スタッフコラム

若山弦蔵 ~甘くクールな低音~

2021/06/15

■外国映画の吹き替えにおいて、“フィックス”ということばがよく使われます。これは映画俳優の声をアテる声優がほぼ決まっているという意味です。■挙げればきりがないのですが、私の世代だとアラン・ドロンとアル・パチーノといえば野沢那智、クリント・イーストウッドとジャン=ポール・ベルモンドは山田康雄。オードリー・ヘプバーンの池田昌子、ジェーン・フォンダの小原乃梨子も決まり。■さて、フィックス声優として忘れてはいけないのが、ショーン・コネリーの若山弦蔵さんです。ショーン・コネリーの声は(テレビ朝日制作の吹き替え版を除き)、ほとんどを若山さんがアテたといっても過言ではありません。若山さんはラジオドラマからキャリアが始まり、外国の映画・ドラマのアテレコやナレーションの仕事をずっと続けてきた方です。黎明期の声優業界では、多くの声優が俳優の副業で声の仕事をしていました。「声優」と言われるのを嫌い「私は俳優だ」と言い切る人もいたくらいです。そんな中、若山さんはキャリアの最初から最後までを「声優」で通した少数派と言っていいと思います。■若山さんといえば「別録り」が有名でした。録音スタジオに集結した声優たちとは別に、自身の声だけを別スケジュールで録音するのです。これはリスクを伴う手法です。他の声優とテンションが違ったりバランスが悪かったりもあるでしょう。それは若山さんいわく「OKを出した演出家の責任」なのだそうです。確かに映画などではシーン・カット毎に撮影されたものを編集でつなぐのが当前で、前後との統一感をもたせるのは監督やスクリプターの責任ですよね。アテレコの仕事とは、隣にいる声優との台詞のやりとりではなく、スクリーンに映っている俳優との対決である、と若山さんは言い切っています。孤高の人という感じがしていいですよね。■ショーン・コネリーが2020年10月31日に亡くなり、若山弦蔵さんも2021年5月18日に鬼籍に入りました。2年違いで生まれ、ほぼ同時にこの世を去った二人。私の中で完全にフィックスされました。ショーン・コネリーの声は、若山弦蔵さんです。(TVアニメ「宝島」のジョン・シルバーもカッコよかったぞ!)

— 関口芳雄 検索