スタッフコラム

畏怖する人間/荒戸源次郎

2010/02/01 — 第210号

「鬼のような人ではないか」と、会う前は勝手に想像していた。新作「人間失格」公開記念として「荒戸源次郎映画祭」の開催を、荒戸さんにお願いしに行った時のことである。●荒戸源次郎が最初に注目されたのは鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」(’80)製作であろう。「殺しの烙印」(’67)を撮った後、日活を解雇され、ほとんど映画を撮れなくなっていた鈴木清順に映画製作の場を与えたのだ。しかもエアドームの特設映画館を作り上映を始めるという画期的な方法を生み出す。「ツィゴイネルワイゼン」は映画賞を総ナメにし遂にはベルリン映画祭で銀熊賞を受賞。華々しい復活を遂げた鈴木清順は、その後も荒戸とのコンビで「陽炎座」(’81)「夢二」(’91)と傑作を世に出す。●「どついたるねん」(’89)で阪本順治を監督デビューさせるなどした後、荒戸の次なる金字塔となったのは「赤目四十八瀧心中未遂」(’03)の監督である。四畳半のアパートで日がな一日、贓物さばきをする青年を中心に、刺青師や娼婦たちが妖しく蠢くアンダーグラウンドな世界を鮮烈に描くこの映画は、1年以上のロングランとなり、またもや映画賞を総ナメ。その年の映画界の話題をさらった。●荒戸源次郎のモットーは「楽しく働き必死で遊ぶ」。川島雄三をこよなく愛し、映画への想いを衒うことなく語る荒戸の目は、鬼とは裏腹の、網を持って夢中に蝶を追いかける少年のようでもあった。映画を撮るということとは、という私の問いに対し、荒戸源次郎は言う。「音が聞こえてくる画、画が見えてくる音を探し続けること」と。●「荒戸源次郎映画祭」は2月21日、日曜日より開催。

— 矢田庸一郎 検索