スタッフコラム:2003年

皆さんの、今年の思い出の映画は?

2003/12/16 — 第82号

今年も一年を振り返ってみる季節になりましたね。お客様の中には、自分なりの映画ベストテンを作ったりする方も多いのでは。もしよろしければ、その結果、教えていただけませんか。●前年公開の日本映画をまとめて見ていただく恒例企画「気になる日本映画たち(アイツラ)」の参考にさせていただきたいのです。もちろんリクエストもOK。紙に書いてアンケートボックスに入れてください。メールでも結構です。●わたしの、今年の思い出の映画はというと『ロッカーズ』かな。陣内孝則の長編監督デビュー作で“THE ROCKERS”というバンドでの実体験を基にした青春映画。実を言うと、全然、期待していなかった。どうせ、オレ様映画だろう、と。●まず物語がテンポよく心地よい。登場人物たちのキャラが立っていて、ギャグも小気味よく炸裂。そして見せるべきところはじっくり見せる。小泉今日子、鈴木京香ら豪華なゲスト出演も楽しい。特に大杉漣扮するフォークシンガー(?)には大笑い。監督自身が、笑って、泣いて、手に汗握らせる映画になった、と語っていたが、まさにその通りの出来映えだ。●予想しなかった面白さにびっくり(それでちょっと点が甘くなったかな)。「気になる日本映画」で、この映画も上映したいと思うのだが、いかがでしょう。「『ロッカーズ』面白かった」という方、「『ロッカーズ』ぜひ見たい!」という方は、その旨アンケートボックスに入れていただくと心強い。まぁ、全く反対の意見でもそれはそれで参考になります。

— 矢田庸一郎


永遠も86.6%を過ぎて…

2003/12/01 — 第81号

■私、先日左足首を捻挫しまして、近所の接骨院に通っているのですが、そこの先生が患部に治療器を当てながら雑談がてらおかしなことを言うのです。「いや師走に入ったら色々忙しくて、自分のことなぞ何もできはしません。だから1年は11月で終わりです、はい」。人間、誰しも歳を取ると時の経つのを早く感じるものですが、それにしても1年が11ヶ月とはいささか大袈裟過ぎると…。■いや大袈裟ではないかもしれません。78歳(日本人男性の平均寿命)の老人が直近に経験した1年は、1歳児の経験した1年間の78分の1の重みしかない…という単純な計算方法を採用すると、手元の計算では、78歳の生涯のうち30歳までの時間が80.9%をの重みをもつという結果になりました。40歳までで86.6%、50歳で91.1%…。大変です。いや、こんな計算をして人生を無駄に過ごしている場合でない。と思いながらも、何をしたらよいのかもわからぬのですが。■というワケで1年のロスタイムともいうべき師走になりました。オールナイトは「ファースト ガンダム コンプリート」。今よりもずっと濃密な時間を過ごしていたであろう24年前の少年少女たちにこの作品を贈ります。今年2月にお亡くなりになった井上瑤さん(享年56歳)のご冥福をお祈りしながら。■第2回懸賞クイズの正解は「明日に向って撃て!」。正解者多数でしたが“向って”と“!”の間違いも多かったです。

— 関口芳雄


スクリーンで観る醍醐味

2003/11/16 — 第80号

◆例えば、11/11(火)・12(水)上映の『アラビアのロレンス』。何も見えなかった砂漠の彼方に陽炎が揺らめきはじめる……、やがてそれは駱駝に乗ってやって来るアラブ人の姿を徐々に映し出す。超望遠レンズでとらえた、息を飲むようなロングショット。この映像のニュアンスは、言葉はおろか、ちょっとやそっとのブラウン管の画面では味わえない。大きなスクリーンでこそ、その素晴らしさが堪能できる。◆例えば、12/27(土)より上映の北野版『座頭市』。刃と刃を交わす立ち回りシーン。刀を振りかざす「ぷぅん」という音や、身体を斬ったときの「ズバッ」という音とともに、観ている自分の身体にズシリと響く重量感。この迫力も音響設備の整った劇場でしか味わえない。◆ちなみに、長編映画特集の『ベン・ハー』『アラビアのロレンス』『アマデウス』はデジタルリマスターされたドルビーSRと、音響もスケールアップ。映像はもちろん、音響効果も◎。◆11/15(土)のオールナイト「スーパーSF世界特撮映画大会 ジェームズ・キャメロン編」での上映作品『エイリアン2』『アビス〈完全版〉』『ターミネーター2』は、いずれもアカデミー視覚効果賞受賞作。特撮技術をスクリーンで堪能するのには、正に打ってつけのラインナップ。11/22(土)のスタンリー・キューブリック・ナイトでもアカデミー特殊効果賞受賞作『2001年宇宙の旅』が登場。ビデオ、DVDでしか観ていない人にこそ、是非スクリーン体験してもらいたい。

