スタッフコラム:2012年

特撮の神様の影に隠れて

2012/07/16 — 第259号

手元に『特撮映画美術監督 井上泰幸』(キネマ旬報社・刊)という重厚感ある書籍がある。当初このタイトルに違和感を覚えた。「特技監督」または「特撮監督」ではないのか? 『ゴジラ』以降の東宝特撮映画で活躍をした井上泰幸、と聞いてもピンとこない。特撮は円谷英二ではないのか?■確かに東宝特撮映画全盛期の多くの「特技監督」は神様・円谷英二である。しかしその指揮の元、文字だけの脚本を頼りに、街並みのデザインと破壊までのプランニングをし、戦争映画の軍艦や戦闘機のミニチュアを如何に本物らしく見せるか苦心し、そしてメーサー車、宇宙轟天、アルファ号などの伝説の戦闘メカデザインまでも手掛けていたのは、井上泰幸を中心とする「特撮美術(特美)」のスタッフたちだったのだ。映画には多くの人間が関わっている、ということは知っている。しかし特技監督の名声に隠れ、特撮美術が如何に重要な役割を果たしているのかは恥ずかしながら知らなかった。本にはアメリカからの取材陣の同様の困惑や、井上を始めとする特美スタッフのフラストレーションも記されている。■万能のCGが全盛の現在、このまま手間のかかるミニチュア特撮はなくなるのか? もちろん(希望を込めて)否と答えたい。日本のミニチュア技術は先人たちの創意と工夫により独自の発展をしてきた文化とも言える。そして精緻さだけではない味がある。■近年、井上泰幸は世界中の映画ファンから正当な評価を受け始めている。アメリカのシネマテークに招かれ講演し、この集大成本も出版された。そして出版を見届けるかのように今年2月、89歳で鬼籍に入った。追悼と伝承の意を込め、ゆかりの方を招いての上映会を企画中です。

— 花俟良王


シニアのお客様にスケジュール表を実費で郵送します

2012/07/01 — 第258号

当館には「新文芸坐友の会」という割引制度があることは皆様ご存知でしょう。映画を数多く観る方には大変お得です。詳細はこのスケジュール表のオールナイト欄の下をご覧下さい。■一般のお客様にとっては、年に4回以上のご来場で入会金の元が取れてしまうという「新文芸坐友の会」はとてもお得です。しかし友の会料金と入場料金が同じシニア(60歳以上)のお客様にしてみるとそれほど恩恵がないと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。シニアのお客様が入会金の元を取るには、年に12回のご来場が必要となります。シニアでも常連のお客様にとっては入会した方がお得なのですが、それほど頻繁にはご来場されない方もいらっしゃるでしょう。入会すべきか悩ましいところですね。■ところで最近は新聞・雑誌・書籍などの紙媒体に元気がありません。時代の趨勢でしょうが、情報誌ぴあの休刊に代表されるように、もはやインターネットを使わない方は映画館の上映スケジュールを知ることもままならないというのが現状です。しかしシニア世代を中心に、「文字は紙で読みたい」と思っている人もまだ多いはずです。そこで当館では、友の会への入会はせず、スケジュール表のDMだけ郵送して欲しいという要望にお応えすることにいたしました。

  • 12ヶ月間、友の会会報しねまんすりいを郵送いたします。
  • 実費(切手代50円×12ヶ月=600円)を頂戴いたします。
  • 60歳以上の方のみとさせていただきます。

