的な欲求はあまり湧かないんです。何でだろう……想像の余地なく料理が映し出されてしまうからかな。あ、けどジョニー・トーは例外です。先日うちで上映した怪作『名探偵ゴッド・アイ』、ご覧になりました? すごいですよね、アンディ・ラウ。食って飲んで吐く! の繰り返し。私は途中からもう、麺類が食べたくて食べたくて。しかも沖縄そば。なんで沖縄なのかはわかんないんですけど。トー作品って食事シーンが多いんです。で、ただ食べるだけじゃなくて、ちゃんと人間関係や物語と絡みあっている。料理映画ならともかく、トーといったらノワール。ノワールと食事って、なかなかない組み合わせですよね。そうそう、七月末からトー監督の『ドラッグ・ウォー 毒戦』を上映するんですよ。「表現規制の厳しい中国本土で撮影したアクション大作」らしいです。「トー初の中国本土撮影」ってことで、料理も中華メインでしょうか。辛いのはちょっと苦手なので、四川より北京や上海のほうがいいけど、トーならもう、何でもいいです。上映後に寄るお店、考えておかないと。

— 小澤麻梨子


カメラが動けば

2014/05/23 — 第303号

当館でも上映した『ゼロ・グラビティ』のあれ、皆様ご覧になりましたか? そう、冒頭の13分に及ぶワンカット。A・キュアロン監督は過去の作品でも驚異のワンカット超長回しシーンがあり、こういうの好きみたいです。いや、長回しといっても、アンゲロプロスや相米慎二とは違いますよ。カメラが動くんです。宇宙空間からヒロインのヘルメットの中を経て主観視点、さらに宇宙空間に戻るまでカメラはワンカットで移動します。凄い。■しかし、一見不可能と思えるカメラの動きもCGを使えば何でも可能になります。そういう意味ではCGを使っていない時代のヒッチコックやキューブリック、デ・パルマの作品の方が、難易度が高いといえるかもしれません。■日本にもいました。イラストレーターとして知られる和田誠監督です。『麻雀放浪記』では、麻雀卓を囲む4人の周りをカメラがぐるんぐるん回ります。デ・パルマ張りの360度回転移動撮影。照明・録音のスタッフはどこにいるんでしょう? 『怖がる人々』でもカメラは同じ動きをして見せますが、難易度はさらにアップ。狭いエレベータの中央に立つ男女の周囲をカメラがぎゅるんぎゅるん回るのです。そもそもカメラはエレベータに入れるのか!? 『真夜中まで』では冒頭の長回しワンカットが不思議です。ビルの屋上から始まり、カメラは一度空中に浮かんでからビルの壁面に沿って下降、ある階の窓から侵入して奥まで移動、その後180度振り返る……これをワンカットです。手持ちのビデオカメラじゃない、でっかい映画用35mm撮影機ですよ。これを知って観ると監督たちの偉大さがわかります。

— 関口芳雄


お知らせ

2014/04/23 — 第302号

消費税率引き上げにより、4月より「シニア」「友の会」の料金を1000円から1050円へと改訂させていただきました。

また、料金改定に伴い「友の会」の招待券交換に必要なポイントを10ポイントから8ポイントに変更いたしました。ぜひご活用ください。

また「友の会」は随時会員を募集中です。詳細はスタッフまでお気軽にお申し付けください。

ぜひご活用ください!
友の会 招待券交換ポイント
10ポイント → 8ポイント

  • 友の会会員用のダイレクトメールの仕様が5月分(4月末送付)より変更になります。
  • 今まで毎月1日・15日に発行していた「しねまんすりい」は5月より毎月1日のみの発行とさせていただきます。(ただし毎月15日には、最新情報を掲載した簡易版を配布予定です)

— スタッフ


新文芸坐ベストテン2013 結果発表

2014/04/11 — 第301号

新文芸坐友の会会員の皆さんと当館スタッフが選んだ昨年のベストテンを発表します。今後の番組編成の参考にさせていただきます。また、皆さんの映画鑑賞の参考ともしてください。

有効投票数は134票でした。ありがとうございました。

【日本映画部門】

1『舟を編む』
2『そして父になる』
3『凶悪』
4『風立ちぬ』
5『横道世之介』
6『地獄でなぜ悪い』
7『ペコロスの母に会いに行く』
8『かぐや姫の物語』
9『さよなら渓谷』
10『東京家族』

【外国映画部門】

1『ゼロ・グラビティ』
2『きっと、うまくいく』
3『ジャンゴ 繋がれざる者』
4『セデック・バレ』
5『パシフィックリム』
6『愛、アムール』
7『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』
8『ゼロ・ダーク・サーティ』
9『ハンナ・アーレント』
10『クロニクル』