— 花俟良王


11月15日より「勝新太郎映画祭」開催!

2003/11/01 — 第79号

勝新のデビュー作は1954年(昭和29年)の『花の白虎隊』。しかし主役は、やはりこの作品でデビューの市川雷蔵で、勝新はかなり脇の方。その後『弁天小僧』、『薄桜記』といった雷蔵主演映画でも勝新は脇に回っている。▲勝新が日の目を見るのは59年の『次郎長富士』、森の石松役。そして60年の『不知火検校』。極悪非道の按摩役で、今でいうブレイク。61年には『悪名』がヒットを飛ばし、ついに勝新時代の到来である。▲旧文芸坐では96年の正月興行で「勝新太郎ワンマンショー」を開催している。その時のチラシのコピーに“巷に勝新待望論あり!!”と。キネマ旬報の「日本映画人名辞典」によると、すでに92年の大麻事件の判決の頃から「型破りの言動とユニークな個性が若者たちの間でクローズ・アップされるようになり(中略)“勝新待望論”とでもいうべき空気が濃厚」となっていたそうだ。だが広くファンが渇望した勝新の新作はついに現れることなく、97年6月鬼籍に入る。享年65歳。遺作は90年の『浪人街』となった。▲勝新ワンマンショーの際、勝新は来館し、トークも行なった。映画評論家の白井佳夫と女優の朝丘雪路を従えて舞台に上がった勝新は、終始、上機嫌。満席立ち見のお客さんは湧きに湧いた。▲スターが、どこにでもいそうな等身大の存在である今と違い、勝新は総天然色、シネマスコープ映画そのもの。銀幕の大スターという形容でも収まりがつかない、桁はずれた巨人、という印象だった。▲多くの人が、勝新の、というより、本物の映画人の本物の映画を、渇望していたのではないか。そうした思いが、勝新という巨星に最後の望みを託した。それが、あの頃だったのではないかと思う。

— 矢田庸一郎


長編映画特集 & 懸賞クイズ

2003/10/16 — 第78号

もう15年も前、同じ週に「ベン・ハー」「ファニーとアレクサンデル」「ラスト・エンペラー」を観たことがあります。もちろん1日に1本ずつで。いずれもボリューム感のある作品でしたが、それなりの覚悟をもって映画館に赴いたので5時間以上の「ファニー…」にしても途中で眠ることなく十分にベルイマンを堪能したのでありました。たまには長編映画もよいものですよ。というわけで、長編映画特集。■「ベン・ハー」は巨匠W・ワイラーの代表作のひとつ。アカデミー賞11部門受賞の、超大作にして映画史に残る大傑作。初見の人も再見の人も、大感動間違いなし。ただし「ボウリング・フォー・コロンバイン」のC・ヘストンは忘れて観てくださいね。「アラビアのロレンス」はD・リーンお得意の大作ドラマ。今回は〈完全版〉の上映です。「アマデウス」はモーツァルトの死にまつわる大胆な仮説を、華麗な音楽と豪華な衣装&セットで魅せるM・フォアマンの大ヒット作。私はアマデウスと聞くと、小ト短調のメロディを口ずさんでしまいます。条件反射です。■それでは、第2回懸賞クイズです。「ベン・ハー」は11部門でオスカーを獲りましたが、シナリオは受賞できませんでした。そして当館受付前の和田誠さんのイラスト壁画「ベン・ハー」の左右両隣のどちらかはアカデミー脚本賞の受賞作です。受賞作の方の“邦題”を答えてください。staff@shin-bungeiza.com 宛てのメールか、アンケートボックスへの投書でお答えください。抽選で5名様に11月の招待券を進呈しますので必ずお名前とご住所を明記してください。