7月14日から受付けを開始いたしますので、ご希望の方はスタッフに声をおかけ下さい。

— スタッフ


東日本大震災から1年3ヶ月が過ぎて・・・

2012/06/16 — 第257号

昨年の3・11東日本大震災から早くも1年3ヶ月が過ぎたが、政治、行政の対応が不適切のためか、復興の速度が異常に遅い。お客様とのロビーでの会話は、映画の話より震災に関する話題が多く、未曾有の災害を憂い、被災地に直接行きたいと話していた。■今年になってからは、原発事故による放射能のこと、夏季の電気のこと、電気料金値上げなどの認識を話すお客様が多くなった。多くの国民が、3・11の当初から気持ちがあるけれど何をしたらいいか分からなかったことが、この1年3ヶ月の間に各々の見解が確立されてきたように思う。■大震災直後は、芸能人たちが被災地に赴き、スクリーン、TV、舞台で知られているキャラクター通りの光景が報道されていた。最近ではタレント自身のキャラクターと相反する”反原発”の立場で、デモに参加する俳優・山本太郎や、歌詞に強烈なメッセージを託す歌手・沢田研二などの本音で発言する芸能人が現れた。■また、あるタレントと放送作家が、福島県いわき市に支援物品を届けるボランティア活動を行なった。甚大で悲惨な被災地に行く現実と、あくまでも自身のキャラクターにこだわるタレントの言動のギャップを、相棒の放送作家が冷静に観察して著した『F(エフ)』(松田健次・著、SALLY文庫)という本になった。■『F』は、多くの国民と同じように大震災直後からの被災地の報道に無力を感じながら、何とかしたいと現実と妄想を繰り返していた情景から始まり、試行錯誤の末に被災地に到着し、目的を達成するノン・フィクションである。大震災直後の被災地の模様が描かれ、被災地から遠い東京の混乱状況も分かり、映画に例えれば「ロード・ムービー」で、弥次喜多道中のような笑いもある楽しい本である。タイトルの『F』の意味を読み明かすと感動的であるのでお勧めする。

— 永田稔


『タイタニック 3D』を見て。(IMAX版です)

2012/06/01 — 第256号

個人的に今まで見た中で最も良かった3Dの劇映画です。97年のご存知『タイタニック』を60週間の製作期間と1800万ドルもの製作費をかけて3D化。さすが現在の3Dの立役者、キャメロン監督が直接携わっただけのこだわりようです。ただ逆にいえば現在2D映画をこれだけのクオリティで3D化するには大変な時間とお金がかかってしまうということでもあります。●劇中ヒロインが船尾から飛び降り自殺をしようとするシーンで、俯瞰で船のデッキと海面が映るのですが、その落差たるや本当にゾッとするほどでした。こういう如何にもなシーンもですが、人物の自然な立体感に感心しました。そもそも映画はカットが変わるたびに巨大なアップになったりロングショットになったりと極めて不自然な視覚体験なので、何が「自然」かは定義ができないと思いますが「3Dであることを意識させつつ不自然ではない」という映像が見られました。映画によっては派手なシーン以外で「これなら2Dでもいいんじゃない」と思うような映画も多かったので、スペクタクルなシーンとそうでないシーンの統一がとれた「全編3D映画」を今回初めて実感したような気がしました。●ただし他の3D映画は駄目だという話にはなりません。何故なら私はこの映画をIMAXで座席は中央、と最も良い条件で見たからです。他の方式で且つ悪い条件で見たら画面は暗いし、チラつくし、白は出ないし、立体感も?等々と今回の印象とは大分違った印象を持ったかもしれません。今まで見た3D映画も環境(方式、劇場、座席位置、光量、個人差等)に大きく左右されている恐れがあるのです。いずれにせよまだ3D映画は全てにおいてまだ過渡期といった感じです。(因みに劇映画以外では『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』が最良かと)

— 梅原浩二


映画ファンなら見逃すな、今村昌平特集

2012/05/16 — 第255号

今年は今村昌平監督の七回忌です。ご命日は5月30日です。当館では5月23日より「七回忌追悼 今村昌平監督特集」を開催します。●今村監督は日本人で唯一、カンヌ映画祭で最高賞を2度取った監督であることはご存知でしたか。1983年「楢山節考」がグランプリ、’97年には「うなぎ」でパルム・ドールを獲得しました(’90年から最高賞の呼称がグランプリからパルム・ドールに変更)。ちなみに海外では最高賞を二度取った監督は五人いるそうです。早速調べました。コッポラ、ビレ・アウグスト、クストリッツァ、ダルデンヌ兄弟が二度獲得していましたが、もう一人、誰かを見落としているのか、それともダルデンヌ兄弟が二人で計五人なのか。どなたか詳しい方、教えてください。●今村映画を一言で言うと、欲望や性に翻弄される人間のおかしさ、滑稽さ、でしょうか。それを否定的に捉えないので必然的に今村映画は喜劇です。その喜劇が、どうしてあのような迫力、スケールをもって立ち上がってくるのか、所謂「重喜劇」として現れるその回路にこそ、今村監督の創作の秘密が隠されているように思います。●今村監督作品を始めて見る若い方は、是非、全作見てほしいと思いますが、中でもおススメはというとやはり「豚と軍艦」(’60)「にっぽん昆虫記」(’63)「赤い殺意」(’64)ですね。この3作は日本映画の“人間の猥雑さと滑稽さ”部門というものがあったとしたら、間違いなくベストテンに入る誉れ高い作品です。吉村実子、左幸子、春川ますみという女優たちのエネルギッシュな存在感にも激しく心を打たれますよ。●ところで6月は、フィルムで見ることができるイーストウッド監督作品&主演オンリー作品を全部(←多分)やります。こちらも乞うご期待。

— 矢田庸一郎


ミッション:インポッシブル大会、友の会優遇します!

