まんすりいコラム:2016年

12月は開館記念日と「シネマ・カーテンコール」

2016/11/24 — 第333号

12月12日は小津安二郎の誕生日であり命日であり、そして新文芸坐の開館記念日でもあります。皆様のおかげで16回目の記念日を無事に迎えられそうです。心からお礼申し上げます。■12月の恒例企画と言えば、その年に公開された優れた外国映画を特集する「シネマ・カーテンコール」。当館初上映の選りすぐりが20本揃いました。■個人的なお薦めは『メカニック:ワールドミッション』と『アウトバーン』のアクション映画2本立て。意外に思う方もいるかもしれませんが、この手の映画を2本立てで観るって、今や貴重な機会ではないでしょうか? (話せば長くなりますが)諸々の事情と状況により、現在の名画座は娯楽作よりは作家中心のプログラムが主で、能天気で単純なアクション作品は封切りを逃したら再びスクリーンで観るのが困難になっています。でもやっぱり面白いんですよ、こういう映画は。■その他にも12月は「新文芸坐シネマテーク」「幻想と怪奇のレイトショー」「ゴーストバスターズ(2016)年忘れ絶叫上映」などイベントが盛りだくさん。さらに土曜以外に12/23(金・祝)にもオールナイトがあります。どうぞ気軽に楽しんでください。そもそも映画の敷居は低いんです。

— 花俟良王


昔のスタア 昔の映画

2016/10/26 — 第332号

11月、新文芸坐では生誕100年となる映画監督加藤泰の特集が行われる。■数多くの名優が起用された加藤泰映画の中でひときわ異彩を放つのは安藤昇だろう。戦後、暴力団安藤組を興した安藤昇は、短刀で斬られた左頬の傷痕などエピソードに事欠かない。ワイズ出版『映画俳優安藤昇』には、山田洋次監督の『男はつらいよ』が実は安藤昇が原案だったという話から、石井輝男監督の『網走番外地 吹雪の斗争』の現場が気に食わずに帰ってしまったという有名な話まで、数多くの逸話がまとめられている。■山田監督や石井監督にも遠慮しない話しぶりの安藤昇が、ほとんど唯一加藤泰についてだけは敬意を持って懐かしそうに語る。そんな加藤泰も映画撮影でのびっくりエピソードに事欠かない。『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』では、香港から参加したペギー・潘が帰国する日になっても手のクローズアップの撮影を続け、また代名詞である極端なロー・アングルのために現場では常にスコップを持った助監督が穴掘り要員として待機していたそうだ。■あまりに個性的な役者と、映画を作ることにこだわり抜く監督が生み出すこの豪放磊落なおもしろさを見ないなんてもったいない。見るほど知るほど常に驚きも発見もある昔のスタアと昔の映画は、それゆえに今もまだ新しい。

— 青山貴昭


映画よ。また、よろしく。

2016/09/29 — 第331号

映画がきっかけとなって、行動を起こすことがある。それが吉と出るか、凶と出るかは、その時々によって変わってくるものの、先日のきっかけと行動は、間違いなく吉だった。■観賞したのは、アニメ映画『planetarian?星の人?』だ。プラネタリウムが重要なキワードの作品であり、星空の投影のシーンは、思わず息を飲むほど美しく描かれていた。案の定、観賞後は久しぶりにプラネタリウムへ行きたくなった。そして数日後、私は仕事帰りにプラネタリウムへ向かったのだった。■独り身でのプラネタリウムは、初めのうちこそ不安だったものの、いざ投影が始まると、どうでもよくなった。十五年ぶりに観るプラネタリウムの星空は、例えようもなくきれいだったからだ。きらめく星々に見惚れながら、ここへ来るきっかけをくれた映画へ、密かに感謝した。■映画を観る理由は人それぞれちがうが、私は「映画を観た後の自分はどうなるのだろう」という不安や期待も、映画観賞のひとつの醍醐味であると思う。観賞後、なにかをしようと思えたならば、それは自分が映画によってほんの少しだけ変われた証なのだ。……さて、次はどんな映画を観て、どんな影響を受けるのだろうか。

— 濵本栄紀


『ノスタルジア』と温泉

2016/08/26 — 第330号

■女人三十、都内共通入浴券を買って休日に一人、銭湯に行く程度には風呂が好きだ。都民だが江戸っ子ではない。あつ湯ではなくぬる湯にぼーっとつかり「世は全て事もなし」の境地にひたるのがいい。■さて『ノスタルジア』である。温泉が出てくる。湯気が出ているのだから間違いない。ロケ地はイタリア・トスカーナ地方、バーニョ・ヴィニョーニというローマ時代から続く温泉保養地とのこと。ネット画像を見ると、自然に囲まれた、心も体も休まりそうな土地である。■不眠解消映画としても名高い『ノスタルジア』だが、過去何度か鑑賞して一度も寝ていない。心中密かに己を褒めたたえている。その分、他のタルコフスキー映画では油断が出るのか『鏡』も『ストーカー』も大体寝ていたのは秘密だ。しかし「実は寝ちゃって……」と告白しても「俺も」「私も」と追随者がわらわら出てくるのがタルコフスキーのいいところだろう。■最後に『ノスタルジア』を観たのはもう十年以上前だろうか。温泉宿に行けば温泉そっちのけで友人と飲み喋り合い、風呂は好きだが銭湯なんて興味がなかった、そんな年の頃だ。年を取ったなと思う。あの頃の自分に、あと何年かしたら、いま通いつめている映画館で働くことになるよ、と教えたらどんな顔をしただろうか。
※『ノスタルジア』は9/9(金)に上映

