大相撲初場所雑感

2009/03/01 — 第199号

大相撲は、長い歴史を持つ伝統文化を継承しているスポーツであるので、最高位の横綱の行動、言動は、伝統と慣習に基づくことが求められる。今年の初場所は、過去に横綱として品格を問われていた朝青龍が、三場所振りに出場するということで話題になった。場所前のマスコミの論調は、「体調、稽古不足で勝てないだろう」、「黒星が先行するなら序盤にも引退することだろう」と、断定的な記事で占められていた。◆そんな状況の中で初日には、朝青龍の負ける瞬間を見届けるためと、「朝青龍ガンバレコール」の同情的な声援を送るファンが、国技館に足を運び、テレビのチャンネルを合わせた。100年に1度の世界同時不況の世間がウソのように連日満員御礼の垂れ幕が下がり、視聴率は上った。◆しかし、朝青龍は前評判に反して勝ち続けたため、ファンはその強さに対して一転してブーイングを起こし始めた。一方、それまで品行方正で朝青龍の陰に隠れて目立たなかったもう一人の横綱白鵬に対する声援が、日に日に大きくなり千秋楽には「白鵬コール」が場内に轟いていた。15日の短期間の内にファンの声援が、序盤は朝青龍へ、終盤は白鵬へと劇的に変わっていった。興行者としては、初場所のお客様の変わり身の素早さを記憶に留めておきたいと思う。◆初場所の興行の成功は、白鵬と朝青龍の横綱2枚看板が揃って千秋楽まで競い合ったことであるが、個性豊かなキャラクターを持ち、実力を兼ね備え、敵役・悪役の役割を担った朝青龍の存在がより大きいと思う。映画の場合のキャスティングでは主役も大切であるが、敵役・悪役・脇役に確かな役者が配役できれば、観客の満足する作品が生まれ、興行的にも成功することを暗示している初場所であった。

— 永田稔


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