2012/05/01 — 第254号

新文芸坐では、5/5(土)から12(土)までの期間、《ミッション:インポッシブル大会》を開催いたします。M:Iシリーズ全4作の上映です。また、この期間中は、友の会会員のお客様のために以下のサービスを実施します。

1. 会員のお客様へ 《スペシャルデイズ》
期間中は、入場ポイントが2ポイント。もちろんラスト1本でも2ポイントがつきますので、連夜の映画鑑賞でも割安感があります。仕事・学校のお帰りの映画鑑賞もオススメですよ!

2. 現在会員でないお客様へ 《入会・更新のポイントサービス》
期間中は、入会・更新されたお客様に、2ポイント加算いたします。通常は新規入会時にはポイントがつきませんので、かなりお得です。更新には会員証が必要ですので必ずご持参ください。なお、映画も観る場合は1.のサービスが併用されますので、入会時に差し上げる招待券は別番組でお使いいただくほうがお得です。

期間中は会員の方を優遇します! お手許に旧い会員証があるなら、ぜひ期間中に新文芸坐にご来場ください。スタッフ一同、お待ちしております

— スタッフ


柳亭市馬 LOVE

2012/04/16 — 第253号

■落語熱は続いていますというかさらに症状は進行しています。でも今や落語熱というよりは市馬熱です。柳亭市馬さんの独演会や出番のある各寄席にちょくちょく通っています。では私が熱を上げている柳亭市馬さんはどんな噺家さんかというと、5代目柳家小さん師匠のお弟子さんで、日本歌手協会の会員でもあるという美声の持ち主。その美声を生かして古典落語の中に昭和歌謡が登場するという、しかもそれが本当に上手い!(ステキ!)■昭和歌謡が登場する市馬さんの噺で代表的なものは「掛取り美智也」です。大晦日にお金のない夫婦が借金取りの好きな趣味(喧嘩や芝居)を使って借金取りを追い返すという古典落語「掛取万歳」の中に、三橋の旦那という三橋美智也メドレーを歌うキャラクターが登場する市馬さんならではのお噺。三橋美智也を歌うその声に聞き惚れてしまいます。■そして年末の恒例となっている「年忘れ市馬落語集」では前半は落語、後半は歌のゲスト(昨年は昔々亭桃太郎さん)を招いての市馬さんの歌謡ショー!!落語の中で聞くのとはまた違った、市馬さんののびやかな歌声が会場中に響き渡っていました。■歌良し、もちろん落語良し、さらには市馬さんの全身から発せられる明るさが心を軽くしてくれます。落語鑑賞の難しいお作法はよくわかりませんが柳亭市馬さん好き!という感じです。

— 佐野久仁子


GWの一日は“中つ国”へ日帰り旅行だ

2012/04/01 — 第252号

今年もやります。5/4(金)の「ロード・オブ・ザ・リング(以下、LotR)」スペシャル・エクステンデッド・エディション 三部作。一挙上映は9回目の上映です。毎年のように上映しているのですが、私は昨年初めてまとめて観ました。個別には既に観ていたのですが、“通し”はツラそうで躊躇していたのです。が、新作「ホビット」公開までに一度は体験しておこうと思い、三千円払ってチケットを購入、ついに観ました。いや、体力的には問題無かったです。それよりも映画の面白さに13時間近くの上映が、あっという間に感じられました。今年の新作公開までに、一度は観ておくことをオススメします。DVD借りてきて自宅のTV画面で13時間……はツライですよ! 是非スクリーンで。■さて今年の12月に公開予定の「ホビット 思いがけない冒険」は来年公開の「ホビット ゆきて帰りし物語」との二部作になっています。内容はLotRの前日談です。LotRでイアン・ホルムが演じたビルボ・バギンズを主人公(もちろん若い)に冒険の旅が展開、ラスボスのドラゴンを退治、最後にはお宝ゲット!? という、王道をゆくハイ・ファンタジーです。原作では架空の世界を描きながらも、困難に際しての主人公の成長も大きなテーマになっているので、このあたりを監督のピーター・ジャクソンがキッチリ描いてくれるでしょう。LotRのラストでのサムの活躍に涙した多くのファンの皆様、期待して冬を待ちましょう。■LotR三部作は、あと何年スクリーンで上映できるかわかりません。今年も一挙上映しますので、皆様は一挙鑑賞してください。レンバスはないけどサグーンロールがあるし。