— 小澤麻梨子


新文芸坐ベストテン《女優編》

2016/07/25 — 第329号

当館では毎年お客様から投票をいただき、ベストテンを集計・発表しております。著名人や評論家ではなく映画ファンが選ぶベストテンということで、当館の番組編成の参考にさせていただいております。
過去には番外的にサスペンス映画ベストテンや男優ベストテンなども行なってまいりましたが、今年は《女優編》を開催いたします。
日本の映画女優を10人投票してください。投票期間は9月末日まで。これを集計し発表いたします。投票用紙はロビーにおいてございます。また、新文芸坐友の会会員の方はメールでの投票も承ります。投票(メール投票を含む)して頂いた友の会会員の中から抽選で3名様にご招待券をプレゼントいたします。
新文芸坐で映画をご覧になるお客様が好きな女優は、いったい誰なのか!? 結果は今後の番組編成の参考にさせていただきます。お楽しみに!

— スタッフ


プリンスのライブなので、できれば理性を捨てたいものです

2016/06/24 — 第328号

4月、不世出の天才アーティスト・プリンスが逝ってしまいました。もうこの世界にはマイケル・ジャクソンもデヴィッド・ボウイもプリンスもいないのです。■当館では追悼の意を込めて7/16(土)・17(日)に『プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』をレイトショーとして上映します。87年に2枚組でリリースされた傑作同名アルバムのツアーを収めたファンキーでポップ、かつロックな82分の白熱のライブ映画です。■個人的にはこの手のライブ映画を劇場で観ていると、つい立ち上がって拍手をしたり歓声を上げたくなって困るのですが、「他の人に迷惑をかけてはいけない」「目立ってはいけない」という、日本人として培われた奥ゆかしさにより悶々としてしまうのも事実です。今回の上映は当初「スタンディング可」と謳うつもりでしたが、やはり躊躇してしまう奥ゆかしい方がいるのではないかと引っかかっていたのです。そんな人にも盛り上がっていただきたい……。■という訳で、今回は通常上映に加え「スタンディング“強制”上映」を7/17(日)に設けました。冒頭から問答無用で立っていただきます。拍手・歓声・合唱はライブ同様ご自由にどうぞ。立つきっかけはこちらで与えるので、一瞬の気まずさは「やれやれ」とか言いながら当館のせいにしてください。後は怒涛のショーに身を委ねればOK。「見えないから立つなよ」という人はいません。もちろん疲れたならお座りください。全員が合意していることが大事なのです。■7/16(土)は通常の着席上映です。これはこれでじっくりと楽しめますが、拍手ぐらいはしてもいいですよね?

— 花俟良王


濃密な要約

2016/05/25 — 第327号

映画本編の上映前に掛かる予告編、お客様の中にもこれを楽しみにしている方がいらっしゃるかと思います。かく言う自分もその一人。場内が暗くなり、予告の開始で心がスクリーンに持っていかれるあの瞬間……映画館で映画を観る醍醐味のひとつではないでしょうか。■細かく編集された映像はもちろん、音楽、キャッチコピーやナレーションに至るまで、限られた時間で本編の魅力を伝える予告編は、宣伝材料というよりひとつの作品といってもいいでしょう。昔の日本映画は予告編製作で助監督の力量を測っていたというのも納得。アメリカでは優れた予告編を讃える授賞式もあります(今年の最優秀作品は「スポットライト 世紀のスクープ」でした)。■名画座である当館では邦洋、新旧含め様々な予告編が上映されます。本編はもちろん、そちらも楽しんで頂けたら幸いです。個人的には80年代の角川映画の予告編はどれもドラマチックで、子供心にとても印象的でした。いつか予告編だけを延々上映するプログラムができたらなぁ……。

— 武田俊輔


追悼と思い出

2016/03/18 — 第325号

残念なことに、ここ数年だけで何度「追悼」と銘打った上映をさせていただいたことかというほどに数多くの名優、名監督が逝去されました。そして今月には、【追悼 アラン・リックマン】として4/6に「モネ・ゲーム」「ヴェルサイユの宮廷庭師」を上映いたします。■私がアラン・リックマンの出演作で忘れられないのはアン・リー監督による「いつか晴れた日に」です。アン・リー作品でもっとも好きなこの映画を、亡くなられた日にあらためて見たのですが、英国王立演劇学校出身、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに所属した彼の演技はアン・リーの細やかな映像美と調和し、不器用だが誠実な英国軍人然としたキャラクターを見事に表現していました。■そして役者として、役として、スクリーンに「生きていた」ことがわかったとき、自然と涙が流れていました。■「ヴェルサイユの宮廷庭師」は、「いつか晴れた日に」で共演したケイト・ウィンスレットとの20年ぶりの共演作であり、アラン・リックマンが監督・脚本・出演をこなした意欲作、そして遺作であります。ぜひこの機会に、皆様も名優の思い出を当館のスクリーンで分かち合ってくださったらと願っております。

— 青山貴昭


「新文芸坐ベストテン2015」発表!!

