いつか壊したい壁なのです
2008/02/01 — 第181号
日に何十件と問い合わせの電話をいただきます。一番多いのは上映時間と場所の確認ですが、最近増えたのが時間を確認した上で「で、今何やってるの?」という流れ。はたから聞けばあべこべかも知れませんが、これは大変嬉しい。作品の内容は二の次で、ある種の信頼で当館へ足を運んでいただける。商売的なことよりも、日々の上映を通じてこのような関係が築けたことが私たちのささやかな誇りになるのです。この信頼を維持しなければと自分に渇を入れながら「『インランド・エンパイア』という洋画です!」と何度も答えた正月でした。◆しかし、そんな素晴らしい関係をぶち壊すジャンルがあるのです。それはホラーとアニメーション。血肉飛び散るホラーを拒絶するのは人道的に納得がいきますが、「○○というアニメ作品……」と言った瞬間に「じゃあいいや」の言葉をいただく時の切なさ。もちろん好き嫌いは十人十色、ましてお客様に好みを押し付けるなど以ての外。しかし現在の、特に日本のアニメ映画のレベルの高さ・面白さを伝える機会を逃したと思うとやはり切ないのです。◆今敏(こん・さとし)というアニメ映画監督は、オタク文化を痛烈に皮肉った『パーフェクトブルー』でデビューして以来、アニメ“を”見せるのではなく、アニメ“で”見せることを常に意識してきた作家です。作品世界を堪能させるだけではなく、なぜアニメなのか、という問いの答えを探す喜びを与えてくれます。その典型的な傑作『千年女優』は今回事情により上映できませんが、まずは現在の集大成的作品『パプリカ』をご覧ください。「じゃあいいや」で済ますにはあまりに惜しい、先進的な“映画”がそこにあります。2/16は今敏監督(来館!!)の特集オールナイトです。
— 花俟良王
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