【監督部門】

アルフォンソ・キュアロン

【男優部門】

松田龍平

【女優部門】

真木よう子

— スタッフ


入場料金改定についてのお知らせ

2014/03/18 — 第299号

新文芸坐では、消費税率引き上げに伴い、4/7より開催の番組「気になる日本映画達<アイツラ>2013」より、以下の通り、ご入場料金を改訂いたします。

改訂の概要

消費税率引き上げに伴い、新文芸坐の入場料金全般の見直しを行い、一般、学生の二本立て基本料金は据え置き、各種割引料金、及びオールナイト上映料金を改定します。

現行料金

<一般>1300円
<学生>1200円
<友の会>1000円(10ポイントで招待券)
<シニア>1000円
<夫婦50割引等各種割引>1000円
<ラスト1本割引>800円

改訂料金

<一般>1300円
<学生>1200円
<友の会>1050円(8ポイントで招待券)
<シニア>1050円
<夫婦50割引等各種割引>1050円
<ラスト1本割引>850円 <ラスト1本割引・友の会、シニアのみ>800円

現行オールナイト料金

<一般>2200円
<友の会・前売り>2000円

改訂オールナイト料金

<一般>2300円
<友の会・前売り>2100円

※各料金は内税の総額表示です。
※長尺映画の一本立て上映の際も、二本立て改訂料金が適用されます。
※二本立て料金、及びオールナイト料金も、特別興行の場合は入場料金が変更になる場合があります。

— スタッフ


今更ながらの3D映画初体験記

2014/02/28 — 第298号

■先日『ゼロ・グラビティ』を観ました。アカデミー賞にもノミネートされていて話題の映画ですよね。当館スタッフの鑑賞率も高く、皆に「観るなら絶対iMAX3D版だよ!」と薦められ、2200円を握り締めドキドキしながら上映館へ向かいました。■実は恥ずかしながら、私はまだ3D映画を観たことがありませんでした。『アバター』であれだけ世間的に3D旋風が巻き起こったにも係わらず、私は「乗り物酔いヒドイからな……」などの思いが先行し、観ずじまいになっていました。■そんな私の初めての3D映画体験は一言で言うと「満足」。思っていたほどの違和感も感じることなく、宇宙空間の広がりや奥行き、浮遊する感じや物体がぶつかってくるかのような映像を充分に楽しみました。先入観でつい敬遠していましたが、案外すっと入り込めるし楽しめるもんなんですよね。■それと同時に私は「これって2Dだとどう思うんだろう!?」という強い気持ちに駆られました。私としては、それはそれでいいんじゃないかと思うんです。特に当館のような大きなスクリーンで観れば、2Dでも絶対満足できると思います。それを検証するためにも、当館での上映を期待したいところです。あ、3Dを観たことない人は、もちろん3D体験も!

サンドラ・ブロックに似ていると言われる

— 釘宮あかね


やはり、負けを知ってる男は強い

2014/02/13 — 第297号

日本時間3/3にアカデミー賞が発表されます。主演男優賞候補はディカプリオを始め強者揃いですが、私は『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒーを応援します。■彼を一躍有名にしたのは、サンドラ・ブロックと共演した96年の法廷モノ『評決のとき』。彗星のように現れた美青年に観客は心を奪われました。しかしその後の出演作の立て続けの興行的不振に加え、彼自身のマリファナ所持による逮捕(自宅で大音量で音楽を流し全裸でボンゴを叩き通報された)によりキャリアは失墜。その後ラブコメに活路を見出し、その肉体を見せたがる“シャツレス俳優”として人気者となりますが、その地位は目指すべき場所ではありませんでした。■彼は息子の誕生を機に、キャリア再生のためラブコメのオファーを断り続け、2年間沈黙します。そして満を持して出演したのが『リンカーン弁護士』。『評決のとき』と同じ弁護士役ですが、そこにいるマシューは酸いも甘いも経験した人間味溢れる男でした。件の『ダラス〜』や年末のクリストファー・ノーランの新作、渡辺謙との共演作も控える彼の快進撃はここから始まるのです。■前置きが長くなりましたが、3/8のオールナイト上映はマシュー・マコノヒー特集です(チラシつくりました!)。重要作『リンカーン弁護士』以降、脇役でも強烈な存在感を見せつけた作品群は、アカデミー賞までの道程と言っていい4本です。サブタイトルに“アカデミー賞受賞希望”とつけましたが、2文字削る事態になることを願います。