2016/02/29 — 第324号

お客様と当館スタッフの投票で決まる「新文芸坐ベストテン」。
2015年は以下のような結果となりました。(一部副題略)
ご投票いただいた皆様、ありがとうございました!

<邦画>
1位:海街diary
2位:恋人たち
3位:野火
4位:きみはいい子
5位:駆込み女と駆出し男
6位:岸辺の旅
7位:あん
7位:ソロモンの偽証
7位:バクマン。
10位:バケモノの子

<洋画>
1位:マッドマックス 怒りのデス・ロード
2位:セッション
3位:アメリカン・スナイパー
4位:バードマン
5位:キングスマン
6位:イミテーション・ゲーム
7位:スター・ウォーズ/フォースの覚醒
8位:はじまりのうた
9位:ナイトクローラー
10位:ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

(有効投票数121票/1位10点…10位1点)

3/16からの特集<気になる日本映画達2015>では、邦画のベストテンより『野火』『岸辺の旅』『ソロモンの偽証』『バクマン。』の4本に加え、次点『さよなら歌舞伎町』の再上映や、13位『天空の蜂』、16位『この国の空』、18位『幕が上がる』などがラインナップ。さらに、1位の『海街diary』も4月の上映が決定しました。併映にはキネ旬ベストテンも賑わせたあの作品が…!? 是非この機会にスクリーンでご堪能あれ。

— 後藤佑輔


2月は新作洋画がいっぱい

2016/01/28 — 第323号

2月は洋画が盛り沢山なので少し紹介を。■2/3(水)までの『キングスマン』『コードネーム U.N.C.L.E』は鉄板のスパイ映画2本立て。『コードネーム〜』は往年のTVドラマ『0011ナポレオン・ソロ』が元ネタです、お父さん。■4(木)〜6(土)は私の一押し『名もなき塀の中の王』『ベルファスト71』。話題の新作『不屈の男/アンブロークン』で主演もした英国期待の若手ジャック・オコンネルの2本立て。ともに緊張感溢れる硬派作です。特に『名もなき〜』の彼(とお父さん)は刑務所親子鷹としてキレにキレ、既に演技派の貫録が。■17(水)からは小特集<珠玉の名編>。キアヌの殺し屋業界苦労譚『ジョン・ウィック』と、シャマランのケレン味が完全復活した『ヴィジット』2本立てのテーマは「見た目で人は判断できない」。■21(日)・22(月)は『妻への家路』と『黒衣の刺客』。アジアが誇る名匠チャン・イーモウとホウ・シャオシェンの現在を。シャオシェン初の武侠映画『黒衣〜』は絶賛されキネ旬5位にもなりました。■23(火)・24(水)は『ドローン・オブ・ウォー』と『顔のないヒトラーたち』。時代も国も異なりますが、戦争における殺人に対する「実行者の不在」を問います。■25(木)・26(金)は音楽系。4月の来日が待ち遠しいB・ウィルソンの伝記映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』は、凄まじい人生を送った彼の60年代をポール・ダノ、80年代をジョン・キューザックが演じる二人一役も話題に。『Dearダニー 君へのうた』はアル・パチーノ演じる元人気歌手が、43年前自分宛てに書かれていたJ・レノンの手紙によって人生を見つめ直す感動作。■以上12本。いかがでしょうか。新作は当館の音響のポテンシャルを発揮する絶好の機会でもあります。ぜひ劇場でご覧ください。

— 花俟良王


明けましておめでとうございます

2016/01/01 — 第322号

旧年中は、新文芸坐をご愛顧いただきまして、心より御礼を申しあげます。

2016年も、“感動はスクリーンから”をモットーに、日本映画をはじめ、ハリウッド、ヨーロッパ、アジアと、世界の映画を幅広く上映していきます。

一方で、昨今、フィルム映写機の生産が止まるなどフィルム上映をめぐる環境は日に日に厳しくなってきています。新文芸坐の基本精神の一つに「映画の歴史を次世代に継承する」というものがあります。2016年も、この基本精神の旗を降ろすことなく、様々な上映にチャレンジしていきたいと思います。

今年も、新文芸坐は映画の永遠の感動を、映画ファンの皆様にお届けいたします。

2016年正月

新文芸坐
矢田庸一郎 関口芳雄
梅原浩二 花俟良王 後藤佑輔
柳原弘 小澤麻梨子 松田恵里加 武田俊輔 濵本栄紀
渡部麻美 青山貴昭 五十嵐拓也 星野依子 倉持治 山下萌

— スタッフ一同


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