— 関口芳雄


名画座待望論、なのか?

2012/03/16 — 第251号

今年のアカデミー賞作品賞はフランス映画『アーティスト』が獲得しました。サイレントからトーキーへ移行する映画界を描くその世界観に合わせ、新作なのに白黒かつ台詞もほとんどないという野心作です。当初は拒絶反応もあったそうですが、結局古き良き時代へのオマージュ以上の普遍的な感動が協会員の琴線に触れたようです。■そして『アーティスト』としのぎを削ったのがマーティン・スコセッシ初の3D作品として話題の『ヒューゴの不思議な発明』。「スコセッシが3D?」と懐疑的でしたが、観たらなるほどそういう訳かと合点がいきます。ネタバレになるので詳しく書きませんがこちらもまた映画への愛が溢れているのです。結局今年のアカデミー賞は(協会会長の挨拶も含め)まるで失ってしまった何かを取り戻したいかのような、映画そのものへのラブコールに見えました。■突然ですが「名画座カンペ」をご存知ですか? とある映画ファンが都内の名画座スケジュールを手書きで(!)一覧にして配布しているのです。その便利さと熱心さが局地的な話題になっており先日もラジオ番組で紹介されました。その番組の見解で興味深かったのが、「ぴあ」が休刊して一旦白紙に戻ったミニコミ的な映画熱が、旧作を媒介にまた形成されようとしている、というもの。熟成され、新たな名画座文化が生まれたら楽しいですね。■ハリウッドでも東京でも過去作品が意識されるのは名画座にとっては嬉しいことですが、そこには現状への批判が含まれていることを忘れてはいけません。

— 花俟良王


Twitter始めました

2012/03/01 — 第250号

当館では遅まきながら「Twitter(ツイッター)」を始めました。「Twitter」とはなんぞや? と申しますと、今何々をしているとか、日々思いついた事などを短い文章で携帯電話などから書き込み、公開する、ネット上の簡易日記のようなものです。大勢の人が参加していて、各自の書き込み(ツイッターの世界では“つぶやき”と言います)が見られるようになっています。見知らぬ人が自分のつぶやきに反応してくれたり、有名人の生のつぶやきが聞けるだけでなく、時には返事をくれることもあったりするので、一方通行ではない色々な“つながり”ができるのがこういったソーシャルメディアの面白いところです。■しかし、そんなものが役に立つのかと思う方もいると思いますが、当館では日替りの上映作品を毎日紹介したり、混雑状況や前売券の販売状況、新たに決まった番組の速報等々、細やかな情報提供ができるようになり、大変役に立っています。最近では、ツイッター上の「今何々線が止まっている」などのつぶやきをリアルタイムで収集・解析し、鉄道会社よりも早くて正確な運行状況を知らせるシステムが開発されるなど、変わった利用法も生まれています。■1月末にギリシャのテオ・アンゲロプロス監督が交通事故で亡くなりました。報道直後からツイッター上では、偉大な監督の死を嘆く声が多く寄せられると共に、様々なエピソードや監督の言葉、撮影中だった新作の詳細が紹介されていて、日本未公開だった作品が今年中に公開される予定である事も知りました。また、当館で3/12(月)から始まる緊急追悼上映についてつぶやいたところ、多くの反響を頂きました。Twitter未体験の方、一ついかがでしょうか? “つながる”ことでどんどん拡がっていく世界もありますよ。

— 後藤佑輔


スタッフコラム

2021/01/15
映画は映画館で観るもの
2021/01/01
明けましておめでとうございます
2020/11/13
正直、まだ実感できていません。
2020/08/01
寅さん再入門
2020/07/07
底抜けおじさん
2020/06/08
テレキネシスに呼び起こされた私のプロムパーティー

年別アーカイブ