スタッフコラム

人間の長生きには意味がある

2005/05/01 — 第115号

昆虫の場合。カマキリのオスは交尾のあとメスに喰われてしまいます。これは産卵前のメスの栄養になるのが最良の生き方(=死に方)だからで、交尾後のオスに余生はないのです。◆魚類の場合。ある種の熱帯魚は、卵をオスがその口の中に入れて外敵から守るという。卵がふ化するまではオスも死ねません。◆これが鳥類となると親は雛が独り立ちするまで子の面倒を看るようになり、哺乳類ともなるとさらに親の仕事は増えてきます。こうして見ると、動物は一般的に進化するほど次世代誕生後の寿命が長くなっていることがわかります。そして、長生きするにはそれなりの意味があるわけです。◆さて人間はどうでしょう? 人の一生は子どもが独立する歳になってから後の方が長いですね。これにも意味があるのです。人間は知力・体力が衰えても、子孫に“知識や体験を伝える”ことができるんです。これが人間の寿命が長い理由です。だから人生の先輩を軽んじるということは、知識や体験、大袈裟に言えば人類の遺産を軽んじることです。◆さらに人間の中でも、ある種の偉大な人たちは死んでなおこの世に何かを残し、後世の人々を愉しませています。この国では、広く国民から親しまれた分野で特筆すべき業績をあげた人には国民栄誉賞というものが与えられ、映画の分野では、美空ひばり、渥美清、黒澤明が受賞しています。これら偉大な人々は、亡くなった後も、その業績によって生きているのだと言えないこともありません。◆渥美清、美空ひばりとそれぞれ同年に亡くなった“神様”手塚治虫と“国民作家”司馬遼太郎。両氏のファンの私としては、国民栄誉賞と聞くと内心穏やかではいられないということを最後に記しておきます。

— 関口芳雄 検索