— 梅原浩二


映画フィルム—日々雑感4

2003/10/01 — 第77号

先日社会派映画の特集で70年代のドキュメンタリー映画を何本か上映したとき、久しぶりに画面に映しだされている人物の口と聞こえてくる音声がずれている映像を見ました。画と音を完全にシンクロ(同期)させるにはカメラと録音機を電気的にシンクロさせる装置が必要になり、そういった機材は高価なので潤沢な制作費の無いドキュメンタリーやニュース映画等ではあまり使われる事がありませんでした。ビデオカメラが完全に普及するまでは、こういった映画はテレビでの放映用でも16ミリフィルムで撮影されることが多く、状況によってはゼンマイ式のカメラを使っていたこともあるくらいなので、画と音がずれるのは当時は当たり前の事でした。子供の時(70年代)たまにこういった映像がテレビで流れると少々違和感を感じたものでしたが、海の向こうのアメリカ人などはもっと神経質なのか、ディズニー等のアニメでは台詞と画を完璧に合わせようとしています。「『画と音が完璧に合っていなければいけない』特撮なら『完全に本物に見えなければいけない』そうでないとアメリカの観客が納得しないのは、彼らが即物的だからだ。」というような内容の話をある監督がしてましたが、その真偽はさておいても、そういった技術に対する貪欲さ、達成度はアメリカは世界一だと思います。映画の技術の際たるもののひとつに巨大スクリーンによる立体映像というものがあります。先日アイマックスシアターで見た『ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密』、立体映像で観るビル・パクストンの鼻は思いのほか高かったです。(あ、アイマックスもキャメロンもアメリカでなくカナダ産でしたね)

— 梅原浩二


マイ・ジェネレーション

2003/09/16 — 第76号

『ブギーナイツ』『マグノリア』で名を馳せた俊英ポール・トーマス・アンダーソンの最新作『パンチドランク・ラブ』を観て嬉しくなりました。キューブリックからジャック・タチ、果てはサム・ライミまでをも彷彿とさせ、ラブコメディなのに全編に緊張感がみなぎるという“期待どおりの”不思議な味わいの作品となっていたからです。◆僕はアンダーソン監督を“我が世代の旗手”として勝手に称えています。100年の映画史をランダムに咀嚼し、独特のセンスで再構築して完成する作品は紛れもなく現代的。幾多の名作をリアルタイムで観てきたオールドファンに羨望の眼差しを向ける僕のような“レンタルビデオ世代”にとっては、追体験を武器に作家性の強い作品を送り続ける同世代の彼は頼もしい限りです。ちなみにクエンティン・タランティーノにも同じことが言えますが『キル・ビル』は期待に応えてくれるでしょうか。◆さて、旧作洋画の上映が困難な中、大変お待たせしました「フランス映画社 BOWシリーズ特選」です。ズラリ並んだ秀作群は、いずれもその時代・世代に強烈な印象を与えた作品。比較的新しい作品が多いので、ご覧になった方も多いと思います。当館従業員の間でも、“ザンパラ”“パリテキ”などの言葉を久しぶりに口にする20年前の映画青年や、当時デートで観た『ピアノ・レッスン』のテーマ曲に過剰反応する者、まだ観ぬ『ウイークエンド』にファッション的嗅覚を反応させる者など、世代によって反応は様々。その様々な世代が一緒にスクリーンで感動を再確認・追体験するということは名画座の醍醐味のひとつであり、とても有意義で素敵なことだと思います。