— 花俟良王


モノクロフィルム、モノクロ映画

2014/01/29 — 第296号

いつも通りモノクロフィルムで素晴らしい映画を撮影された『ニーチェの馬』の監督タル・ベーラは「自分はモノクロフィルムが好きなので、それで撮ってきたが、デジタルで撮る今の時代にはデジタルの映画的言語を見つけて欲しい。それをフィルムと呼ぶのはどうか」というようなことを言っていました。「映画とは35mm、セルロイドである。編集台で手に触れられるもの」「新しいテクノロジーを使わない理由はないが映画とは別のアート、故に新しい言語を見つけるべき」とのこと。アメリカではいわゆる「映画っぽい画質」を求めて以前からテレビドラマでも35mmフィルムを回していたので、当然とも言えますが、ハリウッドでは現在でもフィルム撮影が主流です。制作にデジタル技術がふんだんに取り入れられていても、旧態然とした映画的言語に溢れる現在の映画に、引退を表明したこのモノクロフィルムの監督は違和感を覚えるのでしょう。モノクロというよりフィルムとデジタルについての話でしたが、デジタルで撮影され35mmフィルムに焼き付けられたペドロ・コスタの『何も変えてはならない』という素晴らしいモノクロ映画があることも思い出しました。●「ライカMモノクローム」というスチールのデジカメがあります。ボディだけで90万円近くするこのカメラ、その名の通り何とモノクロ専用。専用にすればモノクロ画像に特化した設計にできるので画質が良いとのこと。世界中の富裕層を相手にするライカならではのニッチな商品ですが、写真の基本は光と影、デジタルになってもモノクロの良さを再認識してもらおうという姿勢で、とことん追求するものづくりは良いですね。そのうち映画撮影専用のモノクロデジタルカメラが作られる日も来るのでしょうか? モノクロフィルムの未来、モノクロ映画の未来はどうなるのでしょうか?

— 梅原浩二


今年最初の感動は

2014/01/11 — 第295号

明けましておめでとうございます。今年も、盛りだくさんの感動を皆様にお届けできるよう頑張ります。そのためにも、まず自身がいっぱい感動を味わって、心豊かな一年にしたいと、初詣の神社で誓いました。

そんな新年になんとなく手に取った窪美澄さんの小説『ふがいない僕は空を見た』(新潮文庫刊)がとても面白く、今年まず最初の感動となりました。タナダユキ監督が映画化して繊細で小気味よい演出で好評を博し、田畑智子の大胆な演技も話題となったのでご存知の方も多いと思います。当館でも上映しました。原作の方も山本周五郎賞とR-18文学賞大賞をダブル受賞し、本屋大賞の2位に選ばれたことも効いてヒットしたそうです。とある評論家が「セックスする桐島」と評したという話を聞きましたが、まさにいい得て妙ですね。

映画の方も、とてもいい作品に仕上がっていましたが、やっぱり原作にはかなわないと思いました。これは映画化作品の宿命ですね。原作を読んでちょっと驚いたのは、それぞれの章が、主要な登場人物たちの一人称で語られていたこと。なんと言っても素晴らしいのは2番目の章、映画では田畑智子演じる“里美(あんず)”が語る章で、「絶頂って幸福の絶頂という意味なんだ、と私ははじめて理解しました。」と彼女が独白するところで、私は思わず泣きました!

この作品のもう一つの大きなテーマは「出産」です。著者の窪美澄さん自身が出産経験のある大人の女性のせいか、青春モノの青臭さがなく、人生への諦念と共感に包まれたまろやかな読後感が、いつまでも心に残る一作でした。そういうわけで「桐島」よりも「ふがいない僕」に、わたしは一票。

— 矢田庸一郎


明けましておめでとうございます

2014/01/01 — 第294号

旧年中は、新文芸坐をご愛顧いただきまして、心よりお礼申し上げます。

本年も、“感動はスクリーンから”をモットーに、皆様に古今東西のさまざまな映画の感動を、心ゆくまで味わっていただけるよう、スタッフ一同精いっぱい頑張る所存です。

2014年1月1日

新文芸坐
矢田庸一郎 関口芳雄 / 永田稔
梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔 柳原弘 宮路良平
釘宮あかね 大内奈々子 小澤麻梨子 森田成美 松田恵里加
笹倉妙 松永和也 金森多香子 佐藤喜則 五十嵐拓也

— スタッフ一同


まんすりいコラム

2020/06/08
テレキネシスに呼び起こされた私のプロムパーティー
2020/03/31
忘れ得ぬ美しき戦慄と婆ばの顔
2020/02/27
『キャッツ』と猫と夢
2020/01/31
エビス・ラビリンス
2020/01/01
明けましておめでとうございます
2019/12/30
贅沢すぎる映画納め

年別アーカイブ