— 花俟良王


池袋の映画館が結束

2003/09/01 — 第75号

当初、郊外の大規模な商業施設に併設されて誕生したシネコンも10年が経ち、最近では都内の施設にも併設されるようになった。今春開業したヴァージン・シネマズ六本木を中心に見ると、東にお台場シネマ・メディアージュ、109シネマズ木場、西にTジョイ大泉、南に品川プリンスホテルシネマ、平和島シネマサンシャイン、北にワーナーマイカル板橋などです。7サイト68スクリーンが増えたことになります。◆都心のロードショー館は、既に営業面で相当深刻な影響を受けているようです。ターミナル駅である池袋の映画館は、西武池袋線大泉学園にできた東映系のTジョイ大泉、東武東上線東武練馬にできたワーナー・マイカル板橋の出現と、来年豊島園にもシネコンが開業予定であり、事態を深刻に受け止めています。◆池袋には、池袋駅の東口に14館、西口に5館の19館の映画館がありますが、東宝、松竹、東映の大手映画会社の直営館はありません。総て独立興行会社の経営です。そのライバル興行会社同士が共通の危機意識を持ち、組織をつくってその対策を協議しようということになりました。如何にして映画を観る時に池袋の映画館を選んでいただけるかが命題です。◆シネコンが、一つの建物の中に複数のスクリーンを持つ映画館のことを言うのであれば、池袋駅を中心に19館の映画館が点在する池袋は、街がシネコンと言えます。この観点からすると、映画館だけの問題でなく、池袋の街の問題でもあります。行政、商店街など連携して取り組む課題と思いますが、映画館としては、映画ファンに喜んでもらえる方策を考えることから始めたいと思います。

— 永田稔


消耗しない、エラい映画

2003/08/16 — 第74号

7月の「ロード・オブ・ザ・リング」と「ロード…/二つの塔」2本立はとても多くのお客様にご来場いただき、興行的にも大成功でした。御礼申し上げます。■上映中、意外に思ったことがあります。ひとつは、新作の第2部だけを観る方よりも第1部から続けてご覧になるお客様が圧倒的に多かったこと。シリーズ物とはいえ2本で6時間を超える長尺。体力も要る。他館で〈1・2・2・2〉という変則2本立で上映している映画館がありましたが、当館では〈1・2・1・2〉と素直に上映して正解だったわけです。さらに、第2部よりも第1部の方が多くパンフレットが売れたということ、これも意外でした。第1部のパンフレットだけ買われたあるお客様になぜ1部だけなのか訊いてみると、第1部はDVDで第2部は映画館(ロードショー)で観たが、第1部をもう一度大スクリーンで観たくなった、というお答えでした。これはエラい。■下番館での番組作りでは、ビデオ・DVD化された作品は興行的にはマイナスと考えるのが普通です。ビデオで観たからわざわざ映画館では…、というワケです。ところが「ロード…」はDVDで観たあとに映画館で観たくなるという。そこがエラい。消耗して忘れ去られていく作品と、後世に残る作品、そこの違いです。■「ロード…/王の帰還」が新文芸坐で上映できるようになったら「3本立で観たいっ」ていう要望があるんだろうなぁ。9時間か…。どうする? 観る方も覚悟はあるのかっ!? あるならリクエストください。

— 関口芳雄


8月15日終戦の日、特別企画『社会派映画特集』

2003/08/01 — 第73号

8月15日は終戦の日です。数ある記念日、祝日の中で最も重大に扱わなければならない日ではないでしょうか。新文芸坐では、映画上映を通して過去を語り継いでいくことにより、現在を顧みるヒントになればと考えて、文芸坐時代の昭和54(1979)年から、8月は反戦映画や社会悪を描いた映画の特集にこだわって番組してきました。昨年は、有事法案が審議中でしたので、反戦映画特集を上映しました。◆昭和20(1945)年8月15日敗戦を知った人々は、戸惑いながらも「戦争はもうこりごりで、これからは明るい平和な社会にしたい」と思ったことでしょう。高い理想と理念に基づいて創られた平和憲法の下で、日本は今日の平和と繁栄を築いてきました。◆しかし、近年の情報技術の進歩によって、グローバル化が急速に進んだことにより、日本は国内ばかりでなく外国に対しても、政治力、経済競争力などの脆弱さを露呈し、経済不況を引き起こし、社会秩序の乱れ、人心の荒廃へと波及しているような感じがします。戦争放棄に対する考え方も、殺伐とした社会状況も、日本の進路はUターンして逆戻りしているような気がしてなりません。◆そんな杞憂から、今年の特集は、《社会派映画特集─スクリーンが告発する社会の歪み─》のタイトルで、山本薩夫、大島渚、今井正監督など日本を代表する名匠たちが撮った“社会派”映画を8月2日から3週間にわたり31作品を連続上映いたします。何れの作品もエンターテイメントとしても超一級品で、次世代に受け継がれて欲しい名画です。楽しみながら、スクリーンが告発する歪みを喝破し、“今”を考えるきっかけになればと思います。

— 永田稔


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